373 あらぬ方向 =これからの生活=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第373号
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 ご愛読ありがとうございます。第373話をお届けします。

 夏っぽい日々が続くようになりました。皆様、如何お過ごしでしょうか。政
治にはあまり関心がない私ですが、安保関係の話題が周囲にも多くなって、面
倒に感じることが増えています。私は右ではないつもりですが、左らしき人々
が主張するのを聞くことがある、「憲法9条があるから戦争がなく過ごせてき
た」などと言う事実は全くないと思っていますし、「今回の法律の成立で徴兵
も実現しそうだ」などと言うのも非現実的だと思っています。

 前者は、世界史でも、「こちらが軍隊を持たなかったら向こうは攻めてこな
い」と言う理屈で、数百年単位で持ちこたえた主要国など見つからないと言う
事実だけで十分だと思います。後者は、この近代戦の時代に、ド素人には自爆
攻撃さえ技術的になかなかできないぐらいに戦闘が高度になっている事実で十
分だと思っています。私の周囲には、こうした現実的な話で話題が終わる人が
それなりに存在しますが、どうもマス・メディアなどで見る様子は異なります。
 
 戦争はしたいとも思いませんし、人を殺してみたいとも思いません。ただ、
歴史を振り返るとき、「降りかかってくる火の粉を払うこともできない国であ
ること」の実験はあまりにリスクが高く、人間一人の「私は殺すぐらいなら殺
される」と言った感情論で国の存亡を決める話には到底ならないように思いま
す。世界情勢を見ると、せめて、「降りかかってくる火の粉を除けることだけ
に特化した軍備を持つ特殊な国」を実験する方が、尊厳ある選択肢であるよう
に思っています。
 
 当コラム創刊以来最長のシリーズ『これからの生活』の第四弾は『あらぬ方
向』と題して、シリーズ中で最も“炎上度の高い”ネタを扱います。7回のシ
リーズのど真ん中に屹立するネタの配置です。先述の安保絡みの話同様に、中
小零細企業の経営を考える上での背景も現実的に考えてみるべきだと考えてい
ます。人口減の話など、よく聞かれる私の考えをまとめてみました。本文に対
するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の
目標納期は5営業日!!
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その373:あらぬ方向 =これからの生活(4)=

 新宿のデパートの最上階にある和食料理店で、私は日本語に時折英語が混じ
る変な会話をしていた。リンクトインで知り合った米国の大学教授。彼女は日
本の社会と産業を研究している。彼女が来日したので、東京訪問時に食事をす
ることになったのだった。

 終身雇用、年功序列、大学新卒一括採用、企業別組合など、彼女は日本の産
業の特殊性を挙げる。しかし、私のクライアント企業でこんな企業は見たこと
がない。私の周囲で、50を過ぎた会社員で、新卒から同じ会社で働いている人
は、10人に1人も居ない。その現実を告げても、誰に吹き込まれているのか、
「日本の多数派の特徴だ」と、彼女は譲らなかった。公認の日本通が幻想を吹
聴して回るのは、国際的情報化が普及しても尚止まない。
 
 帰国後書いたレポートを彼女は送ってきた。「落日の日本。急減する人口。
経済成長のために、女性の社会参画が必須の課題」と言うタイトル。まるで扇
情的な雑誌記事のようだ。経済は経世済民から来た言葉。国民は本当に経済成
長を目指し、落日を旭日に変えようとしているのか。私には到底そう思えない。
さらに、私は「女性の社会進出」などが経済を縮小させたと思っている。もし
かすると、カネで釣られたプロパガンダかと訝った。
 
 本田由紀による『もじれる社会』を面白く読んだ。「教育、仕事、家族、悶
える現在を照射し、新しい見取図を描き出す」と帯に書かれている。私は彼女
の見取図に全く賛同しない。あまりに奇妙なデータ解釈とあらぬ方向に向かう
解決指針に、馬鹿らしくなって久々に最後まで読まずに投げ出した。この本が
面白いのは、収録されている各種社会データだ。
 
 内閣府による「男女共同参画社会に関する世論調査」で「夫は外で働き、妻
は家庭を守るべきである」と言う考え方に賛同する回答者比率は1992年以降一
貫して減り続けたが、2012年から反転し、10ポイント以上上昇したと言う。特
に20代の回答者は20ポイント近い増加。一般職希望の大卒女子などと話すご
とに、私もこの傾向を肌で感じる。
 
 人口減の理由が識者に尋ねられる場面などをテレビで目にする。「将来に対
する不安」故と誰もが示し合わせたように口にする。しかし、日本国滅亡の危
機や全国規模の社会不安は、どう考えてももっと不安だったろう。それでも人
口は増え続けてきた。不安のどん底の時代と比べると、性別に関係なく蔓延し
た自己実現ブームと、女性の社会進出こそが私には大きな要因に見える。女性
の労働が増えてGDPにカウントされれば、短期的には経済成長はする。しかし、
長期的には減りゆく人口が確実にGDPを削り取る。

 私は社会論も経済論もジェンダー論もよく分からない。経営環境を見渡して、
人々が何を欲しているか知り、中小零細企業のあり方を考える商売。多くの
人々が言う社会は、なぜか家の外にだけ存在するらしい。ほんの数年先の近未
来の社会の一部は、自分の家の中から、まさに、眼前に広がっていると私は
思っている。

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次号予告:
 第374話 『自己実現の余地』 シリーズ『これからの生活』(5)
 (8月25日発行) 
『日本人はどこまで減るか』と言う本を以前、興味深く読みました。人口減の
問題について、再びちょっとだけ考えてみました。

(完)