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経営コラム SOLID AS FAITH 20周年記念特別号
= 消えていく社員 / 小さくなっていく会社 =
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まえがき
第1章:小規模化するマーケット・セグメント
第2章:生き残りの難しい中堅企業 あるあるチェックリスト
第3章:雇用から遁走する中小零細企業
第4章:消えていく組織マネジメント
第5章:機械化・自動化で様変わりする現場
第6章:色褪せる中小零細企業の“事業規模拡大”
あとがき
おしらせ
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☆注意:お読みになる際には、枚数がかさみ恐縮ながら、プリントアウト
の上お読みになることを、心よりお奨め申し上げます。
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まえがき
とうとう1999年の創刊から20年が経ちました。最初は100話ぐらいで終われ
ばよいかと思っていたこの経営コラムがこんなに続くとは夢にも思っていま
せんでした。通常号の話数だけでも470を超え、増刊号や周年記念特別号を
入れるとブログ上の記事数では500を超えました。書いている自分もタイト
ルを見ただけではどのようなエピソードを入れた話だったかが思い出せない
ことが頻繁にあります。こんな好い加減な著者の書き物に長きにわたりお付
き合い下さっている読者のあなたに深く御礼申し上げます。
10進法の世界観では大きな節目である20年目の周年記念特別号は何をテーマ
にしようかと、ずっと考えておりました。500に及ぶ過去のコラムの振り返
りや総括になるような構成の案も浮かんだのですが、採用しませんでした。
過去の号を読んで現在の中小零細企業の経営鉄則に合わない内容はほとんど
見つかりませんが、それらを総括するよりも、変化を加速させつつある中小
零細企業の経営環境について概観するような内容こそ、今、読者のあなたに
お届けするに相応しいように思えたからです。
もちろん、過去の主張内容と異なる主旨ではなく、現在の経営環境の激変を
予期した内容の過去の号を参照しつつ、それらの変化がとうとう姿を現し始
めた「今」を描いてみることにしました。
増刊第7話『存在の必然』は、こんな風に締め括られています。
「 人手を減らすための機械化ではなく、最初から機械と人とを使い分ける
設計。正社員採用の際の、「そんなことをあなたにやってもらう気はあり
ませんよ。そんなことなら、ウチではパートさんやバイトの子達がやって
るから」などと言う台詞は、「あなたは人なんだから、機械と違うことし
てくれなきゃ」と言う台詞になる。その時、中途半端に機械のような人は、
中途半端に人間のような機械に、職を空け渡して行くことになるだろう。
そんなプロセスを経て、人として働くことの意義が見直されて、研ぎ澄ま
されて行く。
そこでは、パートだのアルバイトだの派遣だのの区別も、日本人だの外
国人だのの区別も、機械と人との違いの前にそう重要なことではなくなる
だろう。まずは人にしかできない仕事ができること。それが究極まで追求
される未来の到来に、まだちょっと時間がかかるなら、年金が危ぶまれて
尚、長生きも悪くないと飛行機に乗りこみながら毎週考えている」。
2002年の3周年記念特別号の一部として発表した文章です。当時この文章を
読んでも、人と機械の共生など誰も想像していませんでした。「中小零細企
業でそんなことを考える日など、多分生きているうちに来ない」と多くの読
者の方々が仰っていました。17年経った今、最早誰も「想像」などしていま
せん。もう現実になりつつあるからです。
17年前に想像した通りに職場が変化するのと同時に、人間の頭数で表現する
組織の規模も、売上金額や拠点数で表現する事業規模も、どんどん小さくな
っていくように感じられます。神田昌典は2014年頃に出した本で「2024年に
会社はなくなる」と断言しています。あと5年でなくなりはしないと思いま
すが、その組織運営は大きく様変わりし、まるでなくなる方向へ徐々に推移
するかのように規模を小さくしていくのではないかと弊社代表の市川は考え
ています。
その現在進行形の現象を6つの切り口から描写いたします。各々が1つずつの
章で簡潔にまとめられていますが、一部多少の関連が相互にあるものの、ど
こから読んでも問題ない構成になっています。是非お楽しみください。
尚、全6章のうち、第1章と第4章は来年の独立を目指し修行中のおくだみゆ
きが担当しています。
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参考バックナンバー 増刊第7話『存在の必然』
http://tales.msi-group.org/?p=116
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第1章 小規模化するマーケット・セグメント
マーケットの金額規模は一般に縮小して行くと考えられる。それはマーケッ
トで消費を行なう人や企業の数そのものが減少することも要因の一つだが、
各々の人や企業の消費額の減少がもたらす部分も非常に大きい。
まず考えられるのが、所有よりも共有することが増えていること。例えば、
カーシェアリングなどがさらに普及していけば、人や企業による車両の「所
有」そのものが減り、車の販売数は減少していく一方となる。企業の大きな
投資対象である経営システムの分野でもクラウド化は共有化である。
また、統計に反映されない「アングラ(=アンダーグラウンド)経済化」も
要因の一つだろう。アングラといっても、違法性のあるようなことばかりで
はない。例えば、ヤフオクやメルカリでモノを売ったり、ポイントを使って
モノを買ったりなど、日常的に利用する人もかなりの数いるだろう。そうい
った「アングラ経済」での取引が増えれば増えるほど、統計上のマーケット
の規模が縮小していくということになる。
その他にも、「記号消費の減少(※)」もマーケットの減退に関わってくる
だろう。『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』という書籍にもあるよう
に、読解力の低い人が目立ってきている。記号消費の「記号」にあたる、高
級ブランドのカバンの素材の良さや高級ワインの希少性などは、裏側にある
背景や知識がわからなければ、価値を知ることもできない。価値がわかる人
が減っていけば、モノが売れなくなってしまう。
さらに要因の一つとして考えられるのが、「ニーズの変容」である。かつて
は、例えばマイホームの購入や自家用車を持つことが一つのステータスで
あった。企業においても一等地の自社ビルや、上場企業である立場などのス
テータスは存在する。それは、モノを所有していることに対するステータス
的価値が共有されていて、はじめて成立しているものだ。
今は価値観の多様化が進み、モノの所有によって満たせるニーズが減ってき
ている。例えば、若者がSNSで「いいね」や「フォロワー」を集めることに
必死になって、人とのつながりを求める人が増えてきているように、モノの
取得といったお金で計測できる「消費」から人々の関心が離れている。
価値観の多様化により、少品種大量販売はより難しくなった。大手企業にと
っては厳しい状況となっている。大量販売を目指し、海外でもウケるものを
作ろうとすると、汎用的で誰にとっても魅力のないものを生み出すことにな
ってしまう。中小零細企業では、小さなマーケットの中の顧客のニーズを把
握し、従業員同士で共有しながら接客する「カルテ型接客」という仕組みを
導入するようなこともできる。小規模マーケットで肌理細かなお客様満足を
実現できる可能性が残されている。
しかし、AIを搭載したCRMシステムの出現により、個々の顧客への個別対応
が大手にも可能になりつつある。例えば、Amazonの個別のレコメンド機能は
より高度化し、人間より優秀になってくると考えられる。
その中で人間の役割として残っていくのは、過去のパターンにない顧客のニ
ーズ充足の方向性を決め、その仕組みをつくることである。中小零細企業に
とって、その役割をきちんと理解し、実行できる人員を揃えることこそが、
生き残りの道となるだろう。その道が大きな困難を伴いがちなことは想像に
難くない。
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※参考バックナンバー 第263話『解せない記号』
http://tales.msi-group.org/?p=421
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第2章 生き残りの難しい中堅企業 あるあるチェックリスト
弊社代表市川は、企業規模を概ね8時間換算の組織構成員数で感覚的に認識
します。そのモノサシで中堅企業は100人から500人と言った感じの規模で
す。その中堅企業が落ちぶれつつあります。結果的に淘汰されるか、大リス
トラや事業買収などによってダウンサイズして中堅企業でなくなるか、いず
れにせよ、消え行く運命が待ち受けているケースが多いようです。そんな
“残念な中堅企業”には特徴があります。
1.「創業から数十年以上経って、役員クラスは経験だけで判断しがち」
新たな取り組みをしようにも、過去の経験則や業界慣習に雁字搦めで、環
境変化に対応できません。特に業界横並び発想の古参幹部が揃っているとか
なり危険で、業界外からの競合の参入に全く無警戒になりがちです。
2.「特にICT関係が組織全体に弱く、当然、その活用など全くできない」
ICTの活用が万能薬では決してありませんが、業務の効率化や高効果化の
主要なツールはICT技術によるものです。主に経営陣の質の低さによって、
それらを社内に採用できないため高コスト体質が続きます。
3.「多国籍企業の有名ブランドの量産品に対して、自社製品の差別化ができ
ていない」
中堅企業の多くは国外との取引が少なく、大手多国籍企業の量産安値ブラ
ンドに圧倒されることになりがちです。弱者の立場でこれらに対抗する戦略
がないと、簡単に追い詰められます。
4.「ローカル市場では食い込みが甘く、浸透が儘ならない」
中堅企業は売上規模をそれなりに大きく維持するため、国内全体に事業を
広げる必要が出やすくなりますが、個々のローカル市場では少人数体制の営
業所を置くだけになり、地元の競合に対して、規模の有意性がほとんど発揮
できません。
5.「中途半端に知名度があるため、コンプライアンス対応は強く求められる」
中小零細企業だと規制の対象外になったり、猶予措置があったりしますが、
中堅企業は、ほぼ全国規模の事業により知名度が高く、社内にプロもいない
状態で、各種のコンプライアンス確保のための管理体制を求められ、徒にコ
ストが嵩みやすくなります。
6.「中間管理職も有能ではなく、階層化が組織の動きを鈍化させている」
増えて来た中間管理職をきちんと育成していないので、判断が的確に下せ
ず、組織全体で機能的且つ有機的に動くことができません。
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参考バックナンバー 第136話『危機中毒』
http://tales.msi-group.org/?p=188
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第3章 雇用から遁走する中小零細企業
今年の参議院選の公約を見ていると、最低賃金の引上げがあちこちで謳われ
ていました。企業の懐事情などお構いなしに強制的に賃金を引上げる愚行を
韓国政府は既に試して見せてくれています。多くの企業による雇止めと事業
縮小です。彼の国では2年で約30%の引上げでした。価格が上がったのなら、
価値も上がってくれなくては困ります。三割も利益貢献度を上げることがで
きる社員は現在どれだけいるのかと言うことも問われるべきかもしれません。
最低賃金以外にも、有給取得の法制化も総残業時間の規制も結局は人件費を
押し上げる直接的な引き金になります。社会の高齢化が進めば保険制度も年
金制度も維持が難しくなって、金額が引き上げられます。介護保険も付け加
わっています。当然企業が社員に対して負担する法定福利費も増える一方で
す。
そのうえ企業は社員の管理もコストをかけて行なわなくてはなりません。健
康管理もそうですし、出産・育児に対しても配慮しなくてはなりません。日
常の使用の場面でもモラハラ・パワハラ・セクハラに気を付けるのは勿論、
社員の社外の事故にまで責任を持つ必要があります。バカッターなどの不祥
事も社会的に見れば、会社の管理不行き届きです。
さらにもう一つ追い打ちをかける事実上管理不可能な事柄があります。それ
は労働時間の通算です。副業が基本的に許される状態になったので、複数の
会社で働く社員が今までの掛け持ちアルバイト・スタッフに加わりましたが、
これらの人々の総労働時間を管理し、残業状態もチェックする必要があると
されているのです。
これだけのリスクや負担を抱えて雇用を続ける必要があるでしょうか。少な
くとも、これほどの負担を負ってまで雇う価値のある社員の絞り込みは間違
いなく増えていくことでしょう。現在あちこちに見られるようになった外国
人労働者の活用でも、雇用責任は変わりません。こうして、被雇用者は組織
から徐々に消えていくことになります。
雇用ではなく業務委託・業務請負による労働力の調達も増えることでしょう。
そして、さらに人間以外の労働力の大規模な採用に中小零細企業も乗り出す
ことは避けられないものと考えられます。
人材側の職業スキルは作業の反復によって形成されるのは当たり前です。と
ころが、労働時間は削減され、おまけに雇用の機会まで大きく減少するとし
たら、スキル不足の労働者が増加することになります。そうすれば余計のこ
と、コストに見合わない労働者は雇用される機会を失っていくことになるの
です。
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参考バックナンバー 第240話『不本意な取柄』
http://tales.msi-group.org/?p=371
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第4章 消えていく組織マネジメント
組織マネジメントとは、組織運営について考え作戦立てをする人(=決定
者)と、それを遂行する実行(作業)者との間の調整する機能とその役割を
果たす人々を指している。
過去のソリアズでもよく言及されるミンツバーグは、著書で次のように述べ
ている。「マネージャーは組織本来の役割を果たしていず、組織の欠陥故に
存在する…(※1)」。そもそもマネージャーが存在するのは、組織に欠陥
があるからこそであり、決定者と実行者が必要なコミュニケーションを十分
に取れていれば、マネージャーはいらないというのである。市川が過去のソ
リアズでもたびたび取り上げている「凡事徹底」。皆が健康であれば医者が
暇になるのと同じように、まともな人間が揃い、当たり前のことをきちんと
している組織=創発型組織になれば、マネジメントは徐々に不要になる。そ
の他にも組織マネジメントの役割が消失する根拠がある。
まず考えられるのが機械化だ。なかでも「HRテック」と呼ばれるAIなどを用
いた人事領域の業務改善システムの導入コストが低下していることから、人
事管理や労務管理に取り入れる中小零細企業が増えてきている。例えば、従
業員の出退勤管理や給与計算などは、人より正確な上に、24時間365日稼働
させられる。それらを管理する立場だった組織マネジメント層が徐々に不要
になってくることは明白である。
次に考えられるのが、「ブロックチェーン(※2)」。ブロックチェーンと
は、暗号によって改竄されないようにできる仕組みのこと。一度決めた約束
事を改竄されない状態で保持しておくことができ、さらに人を介すことなく
実行できる。この技術を用いて、不動産業界では既に契約・登記・資産移動
が機械により自動的に行なわれるなどしている。経営組織が契約とその履行
を運営上の原理に含んでいることから、組織マネジメント機能の大部分がブ
ロックチェーン技術により実現できると言われている。
さらに、組織構造の変化も大きな要因である。その一つに「組織のフラット
化」がある。組織の階層が減り、決定者が実行者を直接管理・指導する体制
になっていくことを指している。大手企業でも、一部門を子会社化して規模
の縮小(=ダウンサイジング)を図ることがよくある。人件費削減の効果以
上に、コミュニケーションを円滑にする効用は大きい。VUCAの時代になるほ
ど、機動性の高い小組織の方が生き残りやすい。
「組織のネットワーク化」も組織構造の変化の一つだ。非正規雇用が増えて
いき、社員やスタッフが物理的に常駐する体制が減少したり、副業する人が
増えたり、必要なときだけ専門家を雇ったりすることにより雇用関係が明確
でなくなっていく状態を意味している。「ICTの発達」や「人を管理するコ
ストの増加」がその要因として考えられる。パソコンさえ持っていれば、特
定の就業場所に出向かなくても、仕事をすることは可能である。さらに、最
低賃金の引上げや「働き方改革」による残業規制、有給休暇取得の義務化な
どでフルタイムで人員を抱えることのコスパが悪化し、ネットワーク化が加
速すると考えられる。管理される対象の「雇用」が減少するとともに、組織
マネジメント層の必要数が減っていくだろう。
このように組織マネジメントの役割は徐々に失われていくことが予想される。
ただ、ここに述べてきた組織マネジメントが失われる組織は、先述の凡事徹
底のできる者が多く存在することが前提である。人手不足が進む中で、中小
零細企業にとっては一定能力を持っている人を確保しておくこと自体がかな
り困難な状況となってくる。組織の価値基準に基づいて考え、行動できる人
を確保することが、生き残る組織になるための必須条件となってくるだろう。
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※1参考バックナンバー 第314話『その人の分け前』
http://tales.msi-group.org/?p=576
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※2参考バックナンバー 第454話『ダオイズム』
http://tales.msi-group.org/?p=1435
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第5章 機械化・自動化で様変わりする現場
■事務作業系分野全般:
RDB 、RPA
■労務管理系分野:
労働時間・賃金管理アプリ、各種HRテック、スマート・コントラクト
■営業販売作業系分野:
CMS系ウェブ、画像・動画加工アプリ、ウェブアクセスログ、CRMデータ、
MA
■移動・運搬・輸送作業系分野:
汎用ロボットアーム、AGV、各種メカトロ系装置、ドローン、自動運転車
■製造作業系分野:
3D処理方法(3Dスキャナ・CAD・プリンタ)、自動作業機、各種メカトロ
系装置、CAM、画像・動画処理系AI
■リテール系現場分野:
決済系各種端末装置、音声認識装置、XR、各種認証端末装置
第3章でも触れた現場作業の省力化を劇的に進める各種の技術を列記すると、
こんな風になります。ざっと見渡して、とても中小零細企業に導入するイメ
ージが湧かないという声もよく聞きます。しかし、数年前に比べて、導入コ
ストも運用コストも急激に下がっていて、投資した金額はすぐに省ける人件
費でペイできます。補助金などの活用ができるケースもあるでしょう。操作
方法もインターフェースがどんどん発達し、分かりやすく使いやすく進化し
続けています。
それでも、中小零細企業でこれらの省力化ツールを導入できない最大の理由
は人の質の問題です。自分の会社の(1)現場のどの部分に(2)どこの会社の
(3)何を(4)いくらかけて導入すると(5)いくら儲かるのか。これらの疑問の
答えが簡単に揃わない。そして、仮に導入したとしても、(6)十分活用でき
るほどの人材の質か…も答えが必要です。
しかし、一方で人はどんどん希少な資源になっていきます。文句も言わず24
時間365日働き続け、休みも要らなければ健康管理をしてやる必要もなく、
育児や親の介護を始める心配も一切ない「働き手」のコスパはどんどん見栄
え良くなっていきます。企業の淘汰が進む中、生き残りを懸けてこれらの技
術の導入に挑む中小零細企業が出現するのも時間の問題です。
中小零細企業の強みは機動性です。自社方針に従って迅速にこれらの技術を
使いこなすには、それができる人材を極力内部に抱える必要が出ます。それ
を採用するのか、育成するのか。中小零細企業でもそれを戦略的に判断する
ことに徐々になっていくことでしょう。
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参考バックナンバー 第422話『残された仕事』
http://tales.msi-group.org/?p=1029
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第6章 色褪せる中小零細企業の“事業規模拡大”
日本全国の地域によってムラが大分ありますが、多くの地域で人口が減り始
めました。その現実を前に、「人が簡単に雇えない時代だから、商売の規模
を大きくするのは難しくなるなぁ」と仰る社長がいます。どうもしっくり来
ないのは、それ以前から、世の中全体で見て中小零細企業は事業拡大の欲望
を持っていないケースが多いように感じているからです。
多くの中小零細企業は節税のために利益が出ないようにします。最も一般的
なのは役員報酬を多めに支払うことでしょう。ただ役員報酬は一度決めると
簡単に変更できないので、常に多めに払って、いざ資金が必要になると、会
社に社長がカネを貸し込む形にします。
高めの役員報酬でも吸収しきれない利益が出そうになったら、社員にボーナ
スや福利厚生で還元したり、設備投資をして減価償却費を計上したりするか
もしれません。いずれにせよ、儲かっても、あまり事業拡大の方向に資金が
使われません。ビジネス拡大の機会が巡ってくることもありますが、その多
くは唐突で、資金余剰の発生を待ってくれませんから、金融機関から借り入
れるなどして対応します。
カネがあっても再投資して事業を拡大しないのは、公開企業のように売上規
模や利益規模の追求を求める外部株主がいないこともありますが、文鎮型組
織でオーナー社長が事業全体に目配りをしなくてはならないことが大きいよ
うです。文鎮型組織の管理者も役職など殆ど渾名のようなもので、到底オー
ナー経営者の代弁・代行をする器ではないため、組織の拡大が困難になるの
だと思います。
それでも「ぬるい経営環境」の頃は、イケイケドンドンで拠点を増やしたり
取扱品目を野放図に増やしたりすることができました。しかし、そんな時代
に浮かれた人々は、罰でも与えられているかのような経営状態に追い込まれ
つつあるように見えます。
ムダを大胆にカットして利益を追求するのが必然になる時、事業規模を拡大
するのは至難の業です。新拠点や新規事業を立ち上げたりするなら、既存の
他社事業を企業買収か事業買収で獲得した方が早い時代になりつつあります。
こうして、元々組織拡大をあまり志向しないのが一般的な中小零細企業では、
淘汰の波を超えて生き残った後にさえ、組織拡大どころか、むしろ、少数精
鋭を志向してダウンサイジングに積極的であるようになったのです。
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参考バックナンバー 第471話『昔の夢』
http://tales.msi-group.org/?p=1636
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あとがき
ここまでお付き合い戴きありがとうございます。例年の周年記念特別号に比
べてかなりコンパクトにまとまった内容となりました。20周年の節目の特別
性は、今までにない圧縮度合いであったかもしれません。文章作成の手間も
バックナンバーで既に発表されたテーマの集積であったので、従来の周年記
念特別号に比べて大変なものではありませんでした。修行開始後半年経たな
いおくだみゆきの当初のドラフトにはかなり苦労の跡が滲んでいましたが、
持ち前の優れた地頭で中小零細企業の経営の在り様をすんなり吸収してくれ
たように見えます。
弊社のクライアントの中小零細企業でも採用難があからさまになって来つつ
あります。ただ、第469話『ひゃっはぁな生活』で言及された『障害者の経
済学』にある“労働不適格者”が集まりやすい中小零細企業において、高度
に情報化しつつある現場作業をこなせる人材を組織に揃えることは非常に困
難です。書店のビジネス書の売場では、ビジネス・モデルの研究やICT技術
の活用方法など、以前にも増して多くのサブ・ジャンルの書籍が所狭しと並
んでいますが、中小零細企業の今後の最重要課題は「非労働不適格者の調達
と適正な活用」であろうと弊社では考えています。
既に存在している彼らを取り込むのか、まあまあの素材を集めて彼らを創り
出すのか。中小零細企業の経営者に問うべき有り触れた質問になりつつあり
ます。『「組織と人」を考える』が弊社のキャッチ・コピーですが、創業か
ら19年経っても、考えるべき対象の関係性の中には、常に多様な要素が複雑
に絡み合っているのです。
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参考バックナンバー 第469話『ひゃっはぁな生活』
http://tales.msi-group.org/?p=1611
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おしらせ
あなたのご愛顧に応えて、20周年特別プレゼント企画!
弊社の考える「生き残る中小零細組織の鉄則」を
ご希望の方にもれなく進呈いたします!
概ねA4で1枚ぐらいの情報量になる予定です。
ご希望でしたら、以下のメールアドレスに、
件名:
「鉄則希望」
本文:
「お名前(名刺情報としてのお名前(所謂HN的なものは不可))」
「お名前のフリガナ」
「当コラムご講読歴」
「当コラムベスト3(お好きな3話をお教えください)」
を書いたメールをお送りください。
bizcom@msi-group.org
ご連絡期限は2019年11月末日です。
メルマガ読者ではなく、
弊社ブログで当プレゼント企画をご覧になった方も
お申込みいただけます。
メールでのお届けは2020年1月中に行ないます。
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※ ご注意!!
サーバのエラーなどで読者登録が解除されてしまった方がいらっしゃる様
子です。当メルマガ通常号は毎月10日・25日に、周年記念特別号は毎年10月
末日に休まず発行しております。発行状況のご確認は弊社ブログで行なって
ください。
また、まぐまぐからの連絡によると、一部フリーメール運営企業でサーバ
の受信量規制を行なっているケースがあり、その場合は大幅にメールマガジ
ンの到着が遅れるとのことです。
「届かない」、「再送希望」などの連絡は、まぐまぐの窓口である
「magpost@mag2.com」に、メルマガID(#0000019921)、タイトル(『経
営コラム SOLID AS FAITH』)、購読アドレス、再送希望の旨を記載の上、
メールにてご連絡下さい。
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発行:
「組織と人のコミュニケーションを考える」
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