612 ギャル界隈の資格

===================================
経営コラム SOLID AS FAITH 第612号
===================================

 ご愛読ありがとうございます。第612話をお届けします。

 過去類例がないほどに盛り上がった参議院選挙が終わり政局は混乱を極めつ
つも次の衆院選に向かって動き始めたのだと報道されています。組織票が大分
アテにならなくなって、YouTubeなどで発信した情報を個人が受けとめ共振し
た結果のような投票行動が選挙結果を大きく左右する状況になりました。これ
からも従来の街宣の形に加えてこうした傾向は強まる一方であろうと思われま
す。

 議席を大幅に増やした野党の主張が「排外的だ」とネットで問題にされてい
ました。「都民ファースト」という地域政党が2016年に立ちあがった際に、
「東京には千葉・神奈川・埼玉の人なども毎日仕事で訪れ、地方から単身赴任
している人も山ほどいる。都民ファーストは差別だ」と騒ぐ声を聴いた記憶は
ありません。また、都内にいる非都民から「都民が優遇されて私たちは不当に
差別されている」などと聞いたことも全くありません。今回の「排外的だ」と
の非難者の人々はどこでこうしたダブル・スタンダードの考えの着想を得るの
か訝しく思えます。
 
 公的なことではないので問題の構造はやや異なりますが、この「排外的だ」
の考え方はマーケティングの王道STPを説明した際の零細企業経営者の頓珍漢
な反応を彷彿とさせます。「マーケティングの基本はお客様を絞り込むことで
す。自社が働きかけるお客様のニーズを絞り込み、その方々に価値を提供する
ことをミッションとして定義しましょう」と説明すると、「ウチは誰にでも喜
んでもらえるような店を目指すので、そうした差別的な考え方は相容れないし、
やってはいけないことだと思う。」と反応する零細企業経営者がたくさん存在
するのです。

 そういう時は「では、この街に周辺エリアも含めて、品揃えもよく、店員の
知識や対応も優れていると評判のフィギュア・ショップがあって、全くそう
いった趣味のない社長がそこを訪れたとします。そこの店員は『あなたはター
ゲットではないので帰ってください』と言うと思いますか」と尋ね返して、初
めてターゲティングの考え方が辛うじて通じます。こうした世の中の奇異な主
張がかなりあからさまになるという点で全国区の選挙は非常に興味深いものと
思えてなりません。

 今回は業務に関わる資格の効能について少々考えてみました。「足の裏の飯
粒」という言葉もありますが、上述のようなターゲットへの働きかけの一環と
して、それらの資格がどのような価値を有するのか検証してみることは、事業
運営上、それなりに大きな意義を持つ場合があります。ご意見・ご感想をお待
ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

===================================

その612:ギャル界隈の資格

 シンクタンクのような組織の会員企業経営者向けにセミナーをやることにな
って、プロフィールを求められた。数日後、当日資料のプロフィール枠の文字
量が決まっていず、私が渡した長めのプロフィール原稿を適宜圧縮して使って
よいかと尋ねられた。

 こちらが遥か以前セミナー企画主催者だった際、登壇するコンサルタントと
称する人々は自分のプロフィールの文章に過剰なほどに神経質で、所謂黒歴史
を隠したりするのに余念がなく、一言一句指示通りにしなくてはならない。ブ
ランド商売は大変だ。行き当たりばったりにその場で妥当な方策を考える企画
屋の私は、プロフィール文章に拘りがない。

 件のシンクタンクから「念のため見てください」と送られてきた文章を見て
微妙な違和感が湧いた。こうした場合の定番の「中小企業診断士」に言及がな
い一方、一般に「外資系コンサルティング会社」などと暈される職歴がズバリ
社名で書いてある。「別に不満ではないのですが…」とメールで返信すると、
「ウチの業界の社長さん達は、中小企業診断士をオカミの回し者のように思っ
ていることが多くて…」とわざわざ電話で説明された。

 或る夏の暑い日、最寄駅から15分登り坂を超えて、住宅街の中にある大学を
訪れた。新卒採用をしているクライアント企業の社長と、求人票を提出ついで
に学生の就活状況を尋ねることが目的。初めてのその大学の校門付近から既に
女子学生が屯している。午後には授業がないのか、ダラダラとこのあとの予定
について話している。全員茶髪。服装は韓流アイドルのプライベートのようだ。
話す言葉も何かミチャミチャと響き、彼らなりの短縮言葉が鏤められている。
なぜか校門から校舎までの間も同様の女子ばかり擦違う。

 就職課に行くと、50代半ば過ぎの男性が対応してくれた。「学生達は幼くて、
就活をするよう指導してもピンと来ていない」、「何を考えているのか分から
ない」などと述べる。とても本人が言うような毎日数人と面談を重ねている様
子に思えない。小規模なこの大学で毎日数人ずつ面談すれば、早晩1サイクル
終わって、個々の学生と何度も面談することになるだろう。ミチャミチャ話す
学生達が意義の薄い面談に現れる動機は何なのだろう。

 収穫の少ない会話を終えて就職課の外に出ると、面談待ちらしい派手な服装
の女子学生二人がダリの時計の絵のようにぐにゃりとテーブルに凭れてスマホ
をぼんやり見つめていた。立ち止まって時計女子達を眺め、私は手にしていた
彼の名刺をふと見てみた。「キャリアコンサルタント(国家資格)」、「日本
キャリア開発協会認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)」
などズラリと肩書が並ぶ。これらの資格の習得内容には、時計女子達との付き
合い方は含まれていなかったのだろう。他の専用資格が必要そうだ。

===================================
☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
===================================

【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『その英語、正しいのはどっち!?』 デイビッド・セイン 著
 https://amzn.to/4kOuktK
■『心と現実…』 川合伸幸・鈴木宏昭 共著
 https://amzn.to/3IFxSRR
■『3年後に世界が中国を破滅させる…』 島田洋一 著
 https://amzn.to/4f1dZAS

===================================
発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 MSIグループ 市川正人
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ ) 

毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け26年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
★弊社代表のコラムが色々満載。
 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
 http://tales.msi-group.org/?cat=2
★講読の登録・解除はこちらのURLでお願いします。
 http://msi-group.org/msi-profile/saf-index/
===================================
※ ご注意!!
 当メルマガは毎月10日・25日に休まず発行しておりますが、当コラムが届
かないというご連絡をいただくことがあります。
 まぐまぐでは長期に亘る無料メルマガ読者に講読意思の確認を行なってお
り、その確認を終えるまで配信が停止されることがあるようです。また、サ
ーバなどの不具合でメルマガが不達になると、そのまま読者登録が無効化さ
れることもあるようです。
(さらに、不達にはなりませんが、Gmailの翻訳機能により、メルマガの内
容が改変されて表示されるケースもあるようです。その場合は、メール本文
上部に表示される「原文を表示」をクリックすると回復するようです。)
 このように各種の不達理由が考えられます。不達の場合は、まず当コラム
の発行状況を上述の弊社ブログ『MSI-TALES』にてご確認ください。発行状
況を確認の上、不達の解消には、まぐまぐ(「magpost@mag2.com」)に、メ
ルマガID(#0000019921)、タイトル(『経営コラム SOLID AS FAITH』)、
購読アドレス、再送希望の旨を記載の上、メールにてご連絡下さい。
===================================
次号予告:
 第613話 『続・兵の夢』 (8月10日発行)
 大きなリスクをとりに行けば、大きなリターンが得られることもありますが、
大失敗の可能性も生まれます。可もなく不可もない経営のありかたを第335話
『兵の夢』に続き再考してみます。

(完)