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経営コラム SOLID AS FAITH 第610号
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ご愛読ありがとうございます。第610話をお届けします。
世界各地で不穏な動きがどんどん増えて来ています。東南アジアでは通称
武漢ウイルス感染者が急増する傾向が見られ始め、日本からの海外旅行先の
中で比較的安定人気のエリアだけに、今後の日本への拡大が懸念され始めま
した。それ以外の多くの地域はテロだの紛争だの事実上の内戦状態だのキナ
臭い地域だらけです。半年遅れぐらいで日本経済にも色々な影響が出てくる
ものと思われます。
中国のレアアースの売り渋りは、世界中の資源国並みの量を都市鉱山とし
て持っている日本のリサイクル技術が注目される状況を創るかもしれません。
イランが本気にイスラエルと戦争を始めれば、原油価格は上昇し、今年冬の
燃料費などはかなり高騰する可能性があります。徴兵制を再検討し始めたド
イツを始め、EU各国は軍備増強の臨戦態勢作りに励むようになり、国々の政
治方針は移民対策とロシア対抗に大分収斂していくことでしょう。EU主導だ
った二酸化炭素対策ビジネスやグリーン・ビジネスなどは結構縮退する可能
性があります。
中国経済はかなり内部崩壊が進んだと言われています。軍部は中央政治と
乖離し始め、日本を挟んで太平洋側に空母を居座らせるなどの挑発も始める
ようになりました。黄海から南シナ海に至るエリアは一触即発と言ってよい
ぐらいになりつつあります。それ以前に、香港・台湾の人々によると、来月
5日頃には日本に壊滅的な自然災害が起きるとの噂ですので、それどころで
はないかもしれません。
ノストラダムスの大予言で1999年に人類滅亡と言われていましたが、私は
迫り来る2000年問題の対処に振り回されているうちに、破滅の日は過ぎまし
た。来月5日もどうなるか見物ですが、その噂だけでインバウンド客が激減
するらしく、経済的影響はバカになりません。こうした事柄が狭く小さな経
営環境の中で生き延びている中小零細企業にもなんだかんだ影響を及ぼすよ
うになっています。それは唐突な稼ぐチャンスの到来の形になることもある
でしょう。前号の前書きに書いた通り、環境に適応してしぶとく生き残り勝
ち残りましょう。
今回お届けする『蒙昧の行方』は、付加価値の高い商品を販売するには顧
客側の「付加価値リテラシー」が必要であるという当り前の事実について考
えてみました。インフレ経済下、価格は上げなくてはなりません。それには
多少の価値向上が望まれることでしょう。そうした場面がどんどん増えてく
る中で、付加価値向上の実現は言うほど簡単ではありません。そんなことを
ご一緒にご一考ください。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴した
ご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その610：蒙昧の行方
国民年金基金には60から貰えるタイプがある。国民年金の方の繰下げ受給
などを思案する前に60から微々たる額の年金を貰えるようになって年金老
人を名乗ることにした。電車に乗ると自分より必要としている人がいないこ
とを確認して優先席にもどんどん座る。10分以上の乗車なら鞄から読みかけ
の本を出す。本を開きながら、周囲を見渡す。
先日行きつけのバーのママから、「電車の中で紙の字を読んでいる人間が
ほんのちょっと増えてきた」と言われて同意する。本を読む人の他に仕事の
資料を睨む会社員、赤いアクリル板越しに英単語をなぞる学生、競馬新聞の
愛読者。「ほんのちょっと、揺り戻しが来ているのかも」と私が付言すると、
「まあスマホはバカになるわな」とママも嘆息する。
スマホ画面の文字が思考に向かないのは本当らしい。通知音だけでも他の
作業の集中を削ぐという研究もある。それ以上に、電話番号を覚えなくなっ
て記憶力は減衰し、すぐ検索結果を見て分かった気になれば思考力も衰える。
締め括りに「結構デカいのは、CDを聴かなくなって歌詞カードを読んで覚え
なくなったことかな」と私は言った。
「わが社がターゲットとするマーケットは、孤立していて、辛抱強さがなく、
自己評価の低い青少年たちで、親身になって自分のことを気遣ってくれる人
もほとんどいない、袋小路に落ちこんでしまって抜け出すための未来を描く
こともできない学生たちだ」
増田悦佐の書籍で見つけた、米国で派手な経営破綻をした営利大学大手の
内部向け資料にある自社ターゲットの定義。営利大学は株式会社が運営する
大学。株主から投資を募って利益を極大化して分配するのが目的。粗悪なサ
ービス内容で宣伝文句にある就職の口など全く見つからず、御多分に漏れず
訴訟沙汰まで頻発しているという。
ネットの記事を見ていたら、『「新潟の過疎地のスーパー」になぜ「ドン
ペリ」が並ぶのか？』というタイトルが目に飛び込んで来た。記号消費を仕
掛けて付加価値を創り、高価格な人気商品創りの取り組みを全国から収集し
て来てはネタにする小阪裕司の記事。普段は付加価値を提示すると客が飛び
ついてくる主旨。しかしスマホで蒙昧な輩も増えたせいか、それとも格差が
拡大して低所得者が高い商品をスルーするようになったせいか、珍しくこの
記事は顧客を啓蒙して価値を分からせたことに焦点を当てる内容になってい
る。
格差が広がったと頻りにニュースで喧伝され、低所得者だらけという。イ
ンフレが進み価格は致し方なく上げねばならない。高価になれば価値も増え
なければおかしい。自ずと付加価値の堪能に必要な理解力が問われる。所得
と理解力は相関しているか。そして、両者が低い顧客をターゲット・モデル
にして、何をすべきか。熟慮を要する。
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MSIグループ 市川正人
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次号予告：
第611話 『生存本能』 （7月10日発行）
中小零細企業の廃業などが増えています。その背景を考えてみました。
（完）