611 生存本能

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経営コラム SOLID AS FAITH 第611号
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 ご愛読ありがとうございます。第611話をお届けします。

 先月環境省が気候変動に関する「フェイク情報」が広がるのを防ぐため、
気候変動の科学的根拠を紹介する特設ページを設けたと報じられました。こ
こで言われている「フェイク情報」とは、「地球温暖化は起きていない」と
か「地球温暖化は起きているが人類が発生させる二酸化炭素は原因ではない」
などの説を指しているとのことです。主要な根拠の一つは国連の研究結果だ
と言います。

 通称武漢ウイルス禍が全世界的に大問題となった際も、国連機関の情報は
アテにならないという話がありましたが、今回は日本政府を挙げて国連機関
の情報を信奉することになったようです。ネットで「地球温暖化二酸化炭素
原因説 本当か」などと検索すると、相応に権威性のある大学や研究機関の
学識者が地球温暖化二酸化炭素原因説に懐疑的であることが分かります。国
公立大学の研究者なども含まれています。地球温暖化二酸化炭素原因説の方
がフェイクと断じる論説さえ、専門の学識者が著書で述べていたりします。

 実際、溺れて絶滅すると騒がれていた白熊は数が増えたようですし、水没
して消えてなくなると大騒ぎだったツバイも国土面積が増えたと言われてい
ます。一方で二酸化炭素を出さないと喧伝される原発が海沿いにあるのは、
電力に変換できない膨大な熱エネルギーを海にどんどん捨てる必要があるか
らなのは、よく知られた事実です。際限なく海を温めているのは原発の方か
もしれません。

 シロクロどちらかに軍配を上げ、他方はフェイクであると断ずるのは分か
りやすく気分も良いですが、それが科学的に正しい姿勢と言えるのかどうか
は別問題です。現状が百家争鳴ならそのように認識するのがむしろ科学的で
しょう。国民の読解力・理解力が落ちたと考えて、政府は親切心で分かりや
すい単純論理を徹底しているのかもしれません。社会人・組織人教育の最後
の砦たる中小零細企業では、こうした論説に振り回されない批判的思考の醸
成も重要であろうと痛感させられます。

 今回お届けする『生存本能』は、空前のレベルに増えつつある中小零細企
業の廃業などについて考えてみたものです。ご意見・ご感想をお待ちしてお
ります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その611:生存本能

 マイナンバーカードが健康保険証と一緒になって、老人が使いにくいなど
諸々の反対の声が上がっているらしい。辛いのは利用者のみではないようで、
個人経営のクリニックなどは導入に首肯しない所が多いらしい。読取り端末
を導入するのにはコストがかかり、システムの使用料もかかるという。おま
けにエラーが起きやすく、高齢利用者などへの対応も手間がかかり、良い所
がないような報道が目立つ。元々老い先が短く後継者もいない医師のクリニ
ックでは新保険証の対応を避けて早々に廃業するケースもあるらしい。
 
 クリニックのみならず、中小零細企業も倒産やら廃業やらが増加している。
後継者問題、人材難はまだまだ序の口。税理士でも見解が一致していないよ
うなインボイス制度や税務署窓口でもきちんと説明できないと噂の電子帳簿
保存制度。さらに、社員の残業時間だの有給休暇取得状況だのから健康状態
まで管理せよと労基に言われる。社員が普通免許で乗れる車が減ったせいで
運送・搬送も困難になった。
 
 IR情報など全く公開しない中小零細企業でも炎上騒ぎは発生し得る。バイ
トテロやバカッターなどが頻発する。ちょっとした発言をハラスメントと論
われて面倒事が増え、何が問題なのかも分からないうちに代行業者からの連
絡でいきなり社員が消える。これでは本来の事業運営で利益創出など、全く
儘ならない。ここでも高齢経営者を中心に、次々と積み重ねられる難問奇問
に対処することを諦めて、廃業を選ぶケースが目立つ。
 
 2024年のヒットドラマ『新宿野戦病院』の主人公は小池栄子演じる米軍軍
医。新宿歌舞伎町のど真ん中にある病院で運び込まれる患者に荒療治を次々
と施す。その日本語は拙く、英語の発音もかなりおかしいので、型破りな行
動と相俟って、過去に類例のない医療ドラマになっている。第二話で彼女が
薬物過剰摂取の少女を助けて、語った台詞が印象的だ。

「Heart might be weak but the body is strong. 人間の生きようとする
力、なめんな」。
 戦場の凄惨な医療現場を体験してきた彼女が、眼前の瀕死の人々を何とか
救おうとする修羅場で気づいた、人間の生命力の強さを感じさせる言葉。

 法的に人間と同じように扱われるので、企業を法人と呼ぶ。経営学の原理
上、企業経営は企業が永続する前提「ゴーイング・コンサーン」に従って執
り行われる。企業は生物の如く、環境に適応することで棲息を継続する。人
間は仮に意志が弱くても、意志とは別の所で生存を継続しようと足掻き藻掻
く。一方、ニュースを見ると、それらの人々が集う企業は、複雑化した環境
に適応することを諦めて次々と消えて行く。企業組織の内部で、意志とは別
に生存しようと足掻き藻掻く本能は、何であるのか訝しい。

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次号予告:
 第612話 『ギャル界隈の資格』 (7月25日発行)
 持っている資格を書き込まれた名刺を時々受け取ることがあります。「足
の裏の飯粒」と揶揄されることもある資格取得にはプロコンがいろいろある
ように感じます。実例から少々考えてみました。

(完)