3周年記念特別号 / 特別原稿『しもた屋の情景』 / (増刊第7号)『存在の必然』

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経営コラム SOLID AS FAITH 3周年記念特別号
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目次
1 ご挨拶
2 身内が選ぶ3年間のベスト5
3 特別原稿『しもた屋の情景』
4 著者が選ぶ作品タイトル ベスト10
5 特別原稿『存在の必然』
6 あとがき
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☆注意:今号は経営に関する示唆を含む「話」以外の部分の比重が高い「お祭
り」号です。不躾ながら、不要の方は、読まずに削除のほど、お願い申し上げ
ます。また、お読みになる際には、プリントアウトの上お読みになることを、
お勧め申し上げます。
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1 ご挨拶

とうとう、創刊以来3年が経ってしまいました。1999年の10月末日から発行
を始めた当コラムは、今年10月末時点で通常号67話と増刊号6話の合計43話を
お届けして参りました。本当に読者のみなさまの支えあってのことだと思って
います。ここまでご愛読いただいたみなさんに心よりお礼申し上げます。謹ん
で3周年記念特別号をお送りします。

さて、1周年記念号、2周年記念号では、読者の方からの寄稿文章と読者の
みなさまのお気に入りの話のランキング発表を行って参りましたが、今回は余
り準備時間がなかったため、読者のみなさまから十分にご意見やご感想を集め
ることができませんでした。そのような慌しい呼びかけの中、3周年記念号に
「お題」を下さった読者のみなさまに深く御礼申し上げます。取り分け、創刊
以来ご愛読賜り、今回「景況と起業」と言う採用「お題」を下さったS様に感
謝したく存じます。

と言うことで、余りみなさまとのコミュニケーションが図れなかった罪滅ぼ
しに、3周年記念号には特別原稿(豪華!)2本を盛り込むこととしました。
一つは頂戴した「お題」で用意した『しもた屋の情景』。もう一つは私が連載
をしていた『月刊フランチャイズ』誌の休刊のため、日の目を見なかった最終
原稿『存在の必然』です。ボリュームが大きいので、じっくりお楽しみ下さい。

たっぷりの読み応えを味わっていただくために、11月10日の発行予定の第68
号『不惑のマニュアル』を11月25日の発行と致します。1回で通常号2話分美
味しい3周年記念号をお楽しみ下さい。通常号に比べてかなり長い内容となっ
ていますが、宜しければ最後までお付き合いください。
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☆1周年記念特別号:
2000年10月31日に、当コラムの創刊1年を記念して発行致しました。内容は
以下のURLに掲載しておりますので、是非ご覧下さい。
http://member.nifty.ne.jp/MSI-GRP/SAF-anniversary1st.html
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2 身内が選ぶ3年間のベスト5

1周年記念号(URL上述)にも書いた通りの工程で発行しております、当
コラムの第一校正者は私の妻です。その妻に、3年間の号の中で、「質が高い」
と思われる号を上げさせた結果を紹介致します。みなさまのご記憶に残る号と
重なりますでしょうか。
※なお、ベスト5の中の順位はありません。発表順に紹介しております。

☆ 第24話『海を囲む砦』(2000年10月10日発行)
砂浜で小さな内海を作る子供の遊びに、顧客の囲込みを例えてみた話です。
比喩のデキもさることながら、珍しく自然の情景を組み合わせた展開が異色の
号です。

☆ 第27話『面白くなる設定』(2000年11月25日発行)
性別による役割分担論を、PCの初期設定に例えて、真向から論じてみまし
た。中小企業のみならず、「雇均法」の枠とは異なる女性の力の活用を考えて
みました。見ようによってはかなり問題あるないようでしたが、幸い、抗議の
反応は一切頂きませんでした。

☆ 第46話『陶酔の営み』(2001年9月10日発行)
私も独立してみて、何が面白くて、今の生活をしているかを考えることがあ
ります。何人もの経営者に会ってみて、酒を飲まず、ギャンブルをしない人が
多いことに気づいた所から、陶酔の対象としての経営を考えました。

☆ 第59話『よほどのこと』(2002年3月25日発行)
「つんぼ」と自称するタクシー運転手の話をベースに、採用の場における差別
に関して考えてみました。それを否定する立場はとっていないことから、これ
も抗議のメールが来るかと思いましたが、私の主旨をご理解頂ける読者の方が
幸いにも多かったようです。

☆ 第65話『桜の記憶』(2002年9月25日発行)
2001年10月に誕生した娘の名前の由来から、人間の記憶に残すべきエピソー
ドとそれに伴って伝達される価値観について考えてみました。女性の読者の方
から、(珍しく)「美しいお話」との評価を幾つか頂きました。

如何でしたでしょうか。上記のベスト5と「お題」の提案を採用させて頂い
た読者S様の選んだ過去1年の発表号のベスト5は、弊社のホームページでも
原文を読めるように致します。お楽しみ下さい。

勿論、まぐまぐさんのサイトでも全バックナンバーを閲覧頂けます。
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000019921
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3 特別原稿『しもた屋の情景』(読者S様のご提案テーマに応えて)

東岡崎の駅に昼近くに降り立った。10月のとある木曜日のことである。川にか
かる橋を渡り、家康公生誕の地にほど近い、康生通の商店街を目指した。かつ
て愛知県下有数の商店街であったはずの賑わいには、歩いても歩いても巡り会
うことは無かった。

私がその日訪れたのは、その日の数ヶ月前、役員を引き受けた企業を初めて訪
問するためである。その企業はできたての有限会社で、リーガルシューズのF
C店をたった1店運営する小さな小さなFCオーナー会社である。

私は靴では老舗ブランドのリーガルコーポレーションのFC店店長の研修の台
本書きを引き受けている。全国から集まる100名余の店長が参加する研修の進
め方を考える仕事を既に足掛け3年戴いている。その担当者が突如退職した。
聞けば、FCオーナーが高齢で閉店となるFC店を継承することにしたと言う。
大学卒業以来10年以上勤めた有名企業を去り、小さな有限会社を作り、訪れた
ことさえ数度しかない見ず知らずの町に家族ごと転居して店を運営すると言う。

豊橋市と名古屋市に挟まれた150万人口を擁する地域は靴の専門店の空白地帯。
そして、偶発的に発生したとは言え、リーガルコーポレーション社のFCで初
の本部の担当者による「暖簾分け型」のFC出店。面白いと思った。この面白
いエピソードを自分のものにもしたいと思った。設立される有限会社への出資
を申し出て、役員にも就任することとなった。

ライバル店と思しき所を見て周る。町には流していないタクシーは、そう簡単
に拾えない。徒歩と1時間に数本しか走らない鉄道で移動を繰り返す。市役所
に通行量調査を求めて行って、徒労に終わる。商工会議所を訪れて、商店街の
行く末についての認識を探る。大学の就職課を訪ねて、地元の就職動向を聞く。
ラジオのインタビューに出演して、店のタダならぬエピソードを語る。そんな
こんなの二日間を過ごした。

かつて人通りが絶えなかったその商店街には「しもた屋」が増え、商店街には、
チャレンジショップなるものが存在する。ワンフロアを私にはおよそ商売っ気
が感じられない女性4人が分け合って営業をしているが、見た所、客足は遠い。
商工会議所の担当者が苦笑して語ったとおりである。その他にも、35万人都市
の市場がどれだけ成熟しているのかを考えずに出店したような超ニッチマーケ
ットを狙う店が幾つか見つかる。そしてそれ以上のおびただしい数の「しもた
屋」が目に入る。

当のリーガルシューズ岡崎店の社長が退職当初のメールで言っていた。「こん
なご時世に独立起業するなんてと言う声もありますが…」。こんなご時世の独
立企業は、彼の専売特許ではない。私も数年前の会社設立の際に、何人もの人
に同じことを言われた。

こんなご時世とは、どんなご時世であろうか。セミナーで唐津一氏は、「デフ
レスパイラルなんて、しゃら臭ぇ」とのたまった。求められているものを提供
できる企業は伸び、そうではない企業は淘汰される。どこにデフレスパイラル
などと言う掴み所のない「現象」が入りこむ余地があるのか。

創業からの年数に一般的な平均寿命は存在せず、新設の会社もバタバタと倒れ
れば、創業何十年の会社も簡単に倒れる。小さくても強い会社もあれば、大き
くても切り売られる会社もある。淘汰の条件が明解である以上、誰から補助金
をもらい、誰が出資して、誰が独立しようと、求められているものを提供でき
ない限り、組織は早晩消滅して行く。

岡崎の「しもた屋」多い街並みを窓から見て、タクシーの運転手は私に言う。
「お客さん、ここに仕事で来たの?その言葉からすると、東京?ホテルはどこ
か知らないけれど、この辺じゃ買物にもなんないよ。見ての通り、歯抜けでし
ょう。新しい店も少しは入っているけど、どんなだかねェ。こんな商店街はも
う数年前から誰も来ないよ」。「なるほどねェ」と私は相槌を打つ。

「商店街に誰も来ないのではなくて、誰も来ない店が増えただけのことでしょ
う。良い店には人が来るのが当り前ですからね」。怪訝な顔をする運転手の反
応を待たず、独り言のように続ける。「ここが人里離れた山奥でも、常連さん
が通いつめるような店を作れば良いってことじゃないですか?原理は結構簡単
に思えますけどねぇ」。薄ら笑いを浮かべる私を、頭がおかしいと思ったのか、
運転手は愛想と言葉を失っていた。
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4 著者が選ぶ作品タイトル ベスト10

1周年記念号でも発表したタイトルのベスト5を、今度はベスト10にして再
度やってみたいと思います。

読者の方からも、作者としての出来・不出来をたずねられることがあります
が、表現の良し悪しのばらつきは否めないものの、文章にしてお伝えしたいこ
とをまとめていると言う点において、私はどの作品の内容もそれなりに気に入
っております。ただし、タイトルは全く別です。文章の推敲よりタイトルの試
行錯誤の方に時間がかかっているケースさえあります。

例えば、CRM活動のプロセスと限界を日常の事例で考えた第63話『身近な
漁業』は、発行手続の前前日まで『スーパーに見る魚』と言うタイトルでした。
また、人を組織に縛る力を考察した第67話『擒縛の形』も文章ができてから、
長くタイトルのない状態で「捨て置かれた」文章です。このように結構悩んで
の末のタイトルですので、本文同様にタイトルも味わって頂けましたら、幸甚
です。それでは、発行順、創刊号からの全号で、私が気に入っているタイトル
を10個ピックアップしてみます。

第17話『縁故的予定調和』
1周年記念号でも、お気に入りの一番ですが、やはり、内容の展開を漢字だ
けでズバリ用語選定できた所が、(自己満足でしかありませんが)「自分を誉
めてあげたい」感じです。

第19話『荒野のベニヤ板』
これも1周年記念号でも顔を出した号です。内容も宗教的な比喩の話に殆ど
終始する印象の強い号ですので、その例えをそのままタイトルにしてみました。
読後にタイトルを読み返してみて、「タイトルはこう言う主旨だったのか」と
言う発見の悦びを放棄した訳ですが、その分、強烈になったように思います。

第22話『夜に染み透る緊張』
コギャルにナンパされた話から始まる夜の街の妖しい雰囲気がそれなりに抑
制の効いた表現にまとめられた満足のタイトルです。

第27話『面白くなる設定』
妻のベスト5にも出て来た号ですが、PCの初期設定の連想から「設定」と
言う言葉が決まってからが長かったように思います。

第31話『執着の表現』
これも、第22話同様、ストーカー行為やストーカー紛いの行為から展開する
話なので、その動機的心理をうまく表現できた満足のタイトルです。

第35話『魂の帳尻』
M&Aによる理念・方針における混乱について考えてみた号です。生まれ変
わる部分をガフの部屋の例えで表現しているので、それが「魂」になり、M&
Aの会計的イメージから「帳尻」の言葉を選べたのが嬉しいです。

第53話『選択の放棄』
情報公開と自己選択をテーマとした号でしたが、珍しく「直球勝負」で内容
通りに自己選択のデメリットを打ち出してみた、異常に分かり易すぎることが
異色なタイトルとなっています。

第62話『情熱の用途』
小泉八雲の釈然としない話と、ある高齢の社長の焦燥を対比した話で、どの
ようなタイトルにすべきかかなり悩みました。「情熱」とその類義語、「用途」
とその類義語を各種組み合わせた末の決断です。

第67話『擒縛の形』
組織に人を縛り、拘束するイメージをうまく表現するために、漢和辞典の例
語の中から選んだのが、「擒縛」です。この言葉のニュアンスの広がりが気に入
っています。

増刊第1号『信念の着脱』
記念すべき連載第1号で、初めての長い文章は比較的簡単にできたものの、
文章のどこに的を絞ってタイトルを決めるべきか随分考えました。信念があっ
たりなかったりの遷移をデジタルなものとして表現するために、「着脱」に決
めました。

以上、現時点での私のお気に入りのタイトルベスト10でした。一応、体現止
めはルールとしてはいますが、それ以外は何でもありのタイトルであるが故に、
読者の方の読後の理解を助けるような、そして含蓄あるものとしたいと思って
おります。

以上の号は、弊社のホームページでも本文を読めるように致します。お読み
になっていない号で、ご関心を引くものがございましたら、是非、ご一読下さ
い。
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5 特別原稿『存在の必然』

「石川亜里です」。漢字にするとこんな感じだろうかと想像しながら、また呟
く。昨年のニューヨークのテロ以来、空港の手荷物検査が厳しくなり、搭乗券
のチェックも手間をかけるようになった。手荷物検査のゲートに人が列を成し
ている。その先頭に係員がいて、機械的に「搭乗券を拝見しまぁす」と搭乗券
をもぎ取る。「お名前の確認をしてまぁす。フルネームをお願いしまぁす」と、
顔も見ずに、搭乗者との距離感もないようなバカでかい脳天気な声で言う。列
には数人が続いている。その手続を知らぬテロリストが仮にいても、先頭から
のバカ声を聞けば、その場ですぐにチケットにある偽名を暗記するだろう。

毎週、東京と札幌を往復している私は、週に二回、この意味の無い検査に付き
合わされて来た。私に名前を言わせておいて、満足に照合もしていないような
ので、数ヶ月前から偽名を答えることにしている。「イチカワマサト」に似た
名前、「イシカワアサト」を普通の会話の時ぐらいの声で係員の目を見つめて
告げているが、呼びとめられたことも、取り押さえられたことも一度としてな
い。50音表で段が同じ音との入替から、さらに一歩進んでみようかと考えたく
なる。

軍需産業に大きく金をつぎ込めないためか、それとも天性の「新らし物好き」
なのか、日本人は技術をどんどん生活に組み込みたがる。開業して数十年を経
た世界各都市の地下鉄駅を比べてみると良い。つり銭にも細かく対応できる自
動券売機に自動精算機。エスカレーターにエレベーター。さらには、車椅子搬
送リフトに動く歩道。最近ではタッチ式の改札まで登場した。これほどの新技
術が、まるで実験の如く投入されている多数の駅のある国を私は他に知らない。

先日友人の車に乗ると、今となっては珍しい「喋る車」であった。若い女性の
声で、「ドアがしまっていません」だの、「シートベルトをお締め下さい」等と
話しかけてくる車である。他にも、話しかけてくるカーナビを「なび代さん」
と呼ぶ家族の話を最近もマンガで見た。

バブル期は「喋る機械」がもっと多かった。大手町のあるビルで、入り口のド
アに話しかけられて驚いたことがある。あまりによく磨かれたガラスに突進す
る人が多いのか、ドア自身が、「ドアがあります。お気をつけ下さい」と存在
を主張する。電話会社に勤めている頃、ある家を訪問したら、自動音声の売込
の電話に、留守番電話が対応していた。電話機同士が人語でコミュニケーショ
ンを模索する不気味な光景である。

北海道では、喋るストーブもあった。灯油が切れかけると、ウグイス嬢のよう
な声で、「灯油が足りません。給油してください」とねだる。このストーブを
持っていた私の知人は、子供が5歳になるまで、ストーブの中に「おねえさん」
が隠れて仕事をしていると信じ込ませて、「熱かろうと何だろうとオトナにな
ると一生懸命働かなきゃならないんだよ」との教育ツールとしていた。『人間
椅子』ならぬ、『人間ストーブ』と言う小説がかけそうだ。

昨年、米国にいる留学時代のホストファミリーを訪ねた。卒業してからもう10
年も付き合いは続き、英語で「スード・ファミリー(疑似家族)」と名乗って
いる。奥さんが助産婦なので、妻がそこで出産した。人工知能などのコンピュ
ータサイエンスの博士であるご主人から私はひまに任せて、人工知能の話を聞
いた。

彼は、「アリスボット」なるホームページを紹介してくれた。そこでは、アリ
スと名づけられた人工知能が24時間対話に応じてくれる。そのホームページに
アクセスし、アリスの顔の下の欄に挨拶を打ちこむと、彼女が返事を表示する。
さらに何事かを打ちこむと、アリスがそれに応じる。何のことはない人工知能
とのチャットである。100や200ぐらいの表情のパターンも入れておき、画面上
の表情も豊かに反応すれば、単なるシュミレーションゲームのキャラクターを
超えて、一応、臨機応変な反応ができる人工知能となるだろう。マニュアルに
ある決まりきった話しかしない店員の多い業種・業態などではかなり近い未来
に検討されるオプションではないかと思う。

昔住んでいた街に、「自動販売機コーナー」なるかなり広いスペースが酒屋の
隣に設けられていた。20台近い各種の自動販売機が古びた車庫を改造したスペ
ースに所狭しと並び、夜も煌煌と輝いている。その筋向いには、コンビニがあ
り、深夜になるとルクス単位で競い合う状態だった。セルフの観点から捉えて
電話帳並の粗い分類で行くと、この二店が対応しているニーズはほぼ同じであ
ろう。両店を行き来している若者もいる。その使い分けは一体何であるのか、
今思い起こすと興味が湧く。面と向かってその差別化が互いに機能するからに
は、別の業態と捉えるべきである。最寄駅直ぐの1000円の理髪店とそこから徒
歩5分の3500円の理髪店が互いに存続できるような、外国人にはなかなか理解
してもらえない理由のようなものだろうか。

人でなければならない理由。パーミッションマーケティングなるものが本当な
ら、お客を説得することの必然性は薄れる。臨機応変な対応も今時の多品種少
量生産体制を生き抜いた機械なら何とかなりそうである。顧客の人間の顔色を
読み取ることさえ、ウソ発見機の発達どころか、サボテンに電極を刺してその
感情を読めると言うのだから、別に機械でも問題ないであろう。偽名の石川亜
里を見破ることも機械のほうが数段上だろう。

ある自動車メーカーでは本当に二足歩行するロボットがコマーシャルのキャラ
クターになっている。プロモーションビデオの中では、宇多田ヒカル自身が、
チビのロボットの愛人ロボットになっているようだ。介護ロボットの開発も目
覚しい。ロボットの入手しやすさ、コスト、メンテナンス体制がどんどん手頃
になって行く。それがある段階まで進む時、企業にとって経営にとって、機械
と人は同等・並列の選択肢になることだろう。混沌としたニーズに対応する微
妙に異なる別の業態オペレーションとして、人と機械は比較検討される立場に
なるだろう。

人手を減らすための機械化ではなく、最初から機械と人とを使い分ける設計。
正社員採用の際の、「そんなことをあなたにやってもらう気はありませんよ。
そんなことなら、ウチではパートさんやバイトの子達がやってるから」などと
言う台詞は、「あなたは人なんだから、機械と違うことしてくれなきゃ」と言
う台詞になる。その時、中途半端に機械のような人は、中途半端に人間のよう
な機械に、職を空け渡して行くことになるだろう。そんなプロセスを経て、人
として働くことの意義が見直されて、研ぎ澄まされて行く。

そこでは、パートだのアルバイトだの派遣だのの区別も、日本人だの外国人だ
のの区別も、機械と人との違いの前にそう重要なことではなくなるだろう。ま
ずは人にしかできない仕事ができること。それが究極まで追求される未来の到
来に、まだちょっと時間がかかるなら、年金が危ぶまれて尚、長生きも悪くな
いと飛行機に乗りこみながら毎週考えている。
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6 あとがき

みなさまお疲れ様でした。プリントアウトしてお読み頂けましたでしょうか。
別に嫌がらせでもなんでもなく、特別原稿と言う形で、型破りの号を年に一度
の「お祭り号」として、いつもの記念号より多少固めの内容でお届けしました。
如何でしたでしょうか。

目標の100話まで、あと少々になりました。その後をどうするかを考えてお
ります。「コラムタイトルも新たに別の形で書き始めるか」などと考えてもお
りましたが、色々と頂くお仕事を見つめなおす上で、話のネタは尽きずに見つ
かります。そこで、やはり慣れ親しんだ現状のスタイルで発行し続けることと
致しました。月1回の発行などにペースダウンして、末永く良質の文章の提供
に取り組んでみたいと思っております。また、その時が近くなりましたら、読
者のみなさまに報告申し上げます。よろしくお付き合いください。
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発行:
「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)

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