350 無邪気な時代 =1984年の人々=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第350号
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 ご愛読ありがとうございます。第350話をお届けします。

 北海道では子供達の短い夏休みも終わり、漸く本州並の暑さが去ろうとして
います。札幌と東京を行き来する飛行機の混雑状況も、平常状態に落ち着いて
きたように感じます。弊社では、半年程度から年単位で継続して組織の改善を
手がける仕事を軸に事業を営んでおりますが、今年春頃より、書き物などのス
ポット案件が増え、対応に追われております。

 これらのお引き合いをありがたくこなしていくと共に、通常の継続案件の開
拓にも動かなくてはと考えています。じっくりと時間をかけた社員の動機付け
向上とスキル向上、そして、その結果として進行する組織改善。ご関心を賜れ
ましたら、ご相談は無料ですので、是非ご一報下さい。今号に紹介されている
ような安価で効果ある動機付け型のセミナーのスポットでの実施や、特定テー
マを題材にしたボトムアップ型課題解決の取り組みなど、その場で対応策の案
出を致します。

 15周年記念特別号は、コンセプトを『Congenital Auto-cruisers』と決めて、
その内容を10冊程度の書籍の感想を編み上げる形に構成することと致しまし
た。当コラムのネタになっていない数々の影響力ある書籍の内容に触れながら、
全体を一つの“人間理解”のモデルにまで編成することに挑戦したいと思って
います。今後登場するソリアズの各話に通底する考え方になっていくものと思
います。PR欄に登場する書籍名を挙げてみました。是非、ご覧下さい。

 今回の第350話は、『1984年の人々』と題した二回シリーズの第二回目です。
1975年に『文藝春秋』誌上に発表された『日本の自殺』に登場する哲学者、オ
ルテガ・イ・ガセットの話から、連想した後継経営者の立場についてまとめて
みたものです。お楽しみ下さい。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしてお
ります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その350:無邪気な時代 =1984年の人々(2)=

「そうだったんですか。うちのオヤジも何でも口を出してくるんですよ。老害
が入っていますよ、はっきり言って。うちの会社が自分のものになったら、市
川さんにもがっちり支援して欲しいと思っていますよ。もうあと二年ぐらいで
すから、待っていてください」。
 或るクライアントでは13年も案件を継続的に戴いていて、その間に最初に依
頼すると決めて下さった先代社長が亡くなって、息子さんに代が移ったと私が
説明すると、今年40になったばかりの専務は食事の席で私に二年後の見込み案
件について告げた。

 専務の想像と異なり、私は引退間際までその先代社長に老害を感じることが
なかった。先代社長が「ヒトによる差別化を進めないとうちのような会社は生
き残れない」と心に決め、その判断に従って、前代未聞の施策を幾つも打った。
徐々に効果は累積し、元請企業の幹部まで見学に来るような会社になった。差
別化は効いた。そして他に類例を見ないような組織とその運営形態が出来上が
った。

 他に類例を見ない自社の経営の説明を最初は執拗に迫ってきた先代社長も、
癌が発見されてからは、あっさりそれを諦め、「これからも頼みます」と仰っ
て勇退された。何度も同じ説明をした記憶は残っているが、老害に振り回され
たことはない。先代社長の勇退後、私の突拍子もない発想、原理的には正解の
筈の奇策、それらを熟慮して再検討を迫る人はいなくなった。以前から知る後
継社長に言ったが最後、それが実現する確率は格段に上がった。大胆と慎重の
バランスが常に意識されるように否応なく変わった。

 グループ一九八四年による『日本の自殺』は、スペインの哲学者、オルテガ
・イ・ガセットが大恐慌に世界が喘いでいた時代に書いた『大衆の反逆』を引
きながら、文明の没落について説明した文章がある。
「大衆的人間とは、『甘やかされた坊ちゃん』である。つまり、親の世代が築
いた遺産である文明を相続するだけで、自らは文明に対して何らの責任を持と
うとはしない。文明を築くという苦労もなく、ただ当り前のように享受してい
るので、そう簡単には崩壊しないと思い込んでいる。それゆえ、大衆は安易に
文明を否定してみせる。しかし、甘やかされた坊ちゃんには、文明を建設する
能力はない。(中略)国家という組織が不安定なものだということに気づかず、
自分には責任があるのだということをほとんど感じない」。

 変化する環境に適応せねば組織は淘汰される。間違いない真実だが、徒な改
変の言い訳として、無意識にこの言葉を言い出していないか、本を閉じてじっ
と自省する。
 
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

本年10月末日発行!
15周年記念号の企画が決定!
コンセプトは『Congenital Auto-cruisers(先天的自動操縦装置)』。

14周年記念号で紹介した書籍の著者群は10人。
そのうち未だ言及が為されていないままになっている
前野隆司が唱える衝撃的な受動意識仮説の内容を軸に
人についての企画を立てる弊社の事業の
変更余儀なくされた部分を描いてみます。

章立て一覧(仮)をご紹介します。
ご期待下さい。

■第1章:忘れがたい書籍
『ぶざまな人生』・『松本道弘の英検1級突破道場―英検1級から黒帯への道』

■第2章:構造主義の悦楽
『こんな日本でよかったね 構造主義的日本論』

■第3章:受動意識仮説の衝撃
『脳はなぜ「心」を作ったのか 「私」の謎を解く受動意識仮説』

■第4章:脳科学による仮説の検証
『脳には妙なクセがある』

■第5章:催眠技術との出会い
『読むだけでやせる 驚異の催眠ダイエット』

■第6章:無意識の理解
『催眠術の日本近代』・『つながる』

■第7章:学習と選択の視点
『不愉快なことには理由がある』・『日本人が一生使える勉強法』

■第8章:変性意識の周辺
『しあわせ仮説 古代の知恵と現代科学の知恵』・
『ヒトラー演説 熱狂の真実』

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14周年記念特別号 http://tales.msi-group.org/?p=635
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『だから日本はズレている 』 古市憲寿 著
■『ジェフ・ベゾスはこうして世界の消費を一変させた 』 桑原晃弥 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
 発行しています。
 (http://www.mag2.com/ ) 
毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け15年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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 http://archive.mag2.com/0000019921/index.html
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 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
 http://tales.msi-group.org/?cat=2
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次号予告:
 第351話 『曇天の霹靂』 (9月10日発行) 
 大学時代の教科書の動機付け論を偶然読み返して、最近の動機付けセミナー
のことを振り返ってみました。ご期待下さい。

(完)