4月12日の公開から1週間余り。小雨が続く日曜日の午後7時5分からの回を観てきました。
東京ではたった1館。全国でも札幌で1館と名古屋で1館の合計3館でしか上映していない映画です。さらに付け加えると、上映回数も極端に少なく、東京のたった1ヶ所の上映館武蔵野館では1日に2回ですが、その他の2ヶ所では各1日1回の状況になっています。封切後1週間ほどで全国で1日に3回しか上映されていない状態の作品ですが、封切時にはもっと多かったのかと考えるには少々無理がありそうに感じられます。
この作品をネット上の映画サイトで見るべき作品群の洗い出しをしていた際に知りました。チラシがある訳でもなく、トレーラーを観た訳でもなく、プロモーションを全く見聞きしない中で鑑賞の優先順位を高くして鑑賞作品リストに加えました。理由は偏に山崎真実です。
私は山崎真実が(少なくとも外見上)かなり好きです。私が劇場で観た映画作品の中で彼女の大活躍作品である『電人ザボーガー』の感想では以下のように書いています。
「この映画を見に行くことにした最大の動機は、タヌキ顔の山崎真実です。どうも、映画の出演作が少なく、出ても、あまり良い役が見当たりません。(好きなタヌキ顔系でアイドル系女優(?)では、他にサトエリや三津谷葉子、川村ゆきえなどがいますが、ほぼ同評価です。)『ペルソナ』、『非女子図鑑』と見て、食傷気味です。私の知る限り、テレビシリーズ『ボウケンジャー』の「風のシズカ」役が最高です。通常、戦隊モノには女性隊員の七変化風の展開が見られるエピソードが入っているものですが、山崎真実は悪役幹部であるにもかかわらず、そのようなエピソードがあり、チャイナドレスやらセーラー服、看護師服までころころ衣装を替えます。その次と考えても、OVの『超忍者隊イナズマ!! SPARK』などで、やはり特撮モノが似合います。カルト的人気があると聞く『参議院議員候補マミ』を見てみるべきか検討中ではあります。」
その後、これまた山崎真実を観たくて『西成ゴローの四億円』シリーズ2作をDVDで観ました。このシリーズで彼女は、主人公西成ゴローの元妻の役で、西成ゴローが殺人罪に問われたために大学の教職を捨てざるを得なくなり、娘の重病の治療費のためにSM系風俗嬢になっているという役です。相応に役者然としていて、物語の中でもそれなりにカギとなっている配役で、山崎真実一点に関して言えば見る価値がある2作品でした。
ウィキに拠ると「2024年4月15日発売予定のラスト写真集『カメリア』を以って、20年にわたるグラビアアイドルとしての活動に終止符を打つ予定」とのことで、既に発売されているはずですので、これもゲットしなくてはなりません。
そういったことから山崎真実観たさにこの作品を逃すことなく観に行こうと決めましたが、全く中身が分からないのでは話にならないだろうと、ネット上の映画紹介を取り敢えず読んでみて、この作品は要人警護専門の警備会社の社員たちの物語で『第二警備隊』という作品の続編であることを知りました。この作品が封切になる遥か以前、この作品を鑑賞リストに加えた段階でこの事実に基づき、早速『第二警備隊』のDVDをレンタルして観てみました。
現実の警備会社での案件を基にしたストーリーで『第二警備隊』は、都内のある寺院に対するヤクザ系団体の嫌がらせから警備をするという内容でした。警備員は警棒が基本装備と言う状況で、さらに専守防衛そのもので、向こうが暴力を振るって来ても、多くの状況においては甘んじて受けるだけということが続きます。それでも命のやり取りは発生しないだろうと思っていたら、エスカレートする嫌がらせはとうとう銃所持のヤカラの侵入という事態にまで発展し、第二警備隊と名づけられた警備会社のチームの中から死者が出てしまいます。この物語の設定では地元警察が非常に非協力的で、あからさまな違法行為を警備会社が通報しても取り合わないと言った状況が延々と続く中で、警備会社が打つ手を失っていき、警備活動そのものが行き詰まりを見せるのでした。
死者は出るものの、それは偏に警察の非協力的態度(それも典型的な官僚主義の為せる業としてDVDの劇中では描かれています。)の結果の困難な物語であって、多くの案件の難易度はこれほどではないと言った印象がDVDを観て残りました。しかし、続編とされるこの映画の物語はテロからの要人警護ということになっていて、さらに難易度、すなわち危険性が上がり、現実に、劇中で殺害目当てのテロ要員が複数人追い詰めにかかってきます。それに対して(防弾チョッキは着込んでいるものの)警棒一つの丸腰状態のたった4人で相対するのです。
モデルになっている現実の警備会社でも、海外の要人警護まで請け負っている様子なので、珍しいシチュエーションではないのかもしれませんが、『第二警備隊』の物語とはかなり構造が異なる話で、警察側で動く部署の中には公安さえ含まれているようでした。
そのような展開の物語なのに、警備会社の面々は『第二警備隊』から引き続き登場する数名(含む頻繁な回想場面に登場する殉職者)と、その後の入社した比較的不慣れな社員たちといった面々で、登場人物側がアップグレードした感じはありません。敵側の方はかなりアップグレードしているのにも拘らずです。DVDを観てから、第二作の物語のこうした立ち位置が理解されたので、山崎真実目的以外にも僅かな鑑賞動機が生まれました。
シアターに入ると私以外に5人の観客がいました。女性が2名と男性が3名です。女性の方は20代と30代ぐらい。男性の方は全員私と同じか私より上かといった感じの年齢層で、高齢者と括って問題ない感じでした。全員単独客でした。シアター内が暗くなって本編が始まる頃に、20代の男女カップルが仲睦まじくこの映画作品そのものへの期待によるものではないように感じますが、何か嬉しそうな表情で席に着きました。さらに50代前半ぐらいの感じの女性の単独客が1人加わって、観客は私も含めて総勢9名になりました。
たった93分しかない作品です。
映画は山間のキャンプ場に乗用車が到着する所から始まります。映画.comの紹介文にもある通り、「ある日、中国の工作員に追われていると話すひとりの女性が、身辺警護を依頼してくる。高城をはじめとした警護チームは、女性を匿うため人里離れたキャンプ場にやってくるが、すぐに工作員が迫っているとの情報が入ってくる。子連れの家族や仲の良さそうな夫婦、若者グループなど、キャンプを楽しむ人々の中に、すでに工作員が紛れているかもしれず、緊張が途切れない中で1人目の犠牲者が出てしまう。」というまんまの物語がラストの数分間以外は展開します。
物語の途中では、『第二警備隊』で殉職した社員が先輩として今回の主人公にどのようなことを教えたのかがかなりの頻度で振り返られます。ですので、現在の山間のキャンプ場の話は実質まる1日分もないぐらいの物語です。あっという間に夕暮れ時が迫り、第一の被害者が出ます。なぜ山間のキャンプ場に来たかというと、まさにランチェスターの弱者の戦略そのものと言った感じですが、正体不明、人数不明の敵が「殺害」を狙って仕掛けて来ても察知しやすく、警護対象の周辺に戦力を集中させることができるからです。
元々はこのキャンプ場を貸切にして、他の客が一切いない状態にして、工作員達を丸見えにする作戦でしたが、貸切る予算もなく、既に予約も入っていたため、工作員達の接近を常に警戒する物語の展開になってより緊迫感が上がっています。夕闇が迫り始めると、妨害電波で携帯が全く通じなくなります。インターネットのルーターも破壊され、電話線も切られ(元電話屋だった私には、電話だけならすぐ繋ぎ直せそうに思えますが、それはそれとして)、どんどん自体が切迫してくる空気の中で、唯一残されていた防災無線を入手しに管理人のいる掘立小屋(一応「管理棟」と表札がかかっていたように思います。)に行くと、第一の被害者の管理人の死体が転がっているのでした。
この辺がよく分からないのですが、暗闇になると、総勢4名ぐらいのパーカーのフードを目深に被り、お面までしている工作員が、なぜか警備員と警備対象がいる小屋に直撃をせず、周辺の人員を片っ端から殺し始めます。任務遂行上の何かの障害になるということなのかもしれませんが、その理由がよく分かりませんでした。(管理人と前後して襲撃されたのはドローンで遊んでいた子供で、ドローンにはカメラが搭載されていたので、その襲撃の理由は一応分かりますが、ドローンを叩き落とし、子供を拉致しているのに、何故かその場で殺してはいなかったようです。他の大人は問答無用の殺しようなのに、この子供の扱いはやけに人道的です。)
主人公達警備員達は、防災無線を取りに行った1名がかなりやられますが、それでも死なずに済んで、それ以外の3人はそれなりに善戦し、先述のようになぜか悪手の逐次投入をしてくる敵工作員を辛くも撃退することに成功します。そして、終盤(当然すぐ反応してすぐ現れるということはありませんでしたが、)防災無線を用いて警察にテロが発生していると伝えることにも成功しています。
海外の要人警護を何度もしているということから当然なのかもしれませんが、それなりに意見の違いやら不協和的な態度を4人の警備員はとりますが、それでも的確な判断を重ね、端っから銃やらナイフやらを翳して襲い来る工作員を辛くも撃退することに成功するのです。それに対して、工作員の方はかなり戦術的に杜撰に見えます。その様子を見ていて、この工作員の襲撃はもしかして複数の国などの組織から派遣された別の部隊だったのかななどと思いました。それほど作戦行動がバラバラな感じに見えます。似たようなシチュエーションをアニメで観たことがあります。『GATE 自衛隊かく戦えり』です。この中に、主人公達が連れている要人たちを箱根の温泉宿で守っている所へ、3ヶ国からその要人達を拉致すべく工作員の部隊が襲いかかってきます。色々と話の展開はあるものの、基本的に鄙びた守りやすい場所で多勢で正体不明の敵を迎え撃つ構造は類似しているように見えます。
少々敵が杜撰過ぎましたが、それなりに楽しめました。
ただ、この敵の杜撰な作戦にも理由があったのかもと、ラスト数分を観て考え至りました。我らが山崎真実の役は保護対象の大使館職員か何かのような立場の、やたら色香が漂う女性です。既に不自然な交通事故にもあっているというような話になっています。それが、掘立山小屋に連れて来られて、事実上の軟禁状態で保護されるようになると、「ホテルか何かにして欲しい」的なことで騒いだりする高慢ちきさを顕わにしたり、主人公の警備隊長に「怖い!」としがみついて来たり、なかなか面倒な女性を演じています。
ラスト数分の直前に、工作員のボス的な態度の男が最終的に彼女を人質にとり、なぜか主人公(隊長)に交渉を始めます。彼女が狙いだったらすぐにも殺せばよいのに、「お前達が請け負っているアメリカの要人警護の仕事の情報を今後流せ。そうしたら、お前もお前の部下の命も助けてやる」と言い出すのです。つまり、テロ組織のフロント企業のようになれという意味です。
防弾チョッキで辛うじて生き長らえていた警備員が夜陰の中で隙を突き、主人公と共にボスを排除することに成功します。すると、いきなり我らが山崎真実が銃を構え、「ボスの言いなりになっていれば死ななくてよかったものを…」と突如正体を現すのです。なかなか重要な役どころです。見せ場がきっちり我らが山崎真実に用意されていました。けれども、結果的に彼女も制圧され、その流れで多分殺害されてしまいます。
つまり、この案件は要人警護の案件ではなく、この警備会社をテロ組織が取り込もうとした試みだったということで、実際に存在するモデルの警備会社はテロ組織からも一目置かれるような凄い組織だよと言う宣伝とも取れる物語だったのでした。これで、多少は杜撰に見えた作戦のそうあらねばならなかった理由もちょっと分かってくるというものです。
テロ組織の敵対的TOBのような行為が描かれている或る意味レアな物語展開です。元々の目的の山崎真実は、映画紹介記事などの映画のビジュアルでは、主要登場人物の顔写真を見て、私は山崎真実が見つけられませんでした。端的に言うと、画像記憶のできない私の中に蓄積されてきた山崎真実のタグ群が合致しないほどに彼女が老けて見えたからです。しかし、実際に映画を観てみると、(流石に風のシズカほどのピチピチ感はありませんが)『西成ゴロー』シリーズの頃の山崎真実まんまのむっちりしたボディにタヌキ顔全開でとても目の保養になりました。
風のシズカや『電人ザボーガー』のミスボーグなど、クセのある悪役をやらせたら山崎真実はしっくりくることが今回分かりました。出たらDVDは買いです。そして既に発売されている山崎真実のラスト写真集『カメリア』も早速ゲットせねばなりません。
追記:
前作の『第二警備隊』では警備会社の社長である主人公を筧利夫が演じています。寺の警備を行なうのは第二警備隊ですが、その指示・支援役として主人公の筧利夫はかなり活躍しています。一方で年を取って顔も体も丸くなり、『メイン・テーマ』や『恋人たちの時刻』のスタイリッシュな緊張感も初々しさのかけらも見えなくなった野村宏伸は、古株隊員で少々目立ちはしますが、それなりです。
しかし、続編の位置づけの本作では筧利夫は全く登場しなくなり、映画の展開は前作から昇進した感じの主人公の隊長を中心にキャンプ場と野村宏伸との回想のシーンばかりで、野村宏伸の存在感がかなり増しています。
私にとって、ここ最近かなり気に入ったドラマに『今日からヒットマン』があり、筧利夫はそこで殺人組織の恍けた習志野支部長(後に千葉統合部長)の丸メガネを好演していて、そちらのイメージの方がかなり強くなったので、彼のいない第二作は寧ろシンプルに楽しめることになったような気がします。