6月26日の封切から1週間少々経った7月最初の日曜日の午後5時40分。時たま行く西池袋の老舗ミニシアターに知己と観に行きました。この館には2階と地下1階にシアターがありますが、今回はここ最近では珍しく地下の方のシアターに行きました。全国でたった4館でしか上映されておらず、東京都内ではここ1館だけです。関東圏では他に横浜市内に1館、あとは長野と大阪に各1館という状況です。その上映さえも、翌週後半にはあちこちで終わっていく様子でした。
上映館数も少ない上に上映回数も少なく、ここ池袋でも1日1回しか上映していません。他3館も映画.comのサイトで見る限り、すべて1日1回の上映でした。恐ろしくお寒い状況です。シアターに入った当初、私達以外に7人いた観客でしたが、トレーラー群の上位映画終わった頃に1人追加になり、私達も含め計10名の観客でした。これもかなり淋しい状況です。映画.comのサイトで調べると、この館のシアターの席数は2階、地下、共に200弱です。それに対して10人ではたった5%強の稼働ですから、上映期間も長く持ちそうにありません。
私がこの作品に最初に着目したのは、この作品に山崎真実が出演していることに拠ります。ここ最近では5月に劇場で観た『軋み KISHIMI』で主演を務めていますが、その前にも1月封切作品で『愛のごとく』にも端役(だと思われます)で出演していました。上映が1週間で終わるということに気づいたのはかなり後で、私はこの作品を観に行く機会を逃してしまいました。翌2月に劇場鑑賞した『ヒューマンエラー』の感想に以下のように書いています。
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この作品を観ようと思い立った最大の理由は、観たい映画作品の夏枯れ状態です。(実際には冬か早春といった季節感ですが、言葉上「夏枯れ」と呼んでいるだけです。)単に観たい映画が少ないだけではなく、主要な大作がない中で、細かな映画作品は簡単に上映が打ち切られたり、元々1週間の上映期間を設定されていたりなど、非常に鑑賞が困難な状態なのです。例えば1月23日封切の『愛のごとく』は、私の好みの顔をしている山崎真実が珍しく映画出演している作品なので、マストと思っていましたが、映画サイトになぜか上映館が表示されない期間があり、その後、「2月13日より吉祥寺アップリンクにて上映」と出たので、それから1週間後に観ようかと上映スケジュールを調べたら、その日が最後の上映日で時間的に間に合わず、それ以降上映は打ち切られたままでした。山崎真実の出演作ながら、あとはDVD発売を願うばかりとなりました。
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私は今尚この作品『愛のごとく』のDVD化に僅かな期待を寄せていますが、多分叶うことがなさそうに思えています。私はタヌキ顔が(見るには)とても好きであることを公言していますが、芸能人の中では、サトエリや三津谷葉子、川村ゆきえなどがいますが、あまり映画で観ることがありません。グラビア撮影の仕事を引退すると宣言してから、かなりの頻度で山崎真実は映画に出演しており、TVerで観たテレビドラマ『ターミネーターと恋しちゃったら』などにも各話に登場するぐらいの湧き役を務めていたサトエリよりも、映画出演作は多いかと思わせるぐらいに山崎真実は目立ちます。
ただそんな記憶も薄らいだ頃に、(そして劇場鑑賞作が不足気味の中で)7月の劇場鑑賞第1号を決めるべく、劇場鑑賞候補作リストを見直して、この『罪の棘』を発見しました。最近、地域貢献活動の一環として、保護司になるとか、保護司になる打診を受けているとか、そのような知り合いが複数人存在するので、刑務所からの出所者と保護司の話が軸となっていると知って、関心が湧いて来たのでした。
保護司のドラマは過去に有村架純が保護司の役を演じた『前科者』シリーズをDVDで観ていますし、過去に劇場で観た『エンボク』や『怪人の偽証 冨樫興信所事件簿』の中にも、相応に目立つ役で保護司が登場します。また、受容れ施設の運営まで手掛けている保護司らしき知り合いも一応いますので、基礎的な知識はある方かと思いますが、ここ最近の保護司がメインの作品を観ておいてみようかと思い立ったのです。
映画の物語設定は映画.comの解説では、珍しく今一つ話の展開が分からないように感じます。
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過去に罪を背負った人間たちの葛藤と再生を描くヒューマンドラマ。厳しい現実の中で生きる者たちが、それぞれの罪と向き合いながら交錯していく運命を描き出す。監督を「特命係長 只野仁 最後の劇場版」の植田尚が務めた。
幼い頃に父を亡くし、愛を知らずに育った元受刑者の女性・絵李香は、他者との関係を築くことができず、依存と孤独を繰り返してきた過去を抱えている。絵李香はサボテンを育てているが、それはサボテンの棘が砂漠の乾いた厳しい環境を生き抜くための機能であり、「人間社会もドライで過酷だから」という思いからだった。そんな彼女の保護司となったのは、25年前に強盗事件で服役した過去を持つ男・岩永。かつて守れなかった存在への後悔を胸に、彼は絵李香を支えようとする。一方、25年前の事件で父を失った刑事・藤堂は、当時の事件と新たに発生した連続強盗との関連を疑い、岩永を執拗に追い続ける。やがて3人の運命は複雑に絡み合っていく。
主人公・絵李香役でモデルの雅■(「王偏に「比」という文字)が映画初主演を果たし、保護司・岩永役で脇知弘、刑事・藤堂役で勝矢が共演。さらに山崎真美、三浦浩一らが脇を固める。
2026年製作/91分/R15+/日本
配給:渋谷プロダクション
劇場公開日:2026年6月26日
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流れは概ね以下のような感じです。
●絵李香が出所してきて、岩永が保護司になります。
●岩永は強盗事件で服役したものの、強盗には直接関与しておらず、現場からの逃走途上で、自分がつるんでいた黒田が警察官を射殺してしまいます。黒田は凶器の拳銃ごとそのまま行方をくらまします。
●岩永は実はその警察官に世話になっており、更生するよう諭されていたので、射殺された現場で警察官を助けようとしてその場に残り逮捕されたのでした。
●街では質店などへの押入り強盗が連続するようになり、その際に用いられている拳銃が25年前の事件と同じものと線条痕から明らかになります。他に疑いがかけられる人間がいないので、取り敢えず、怪しまれるのは岩永という展開になります。
●25年前に射殺された警察官は、現在の連続強盗事件の捜査にあたる藤堂の父でした。藤堂は父と岩永の関係も知っていて岩永の関与を証明しようと躍起になり、捜査からも外されます。
●岩永は藤堂の父に諭され、高校時代から交際未満だった美少女が激しいDVにあっていることを知って、更生して彼女を守ると誓っていましたが、最後に一度だけ付き合った事件で服役することになり、彼女が自殺したことを獄中で知ります。つまり、岩永は最愛の人と恩人を最後の付き合いで同行しただけの強盗ですべて失ったことになり、それが彼の人生の方向性を決め、黒田への憎しみを秘めたまま出所後の地味で真面目な生活を送ることとなったのでした。その際に彼の保護司を務めたのが、山崎真実演じる橋本でした。
●絵李香は麻薬の所持と使用で服役していましたが、それは付き合っていたチンピラの男に絆された結果でした。彼女の出所を知って、またそのチンピラが彼女によってきます。
●ほぼ同時に岩永は今回の強盗に行方をくらませていた黒田が関わっていることから、黒田に復讐をすべく、絵李香の保護司を辞退し、黒田を探し回ることになります。岩永に仄かな恋愛感情さえ抱いていた絵李香は岩永が消えて動揺し、チンピラと再び肌を重ねる結果となります。
●チンピラは自分のケツ持ちとなって拳銃を与えてくれた男に絵李香を上納するつもりで近づいてきており、絵李香は黒田の潜伏先に連れて来られ、売物にされる前の味見に強姦されかけます。
●これで漸く黒田の潜伏先に、絵李香も岩永も、さらにそれを追ってきた藤堂も揃うことになります。(チンピラも一応います。)
●激高した岩永が黒田に(持参してきた)銃を向け発砲しますが外れたようで、同時に打ち返してきた黒田の銃弾が岩永の腹部に命中します。一方で、事の真相を知り、とうとう黒田を追い詰めた藤堂が現場に駆け込み、これまた同時に「黒田ぁ!」と怒号と共に発砲し、黒田の頭部を横から打ち抜いて即死させます。
●嘗て救えなかった彼女と乗る予定だった自慢のセリカで瀕死の岩永は絵李香と共に逃亡し、岸壁に止めた車中で絵李香の腕の中で息絶えるのでした。
映画.comの解説の「やがて3人の運命は複雑に絡み合っていく」は確かに複雑です。藤堂はどうも無実に見える岩永を何とか犯罪者に仕立てようとしているかに見えますし、絵李香は出所後の職場になかなか馴染めず、以前からの気を置けない仲間の女性はネイリストを目指しているようで、洗濯工場の仕事に地道に取り組んで店を出したいと頑張っていましたが、過去がばれてSNSで中傷され手首を切って自殺してしまいました。第一発見者は絵李香です。岩永を失い、唯一の仲間も失い、また犯罪に手を染めるフラグがバンバンに足った状態が続きます。岩永は岩永で、最初は現在の強盗事件への関与が(実際にはなかったようですが)どうも漂っていますし、その後、藤堂との複雑な関係も明らかになります。
チンピラが訪ねた先で黒田が姿を現すまで、この三人の話は接点が見つからないままに映画がどんどん進んで、三人の過去の呪縛がこれでもかとばかりに描かれて行くのです。一体どうなるのだろうと疑問が湧き始める終盤、いきなり黒田登場で一気に畳み掛けるように話が収束します。
特に有名な俳優が出ている訳でもなく、何となくVシネマを観ているような感覚に陥ります。ギリギリ山崎真実以外に認識できたのは岩永を演じた脇知弘だけで、DVDで楽しんだ『ごくせん』の名脇役だった男優とすぐ分かった程度です。(まるで本作の岩永の高校生時代を描いたような役でした。)絵李香を演じた雅■に至っては映画.comには「映画初主演」とありますが、「映画初出演」も兼ねているのではないかと思われます。ウィキもなく検索しても他の出演作品などの手掛かりが見つかりませんでした。しかし、僅か1時間半の作品ですが、Vシネマのようにイベントが次々とジェットコースターのように起こることもなく、延々と主要登場人物たちの過去の呪縛とそれに向き合いつつの平坦な日常が描かれ、そして、岩永と絵李香の探り合うような恋愛感情の高まりも丁寧に描かれて行きます。
横浜が舞台で、遠景でランドマークタワーが見えたり、海岸沿いの屈曲路も見る人が見れば分かるであろう場所でロケが為されていますが、同じく横浜を舞台にした数々のドラマや映画などに比べて、どんよりとした暗い街並みの描写が多いように思えます。(例えば最近劇場鑑賞した『ラプソディ・ラプソディ』も横浜が舞台ですが、あからさまに聖地巡礼を誘うような舞台然とした立地が選ばれています。)
先述の展開と共に、色々地味な印象で尺も短い作品ですが、丁寧なつくりと「序破急」の序をアンバランスに長くした印象的なプロットに好感が持てます。DVDが出るなら買いです。
追記:
タイトルの『罪の棘』は劇中に登場するサボテンからつけられていますが、劇中では映画.comの解説と異なり、岩永が最初にサボテンを育てています。その後、絵李香も岩永への親しみからサボテンを一鉢購入するのです。岩永は棘の役割を「水分の吸収や温度調節、外敵からの防御などの自分の身を守るためのもの」的に説明しています。つまり、出所後の自分達の生き方を見ているようだということでしょう。しかし、パンフレットにもありますが、寧ろ、この作品を観る時、サボテンは彼らと共にある過去の罪で、彼らを常に縛り彼らに深く食い込む呪縛が棘であるように描かれています。そうであってこそ『罪の棘』というタイトルが成立するものと思われます。その意味で、それなりにしみじみした台詞を吐く岩永にしては、サボテンの説明だけ、ややピントがずれているように感じられました。