7周年記念特別号

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経営コラム SOLID AS FAITH 7周年記念特別号
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目次
1 ご挨拶
2 ご寄稿(1) メタボリック様
3 ソリアズの生い立ち(1) 『ソリアズとヘビメタ』
4 ご寄稿(2) ビーエス・アイ 八木様
5 ソリアズの生い立ち(2) 『ソリアズとオーナー経営者の心』
6 ご寄稿(3) NAC 根本様
7 ソリアズの生い立ち(3) 『ソリアズと経営手法』
8 ご寄稿(4) A様
9 あとがき
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☆注意:今号は経営に関する示唆を含む「話」が全く存在しない「お祭り」号
です。不躾ながら、不要の方は、読まずに削除のほど、お願い申し上げます。
また、お読みになる際には、枚数がかさみ恐縮ながら、プリントアウトの上お
読みになることを、心よりお勧め申し上げます。
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1 ご挨拶

北海道では紅葉が始まり、秋が深まってくると、毎年恒例のソリアズの記念
特別号の発行タイミングとなります。今年は7回目です。私が知る読者の方で
も、創刊号から読んで下さっている方も居て、長らくお付き合い戴き、本当に
嬉しく存じます。

7回目の発行となると、段取りも慣れて来ていて(、勿論、通常号に比べ時
間は多く必要になりますが)、淡々と制作を進めることができました。年に一
回のお祭り号ですので、内容の組上げや文章の推敲もアマアマのE加減ではあ
りますが、気楽にお読み戴けたら幸いです。

今回は3部に分けて、『ソリアズの生い立ち』と題した文章をお届けします。
弊社サイトのソリアズ関連ページでも、ソリアズのタイトルの意味を紹介して
おりますが、どのように考えてタイトルを決めたのかとお尋ね戴くこともよく
ございますので、当時の状況を再現しつつ、『経営コラム SOLID AS FAITH』
なるタイトルが決まった過程を一挙にご紹介致します。お楽しみ下さい。

今回は私の周囲でソリアズをご愛読戴いている方、4名に寄稿をお願いして
みたところ、即断のご快諾を頂戴し、過去最多の4大寄稿による文章構成とな
りました。過去の記念特別号の場合に比して、主旨説明も殆どなくお願いした
ので、それぞれの方に、ソリアズや弊社事業との関わりを、自由に書き綴って
戴くことができたように思います。いつもより、自由な形式の、或る意味、予
測困難な展開の実現に、ご多忙な中、ご協力戴きました4名様に、心より御礼
申し上げます。
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☆1?7周年記念特別号:
増刊号なども合わせて、バックナンバーはこちらでご覧下さい。
http://cyblog.jp/list.php?cat=125
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2 ご寄稿(1) メタボリック様

7周年おめでとうございます。

ソリアズの高尚な文章に出てくる漢字で、
読めないものが出てきても、
「俺は読めるんだ」と自分を勘違いさせつつ、読み進み、
恐らく、市川さんの意図の100分の1も、
汲み取れていない読解力のこの私に、
寄稿依頼が来た時は、正直ビビリました。

「よくとぶヒューズ」では、学生のモロさがわかりました。
「理不尽な要求」では、どこでも理不尽さに困ってるのがわかりました。
これだけの理解だとダメでしょうか。
市川さん、ごめんなさい。

でも、私にはとっても助かってます。
市川氏の鋭い洞察力をもって観察された世の中が、
どんな感じの状況になっているのか、
幼稚な私にもなんとなく肌で感じられる気がしてます。

私は携帯電話のメールなら、
高校生にもひけをとらないスピードで打てる
(内容はない)のに、どうあがいても、
市川さんの表現力には、かなわないです。
少しかっこよく、寄稿させていただこうと思いましたが、
このザマです。
こんな人間でも、生きていけるということで、
皆さんに勇気を与えられれば嬉しいです。

市川さん読めない漢字をもっと出してください。
勉強します。
このまま何十年もソリアズ、続けてください。
勉強します。
いつもいつも、頭の体操になり、馬鹿な私にも何かを感じさせてくれる
ソリアズバンザイ。

☆当寄稿はプリントアウトしてお読みいただくと、
よりいっそう楽しめます。(なんでやねん)

* 発行者より一言 *  *  *
メタボリック様の文章を読むと、まるで国語が全く駄目な子供のような言い
様ですが、実は彼はM&Aやビジネスマッチングなどに取り組む、超やり手コ
ンサルタントです。得意分野もIT系バリバリですし、世の中の定義によれば、
間違いなく『勝ち組』に分類されることでしょう。
弊社はお仕事を戴いて、さらに文章まで書いて戴き、大変恐縮です。ついで
に言いますと、体重の数値は知りませんが、外見上、メタボリック風には見え
ません。
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3 ソリアズの生い立ち(1) 『ソリアズとヘビメタ』

「好きな音楽のジャンルは何ですか」と問われると、取り急ぎ、「ヘビメタ」
と答えています。実際にはヘビメタと言う言葉を聞いて連想する音楽は人それ
ぞれです。実は私も、好きな音楽のジャンルが「ヘビメタ」だと思っていませ
ん。ハードロックと言うのが自分の中では一番近いように思うのですが、これ
さえも、私より10年ぐらい上の世代には、全く別の一群のアーティストなどを
指すことが多く、問題の多い表現です。むしろ、アーティスト、バンド名の列
挙の方が、しっくりします。

その手の音楽が好きになったのは中学校時代です。当時は非常に珍しかった
女性ロックに嵌ったことから始まります。篠山紀信撮影の写真集を買った際に、
その中に下着姿の白人女性バンドの写真がありました。「なんじゃこりゃ」と
思ったのがきっかけで、レコードではなくテープ(勿論、音楽入りです)を親
に買ってもらって聞き、衝撃を受けました。ご存知の方も多いと思いますが、
そのバンドはランナウェイズです。直訳ロックで有名な王様もレパートリーに
『さくらんぼう爆弾』として入れた、名曲『チェリー・ボム』(当時は『チェ
リー・ボンブ』となっていました)を含むファーストアルバムです。少なくと
も、私には全く見たことのないタイプのバンドでした。今でもこのテープは持
っていて再生可能です。そして、アルバム全曲、今尚そらで歌うことができま
す。

ほぼ時を同じくして、日本酒のテレビコマーシャルに、黒皮のライダースー
ツに身を包んだ白人女性が登場します。バックには彼女の曲が流れていました。
サディスティック・ロックの女王と呼ばれた、スージー・クアトロです。アル
バムがその後余り出なかったランナウェイズに比べ、スージー・クアトロは、
既に何枚もアルバムを出していて、一度に数枚のレコードを親に買ってもらい、
ガンガン聞きました。コピー機も普及していない時代だったので、写経のよう
に歌詞を何度も書き写し、どんどん覚えました。

高校時代に級友が「ロック、好きなんだっけ。これ凄くいいよ」と貸してく
れたのがホワイトスネイクです。まだ、ロゴが古い頃のホワイトスネイクのブ
ルースがかったロックにすっかり参ってしまって、今度はホワイトスネイクに
アルバイトしたお金をつぎ込んでアルバムを買い集めました。買い終わり聞き
終わると、今度はここから、ボーカリストつながりやギタリストつながりで、
どんどん他のバンドのアルバムも買い込むようになります。既に解散していた
ディープ・パープルを始めとして、レインボー、アルカトラズ、ディオ、ブラ
ック・サバス、イアン・ギラン・バンド、ギランなどばかりを、繰り返し繰り
返し聞き込みました。ソリアズ第60話『夢想と政治』に出てくる stargazer
(「星を見る人」)もレインボーの傑作のタイトルです。

高校時代にやはり友人に薦められて、ホワイトスネイクとは別ルートと言う
ことになりますが、クイーンも聴き始めます。クイーンは高卒で働き始めた初
ボーナスで、そのときまでに出ていたLPを一気に全部買い、全部覚えてから、
札幌のコンサートに出かけました。クイーンへの入れ込みは、ソリアズでも第
126話『女王の繰言』でネタとして結実しています(笑)。

こんな風に、何とはなしにジャンル全般を聞き広げるのではなく、人からの
勧めとか、特定の曲を聞いて気に入ると、そのバンドを徹底して掘り下げる形
で、聞き込んでいたので、やはり、「ヘビメタ」とか「ハードロック」と言う
ジャンルでの答えではなく、バンド名を連ねていく方が好きな音楽を伝える上
で適当に思えます。

そして、1984年、西武球場でスーパーロック84が開かれます。当時、東京で
社内研修生だった私は、年間15回ぐらいはその手のコンサートに行っていたの
で、喜び勇んで、西武球場に行きました。ホワイトスネイクが出るからです。
そこで、ある発見をします。それは、同時に出ていたスコーピオンズ、アンヴ
ィル、ボン・ジョビなどを知っただけのことではありません。ドイツのバンド
であるスコーピオンズの歌詞表現の違いです。

スーパーロック84でスコーピオンズが気に入り、二枚のベストアルバムを買
って聞き込みました。印象に残る曲ばかりでしたが、歌詞の独特さが非常に気
になりました。多分、英語が母国語ではないせいだと思われますが、分かり易
いのです。慣用句なども少なく、或る意味、イングリックのようにさえ感じら
れます。表現がストレートでイメージし易いものが多いのです。

そうなると、他のドイツのロックバンドで似たジャンルも試してみたくなりま
す。そこで聞き始めたのが、アクセプト、ワーロックで、後にドロ、メタリカ
が加わりました。留学した頃は、スコーピオンズばかり聞いては、発音までま
ねしていたので、「全然日本人らしくない発音だ。まるでドイツ人の英語だ」
とか、本当によく言われました。親しい友人は「スコーピオンズ訛り」と私の
英語を呼んでいました。実際、アクセントのみならず、使っていたフレーズな
ども、かなりスコーピオンズの歌詞から都合されていたように思います。この
辺の英語学習方法もまた、ソリアズのネタになっています。第152話『動機の圧
搾』をご一読下さい。

もともと女性ロックからロック好きが始まった私にとって、ドイツ語圏のバ
ンドで女性がヴォーカルのワーロックはかなり好きなバンドになりました。そ
の中でも特に好きなアルバムが、『トゥルー・アズ・スティール』です。何と
言っても標題曲が最高です。リフレインのフレーズは、“Stay Hard. True
as Steel”です。訳し方にもよりますが、「激しくあれ、鋼の如く真たれ」な
どという痺れる表現は、なかなか米国発のロックでは現れるものではありませ
ん。もうお分かりの通り、これがソリアズのタイトルの原型になっています。
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4 ご寄稿(2) ビーエス・アイ 八木様

『ソリアズ』7周年、おめでとうございます。私が市川さんと初めてお目にか
かったのは5年程前、前職の接客サービス関係の会社にいる時でした。残念な
がらご一緒にお仕事をしたことはないのですが、東京にいらした際、お時間の
ある時にお会いし、いろいろな刺激をいただいています。
今回、『ソリアズ』7周年記念の寄稿依頼を受けた時、どんな内容にするかあ
れこれ悩みましたが、月2回配信される『ソリアズ』を読んでかつ実際の市川
さんから発信されるエネルギーを受け、以下のような教育に関する”思い”を
まとめてみました。

読み、書き、話す ?基本の極意?

かれこれ10数年前になろうか。私が接客サービスの社員教育の営業をしてい
た時の話。担当者と内容について打合せをしながら、「接客の基本はわかりま
したから、もうちょっと基本的なことを何かやってみたいですね」「基本的な
こと、というと?」「今のウチで欠けていること」「どんなことですか?」
「朝、出勤したらちゃんと挨拶をするとか、相手を思いやるだとか、きちっと
話すだとか。そうそう、昔の読み、書き、そろばんみたいなやつ」。

こんなやりとりがあり、確か対象者は20代の中堅社員、半日コースのカリキ
ュラムを作り、実施した。私が在籍していた会社は社員教育といっても、CS
を切り口にした接客サービスを得意とする会社なので、女性講師がコミュニケ
ーションの基本、ということで、相手の心を読む(お客様の心をつかむ)、そ
して自分の考えをまとめる(お客様を分析する)相手にきちっと自分の考えを
伝える(効果的なプレゼンテーションをする)なんて話を男性社員向けにロー
ルプレイを交えて行ったと記憶する。

同じ会社で派遣の営業をしていたこともあったが、コーディネーターが選んで
くれた候補の見極めでまず私がチェックするのは、登録する際の適性検査で、
漢字が読めるか読めないか、だった。字がちゃんと読めない人はどうも嫌いら
しい(自分を棚に上げて恐縮だが)。

確か9月10日配信の『ソリアズ』(註:第159話『人形の夢』)にも、この
“読み、書き、(話すではなく)語る”のことが少し触れられていた。もっと
も日常生活の中で持てるはずのマーケティングの視点、という切り口でのフレ
ーズだったが。そして、現在私が所属している会社でも古株社員は「基本的な
ことができないヤツは仕事もできない」と総務・人事の私にメールを送ってく
る。会社では、与えられたミッションに対して実績を積み重ねることは極めて
大事だが、社会人としての基本的なルールを守ること、も忘れてはならない。
基本的なルールを守らないと痛い目にあう、という環境にすることも古株にな
ったら忘れてはならない。

これも前職で、クライアントの研修部長に言われたこと。「社員教育の中で一
番重要なこと、って何だと思いますか?」「そうですね・・・」「自己啓発です
よ、自己啓発」。その言葉に、社員教育を生業にしている私は、悔しいかな返
す言葉がなかった。が、今ももちろんそう思っているが、かなり核心をついて
いる。

おそらく“読み、書き、話す”という3行動をきちっと学習することで、日常
生活や会社生活をかなりスムーズに有意義に送ることができるはずだ。プラス
そろばん、という計算が出来る(言いかえると伝票がきちっと書けるだとか、
経費処理が正確に出来るだとか)こんなことを自信もって行えれば、「美しい
日本」でとりあえずハンディはない。そう思いませんか?

* 発行者より一言 *  *  *
お時間を戴いてお話を伺う時は、「大卒女子採用のツボは何でしょうかねぇ」
などと教えて貰ってばかりの八木様に「刺激をいただいている」と仰られると
面映いです。
ソリアズでも、辞書で引くと語句の誤用などがそれなりに見つかり、読者の
方からご指摘を戴くこともあります。表現全体に関しては、長年の読者の方の
ご協力で擬似的なモニター読者制のようなものができましたので、そこでチェ
ックはしたりしています。当り前ですが、やはり、「読む・書く」は凄く大事
です。努力・精進。私はあまり好きではないので、大変です。
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5 ソリアズの生い立ち(2) 『ソリアズとオーナー経営者の心』

7年前に中小零細企業経営についてのメールマガジンを発行しようと思い立
ち、そのタイトルを考えることとなりました。ワーロックの曲から、「ナンチ
ャラ(形容詞)」アズ「ナンチャラ(名詞)」と言うタイトルの原型を得た後
が大変でした。できれば、“True as Steel”のように引き締まった美しい比
喩の形にしたいとは思っていたのですが、この穴埋め問題には手を焼きました。
そこで、原点に返って、中小零細企業の経営のあり方について、自分が持って
いるイメージから、そのまま比喩の形を作ろうと決めました。

中小零細企業のオーナー経営者を多数インタビューさせて貰って、私が痛感
したのは、それら企業の経営とその経営者の心の両方の脆弱性のようなもので
した。中小零細企業経営の脆弱性は、一般に知られているように、大企業に比
して、経営資源の乏しさによるものが、まず思い当たります。単に経営資源と
いう「持ち物」が少ないだけではなく、後ろ盾がない経営と言うか、バックア
ップがない経営と言う考え方もでき、それもまた脆弱性を構成している要素に
思えます。

中小零細企業経営の要諦は差別化にあると言います。先述のように、大手に
比して極端に経営資源が乏しい中小零細企業ですから、大手と同じ土俵で闘っ
てしまうと、確実に潰されてしまいます。ですので、差別化が必然と言うこと
になります。しかし、この差別化というのは顧客ニーズに応えつつ、他者がや
らないことに挑む選択を積み重ねることを指します。つまり、前人未到の戦略
戦術を取り続けることですから、周囲の理解を得られにくく、経営者も自分の
選択に自信を持てない場合が多々あることでしょう。さらにその自信のもてな
い選択結果に自分の財産を賭しているのですから、状況は深刻です。(※1)

このように考えると、脆弱性が際立つのは、中小零細企業の経営よりも、む
しろ、その経営者の心の方ではないかとさえ思えてきます。周囲に理解されず、
共感されないこと。自分の判断に迷いが出やすいこと。これが、私が体感する
オーナー経営者率いる中小零細企業の脆弱性を形作る要素です。(※2)

それでも、企業であり、事業であるからには持続して利益を上げねばなりま
せん。経営資源が少ないので、状況は八方手詰まりに近く、やれることは大体
決まっています。待っていても誰も代わりを務めてはくれないので、経営者自
らが小事から積み上げ、やると決めたことを、人生を賭して完遂する。他に依
存せず、他を責めず、ただやるべきことを積み重ねていくことによって、事業
を進めるしかありません。それを支えるのは、ビジネス書に書かれているよう
な理念や方針、使命感と言うよりも、もっと人間臭い信念や鬼気迫るような執
念のようなものに感じられます。

人の行動のあり方を決める考え方を宗教と呼べるなら、間違いなく、経営者
の信念や執念も宗教に類するものでしょう。社員教育のあり方についての書籍
で、社員の「感化」や「啓蒙」などの言葉が使われていることがあります。人
の行動を支配する価値観のようなもの。これが確立していなくては、先の脆弱
性を乗り越えることができない以上、中小零細企業経営の根幹に位置するもの
は、この信仰心の如き信念や執念であることになります。そして、これが固く
凝集しているようなイメージ。凝集しているが故に、解きほぐし難く、周囲か
らは理解されにくく、共感もされ難い状態。固いことは頑ななこと。固いが故
に脆い状態。

このようにイメージしてみて、比喩に使う二単語は絞り込まれました。即ち、
形容詞部分が、固く凝集したイメージ(、遥か以前半導体工学のクラスで習っ
た“solid-state”からの連想)から“solid”、名詞部分は信仰心や信念の意
味から、“faith”となりました。こうして、“Solid as Faith”と言うタイ
トルが生まれました。

※1)中小零細企業の差別化の考え方の平易な説明があります。弊社サイトの
差別化のページをご覧下さい。
http://www.msi-group.org/MSI-Differentiation-vol1.html
※2)中小零細企業のオーナー経営者の孤独や不安を描いた第92話『不信のニ
ーズ』も、ご一読下さい。
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6 ご寄稿(3) NAC 根本様

私は、現在ソリアズの著者市川氏より、お仕事の依頼を少なからずしていただ
いており、大変にお世話になっています。
その依頼の中にソリアズでも紹介されている『勉強会』の運営があります。こ
の『勉強会』はMSIグループの企画のひとつであり、企業内で経営者の方針
や諸所経営上の問題解決に合わせて様々なバリエーションに組み替え可能なマ
ルチ型企業研修です。その運営をやらせていただく中で、未熟ながらも非常に
強く実感できた企業の風土変化を簡単にお伝えさせていただこうと思います。
私は都内某中小企業にて、全社員のサービスレベルを一定にすることで顧客満
足度を上げ『お客様に選ばれる会社』という目標を達成すべく勉強会の運営を
行なうことになりました。初め、私は右も左も分からぬ素人という事もあり、
市川さんの指導の下、オドオドしながら主任クラスの社員5?6名参加による
勉強会の運営を行ないました。

最初の2?3回は業務命令なので仕方なく参加している感じのあった参加者も、
勉強会というスタイルが単なる研修ではなく、自分達が主体となって作りあげ
ていく事が理解されるようになってから、取り組みの姿勢が少しずつ変化して
いきました。そして、大きく変化があったのは、それまで当たり前のように多
くの社員が繰り返していた『遅刻』が勉強会での取り組みによりほとんど消滅
したことでした。

この小さくも重大な変化が現実に現れるようになってから、かなり率先して企
業風土の改善を行なう主任が現れてきました。また、それら主任達の変化を敏
感に察した部下の中で、とりわけ意欲の高い社員が「現場で技術を教えてほし
い」と名乗り出るようになってきました。もちろん、全社員が一気に変化した
わけではありませんが、それまで「優秀な人材がいない」と嘆いていた幹部も
この現状で社員に対する見方が少し変わったようです。現在も、一部の意欲の
ある人達に引きずられるように、周りの社員達も少しずつ取り組み姿勢が変化
してきています。ソリアズで紹介されている「ハンカチ効果」の一端を目の前
で見た気がした現象でした。(註:第153話『ハンカチの頂点』参照)
市川さんの書いている内容は、自ら体験したことのみをベースに独自の視点で
その本質を掘り下げていますが、本質を突いているだけに応用も可能、実証も
可能という事を、身をもって体験することができました。

* 発行者より一言 *  *  *
根本様、というより、普段の付き合いからすると根本氏ですね。勉強会をカ
ッチリ運営して戴きましてありがとうございます。「勉強会の変幻自在な運営
は市川さんの個人芸でしょ」と言われてむっと来ていたのですが、これでそう
ではないことが証明できて、さらに、スケジュールの関係で実現困難だった案
件に対応できる体制ができたのは、本当に喜ばしく思っています。
ほんの数回ずつの見学とレクチャーで、私よりも効果を叩き出すような企画
運営ができるようになって戴いてとても助かります。これからもよろしくお願
いします。私が出せる結果は、第154話『雨滴の気配』にあるように、かなり遅
きに失しているので、期待してます。
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7 ソリアズの生い立ち(3) 『ソリアズと経営手法』

さて、タイトル中で“Solid as Faith”の部分が決まりましたが、それだけ
がタイトルでは、何のメルマガなのかタイトルだけでは全く分かりません。そ
こで、その前に何か内容を想像できるような言葉をつけることとしました。

無論、経営に関する短文は創刊段階で20話以上ストックしていたので、それ
らを含めたメルマガの形にすることは決定していました。しかし、そのような
文章だけで成り立たせるか否かは、まだ柔軟に検討できる段階でもありました。

実際、所謂コンサルタントの方々のメルマガの多くは、経営論の解説や経営
手法の実践に当ってのアドバイスなど、具体的内容で溢れていますし、そのよ
うなメルマガが当時でさえ、読者を獲得していました。創刊に先立ち、20以上
の経営関係のメルマガのバックナンバー各々数号分を読み、その中から数本を
2ヶ月ほど講読しました。その過程で二つほど気付いたことがあります。

一つは、これらのメルマガの実践的内容や、中小企業などの経営論の事例に
よる解説などが、どれも、或るケースでは有効でも、そうではないケースも簡
単に思い浮かんでしまうことです。つまり、実践的な内容は、その内容が実践
的であればあるほど、その内容が直接役に立たない読み手が存在し得ると言う
ことです。

もう一つは、やはりマンネリ化です。通常、経営コンサルタントは専門の分
野を持っていて、その分野の知識や考え方は体系化されています。体系化され
ているということは、逆に新たな内容が付け加わることが、稀であるというこ
とでもあります。無論、技術の進歩や法改正などの環境の変化などで、経営手
法自体は変化することでしょうから、言わば、戦術面での新ネタには事欠かな
いでしょうが、こと中小零細企業に限って考える時、生き残り勝ち残る戦略論
は、もう世の中に出尽くし、研究され尽くしているように思えてなりません。
あとは、この戦略論の部分をどのように自分の考えとして取り込むかだけのこ
とであり、各種の経営手法、つまり、戦術論は単にその表現方法に過ぎません。

ソリアズ創刊当初、私は中小企業向けの経営誌の編集部員と言う立場から、
同社で中小零細企業向けの新規事業を立ち上げる立場に移ったばかりでした。
当然、コンサルタントでもなく、新たな経営手法を自分の商品として紹介する
ような必要もありません。また、独立してからも、コンサルタントではなく企
画請負業者ですので、何らかの決まった経営手法を自分のクライアントに推奨
すると言うアプローチは一切取っていません。差別化が他者と違う道を歩み続
けることなら、同じ経営手法を幾多のクライアントに薦められる訳がありませ
ん。これは、差別化が経営の要諦となっている中小零細企業のお声掛けを広く
戴く上で、当然の帰結です。

そのように考えて、ソリアズを経営手法紹介のメルマガにはしないことと決
め、ソリアズの内容は、事実上その時点で用意してあった短文のみとすること
としました。文章の方向性は、中小零細企業の生き残り勝ち残りの戦略論をベ
ースにしつつ、先述の
「脆弱性故にそれを徹底できない構造」や、
「脆弱性故に大手の経営方針・経営手法の単なる模倣に陥る構造」
を描くものとしようと考えました。

そして、私の知る中小零細企業のオーナー経営者の経営方針は、経営者自ら
の生き様や価値観を投影したもののようであったため、経営者の日常の生活の
視点から、敢えて中小零細企業の経営論を語ってみようと思い至りました。

それが、メルマガのタイトルの冒頭に付けた『経営コラム』と言う言葉に込
めた思いです。独立してから作成した文章は、まさにそのようなことを執拗に
考えることが生業となったため、初期の作品に比べ、上述のような方針が色濃
く反映されるようになりました。今後も内容を揃えて同じ周期で書き続けてい
けるかは別として、少なくとも、創刊当初タイトルに込めた意味付けは、今尚、
無理なく維持されているように思えます。

注)本文にもある通り、弊社MSIグループの事業はコンサルティングではな
く、企画請負です。そのありように関しては、以下の号などをご高覧下さい。
第87話 『見識の可塑性』
第141話『匙降る地』
第148話『発話の要否』
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8 ご寄稿(4) A様

市川氏の就労観教育なる講義を初めて受けたのは、3年前のこの時期だった。
毎回、あっという間に時間が経ってしまうこの講義を受けての感想はただ一言。
「強烈」の一言に尽きる。
早口な言葉をメモし、息つく間もなく『そんなこと言っていいの!?』といっ
た話が次から次へと繰り広げられる。大学生活の中で一番熱心に取り組んだ講
義であり、一番ためになった講義だった。

企業の「現実」や「舞台裏」を独特な語り口調でまくしたてられれば、いか
に自分が甘いかを嫌というほど思い知らされる。同時に、疑ってかかることや、
人が見落としてしまう本質的な部分を見つけるといったことをなんとか自分の
中に取り込めないかと、市川氏に会うたびに感じる。

そんな市川氏の着眼点の鋭さを結集した作品が『ソリアズ』であることは言
うまでもない。正直に言うと、『こういうことが言いたいのかな』というのが、
ある程度自分の中で消化できるようになったのはつい最近である。なので、一
部の方が悪魔の文章と表現されるのも私は頷ける。しかし、だからこそ、『ソ
リアズ』を読み解くことの面白さを感じている。

私は、来春から社会に出て働く。「現実」や「舞台裏」を目の当たりにでき
る機会を、私は楽しみにしている。『ソリアズで言っていたことは、こういう
ことかぁ!』と、体感することで本当に理解できたことになると思うからだ。
そしていつか、『わかってきたね(ニヤリ)』と言っていただけるよう、大い
に吸収していきたいと思う。

最後になりますが、7周年記念号発行おめでとうございます。
今後も、ソリアズを通して、市川氏がどのような見方をしているのか楽しみに
しております。
また、いろいろとお世話になりっぱなしで、ただただ感謝するばかりです。
まだまだ未熟な私ですが、今後ともよろしくお願い致します。

* 発行者より一言 *  *  *
A様、と言うよりも私からすると、Aさんなのですが、彼女は昨年の6周年
記念特別号に寄稿してくれたTさん同様、第148話『発話の要否』に描かれて
就労観教育なる大学講義の受講生です。
Aさんは、来年四月から東京で某有名コンサルティング会社に勤務すること
になり、その会社のクライアントに多い中小企業などの実際について、卒業前
の空き時間を利用して、「課外授業(?)」をしています。
文章弄りに秀でた彼女の寄稿を読み返してみると、昨年の由佳子様の寄稿が
ベースになっているようです。「うまくやる」よう、教えていますが、少なく
とも文章作成に関しては、もう十分うまくやってくれているようですね(笑)。
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9 あとがき

第79話『生活企画』にも登場した飼猫のれなが、今月一日に急逝しました。
もともと虚弱だから生後三ヶ月で親に見捨てられ、拙宅の庭に居た訳なので、
長生きすることはないだろうとは思っていたものの、僅か7年半の生涯を突如
閉じて、妻が気付いた時には、眠るように倒れていました。幼稚園に通う娘は、
「一人っ子で淋しくないの」と問われると、「うちには、れながいるから大丈
夫」と必ず応えるように、家族同様の存在でした。

色々な宗教の教えに絡んで、「よく生きる者には永遠の命が与えられる」と
言うようなことが言われます。帰宅するたびに、「にゃあうー」と声が聞こえ
てきそうで、一ヶ月経ってもれなは記憶の中にはっきりと存在して薄れません。
「死ぬこと」について考えてみて、「永遠の命」とは他者の記憶の中に長く留
まることを指しているのではないかと思い至りました。

よく生きることの定義は問題ですが、そのような考えは反響を多く戴いた第
65話『桜の記憶』(2002年発行)でも、自覚されていたことです。個体の私が
生きている状態でも、私は色々な方々の記憶の中に生きているのであれば、今、
私が自分だと思っているのは、単にオリジナル新情報の発信源に過ぎず、本当
の私は他の方々の記憶に生きている方なのではないかと思っています。それは、
バンドが解散したら、新譜は出なくなりますが、アルバムは売れ続ける状態と
似ています。

第160話『高確率の退屈』でも書いたように、羽田千歳間の飛行機が大揺れ
するたびに、ああこれで死ぬかもと思うことがあります。また、第157話『理
不尽な要求』で描いた、今年年初のクライアント担当者の急逝を考えると、死
がいつどう訪れるかは全く知り得ないことが分かります。しかし、多分、私の
生死に関係なく、経営に関わる色々な場面で、相当数の方々がソリアズに言及
し、ソリアズを活用してくださるのではないかと思っております。

『天声人語』で数々の傑作を残した深代惇郎は、「まるで命を削ったかの如く」
夭逝したと言います。私なんぞでは深代惇郎には遠く及びませんし、ソリアズ
がよく生きた証と思うほどに傲慢ではありません。まして、努力精進が続かな
い私が、命を削るほどの物書きを継続できる訳もありません。日常生活の一部
として淡々と発行を続けているからこそ、継続できていると思っています。た
だ、私を広く周囲の方々の中へと拡散させる作業の重さを7年目にして感じる
ようにはなりました。

6周年記念特別号で書いた「ソリアズが一人歩きしている感覚」は、どんど
ん強くなって行きます。そうだからこそ、この作業を可能な限り、継続したい
と思っています。まだまだお付き合いのほど平にお願い申し上げます。
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「企業から人へのコミュニケーションを考える」
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