588 薄暗い工場 =危うい認知=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第588号
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 ご愛読ありがとうございます。第588話をお届けします。

 そろそろ準備を始めなくてはならない今年10月末日発行の25周年記念特別
号は生産性をテーマにすることに決めました。世界の中でも日本は生産性が
低く、その中でも中小零細企業が生産性の足を引っ張っているという主張は
ネット上などでも非常によく見かけます。実は生産性の算出方法はかなりバ
ラバラですし、切り取る時期や業界セクターなどによっても論点は大きく異
なります。さらに誤解釈や誤謬が入混じり、生産性の議論は大混乱の様相を
呈しています。

 そこで、そうした生産性の議論全体を俯瞰して、その議論から忘れ去られ
ている重要な論点を幾つか列挙して、取り分け中小零細企業の生産性に着目
した際に、その議論がより多角的になるような材料をご提供するような内容
にしようと考えています。ご期待ください。

 前号の挨拶文でも通称武漢ウイルス禍後の「ニューノーマル」などと呼ば
れた生活スタイルについて言及しました。それから一週間程度を経て、知人
の内科医に聞いた処では、再び通称武漢ウイルス禍の猛威が日本で発生する
とのことでした。確かに、夥しい数の外国人観光客は街に溢れる一方で、街
の内科では改めてマスクをするように指示されている発熱患者があからさま
に増えています。周囲でも通称武漢ウイルス感染の話を耳にすることが増え
て、ニュースでも時々報じられるようになってきています。

 当初に比して致死率は大きく下がったと聞きますが、高齢者などの場合に
は重篤な状態になる可能性はかなりあると言います。巷で何となく信じられ
ている空気感染や飛沫感染よりも通称武漢ウイルスは接触感染によって広が
っていることが判明しています。手洗い嗽の励行やスマホ・タブレット類の
消毒の徹底などで、職場での感染回避をお心掛け下さい。

 今回は前回から始まった工場見学について考えるシリーズ『危うい認知』
の第二回目をお届けします。レイ・パーソンに対する工場見学や社内見学は
どう進めるのが良いのか、珍しくかなり実践的なコラム内容となりました。
ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目
標納期は5営業日!!

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その588:薄暗い工場 シリーズ『危うい認知』(2)

「他の零細工場はどんな状況か」
「ここで行なわれている作業の難易度はどのようなものか」
「ここで行なわれている作業の前後にはどのような作業工程があるのか」
「ここで行なわれている作業の次工程の人々には
 どのような配慮が喜ばれるか」
「ここで行なわれている作業の最終製品は
 どこでどのように役に立っているか」
「この工場では生産作業上・管理作業上で、
 どのような工夫がなされているか」
「この工場には歴史的な存続意義や希少性があるか」
「この工場で働く人々は何が嬉しくて働いているか」
「この工場で働く人々の作業技術の習得は大変か」

 思いつくままに板書すると、中高年の社員達は「ああ。」と言いつつそれ
らをノートに書き込んだ。彼らは近く自社工場見学に訪れる一般の人々への
説明内容を作ろうとしていた。素人目線から乖離した意見の続出に、私が素
人が知るべき事項を上げることとなった。

 当初弾道計算のために開発されたエニアックからAIやら量子コンピュータ
の登場まで、コンピュータの発達と共に人間は自分達の頭脳をコンピュータ
に例えて理解するようになった。詰まる所、脳はスーパーコンピュータで、
遺伝による先天的なインプットと、後天的な学習によるインプットでプログ
ラムとデータが成立している。認識も思考も判断も行動も総て、その時点ま
でにインプットされたものの処理の結果ででき上る。
 
 感光材料製造の外資系企業のマーケティング担当者として、制作物のシル
ク印刷の版ズレのチェックに印刷下請会社を訪問した際にも、私の第一印象
は「うわ。インクとかあちこちについているから、汚れないようにしなきゃ」
ぐらいだった。その数年後独立してお引合いをいただいた町工場の現場を初
めて訪れた際にも、第一印象は「ああ。自動車修理工場のような薄暗い作業
場だ。下手に入ると怪我をしそう」ぐらいだった。
 
 大沢賢治は『ドラゴン桜』に登場する東大理科III類合格確実の成績を誇
る秀才。母を亡くし幼い弟妹の面倒をよく見る苦学生的存在。所謂受験勉強
はせず、物事を深く探求する性格で勉強を進め、塾にも通わず好成績を誇る。
その探求心や学習心の原点を尋ねられた彼は、彼が幼稚園時代にウルトラマ
ンが好きになった際に亡き母がウルトラマンの図鑑を次々と買い与えてくれ
て夢中になって読んだことを挙げた。
 
 町工場を見学に来る一般人の頭脳には零細製造業に繋がる情報や深い洞察
が既に存在するか。「薄汚れた作業服を着た年を取った人達が慣れた手つき
で作業する薄暗い作業場」だけの得る所のない凡庸な認識の回避は、多くの
配慮と労力を必要とする。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『日本人と日本文化』 司馬遼太郎 ドナルド・キーン 共著
■『九十歳。何がめでたい』 佐藤愛子 著
■『〈起業〉という幻想:…』 スコット・A・シェーン 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 MSIグループ 市川正人
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次号予告:
 第589話 『リスクの神様』 (8月10日発行)
 VUCAの状況が当たり前になって大分時間が経ちました。今や新規事業開発
のリスクも既存事業の日常がはらむリスクもあまり変わらなくなったと感じ
ます。そんな体感を文章にまとめてみました。

(完)