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経営コラム SOLID AS FAITH 第613号
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ご愛読ありがとうございます。第613話をお届けします。
既に今年も半分以上が終わりましたが、前年末から年度替わりぐらいまで
に増加する倒産や廃業が、今に至って収束する気配もなく、どんどん事業者
が消えて行きます。B2Cの商売は消費者に選択肢がやたらに増えたり、地域
的な人口減少で急激に市場が縮小したりで、淘汰の波が押し寄せることが多
いようです。そこにさらに物価の高騰と人手不足が追い打ちをかけることも
あるでしょう。
B2Bでは円安で原材料が高騰したり、米国が急速に進めるブロック経済化
の余波で思うような海外調達ができなくなったり、その結果、部品も通常製
品も品薄になったりなどなど、いろいろな要因があると思われますが、ここ
でもまた人手不足が事業の弱体化を招くことが多いようです。
倒産だの廃業だのは、特定の環境的要因によって発生するものではないと
よく言われます。円安とか影響の大きな法改正など、企業が消える引き金は
間違いなくありますが、消える会社の経営にはまるで重い持病のような問題
がそれ以前から存在し、課題解消に迅速に対応して来なかったが故の淘汰と
いう見方です。
急激な淘汰の波が押し寄せた時の逃げ足の速さに例えても良いかもしれま
せん。何かの経営課題が重くのしかかっている中小零細企業は、モタモタし
ているうちに波に飲まれ消えて行きます。VUCAの時代と言われますが、以前
にもまして淘汰の波が押し寄せる速度も頻度も高くなっているのは間違いな
いでしょう。まだ御社に余裕があるのなら、経営の強靭化は今すぐ手を着け
るべき焦眉の課題だと思われます。
今回は第335話の『兵の夢』の続編です。(「兵」は「つわもの」と読み
ます。)第335話は、大成功する企業と大失敗する企業はその組織体質や経
営方針が酷似しているという議論から始まります。大きなリスクをとりに行
けば、大きなリターンが得られることもありますが、大失敗の可能性も生ま
れるという、当たり前と言えば当り前の理屈です。大成功している企業の戦
略や戦術を猿真似していると、稀な成功への細道を踏み外し深く滑落してし
まいかねません。可もなく不可もない凡庸な経営姿勢が、実は、今でいう
「持続可能性」の軸で評価すると、最良であることになります。
今回の続編ではその凡庸な経営の中のブレず譲らぬ鉄則について考えてみ
ました。冒頭で述べたように、生き残り、勝ち残る中小零細企業の経営のあ
りかたを、第335話と併せてお読みいただき、お考えいただければと思いま
す。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事
の目標納期は5営業日!!
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その613:続・兵の夢
「レイナーによれば、成功する企業の反対概念は、失敗するあるいは破綻す
る企業ではない。成功する企業の反対概念は、可もなく不可もなく生き延び
つづける企業だ。成功する企業というのは、この可もなく不可もなく生き延
びつづける「その他大勢」の企業よりも、失敗する企業と共通点が多いとい
う。つまり、どちらも果敢な戦略を打ち出し、その戦略が環境の良い時には
成功するし、悪ければ失敗するというわけだ。
最も成功している企業は、辛うじて生き残った企業よりも屈辱的な倒産企
業との方が共通点が多い。それどころか、好業績の決定要因として認識され
ている企業特性そのものが、全面的な失敗をもたらす要因でもあるのだ。そ
のため、少なくとも企業のふるまいという点から言えば、成功の反対は失敗
ではなく、凡庸ということになる」。
大きなリスクをとりに行けば、大きなリターンが得られることもあるが、
失敗も大きくなる。空前の好業績と倒産寸前の失策の波が激しい方が、株を
銘柄としてしか見ない投資家からは歓迎される経営なのだと増田悦佐氏は
『格差社会論はウソである』でレイナーの『戦略のパラドクス』を引きなが
ら説明する。
2014年の第335話『兵の夢』に書いた文章。この話は「状況は可もなく不
可もなくと社長は言った。(中略)新たなことに取り組む余裕もなく、次々
と社の内外で起こることに善後策を打ち続けて、また一期が過ぎたのだと言
う。」という文章から始まる。平和だ。
F/L比が70%をどうしても切れないという蕎麦屋の主人は、資金がショート
しつつあると深刻な顔をして言う。この界隈では数年前まで6軒もあった蕎
麦屋がここ1軒になった。創業から暖簾を譲り続けて5代目。歴史ある店は今
風前の灯火になっているという。
米国の主張では中国から押し寄せたらしい殺人ウイルスが広まって客が来
なくなった。近隣の大型施設がこちらの与り知らぬ理由で移転して消えた。
急落した客足。着実に売上を確保しようと、今時当り前のMEOも徹底し、メ
ニューも見直した。接客に力を入れ、ジワリと客足が戻る兆しが見えた所で、
米が値上がりし、人件費も値上がりした。VUCAの時代。先が読めない経営環
境は別に今に始まったことではない。遥か以前、大学で経営を習った頃、当
時の最新鋭のシステムはDSS(Decision Support System)。経営者がシステ
ムで情報分析せねば意思決定ができない難しい時代が到来したのだと言って
いた。
嘗て凡庸で横這いにできた時代があった。今、ケとハレのバランスは崩れ、
ハレばかりどこにでも見つかる。お客を動かす「良い驚き」は凡庸の真只中
からは生まれない。淀み流れる社会の中で自分の客を見失わない力が、凡庸
に添えられるべきかもしれない。
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■第335話『兵の夢』 http://tales.msi-group.org/?p=645
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次号予告:
第614話 『前意識の箪笥』 (8月25日発行)
世の中にありとあらゆるコンテンツが溢れ返り、早送りで観ても間に合わ
ないほどになっています。そのコンテンツの企図や訴求する内容などは時代
を映す鏡であることが多く、それを仕事にも利活用できる余地があると思わ
れます。そんなことを考えてみました。
(完)