436 次世代タンス預金

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経営コラム SOLID AS FAITH 第436号
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 ご愛読ありがとうございます。第436話をお届けします。

 飛散する花粉の量が多くなってきて、なかなか面倒な時期になりました。最
近は目の充血と痒みの症状が強めに出ます。それでも、ここ数年心掛けている
ことがあるせいで、病院のお世話にはならないで何とかやり過ごせるぐらいに、
年を追うごとに改善してきている気がします。

 都内で昼間に電車に乗っていると、路線にもよりますが、ここ半年ぐらい僅
かに本を読んでいる人が増えているように感じます。一時期は人数ベースで手
に何か持っている人の半分以上はスマホだったような気がしますが、新書にせ
よ、ハードカバーにせよ、宗教団体の何かのテキストにせよ、活字を読んでい
る人が多少増えているように感じられるのです。

 歩きスマホ禁止やら、当然ながら運転中のスマホ操作禁止・携帯通話禁止な
ど、あちこちでスマホ使用が制限されてきたせいであるのかもしれませんが、
あちこちで禁止されているなら尚のこと、禁止されてない場所に利用が集中し
て良いようにも思えます。国内においては、スマホ市場は飽和して来たと言わ
れていますが、端末機の普及以上に、使用場面自体が既に微減傾向になってい
るのかもしれません。

 電車内でみるスマホの主な用途のトップ2は、ゲームとSNSであろうと思い
ます。それらが自分にもたらすものについて冷静に評価できる人が増えている
のかもしれないと思えてくる材料が幾つかあります。またそのようなことも、
このコラムのネタにできたらよいと思います。

 今回お届けする第436話は、カネに代わる財産のあり方についてです。動産・
不動産などの財産よりも、信用が大事と言うのは、多くの経営者にとって頷け
る説だと思います。それが近年のSNSと結びつけられた議論があることを知り
ました。それについてまとめてみモノです。是非、ご一読ください。本文に対
するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の
目標納期は5営業日!!

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その436:次世代タンス預金

 偶然に遥か以前英語の世界観を叩き込んで戴いた松本道弘先生がセミナーを
やることをネットで知り、早速申し込んでみた。叩き込んで戴いたと言っても、
実際には先生の下で英語ディベート実践をしている人々に教えて戴いただけで、
先生と直接指しで話したことは累積でも一時間ない。セミナー後の懇親会で当
時のことを振り返りつつ自己紹介すると、「僕よりも当初の英語道の在り方を
よく覚えている」と感嘆された。

 私のクライアントの出版社の名義で私が立てた電子書籍の企画も快諾して下
さり、「松本道弘をよく分かっていないと、ぶつけてこられない企画だ。電子
書籍は基本的に好きじゃない私だが、君の説得には負けた。日本にディベート
を紹介した私を説得し倒すなんて」と何度も褒めて下さった。電子書籍作りに
私も関わって、先生と色々と意見交換をするが、困るのは「こんなに色んなこ
とを語れるのだから、もっと大きくて目立つ仕事をするべきだ。蔭から切りか
かってくるシャドウ侍のままでいいのか」と頻繁に言われること。

『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』という本を読んだ。来
るべき次世代。財産はカネではなく信用に変わると説かれている。カネが信用
に変われば、預金はSNSとなり、信用できる言動が世の中にあからさまになり
つつ蓄積されて行くという。

 Facebook を見てもインスタを見ても、濃い内容や注意深く選んだ言葉が見
つかることはある。しかし、それらに巡り合う前にその50倍ぐらいの頻度で、
居酒屋の刺身のメニュー用写真かと思うような投稿や、テーブル縁で騒ぎまわ
る人々の姿の代わり映えのしない画像に巡り合う。これらが確かに投稿者の信
用度合いを示す指標だと言われたら、ギリギリ一応頷ける。流行りの言葉「イ
ンスタ映え」は信用を盛る一つの方法なのだろう。

 意味深い意見を数多く投稿すると信用される。これが来るべき次世代の「信
用の預金」の姿なら、ただ考えただ実践する人はタンス預金でもしていること
になるのだろう。陰徳を重ねる人も、本人も自覚できないような優れた暗黙知
を持つ職人も、皆、金利を生まないタンス預金を重ねる変人扱いということか
もしれない。

 松本先生と歓談をしていてドラッカーの経営観に話が至った。
「本で二冊分にもなるほど中内功と文通していて、結果的にダイエーはあれだ
け大規模な経営破綻をして、路頭に迷った人も出たはずですから、所詮ドラッ
カーは後付けの理屈を並べているだけかなとは思えて、あまり興味が湧かない
んです」と私が言ったら、70歳を過ぎた先生は手際よくメモを開いて鋭い視線
を私に投げて言った。
「驚いたな。そんな話は初めて聞いた。それは面白い意見だ。本の名前を教え
てくれ」。

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次号予告:
 第437話 『人々の間』 (4月10日発行) 
 最近、組織で働く人に最も求められる能力と言われる「コミュニケーション
能力」について或るクライアント企業の現場で考えてみました。

(完)