532 裸の王様

==================================
経営コラム SOLID AS FAITH 第532号
==================================

 ご愛読ありがとうございます。第532話をお届けします。

 3月14日に松本道弘先生が82歳で逝去しました。弊社代表の市川が20歳の
頃に、柔道や剣道のような“道”として英語を学ぶ思想である「英語道」の
核となる考え方を教えてくださった方です。先生に教えていただいたことは
市川の経営観にも影響を与えていて、このコラムにも通常号だけでも6話に
登場し、そのうち5話で先生の考え方そのものがコラムの主題になっていま
す。(それら5話のうち、1話では市川が先生の考え方を受容できないものと
して描いています。)

 市川は20歳からの数年間先生から学びを得ましたが、転勤や留学で直接お
会いする機会がなくなり、それから30年を経て先生のセミナーに参加してか
ら、細々ながら交流が再開しました。先生の著作は非常に多く、その多くは
電子書籍化されています。そんな中で市川は電子書籍としてしか出さない数
冊のコンパクトな英語道のシリーズ企画を先生に提案したことがあります。
“性に合わない”と毛嫌いしていた電子書籍の企画をお引き受けいただいた
のが、数年前のことですが、懐かしく感じられると市川は言います。
 
 先生がよくアルファベットの文字と紐づけていた語源的意味のまとまりは、
実は文字ではなく発音記号と無意識の中で結び付けられていることを、黒川
伊保子の初期の書籍が詳解していますし、先生が仰っていたインプットの重
要性なども、近年の脳科学がより詳細且つ科学的に論じています。そのよう
なことを先生に指摘し、ディベートしておけば良かったかと、先生の初期の
著作を読み返して市川は思ったようですが、再会までの30年の間に、先生が
日本で広めたディベートへの関心を市川は完全に失っていました。それでも
今の市川を形作る多くの要素を与えてくださった方です。ご冥福をお祈りし
ます。

 今号は『裸の王様』というタイトルで、身の回りに潜んでいるAIがビッグ
データを元にどのように私達と付き合っているのかについて考えてみた内容
です。情報リテラシーを維持することの難しさと共に、中小零細企業でもそ
のような技術を使いこなさねばならなくなりつつある現状について、一考し
ていただく材料になれば幸いです。ご意見・ご感想をお待ちしております。
頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

==================================
【松本道弘先生が本文に登場する通常号】
■第8話『虹を追う者』 http://tales.msi-group.org/?p=45
■第124話『快い問い』 http://tales.msi-group.org/?p=176
■第152話『動機の圧搾』 http://tales.msi-group.org/?p=205
■第235話『適正在庫維持』 http://tales.msi-group.org/?p=360
■第424話『続・徒手空拳』 http://tales.msi-group.org/?p=1057
■第436話『次世代タンス預金』 http://tales.msi-group.org/?p=1222
==================================

その532:裸の王様

「ああ。熱心なネット業者さんはいるもんだな。あんな小さい事業所とかに
も、SEO対策だののサービスの売込みが電話やメールやらでバンバン来るの
か。で、社長はSEOとかやるなら、以前から付き合いがあって信頼できるあ
んたに頼みたいと。けど、SEOって何なの。そういう話でしょ、今回の話は。
ただ、SEOってそんなに役に立つのかね。」
 新宿から片道一時間半。町田にも相模原にも近い幹線道路沿いの事業所か
らの帰り道、商談の内容を私が同行したITコンシェルジュの弟子と復習した。
 
 今となってはPCを自分で買って使えるようにするのさえ億劫な老人になっ
た私も、以前はIT系の小規模広告代理店のような会社二社の社外取締役をし
ていた。何やら如何わしい外部ページからのリンクを張る手法のSEOサービ
スを競合他社が売り捲っていた時期に、アクセス解析を社内プロジェクト化
し、その支援を行なうサービスをクライアント企業群に提案してそれなりに
好評を得たことがある。
 
 数年前、折畳自転車を買おうと思い立ち、かなりネット上でリサーチをし
て、英国製のストライダを1台専門店で実物を試乗して買った。それから三
ヶ月以上、私のPCでどのブラウザを立ち上げても折畳自転車の広告が出続け
た。何台も買うようなものでなくても、ずっと広告が出続けるバカらしさを
周囲の人々に言った。

「あはは。そりゃ、市川さんがストライダを買ったことをネットが認識して
ないからでしょ。ネットで買ったりすると、ちゃんと購買を認識して広告は
出なくなりますよ。よく使うクレジットカードで買うだけでもイケるかも。
そういうのは結構頭いいです」。
 私の稚拙な発見を知り合い数人が嘲笑する。社会のインフラ化しているよ
うなサイトサービスで、今やAIが浸透していない仕組みを見出す方が大変か
もしれない。MAのサービスで来訪者をスコアリングして、そのスコアに応じ
たサイトページやポップアップ画面を見せることを私も助言することがある。
中小零細企業であるクライアントに自分が助言しているのだから、大手企業
群が自分に同じことをするのは当たり前のことだろう。
 
 最早検索結果は検索した人間によって異なる。AIはその人物に見せたいも
のを見せる。「ならば」とSEOの意義を求めて同じ検索を何人かで試すと、
結果はそれなりに違った。
 
 内田樹は往年の名著『下流志向』で、下流志向の人間は「分からないこと
をなかったことにする能力がある」と喝破している。その本人の認識の原理
のみならず、今ならAIが時間をかけて自分が分からない不愉快なことを遠ざ
けてくれる。ネットに向き合っている限り、自分専用の太鼓持ちがご機嫌な
時間をくれる。そんな時代になりつつあるらしい。

==================================
☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
==================================

『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。

クライアント様の人材募集のため、
ハローワークを利用した効率の良い選抜方法を考え実践しました。
ハローワークは無料で気軽に利用できますが、
その分色々な人が応募できるため、余計にスクリーニングが重要です。

会社の求める人材を採用・育成する方法を
会社の実情に合わせた形で
企画から実践までお手伝いいたします。
具体的な事例などお聞きになりたい方は
ぜひお気軽にお問い合わせください。

https://kaisha-yorozuya.support/contact/

==================================

『萬屋のもっと深く愛してい』第29回「記録メディア(概要)」

ITの発達によりパソコンやスマートフォンなどのIT機器の機能はもちろん、
記録メディア(記録媒体)も日々進化しており、ここ数十年の間にさまざま
変化しています。

コンピュータ用の磁気テープ記録装置が登場したのが1950年代と言われてい
ますが、今ほどコンパクトで簡単に持ち運べるものではありませんでした。
サイズはどんどん小さくなっていますが、これまで以上に大容量のデータを
記録できるメディアがどんどん増え、利便性も高まっています。簡単に思い
つくものでも、CDやDVD、USB、SDカード、外付けハードディスクなどがあり
ます。

記録メディアの進化について、師匠の市川が、NTT(当時、電電公社)に在
籍しているときはコンピュータで組んだプログラムをカセットテープに保存
していたと聞きます。

また、先日あるクライアント様では、音声の記録のためにカセットテープを
主に使っていたところ、再生できる機器が減り、カセットテープ自体も購入
が難しくなってきたことからCDまたはSDカードに代替し始めたと聞きまし
た。

知り合いの会社でも、部署内の重要なデータはすべてフロッピーディスクに
保存しており、その知り合いは「フロッピーディスクが使えないようになっ
たら、仕事ができなくなるので困る・・・」と言っていました。このように
時代の変化とともに使われなくなってくるものもあれば、今でも変わらず使
い続けられている記録メディアが残っているのは使いやすい用途があるから
であり、記録メディアによってその特長はさまざまです。

次回から現在使われている主要な記録メディアの違いについて、価格や容量、
重さや寿命などいくつかの観点で各々の使いやすさやメリットを説明してい
きます。

このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support

==================================
【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『あたりまえのことをバカになってちゃんとやる』 小宮一慶 著
■『プーチン幻想 「ロシアの正体」と日本の危機』 G・アンドリー 著
■『格差は心を壊す 比較という呪縛』 R・ウィルキンソン 他著
==================================
発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ ) 

毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け23年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
★弊社代表のコラムが色々満載。
 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
 http://tales.msi-group.org/?cat=2
★講読の登録・解除はこちらのURLでお願いします。
 http://msi-group.org/msi-profile/saf-index/
==================================
※ ご注意!!
 サーバのエラーなどで読者登録が解除されてしまった方がいらっしゃる様
子です。当メルマガは毎月10日・25日に休まず発行しております。発行状況
のご確認は上述の弊社ブログにて行なってください。
 また、まぐまぐからの連絡によると、一部フリーメール運営企業でサーバ
の受信量規制を行なっているケースがあり、その場合は大幅にメールマガジ
ンの到着が遅れるとのことです。
「届かない」、「再送希望」などの連絡は、まぐまぐの窓口である
「magpost@mag2.com」に、メルマガID(#0000019921)、タイトル(『経営
コラム SOLID AS FAITH』)、購読アドレス、再送希望の旨を記載の上、
メールにてご連絡下さい。
==================================
次号予告:
 第533話 『覗き窓の世界』 (4月10日発行) 
 噂のスマホ脳について少々考えてみました。お付き合いください。

(完)