607 為人の輪郭

===================================
経営コラム SOLID AS FAITH 第607号
===================================

 ご愛読ありがとうございます。第607話をお届けします。

 GWが終わりました。米国のトランプ大統領が就任100日を迎えたと報じら
れていましたが、相変わらず世界は彼に振り回されてばかりです。関税の騒
ぎは勿論、宇露戦争の調停もほぼ進捗が見られません。グリーンランドは米
国領になる兆しも見えませんし、ガザも砲火が続いています。辛うじてLGBTQ
の押し戻しには成功し、不法移民と目される人々も一部国外に追いやってい
ます。EVの締め付けに始まって、EU発の過剰な環境施策の撤回にも一応成功
していると見た方が良いかもしれません。

 成り上がり体質のトランプ大統領の「ディール作戦」は非常に理解しやす
く、或る意味、これほど分かりやすいことをし続ける大統領は過去にいなか
ったように思えます。単純に米国が他国の商品を買わされ、米国の富が流出
していると彼が解釈する輸入超過は、確かに関税を上げて輸入品を締め出す
ことで国内生産を可能にして、所謂「地産地消」体制で解消するでしょう。
さらに過剰に製造して輸出すれば余計貿易赤字は解消します。確かに国内生
産がどんどん復興すればそうなります。かなり現実離れしています。

 製造業は儲かりにくく、事業運営には長期的な視野が必要です。おまけに
極端な学歴格差社会の米国では、工場労働はいわばマック・ジョブの一つで
す。労働者にカイゼンだの現場力だのの発想はなく、単調な労働をただ続け
るのが製造業の現場労働です。社会が今まで移民に押し付けていた仕事の類
ばかりがどんどん増えた時、誰がそれをやりたくなるでしょうか。人が集ま
らず、提示される賃金は高騰するでしょうが、仮にそれで人員が揃っても、
その膨らんだ人件費は価格に反映されます。

 米国ではグレート・レジグネーションという「大量離職」が通称武漢ウイ
ルス禍の下で発生しましたが、それらの人々の多くは日本に比べてもともと
低い勤労の動機づけを失って、仕事を選り好みするようになったという報道
もあります。記録破りのインフレが起こった時、大統領令で今度は人々をマ
ック・ジョブに就けることができるのか、なかなか面白い展開になってきま
した。

 今回お届けする607話は採用時にタブーとされる質問について考えてみま
した。最近読んだ百田尚樹の『狂った世界』にも同様の指摘が為されていま
したが、採用する人材をただの「労働マシン」と見做す奇異なルールとしか
考えられません。取り分け中小零細企業において、どのようにすべきかご一
緒にお考え下さい。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想
などへのお返事の目標納期は5営業日!!

===================================

その607:為人の輪郭

 私の仕事の仕方を学びたいという人物がたまに現れる。商売の仕方はマー
ケティングの原理に従ってマスターするのがよい。スタートは零細企業の
オーナー経営者のモデル像作り。多くの人々は中小零細企業の社長など会っ
たことがないと嘘を言う。商店街の零細店舗の店主はほぼ零細事業者。独立
系のラーメン店の捩じり鉢巻きの店主も零細事業者。スーパーでも独立系な
ら社長が接客しているところもある。
 
 店主ばかりでは偏るので書籍も薦める。古くなったが定番は『コロンブス
の玉子屋: …』。『リストラなしの「年輪経営」…』も良い。これらに木子
吉永の著作を幾つか加えれば万全だろう。私が薦めるのは、業績の数字や事
業の拡大経緯を紐解かない書籍。薦められた側も「オーナー経営者の為人が
分かりました。難しく厳しいですね」と読後に言う。
 
 零細事業のオーナー経営者は頑固な変人・奇人が多いという意見には共感
する。質が芳しくない人材が吹き溜まる中、厳しく育てないと事業の質も維
持できない。「不安・孤独・猜疑心」は零細事業者の深層心理と今も思う。
オーナー経営者のモデル像の理解とそのニーズの理解はこの商売に間違いな
く必須である。
 
 或る日クライアント企業の幹部が「評価が上がる幹部・社員の働き方」を
尋ねて来た。オーナー経営者の大枚はたいた財産を預かり、それを運用して
利益を生むのが、幹部も社員も変わらぬ仕事。会社につぎ込まず、金を低リ
スクの堅い投資にでも向ければ、寝ていても年数%のリターンが来る。「ラ
イバルは金融会社のファンド・マネージャーで、社長に余計な心配をかけず、
ファンドよりも余程儲かる事業を実現するのが、究極で言うと幹部も社員も
評価を上げる最善策」と私は笑って答えた。
 
 休みに適当につけたテレビで所謂バラエティー番組を観ていると、面接で
聴いてはいけない質問を、就活学生の相談に応える形で説明している場面に
出くわした。「本籍・出身地・現住所」、「住居とその環境」、「家族構成
や家族の職業・地位・収入」、「思想・信条、宗教、尊敬する人物」など。
フリップが捲られて項目が読上げられ具体例が解説される。応募者の適性・
能力によってのみ選考を行なうべきであるからと言う。

 不思議なことに、オーナー経営者の書籍にはこうした事柄ばかりが書かれ
ており、特に不遇の家庭環境や生れ付きの障害など諸々の艱難辛苦がなけれ
ば経営者像を描くことはできないと言わんばかりの筆致は多い。そうした
オーナー経営者の為人が分かりニーズが分からねば、幹部や社員は務まらな
い。オーナー経営者の大金を預かり、運用利益を上げる仕事。そんな重大な
仕事に当たる人間の与信を問うなと労基は宣い、罰則まで仕込む。

===================================
☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
===================================

【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『感じる科学』 さくら剛 著
 https://amzn.to/3EBB3bH
■『ネトウヨとパヨク』 物江潤 著
 https://amzn.to/4lUCpPk
■『映画女優(ヒロイン)のつくり方』 行定勲 著
 https://amzn.to/3GPU4rl

===================================
発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 MSIグループ 市川正人
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ ) 

毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け26年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
★弊社代表のコラムが色々満載。
 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
 http://tales.msi-group.org/?cat=2
★講読の登録・解除はこちらのURLでお願いします。
 http://msi-group.org/msi-profile/saf-index/
===================================
※ ご注意!!
 当メルマガは毎月10日・25日に休まず発行しておりますが、当コラムが届
かないというご連絡をいただくことがあります。
 まぐまぐでは長期に亘る無料メルマガ読者に講読意思の確認を行なってお
り、その確認を終えるまで配信が停止されることがあるようです。また、サ
ーバなどの不具合でメルマガが不達になると、そのまま読者登録が無効化さ
れることもあるようです。
(さらに、不達にはなりませんが、Gmailの翻訳機能により、メルマガの内
容が改変されて表示されるケースもあるようです。その場合は、メール本文
上部に表示される「原文を表示」をクリックすると回復するようです。)
 このように各種の不達理由が考えられます。不達の場合は、まず当コラム
の発行状況を上述の弊社ブログ『MSI-TALES』にてご確認ください。発行状
況を確認の上、不達の解消には、まぐまぐ(「magpost@mag2.com」)に、メ
ルマガID(#0000019921)、タイトル(『経営コラム SOLID AS FAITH』)、
購読アドレス、再送希望の旨を記載の上、メールにてご連絡下さい。
===================================
次号予告:
 第608話 『凡常の美徳』 (5月25日発行)
 当たり前のことをきちんと行なう。中小零細企業ではこれだけで十分に組
織の強みになるといわれています。当たり前のことができる中高年社員につ
いて考えてみました。

(完)