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経営コラム SOLID AS FAITH 第578号
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ご愛読ありがとうございます。第578話をお届けします。
春一番が全国各地で吹き、暖かい日が時々訪れるようになりました。早い
ものでもうすぐ3月です。
2024年の年明け第1号から始まった3回シリーズ『ホルミシスの魅惑』は
2月に入って無事終了しました。このコラムをお読みいただいている一部の
経営者の方々の関心を賜ったようで、ホルミシスという概念についてもご質
問いただいたりしました。ご関心に感謝申し上げます。
過去の号の前書きでも繰り返している通り、ホルミシスは学問領域の名前
で、「冷たさ、熱さ、重力変化、放射線、食事制限、運動など害や苦痛を起
こす刺激を少量から中程度まで与えることで得られる有益な効果を研究する
科学分野」とされています。必ずしも企業組織において社員が心身に負荷を
かけて頑張ることを指しておりませんが、人間の場合、ホルミシスの一主要
事例として「運動」を『ドーパミン中毒』の著者アンナ・レンブケも挙げて
おり、喩えや拡大解釈として、「能力を引き上げるために心身に負荷をかけ
ること」も含めて考えることとしてみました。
努力することや頑張ることを厭う社員やアルバイト・スタッフが増えてい
るという話を時々耳にします。本来、これらの事柄は構造主義的に見ても理
屈抜きの当り前のこととして考えるべきことのように思えますが、仮に何ら
かの科学的根拠を示す必要がある場面が訪れた際には、ホルミシスの概念を
挙げてみるのも良いのではないかと思われます。
3回シリーズの『ホルミシスの魅惑』を終えて、今回は『持ち物検査』と
題して中小企業の株主のやるべきことを考えてみます。やや久しぶりな感じ
がしますが、多数のエピソードが各々最大2段落で収まって折り重なる構造
の話になりました。全体を通して主軸となっている主旨を一緒にお考えいた
だければと存じます。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感
想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その578:持ち物検査
「簡単に言ってしまうと馴染みがないってことですね。ソヴィエトは遥か昔
に観光旅行で行きましたけど、あとは全く知らない国なので。豪ドルも一回
は試しましたけど、こちらも馴染みがない上に国の成り立ちがイマイチ好き
になれないのが引っ掛かりますね」。
証券会社の相談コーナーで私は眉を微かに顰めて告げた。ノルマでもある
のか、担当者は頻りにBRICsを薦める。しかし富裕層でもない私は自分がよ
く知らないものに限られた資金を投じたいと思わない。すると担当者は豪ド
ル建ての投資信託ならリターンが大きいと薦めてきた。私は「よく知りませ
ん。歴史上イギリス連邦の島流しにあって動物も現地人もどんどん虐殺した
人々によって建国された国としてぐらいしか」と首を傾げた。
貸会議室を探していて、スペースマーケットというアプリをクライアント
の若手社員に教えて貰った。色々と物件を眺めていると、レビューの評価も
人気も高いのは、オーナーが部屋の用途とその利用者のニーズをよく理解し
て肌理細かくメンテナンスしている部屋であると想像できた。ニーズに合わ
せた内装にし、ニーズに合わせた備品を切らさない。マーケティング・ミク
スそのものだよなとスマホの画面を見ながら頷いた。
最近バフェットの本を数冊読んだ。彼は投資を検討する企業について、そ
のビジネス・モデルをよく理解した上で、過去の業績や経営者の性格まで調
べ尽くす。「ウォーレン・バフェットの6つの投資ルール」などはよく知ら
れているが、具体的な株の運用方針以前に、投資先企業をよく知るための努
力が、凡人の株投資とは大きく異なっている。「あなたが理解できないビジ
ネスには、決して投資してはならない」こそが、第一義の金言であろう。
長年のクライアント企業のオーナー社長と後継者の話をした。この社長に
は娘が二人いる。土地や設備の資産額が大きいので、社員によるMBOにはか
なり無理がある。かといって、取引先などはこの企業の差別化されたビジネ
ス・モデルをよく理解できないので、買収しても維持していくことが困難で
あろう。
長女が高校生の頃に、会社のオーナーについて説明した。「ならなくても
良いが、その時は会社を畳む時だ。働いている人達は一旦無収入になって、
路頭に迷うことになる」と告げたら株主になることは承諾した。自分の人生
を左右するような投資先。それを早く知った方が良いと、社長に長女をバイ
トの来させるように既に1年以上伝えているが、父娘間の人間関係が希薄な
のか「大学に入ったら…」、「夏休みになったら…」と先延ばしが続いてい
る。企業経営の基礎や現場の観察ポイントなどを予め知っていなければ、会
社に現れてもただのバイトと変わらない。こうして「理解できないビジネス
への投資」は生まれる。
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】
■『ポスト・ヒューマニズム …』 岡本裕一朗 著
■『デジタル・ファシズム』 堤未果 著
■『OODA LOOP(ウーダループ) 』 チェット・リチャーズ 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
MSIグループ 市川正人
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次号予告:
第579話 『ネオテニー以前』 シリーズ『荒ぶる神々』
(3月10日発行)
中小企業庁は中小企業の振興を図る組織です。その中小企業庁が考える施
策の一部の妥当性を検証してみる2回シリーズ『荒ぶる神々』の第1回目は
中小企業版のネオテニーについて考えてみます。
(完)