263 解せない記号

=================================
経営コラム SOLID AS FAITH 第263号
=================================
新年明けましておめでとうございます。
 
 今年、当コラムは10月末日に12周年を迎えます。長きにわたってのご愛読、
心より御礼申し上げます。今後とも末永くご愛読を賜れますようお願い申し上
げます。

 新年第一号として第263話をお届けします。今回は、『解せない記号』と題
して、記号論の基礎を使って、消費が振るわない理由を模索してみました。な
るほどと首肯して戴けるところがあれば光栄です。本文に対するご意見・ご感
想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業
日!!
=================================
その263:解せない記号

 売れないことの謎解きをする必要が余程世の中には溢れているらしく、ビジ
ネス書売場に行くと、けばけばしい色のカバーで扇情的なタイトルの書籍が平
積みで並んでいる。お客様が買いたくなるスイッチを押すのも、費用をほとん
どかけない販促を行なうのも、お客がつい口コミをしてしまうようにするのも、
受取手にDMを読み込ませてしまうのも、もったいぶった著作者の言説を書籍
の最後から捲っていくと、結局ほぼ同じと分かる。共感できたり、印象に残っ
たりする物語を商品やサービスに付加すること。この結論を手にした書籍で見
つけ出しては肩を落とし続けている。
 
 記号消費と言う考え方を初めて知ったのは、二十年以上前に当時読み耽って
いた講談社現代新書の『消費の記号論』を読んだ時。当時の私には非常に難解
なボードリヤールの『消費社会の神話と構造』を買って繰り返し読んで、後に
卒論のネタにまでした。商品やサービスを単なる有用性としてではなく、「記
号」として認識理解すること。商品の販促方法に留まらず、社会全般の解釈論
にまで広がる理論に、当時電話工事屋だった私は興奮した。
 
 売上低下の理由を個数減ではなく、価格の低下に求めると、大抵グローバル
化らしきことを口にする人々に遭遇する。国内の消費者が海外で生産された低
廉な商品を購入するので不況になるという。雇用機会が海外に流出すれば、国
内での賃金の支払が抑制されて、被雇用者でもあり消費者でもある人々の購買
力が下がるのだと説明されている。
 
『下流志向』を読むと、そのように定義される若者が世の中に増えているとい
う。あまりの衝撃の内容に、クライアント企業の幹部に話すと、皆が購入に走
り、「思い当ることばかり」と頷いている。「下流志向」の人々には、自分が
理解できないことや自分が知らないことをなかったことにできる能力があると
いう。彼らから見た世界には、彼らが分からないことが全く存在しない。彼ら
は全能で新しい発見は一切発生しない。学ぶ喜びもなければ、何かの道に励む
こともない。商品やサービスを記号化するための、感動の物語も、知的興味湧
き出す薀蓄も、優れたUSPも、彼らの目には紙のシミか柄ぐらいにしか見え
ず、彼らの耳には商店街のBGMほどの音にも聞こえないのではないか。

 商品やサービスの自分にとっての付加価値を理解するには、自分が直面する
リスクや不都合をそれなりの精度で把握している必要がある。商品やサービス
の購入体験を口コミするには、それなりに親密な相手がそれなりの数存在して、
それなりの言語能力で体験を描写しなくてはならない。

 価値有るものを、その価値を理解できない者に提供することを、中国語では
「牛に琴を弾く」と言うと、日本語に堪能な中国人に教えて貰ったことがある。
日本の至る所で、医療サービスや不動産、ワインや電気製品などを中国人が買
い漁っているとのニュースを見聞きするたびに、琴の調べに心動く者でい続け
たいものと思う。
=================================
☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
=================================
【MSIグループからのPR】

今更ながら…
全盛期は一体いつかと言うぐらいに、知名度が低くなったQC活動
小集団活動とも言われる、少人数の社員の手による現場改善の方法論。

QCストーリーやら、QCの七つ道具(+新七つ道具)、
現場改善や課題解決のテクニックとして、
社員が知っておくべき内容が満載です。

製造業は勿論のこと、
倉庫や事務所、経理から営業。
様々な業種で、場所・部門を問わず、色々な課題に応用できます。

特に注目は…
サービス店舗におけるバックヤード作業の時間短縮です。
人件費を上げず、メンバー数を増やさず、総接客時間を増やすには、
バックヤード作業の総時間を削減する以外に方法がありません。
製造業で醸成された作業効率化のテクニックの数々は、
まさに打って付けです。

年末年始の家にいて、約三時間を費やして作成した
弊社サイトの新ページでも、
サービス店舗の業務改善手法として活用されています。
「サービス店舗でのストア・コンセプト構築とホスピタリティ向上事例」
http://www.msi-group.org/MSI-ServiceStoreConcept-Case.htm

課題の分析には特性要因図の原理を用い、
作業の全体計画には簡易版のアローダイヤグラムを用い、
データ集計にはエクセルのピボットテーブルをフル活用するような
社員の手による現場改善は、組織内に風土として残ります。

教科書通りのQC活動ではなく、現場や参加者に合わせて、
QC活動のエッセンスを取り入れる勉強会の実現が、
御好評いただいています。

ご関心を賜れましたら、メールにてお気軽にご一報下さい。
bizcom@msi-group.org

=================================
発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
 発行しています。
 (http://www.mag2.com/ ) 
毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け12年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
★全バックナンバーはまぐまぐのサイトで掲示されております。
 http://archive.mag2.com/0000019921/index.html
★弊社代表のコラムが色々満載。
 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
 http://tales.msi-group.org/?cat=2
★講読の登録・解除はこちらのURLでお願いします。
 http://www.msi-group.org/SAF-index.html
=================================
※ ご注意!!
 サーバのエラーなどで読者登録が解除されてしまった方がいらっしゃる様子
です。当メルマガは毎月10日・25日に休まず発行しております。届かない場合
には、上述の弊社ブログにて発行状況をご確認の上、再び上述の弊社サイト専
用ページにて再登録をして下さい。
=================================
次号予告:
 第264話 『放置される黒箱』 (1月25日発行) 
 或るパチンコ店オーナーの店舗経営に関する考え方を聞いて考えたことをま
とめてみました。以前書きまとめた第149話『家電的経営』にも通じる内容で
す。経営者の仕事とは何であるのかを新年第二号で考えてみたいと思います。

(完)