500 続・無知の商品化 500話発行記念特別号 =回路明察= ft/特別原稿 『ヨロズヤの小さな起業』 =日日是考日~師匠が教えてくれた4つのこと~=

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経営コラム SOLID AS FAITH 500話発行記念特別号 第一弾
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目次 
1 ご挨拶
2 500話 『続・無知の商品化』 =回路明察(1)=
3 特別原稿 『日日是考日~師匠が教えてくれた4つのこと~』
  第一話 『ヨロズヤの小さな起業』
4 『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR
5 MSIグループの仕入完了報告
6 あとがき
7 次号予告
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☆注意:お読みになる際には、枚数がかさみ恐縮ながら、プリントアウトの上
お読みになることを、心よりお勧め申し上げます。
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1 ご挨拶

 御愛読御礼申し上げます。500話にとうとう到達しました。

 1年に24話ですから、4年で約100話。そして約20年で500話です。実際には
先日めでたく21周年記念特別号の前篇も発行し、ズルズルと、一方でキチキ
チと、当コラムを維持することができています。本当に皆様の御蔭です。読
者のあなたがこのコラムを読んで、それが同意だろうと反感だろうと何かの
考えを抱き、職業人としての糧にして下さっていることが、結果的にこのコ
ラムを間違いなく支えています。

 そして、弊社合資会社MSIグループの周囲にいる方々からも各種のご協力
やご指導をいただくのは勿論のこと、各話に登場する大小様々なネタをご提
供いただいています。当コラムはそのようにして21年間を歩み続け、今に至
っていると思っています。創刊当初は「100話でネタもまあまあなくなるだ
ろうからその辺で終了」などと考えていたのが、振り返ると幻想のように感
じられます。
 
 500話にここ最近の恒例で何かのシリーズをぶつけようと思い、そのテー
マを1年以上考えあぐねてきました。考えに考えた末、『15周年記念特別号 
=Congenital Auto-cruisers=』で早くも先取りしていた無意識の話を、細
かく実務に合わせて取り上げてみようと決めました。社会は知識情報化がど
んどん進展しています。どんどん進展するだけではなく、その進展が加速し
ているのが肌身に感じられます。知識情報化は、簡単に言ってしまうと、合
理的で理性的な原理と技術で一昔前の夢の科学の世界を機械が実現してくれ
る変化です。逆に言えば、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』にある
ように、意識の働きによる「機械的な分野」は生活面でも仕事面でも、人間
が機械に譲らざるを得なくなる時代の到来ということです。
 
 生物としての人間のすべての活動を支配している無意識。会社の顧客との
関係性を考える上でも、会社の働き手との関係性を考える上でも、無意識の
働きを直接的に事業に取り込まなくてはならなくなってきました。その無意
識の呼び名として最近少々廃れてきた流行言葉が、「インサイト」です。
500話到達を記念して発行する4話シリーズ『回路明察』では、インサイトの
考え方のビジネス現場での適用を考えてみることにします。お楽しみくださ
い。
 
 また、4回シリーズの特別原稿は「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥
田美幸による、彼女が独立から約半年近く取り組んできたテーマ分野につい
て語る4話シリーズ『日日是考日~師匠が教えてくれた4つのこと~』です。
奥田は将来当コラムを引き継ぐ予定なので、500話の節目でお披露目といっ
た位置づけでシリーズを書くこととなりました。通常号で『萬屋日和』とい
う近況報告を既に始めていましたが、今後はさらに当メルマガ全体における
構成比率が高まっていく予定ですので、よろしくお付き合いをお願いします。
普段と一味違うソリアズ記念特別号をお楽しみください。

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第115話『無知の商品化』 http://tales.msi-group.org/?p=167
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2 その500:続・無知の商品化 =回路明察(1)=
 
 自動車購入の価格交渉をする心理学の実験で、硬い椅子に座った被験者は
ディーラー相手に強硬な交渉をし、ソファに座った被験者は価格の引き上げ
に柔軟に応じるという結果があるらしい。やわらかな感覚は、気持ちまでや
わらかにする。こういった現象は各種の実験で多数発見されている。行動経
済学などでは「プライミング効果」と呼び、特に感情面での効果については、
「感情プライミング」と呼ぶことがあるらしい。
 
 心理学者ペルハムによる実験で、人間が自分の何かに関係性や類似性を持
つものに親近感を抱き、無意識のうちにそれを選択しようとすることが明ら
かになった。米国の調査では、デニスという名前の人物は、他の名前の人物
に比べて歯医者(“dentist”)になる確率がわずかに高く、ローレンスと
いう名前の男性やローリーという名前の女性は弁護士(“lawyer”)になる
確率がやや高いという。人間には無意識の行動プログラムが存在していて、
その時々の五感からのインプットや元々持っている価値観などに従って情報
処理を行なっていることが分かる。そこには合理的な理由や理性的な根拠も
存在しない。
 
 おまけに人間の意識は思考も判断も行なっていないことまで明らかになっ
た。膨大な処理能力を持つ無意識の情報処理結果を意識はほんの少し掻い摘
んで要約しているだけだという。それはまるで、2時間を超える長編映画が
本来の「無意識」の処理内容なのに、それを15秒の宣伝動画で分かった気に
なっているのが「意識」のようなものだ。人間全体が「無意識」によって勝
手に動かされているジェットコースターで、それに乗って振り回されつつ、
自分が運転していると思い込んでいるイタい奴が「意識」だと考えても良い。

 マーケティング系の用語は誰かが我先にと米国のトレンドから見つけてく
るのか、やたらに消費されて消えていく。最近の流行の一つは「インサイト」。
どうも「人を動かす隠れた心理」のような意味で使われているらしい。人間
は理性的に合理的に考えて行動するものだし、そうでないならそうせねばな
らないと長らく考えられていた。けれどもマズローが欲求を見出し、フロイ
トが無意識を見つけ出し、脳科学の研究が進んでから、人間の言動の信用は
ガタ落ちだ。座る椅子の堅さによってさえ言うことがコロコロ変わるのでは
話にならない。インサイトは人を動かしてはいるものの、多分「心理」でさ
えない。本人も全く分からない単なる複雑な処理パターンの結果を外部の人
間が観察できるだけのことだ。

 人間の認識も学問も複雑な事象に遭遇すると、取り敢えず単純なモデルを
創造して当てはめる。殆ど解明できていない回路で勝手におかしなことを出
力する機械が人間なら、その購買行動の理解には精度の高いターゲット・カ
スタマーと言うモデルが絶対に必要になるだろう。インサイトについて本人
に聞くことも説明させることも無意味なのだから。

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3 特別原稿 『日日是考日~師匠が教えてくれた4つのこと~』
  第一話 『ヨロズヤの小さな起業』

ソリアズ読者のみなさま。こんにちは。会社の萬屋 企画改善請負本舗の奥
田美幸です。先月末に発行された21周年記念号のあとがきや通常号のPR欄に
連載している『萬屋日和』に登場しており、有難いことに既にご存知の方も
いらっしゃるかもしれません。500話発行記念特別号の1話目となる今号から、
4話シリーズで原稿を書く機会をいただきました。

題して、『日日是考日~師匠が教えてくれた4つのこと~』。今夏個人事業
主として独立を果たし、その1年ほど前から師匠・市川の下で修行を開始し
ており、師匠から教わったことは4つでは到底収まりません。ただその中で
もヨロズヤとして事業を行なっていく際の「核」となる教えをそれに基づ
いて行なった取組みと合わせて紹介してまいります。その前に、1話目とな
る今号は、私の生い立ちから独立の経緯について振り返ってまいります。
ぜひご笑覧ください。

平成の初め頃、専業主婦の母とグラフィックデザイナーの父のもとに4人姉
弟の次女として生まれました。父は個人で仕事をしており、住居の1室が職
場も兼ねており、働いている様子を見ることは身近なものでした。その後、
私が4歳の時に両親は離婚。結婚後10年近く働いていなかった母は働きに出
ることになりましたが、就職に苦戦したことは想像に難くありません。幼い
ながら、会社に頼らず稼げる力を身につけることの重要性を感じていました。

そのせいか、小学生の頃から早く大人になり自分で稼げる力を付けたい、働
きたいという思いが強く、高校生になりアルバイトを始めた際、自分でお金
を稼ぎやっと大人として認められたという実感が湧きました。鮪は泳ぎなが
ら海水に溶けた酸素を常に取り入れ呼吸しているため、泳ぎを止めると窒息
死をすると言いますが、まさに予定が埋まっていないと死んでしまうと思う
ほど、色々なアルバイトを掛け持ちし働いていました。中でも、ダイニング
バーのアルバイトは、個人経営のお店であるが故にオーナー経営者との距離
が近く経営というものを身近に感じ、さらに客層に合わせた接客をすること
の重要性を認識するなど非常に多くの学びがありました。

新卒で創業3年目のベンチャーの保険代理店に入社。営業部に配属となり、1
日700~800件の電話営業に従事します。入社半年で総務部に異動し、その後
会社拡大に伴う人事部門新設に手を挙げ、念願の人事部に異動。新卒、中途、
アルバイト採用をはじめ、労務管理の経験もさせていただきました。

月日が過ぎ、2016年に今の師となる市川と出会います。市川からの助言や教
えはもちろんのこと、振り返ると、父の独立や母の就職活動での苦労、ダイ
ニングバーでのアルバイトの経験が独立を後押しした大きな要素となってい
ました。師匠からは事あるごとに、「独立して楽しいか?」と聞かれますが、
その質問に応えると市川は決まって、「こんなに独立に向いている人間はい
ない」と言います。独立を決意した2019年の夏。実在のパチンコ店を題材に
商圏調査の方法を習った時の高揚感は今でも忘れられません。

姉弟子である合同会社アイソリューションの山口佳織が以前インタビューで
オーナー経営者や個人事業主の働き方を「ワークワークバランス」と称して
いたのですが、私にとっても働くことがまさに生きることの一環であり、も
ちろん保証や安定がないことによる不安はゼロにはなりませんが、それすら
も楽しんでいる自分がいます。前職の同僚に向けてあまり大きな声では言え
ませんが、会社員時代より100倍楽しいのです。

今までの経歴の中で、人事職の経験が長いためか、知り合いの方に独立のご
挨拶に伺うと大抵、「採用代行として独立したと思っていた」と言われます。

師匠からの教えの一つになりますが、「我々の仕事は“コンサルタント”と
は違う」と市川はよく口にします。一般的なコンサルタントとは異なり、
ターゲットとなる小さな会社の経営者のお悩みを解決するため実践可能な企
画や請負をしつつサポートしお金を稼ぐ働き方です。マーケット・インの考
え方を軸に、経営者のニーズに沿ってご提案していくため、全く同じ処方箋
はなく、独立してから早5ヶ月が経過しましたが、1日たりとも同じ日がなく、
新鮮で充実した日々であることに喜びを噛みしめています。

さまざまな業界業種の現実や経営者の考えを知るにつれ、自分の見ていた世
界の狭さを実感し、死ぬまで学ぶことは止められないことをひしひしと感じ
ます。できないこと、知らないことが多く、ご迷惑をおかけすることも多数
ありますが、学びをとめず、丁寧に確実にできることを増やしていき、その
学んだことを元に小さな会社の経営者の方にお役に立てれば、望外の喜びで
す。

徒然日記のような稚拙な文章に最後までお付き合いいただき、誠にありがと
うございます。次回はヨロズヤの事業を軸にした「師匠が教えてくれたこと」
についてお話ししていきます。

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4 『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。
社会における知識情報化やICT化が進んでいます。
組織内で人間でなければできない業務が明確かつ限定的になってきており、
小さな会社でも人材活用の重要性がより増してきていると感じます。

そのような状況の中で業務上の人間の役割を検討し、
小さな会社の人材活用法を『人材活用のレポート』にまとめました。
以下のURLからダウンロードしていただけます。ぜひご一読ください。

https://kaisha-yorozuya.support/stockpile/

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5 MSIグループの仕入完了報告

 2013年10月31日に、ソリアズのネタとなっている書籍をテーマに14周年記
念特別号を発行したのをきっかけに、その次の通常号から登場した「MSIグ
ループの仕入完了報告」。その号の発行に先立って1年以内ぐらいに読んだ
書籍を紹介することとしました。

 今年1月からは実験的に毎号2冊から3冊ずつの紹介となりました。2冊の
時には、読んだ本が乗り切らず、「試しに3冊にしてみよう」と始めてみま
したが、コンテンツの質は一応悪くないものの、必ずしも読後に弊社代表の
市川が共感していない趣旨の書籍も紹介することになってしまっています。
「仕入」したのは間違いありませんし、多様な書籍やその多様な内容を紹介
することも悪くないものと考えてそのまま続けています。

 現在「キメハラ」という言葉が流行るほどに『鬼滅の刃』が流行していま
すが、今年6月10日発行号には逸早くコミックの『吾峠呼世晴短編集』を紹
介するなど、それなりに時代のトレンドを反映はしているように思っていま
す。
 
 通常号では単に書名と著者名のみ紹介することにして今に至っています。
今回の500話発行記念特別号では、400話発行記念特別号に続いて、感想を簡
単につけてみることにします。

■『ブルーアワーにぶっ飛ばす』 箱田優子 著
 夏帆主演の映画を観て「これは原作も読まねば」と思い立ち、監督自らが
描いた絵コンテのようなコミックを買って読みました。女性のキャリア観、
地方社会の現実などいろいろな現実を突き付けてくる秀作です。

■『下積みは、あなたを裏切らない! …』 常見陽平 著
 著者には多数の著作があり、幾つかを読むとエピソードの重複がかなり気
になってきます。この著作はインパクトあるタイトルの趣旨をぎりぎり保っ
た体験談ベースの内容です。

■『伸びる子どもは○○がすごい』 榎本博明 著
 〇〇がなかなか明言されない非常に挑戦的なスタイルの書籍だと思います。
ただ示す所は多く且つ有意義で、中に一部述べられている「防衛的悲観主義」
への言及も素晴らしく、先月末日に発行した『21周年記念特別号 前篇』に
も採用しました。

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映画作品劇場鑑賞感想ブログ『脱兎見! 東京キネマ』
『ブルーアワーにぶっ飛ばす』  http://tales.msi-group.org/?p=1672
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6 あとがき

 合資会社MSIグループの設立以前から創刊していた当コラムが21周年を超
え、弊社代表市川がなし崩し的に独立をしてからも20年が経とうとしていま
す。「企業30年寿命説」を聞くことがありますが、或る程度信憑性がありま
す。それは創業者の「社長人生」の寿命そのものだからです。企業寿命が全
世界的に見ても異常に長い日本においても尚、30年の年月とともに多くの企
業に廃業の可能性が迫るほどに、事業承継は困難なことであるのだと思いま
す。

 その事業承継は、部奈壮一先生に監修いただいた拙著『これから会社を継
ぐ人のための実践ノート』でも描いた通り道程が簡潔ではなく、後継者選定
と後継者育成の二段階合わせて、10年を想定した方が良いなどともいわれま
す。最近巷でよく言われる「潰すぐらいなら人に譲れ」戦略も、選択肢とし
て非常に効果的なものと思いますが、軽々に進められるものではありません。

 多くの会社に対して「ゴーイング・コンサーン」を説くことが多いのに、
自社合資会社MSIグループは代表市川の引退の際に廃業予定という「紺屋の
白袴」/「医者の不養生」状態が創業15年を過ぎた辺りから気になっていま
した。そして、30年の寿命の後継者選定と育成を余裕をもって開始するタイ
ミングであるラスト10年が始まりました。
 
 そんな時に現れたのが奥田美幸です。奥田は所謂「ジアタマ」的に非常に
優秀で、呑み込みが早く、共感性が低くて、おまけに内田樹の『下流志向』
に言う「労働主体」そのものの人間です。弊社で言う「業務系対人コミュニ
ケーション企画請負業」の実務遂行と維持にこれほど高い適応性を持ってい
る人間は過去にもいませんでした。まだまだ学んでもらわねばならないこと
も多くありますが、独立後半年も経ずに弊社の既存のクライアント企業経営
者の方々にもお付き合いをしていただけるのは、彼女の高い適性と膨大な努
力を相応にご評価いただけているが故と考えています。
 
 このたびの『500話発行記念特別号』の4回シリーズ終了後、従前の『萬
屋日和』の近況報告に加えて、奥田美幸が当メルマガの新設記事枠を担当す
る予定でおりますので、是非お楽しみになっていただきたく思っています。
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電子書籍 『これから会社を継ぐ人のための実践ノート』
 部奈壮一監修/市川正人著 https://es-books.jp/483/
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
 発行しています。
 (http://www.mag2.com/ ) 
毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まずまる21年。
そしてとうとう500話到達!
マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)

★弊社代表のコラムが色々満載。
 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める新設ブログ。
 『脱兎見!東京キネマ』もこちらで御覧下さい。
 http://tales.msi-group.org/
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 http://msi-group.org/msi-profile/saf-index/
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7 次号予告
 シリーズ『回路明察』の第二弾は、『遅参者の発見』と題して、喧伝される
「インサイト営業」の方法論と実際を検証してみます。ご期待下さい。

(完)