291 懊悩の翌日

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経営コラム SOLID AS FAITH 第291号
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 ご愛読ありがとうございます。第291話をお届けします。

 前号からPR欄でご案内を始めた、弊社の事業ノウハウをお教えする連続セ
ミナー『超実践塾』第三期は、主催者側でも受講者募集活動が展開されている
様子です。雑誌の記事などで、資格を取得してもなかなか食べて行けないサム
ライ業の方々の話を見ることが増えました。記事にあるような状況の方々に、
事業を進めていく上での方法論や着眼点を提供できるのにと、ページを捲って
は思っております。

 経営支援系の仕事で顧客開拓に支障を感じている方々をモチーフにした当コ
ラムの話を、PR欄に幾つか並べてみました。順番に読み返してみると、色々
と見えてくることがあるように思えます。是非、ご高覧下さい。

 今回の第291話は、端的に言ってしまうと、タクシーに乗るか乗らないか迷
ったと言うだけの、小心者の心持を描写した内容です。くだらないと言えばそ
の通りなのですが、零細事業者の事業活動処々に於ける経営方針の浸透と言う
意味では、一応意味ある逡巡であったろうと思っております。アウトソースの
失敗の原理と重ねて描いてみました。お楽しみに戴けましたら幸いです。本文
に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返
事の目標納期は5営業日!!
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その291:懊悩の翌日

 月に二回、札幌から上京して、そのまま新幹線に乗り、静岡に入る日がある。
仕事を終えて東京に戻るのが深夜。新横浜、品川と進むにつれて漆黒の車窓が
ネオンの夜景に変わる。この景色を見ながら考えていることがある。
 
 アウトソースはなぜ失敗するかを聞いたことがある。内製に比して、その道
のプロのコストは低く、品質も良い。作業上の秘密も、「売上」と言う明確な
報酬を受け取る者の方が、内部の者より寧ろ守られやすい。会議などで業務の
アウトソースがテーマとなるたびに、必ず検討される事項。それでもアウト
ソースが失敗するのは、元々その業務を行なっていた内部の組織に他の仕事を
きちんと割り振らないためと言う。雇用を守りつつ外部にコストを払うなら、
内部で浮いた時間や労力を活用して新たな利益を生まねばならない。
 
 車輪付の重い旅行鞄を棚からよいしょと下ろす。東京駅から新宿駅に向かう
中央線は深夜近くには、やたらに頻度が低い。電車なら新宿駅からマンション
までゴロゴロと鞄を引きずって歩かなくてはならない。取り急ぎ、丸の内口方
向に向かう。中央線のエスカレータを昇って電車で帰るか、行過ぎてタクシー
乗り場に向かうか判断の時が迫る。星空が見える快晴。タクシー利用の条件は
少ない。売上減少の際の金繰りの苦労を忘れた訳でもない。節約はやはり美徳
と呟いたりする。
 
 経験長い個人タクシーの運転手は個人事業主の鑑であることが多い。そして
人や街の移ろいをクライアント以外で聞ける貴重な情報源。ソリアズのネタを
拾えることもある。社員らに高額の商品やサービスの付加価値を楽しめるよう
になってもらわねば、中小零細企業が高く売る戦略を発想することは困難だと、
クライアント先の社長も言っていたではないか。震災後に極端に萎縮した経済
を支えることになる貴重な消費。

『千円札は拾うな』にも電車に乗らずタクシーに乗る効用が述べられていなか
ったか。しかし、この書籍は今ひとつ価値観に同意できなかったのではなかっ
たか。電車利用とタクシー利用でディベートが開かれたら、かなり好い線行け
るななどと考えつつエスカレータ口に辿り着く。11時45分。

 タクシーの運転手の話は、ふんふんと頷けるもっともなものだったが、特に
仕事に活かせることはなく、ソリアズのネタにもならなかった。車の後ろに流
れ行く景色にも特別の発見はなかった。翌朝、「さぁて、働くとするか」と
iPODのスイッチを入れ、浮かせた時間と体力を現金化できる当てもなく、
手帳の予定通りにクライアント先に向かう。
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次号予告:
 第292話 『マソキズム』 (3月25日発行) 
 リスクをきちんと計らずに新規事業に臨む経営者について考えてみました。
久々の『下流志向』ネタの登場です。ご期待下さい。

(完)