195 贈らぬ言葉 =サウンド・スペース=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第195号
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ご愛読ありがとうございます。第195話をお届けします。

4月目前なので、例年ですと新入社員の育成などのネタが多くなる時期なの
ですが、なぜか今年は、物売り系のお仕事の引き合いを頂戴することが多くな
っています。新規事業の立上げのお話や、営業部門の梃入れのご相談を受ける
たびに、蔑ろにされていたり、誤解されているマーケティングの超基本に立ち
返る機会が増えています。顧客満足とは。ロイヤルティとは。差別化とは。そ
んなことを中小零細企業の現実に合わせて考える商売を面白く進めております。

さて、昨年の秋ごろ、80GBのiPODを購入して、今は動画まで色々取
り込んで楽しんでいるのですが、購入当初は持っている曲を野放図に入れて楽
しめることが、とても斬新に感じられました。購入後、すぐに出かけた出張の
往路・復路で感じたことを、そのまままとめてシリーズ化したのが、今号の
『贈らぬ言葉』から始まる二本セットのシリーズ『サウンド・スペース』です。

音に満たされた空間として見ると、いつもの此岸にさえ距離が感じられます。
そんな中で、自分の仕事のあり方などを色々考えたみた二話です。新幹線の中
の描写。そして、車窓からの景色。珍しく叙景的な内容のシリーズをお楽しみ
下さい。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想
などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その195:贈らぬ言葉 =サウンド・スペース(1)=

快晴の空に富士山が見えてきたので、買ったばかりのiPODに触れ、スピ
ードメタルの一曲を選ぶ。時速200キロで飛び去っていく車窓の景色は、叩き
つけるドラムのビートと捻じ切るようなギターサウンドで、より加速して行く
ようだ。持っているCD全曲をiPODに突っ込んで、合計3000曲近く。乗り
物に乗ると、景色に合わせて好きな曲を選ぶ「遊び」を「開発」した。開発後
初の新幹線はメタル向きと悟った。

品川から乗った新幹線の指定席。隣には運動部出身の新卒社員と思える、随
分とガタイの大きなお兄ちゃんがシートに体を押し込むように座っている。揺
れるテーブルの上に、『新会社法対応 簿記三級完全マスター』と書かれたワ
ークブックを広げて、必死に問題を解いている。ラグビーか柔道か。何かその
手のことをやっていたような掌はごつく大きく、シャーペンがタバコぐらいに
見える。ワークブックの巻末をめくっては答えを合わせる。正答率が良くない
ようで、何度も赤ペンで注釈を書き込んでいる。

その隣に、勢いでは負けんぞとばかりに、座席にどかっと腰掛け、出したテ
ーブルに週刊『少年ジャンプ』をバンと投げ置く。徐にPHSを取り出すと、
壁紙は水着姿のグラビアアイドル。ネクタイの柄はシルエットのウルトラセブ
ン。好きな曲がイアフォンから流れると、エアーギターならぬエアードラム。
ドタタタと見えないドラムスティックを振る。

心頭は完全滅却済みか。ふざけたオヤジには目もくれず、お兄ちゃんは黙々
と演習問題に取り組む。正答率は上がらない。
「こんなん、受かるためだけだったら、どっかの学校で集中的に試験対策のテ
クを入れ込んでもらったほうが、絶対に速いのに。俺も確か、『簿記三級三日
間マスター』と『簿記二級五日間マスター』のコース受けて、すぐ両方受かっ
たぞ。体育会系だから、その辺、旨くやろうとは思わないんかなぁ。」などと
考える。

今尚、努力が苦手で、極端に気が短い。お客様からの今の自分に対する身に
余る評価は、かつて巡り合った素晴らしい先達に、よく言えば導かれて、悪く
言えば嵌められて、自分の意思に反して扱かれた結果と理解している。だから、
揺れ動くテーブルに向かって尚、寸暇を惜しんで、ペンを止めない体育会系の
お兄ちゃんは文句なく素晴らしい。若くして流さなかった汗は年老いて涙とな
って流れると言う。本当にそうだと思う。

お兄ちゃんの将来の夢は何なのか。多分、その選択肢に、いい歳をして新幹
線の中で、ヘビメタ口パクのオヤジは含まれて居ないだろう。もう真っ平御免
と言うほどの扱きを多少なりとも受けたから、昼間っからこんな好き放題をさ
せて貰えるようになり得たと思える。望まぬ努力でさえ、まあまあ実る。まし
てや、自分の意思によるのなら。
だが、変なオヤジを見て、そのような可能性に思い至る若者はあまり居ない。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

最近、お問い合わせ増加中の、販売系の案件。
弊社がどのような考え方で企画を立案するかをご理解戴ける
解説ページがあります。

【大好評 中小零細企業の生き残りの定石「差別化」解説ページ】

全部で3ページにまたがる力作です。
中小零細企業の取るべき差別化策とは一体何なのかが、
(ヒネリはありますが)平易な文章で説明されています。

中小零細組織がやっちゃいけない差別化策や、
どこまで行っても分かることのない顧客ニーズ。

あまり本には書かれていないことにガンガン踏み込む…
3ページのうちの第1ページはこちらから。
http://www.msi-group.org/MSI-Differentiation-vol1.html

【新設! 中小零細企業の稼ぐ営業組織づくり 解説ページ】

人の数も質も不足気味の中小零細企業の営業組織
アタリがなかなか出ない営業経験者の中途採用。

それを前提に、営業機能の組織ぐるみの強化をどのように図るか。
その答えを4ページに渡って用意してみました。

そのプロセスで、顧客満足の発生の原理や測定方法まで考えて
営業活動全体を見直すヒントをてんこ盛りにしてみました。
4ページのうちの第1ページはこちらから。
http://www.msi-group.org/MSI-Sales-Strategies-vol1.html

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【創刊以来最長の6話連続シリーズ 200話発行記念特別号】

前代未聞。未曾有の超ロングシリーズ
『斜陽の樹影』全6話をお届けすることとしました。
5月スタート。

名著『下流志向』をモチーフに、
延々展開される200話発行記念企画。
『下流志向』のサブタイトル
「下流志向 学ばない子どもたち働かない若者たち」
の具体例を弊社事業の観点から見つめます。

今回は第一弾と第二弾の内容をちょっぴり紹介します。

第一弾 200話 『伸びる棒』
超現実主義の小説との出会い。高校時代、提出した現国の課題の作家研究を
読んだ先生から、「当分、この作家の小説を読むな」と言い渡されて、徐々に
気付き始めた、学びの本質。成長し得る自分の自覚。こんな話をまとめた一本
です。

第二弾 201話 『不愉快な穴』
勉強会の課題図書を読んだという参加者。読み流し、自分が理解できたとこ
ろだけについて感想をいい、ことを済まそうとする。「分からないことを、存
在しないことにできる」と言う、特殊な能力を身につけた若者に対して、企業
は何をできるのかを考えてみます。

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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
発行しています。
(http://www.mag2.com/ )
毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず 9年目に突入。

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次号予告:
第196話『水底の想い』 =サウンド・スペース(2)= (3月25日発行)
iPODを携えての初出張。シリーズ二回目は帰路ののぞみで見た風景から、
自分の日常を支えているものについて考えてみました。前号にも増して、シリ
ーズタイトル通りの「サウンドなスペース」を考える号です。再びかなり叙景
的な文章をお楽しみ下さい。(完)