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経営コラム SOLID AS FAITH 第594号
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ご愛読ありがとうございます。第594話をお届けします。
今年もあと2ヶ月あまりとなりました。大規模地震とそれを救おうとする
人々が引き起こした羽田空港での航空機大事故、さらにそこで実行された奇跡
の脱出劇など、この上なく不穏で渾沌としたスタートを切ってから、世界規模
でも国内でもさまざまな事象・事件が起き、経済全体は勿論、中小零細企業の
経営環境にも相応に大きな変化が色々と訪れました。
今月末日には当コラムの創刊25周年記念特別号が発行されます。少々例年の
進行に比べて遅れていますが、原稿を鋭意準備中です。テーマは中小零細企業
の生産性です。ただそれを考えるには、日本全体の生産性が低いと巷間で吹聴
される中で、海外と日本の生産性の実質的な比較にも言及しない訳に行かず、
そもそもの生産性の測り方にも言及しなくてはなりません。盛りだくさんで、
本来のテーマの中小零細企業の生産性の議論の割合がかなり減ってしまった構
成になってしまいましたが、ネット上の議論や記事で見かけることが少ない論
点を提示することができる内容になったのではないかと思っています。
中小零細企業の現場で「生産性」という言葉はそれほど頻度高く議論される
テーマではありません。寧ろ、日常レベルの「ムダ取り」や「5S」、そしてな
かなか導入・実践しにくい「ICT化」などが実現した結果として「生産性」が
意識されることがある程度に思われます。しかし、巷間では日本全体のGDPの
問題とリンクして、生産性の話が引き合いに出され、さらに生産性の話を突き
詰めると一部の「識者」と称する人々の「中小企業悪玉論」によって、中小零
細企業は消えてなくなった方が良いという暴論が展開されることさえあります。
今回の周年記念特別号では、そうした「自虐的“日本はもうダメだ論”」や
「中小企業悪玉論」についても文字数の許す範囲内でじっくり考えてみたいと
思っています。悪意ある暴論を見知っている中小零細企業の経営者の方々には
多少なりとも溜飲の下がる内容であるかと思っています。ご期待ください。
今回の号は「試される資産」と題して、中小零細企業の抱える遊休資産につ
いて少々考えてみたものです。一応、インフレなどの関係から不動産の価値は
上昇している局面がニュースなどでも報じられていますが、ビジネス用途で考
えると、ネット上の無限の敷地が手に入り、そこにいくらでも店舗や案内所を
設けられるようになった今、不動産の価値は激減していって不思議ありません。
最早、「リアルでなくてはどうしても実現できない用途」でしか不動産はビジ
ネスに用いられないことになっています。遊休不動産の活用は以前より困難に
なっていると考える方が理に叶っています。
そんな中で日常の中で見かけた大きな寺の境内脇の打ち捨てられた“地面”
を見て考えたことをまとめてみました。ご意見・ご感想をお待ちしております。
頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その594:試される資産
幹線道路に並行して住宅街を走る裏道沿いに歩くと、仏寺の長い塀が始まる。
ふと塀に組み込まれた告知板を見ると、「体幹トレーニング 於:本堂」と書
かれたポスターが掲示されていた。門の脇には江戸時代の街角にありそうな高
札が設置されていて「定例法座」の案内がされている。毎月一回。場所は当山。
この寺は学校法人を持っていて幼稚園も経営していたが、園児が集まらなくな
って閉園して久しい。開いた門から覗くと境内は広い。
歴史で習う門前町や寺内町を想像すると仏寺は人々の生活の中心にあった。
市が立ち人々が寄り集まるだけではなく、寺子屋が存在する教育機関でもあっ
た。本能寺の変でも分かる通り、一群の人々の大規模な宿泊先としても機能し
た。催事で人々は愉しみ、説法で日々の学びを得た。時代劇で登場するように、
境内で子供たちは遊び、恋人たちは待ち合わせをし、旅人は休養した。寺請制
度などを見ると、仏寺は現在の戸籍制度のように人々の家族関係をも把握管理
していたともいえる。人々の物心両面での拠り所だった。
歴史的な出来事や事件があったり、著名人の菩提寺だったりするような寺院
は、インバウンド観光客も加わって、今やオーバーツーリズムに呻吟するぐら
いになった。けれども全国に数多あるそれ以外の仏寺の多くは、今や檀家との
つながりも薄れ、その存在感も希薄化する一方のようだ。悩みごとや困りごと
が生じると、いきなり仏僧に相談しに寺を訪ねる者は殆どいないだろう。その
役割を今や新興宗教や自己啓発セミナー、さらにMLMグループや異業種交流会
が肩代わりしているのかもしれない。
管理会計の基礎を習うと、早い段階で登場する指標に総資産回転率がある。
さらに絞り込んで「有形固定資産回転率」もある。工場に遊休設備があるのは
経営上のマイナス。土地が遊んでいるのも望ましくない。そんな大きなマイナ
スどころではなく、商品在庫、仕掛品在庫、原材料在庫も滞留は厳に避けなけ
ればならない。元々5Sの最初の「整理」が職場に不要なものを排除するという
発想。業務に、事業に不要なものを保持してはいけない。
宗教法人の会計に私は詳しくなく、業界の専門家には私が与り知らぬ構造的
な背景が知られているのかもしれない。しかし、たまさか通りがかった仏寺の
開いた門から見える境内と呼ぶにもあまりにも広い空間。その端には車が数台
停めてあるだけで、訪れる人もいず、閉ざされた本堂の前の庭園でもない寒々
しい土地。それは何に貢献しているのか。
地方に行くと、嘗てロードサイドに次々と出現したカテゴリーキラーにどん
どん客を奪われて行ったGMSが今も辛うじて存続していることがある。多層階
のあちこちに空きスペースが広がり客は疎ら。社会に必要とされる資産の意義
に考え至る。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】
■『アイドルなき世界経済
女性の明るさと幼児進行が日本の未来を救う』 増田悦佐 著
■『消齢化社会
年齢による違いが消えていく!』 博報堂生活総合研究所 著
■『新冷戦の勝者になるのは日本』 中島精也 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
MSIグループ 市川正人
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次号予告:
第595話 『人格不詳』 (11月10日発行)
中小零細企業の新卒採用の現場で見た人材募集の試行錯誤について振り返っ
てみました。
(完)