422 残された仕事

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経営コラム SOLID AS FAITH 第422号
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 ご愛読ありがとうございます。第422話をお届けします。

 ジワジワとしかし確実に零細企業の経営環境にも地殻変動並みの変化が起き
つつあるように感じます。2045年ごろに訪れると言うシンギュラリティもこの
ような社会変化の増速が或る所まで到達した状態だと聞きます。

 これからの社会の変化のスピードが過去の2倍になるのなら、これから20年
間の変化は、過去40年間分の変化の度合いと言うことになります。40年前、
世の中にはスマホはおろか、携帯電話もカード式公衆電話もありませんでした。
勿論、SNSもインターネットも影も形もなく、PCでさえ存在していません。カ
ラーテレビも漸く普及しかけ、自家用車だって欲しくてもなかなか買えないも
のでした。DVDどころかビデオ録画も存在せず、映画は映画館かテレビの映画
番組で見るしかありませんでした。

 これだけの変化がこれから20年間にどっと押し寄せるなら、その約1000分
の1の時間である1週間の時間間隔の中でさえ変化の胎動や萌芽が感じられて
も不思議ではありません。1%である2ヵ月半なら尚更です。油断ならない世の
中になったと思います。弊社代表の市川は、クライアントさんから寄せられた
経営課題についての相談が、独立当初の約20年前にも存在し得たものである場
合には、その構造を根本から検証しなおすことにしています。

 そんな日常の中で考えたことの一つを文章に仕上げたのが今回の第422話
『残された仕事』です。今からもう少々だけ時が進んだ時代。人間に残る仕事
の一つについて考えてみました。お楽しみ戴けたら幸いです。本文に対するご
意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納
期は5営業日!!

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その422:残された仕事

 阪神大震災や東日本大震災、そして、熊本地震と大災害が続き、破壊された
道路や橋や建物の復旧以上にPTSD対策が叫ばれ、「ただ寄り添うことが大事」
などとよく耳にするようになってきた。PTSDへ対応するなら、何らかのカウ
ンセリングをしたら良いようにも思えるが、膨大な対象者の数にその道のプロ
の数が間に合わず、動員されたボランティアのレベルでは「ただ寄り添うこと」
が限界なのかもしれない。それ以上に、打ちひしがれた人々の絶望は深く、プ
ロでも掛ける言葉を見出さないが故の「ただ寄り添うこと」であるのなら、事
態は深刻だと思う。

「ただ寄り添うこと」や「ただ手を離さないでいること」は、SNSでやたらに
よく見かける。その場面ごとに掛ける言葉が見つからない語彙力の人が増えた
のか、具体的・物理的な課題解決から衆人の目を逸らし、定量的な改善効果が
表現しにくい被害者の心の在りように関心を向けさせておく方が、色々と都合
が良い人が多いのか、私にはその理由があまり分からない。

 時代を席巻する人工知能の書籍を幾つか読んでいたら、今現在人間がやって
いる仕事の多くが人工知能に取って代わられる時はそう遠くないと書かれてい
る。過去の類似判例や類似症例の検索能力は人工知能のお家芸なので、司法判
断も疾病診断も弁護士や医師の手から離れていくと言う。自動運転が普及すれ
ば、タクシーも路線トラックも路線バスも人間は要らない。自動音声応答が普
及すれば、多くのコールセンターのスタッフは不要になる。コミュ障が入り気
味の若者に大人気の倉庫内ピッキング作業も深夜のビル定期清掃も、専用の自
動機械がどんどん開発されている。
 
 そんな中、人間に残された人間らしい仕事は、「人間にただ寄り添い、心を
分かち合うこと」だと言う言説を、またぞろ耳にすることがある。確かに、今
でも持ち主の心の支えにさえなっている『ラブプラス』やプリモプエルが高度
化したら、TPOを意識した高度な対応をしそうなので、「ただ寄り添うこと」
など人間ぐらいしかしなくなるのかもしれない。

 政界や実業界に師事する人が数多見つかる思想家にして日本最初のヨギであ
る中村天風は、人間のあるべき心持として「三忽」を説いている。「怒(いか)
らず・恐れず・悲しまず」の三つの戒め。「悲しまず」は、自分が悲しい気持
ちを発生させることは元より、他人の悲しみに心を痛めることも戒めている。
「ただ寄り添うこと」が人間の主たる仕事になる未来を見たら、賢人中村天風
は何と説くのだろう。今流行りの感情労働の問題そのままに、「心を分かち合
うことなく、ただ寄り添うこと」を奨励するのかもしれない。
 
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

採用に困っている中小零細企業組織からの
ご相談やお引き合いが非常に増えています。

確かに地方都市などでは人口減は誰の目にも明らかで、
採用を考えること自体が無理筋に思えることもあります。
ただ、都市部の多くの中小零細企業群に人が集まらず、
一旦集まってもすぐ去っていくのは、
人口減と別の要因を想定すべきです。

新卒採用にしても、アルバイト・スタッフの募集にしても、
既存の接触先は、定型化した採用活動の代行屋さんであったり、
採用関係の媒体屋さんであったりなどして、
必ずしも自社の適切な解を示唆してくれる訳ではありません。
彼らが既に持つ固定的なソリューションが薦められるだけです。

頼む側の方の心理も、結構不思議です。

今までの方法で上手く行かないことが明白になっているのに、
なぜか、発想の転換を図ろうとはしません。
さらに、営業方針では、
「他社と同じではダメだ。自社の強みで差別化だ」などと叫んでいるのに、
採用に関しては、まるまる他社のやり方をコピーしようとしたりします。

弊社にご相談いただいても、
いきなりその企業の最適解が見つかる訳ではありません。

しかし、その企業組織の強みを見極め、
その企業組織の採用活動上の制約を見極め、
そして、雇うべき人間像を見極めるところから話を始めるので、
少なくとも、何らの結果にも結びつかないと言うことはありません。
そして、着手した活動の延長線上に
少なくとも、現状よりは良い結果が待っています。

根本から見直す採用活動。
ご関心を賜れましたら、メールにてご一報ください。
 bizcom@msi-group.org

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『5分で惹きつけるコミュニケーション』 沖田一希 著
■『資本主義はなぜ自壊したのか』 中谷巌 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
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次号予告:
 第423話 『新鮮な内容』 (9月10日発行) 
 第三者のビジネスをプロデュースするのが仕事と言う人物に会ったことがあ
ります。何をどうすることがプロデュースすることなのか明確にならないうち
に、音信が途絶えてしまいました。ビジネスのプロデュースについて自分なり
に考えてみました。

(完)