348 続・花瓶の配達

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経営コラム SOLID AS FAITH 第348号
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 ご愛読ありがとうございます。第348話をお届けします。

 7月も後半に入り、前号のご挨拶でも触れた15周年記念号の企画を漸く大枠
で決めることができました。過去に例のない、14周年記念号・15周年記念号の
二年がかりの連続企画として位置づけてみました。初の試みです。題して
『Congenital Auto-cruisers』(仮)。
 
 ここ数年の間に書籍で読んだことで、大きく人間観が変わりました。そのき
っかけとなった受動意識仮説を中心に据え、弊社のビジネスの仕入材料である
書籍の幾つかのコンテンツのつながりを検証してみようと思っています。詳細
はPR欄をご覧下さい。

 今回の第348話『続・花瓶の配達』は、第182話『花瓶の配達』の続編です。
人材派遣や業務請負の最近の展開事例の幾つかに言及しながら、今から7年も
前に書いた『花瓶の配達』の内容が現実のものとなりつつある様子を描写して
みました。『花瓶の配達』と合わせてお読みいただけましたら、より楽しめる
ものと思います。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴し
たご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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第182話『花瓶の配達』 http://tales.msi-group.org/?p=236
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その348:続・花瓶の配達

「そうかぁ。人材ビジネスねぇ。言えることは超本質論になるけど。それで良
かったら、『機会不平等』って本と、『「若者はかわいそう」論のウソ』って
本の二冊を買って、読んで理解してもらえるかな。『機会不平等』の方は、二
章の派遣OLの話だけでいいかな」。
 知人の紹介で会った就活中の女子学生が人材ビジネスの分野で絶対働きたい
と言って相談してきたので、取り敢えず、書籍を読んで貰うことにした。

「紙吹雪が舞い、歓声が上がる。卑猥な雰囲気が会場内を包んだ。ペアの相方
にキスしてしまった男性もいたそうである。続いて、男性三人と女性二人のチ
ームによる『恐怖のムカデ競争』。女性を男性が前後からサンドイッチ状態に
しながらの駆けっこ」。
 半月後に彼女に会って、『機会不平等』の『派遣OLはなぜセクハラを我慢す
るか』に描かれた、1999年に問題になった住友不動産の「夜のセクハラ大運動
会」の記事を読む。

 続いて『「若者はかわいそう」論のウソ』。パワフルな派遣肯定論が展開さ
れる。
「この3つの機能を以下に再度明記しておこう。(1)職にあぶれた人に仕事を
あてがう機能 (2)気軽に入職できる機能 (3)書面では分からない個人・企業
の良さをマッチングできる機能 (中略)これらが相まって、『雇用機会が著
しく創出される』ことになる」。
「ステップアップしたいなら、それは多くの人と接し、多くの人を束ねる仕事
に必然的になっていく、そういう仕事ばかりだから、疲弊感を感じて『引きこ
もる』若者は増え、そして彼らは『派遣』にたどり着く。派遣は対人折衝しな
くてすむ仕事の宝庫だ」。

「派遣とか業務請負の仕組みの必要性とか位置付けとか何か分かってきたか
な」。
 彼女の顔を覗き込むと、ふんふんと頷きながら、「これすごく面白いですね。
もっと勉強したいです」と呟いた。持っている本から薦められるものをメール
すると約束をして別れた。

 数日後、書店に行ったら、『女性だけの便利屋繁盛記』と題された本が平積
みされていた。POPにはレンタル・フレンドのサービスを提供している女性起
業家の話だとある。手にとって見ると、対応している要請は様々で「婚活パー
ティにひとりでいけない」、「彼女を作るのが面倒」など、やたらに色々ある。
シングル・ファーザーに子供と花見に行くときのレンタルお母さんを派遣する
事例まで載っている。かなり早い段階で「誤解して欲しくないのは、いわゆる
デートクラブのような性的サービスは一切ないということ」と書かれている。
しかし、すぐ裏の棚には起業方法を書いたマニュアルが各種並んでいて、『デ
リヘル開業』などと題した書籍は数冊見つかる。
 
 観て衝撃を受けた映画『紀子の食卓』の感想が、ソリアズ一話にまとまらな
くて『出前芝居』と言うシリーズになった。クライアントの依頼でセックスは
おろか心中までする家族派遣業の女性が主人公。劇中の「花には、それを受け
止める花瓶が必要。人が皆花になろうとしたら、誰かがそれを受け止めなけれ
ばならない」と言う名台詞を思い出した。
 
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

本年10月末日発行!
15周年記念号の企画大枠が決定!
題して『Congenital Auto-cruisers』(仮)。

14周年記念号では、
弊社MSIグループの事業とソリアズの両方にとっての
書籍の存在を議論してみました。

その中で著者ベスト10として、
内田樹、増田悦佐、神田昌典、宮台真司、小室直樹、
勢古浩爾、広瀬隆、ヘンリー・ミンツバーグ、前野隆司、松本道弘
が挙げられています。

その中で、14周年記念号の本文で言及がほとんどないのは、
内田樹、勢古浩爾、前野隆司、松本道弘の4人です。
内田樹は、200話発行記念シリーズで、
今尚最長記録を持つ全6話シリーズの『斜陽の樹影』で
念入りに取り上げています。

残り3人のうち、勢古浩爾と松本道弘の2人は、
ソリアズの幾つかの号で触れられています。

残った1人、前野隆司の書籍は未だソリアズに登場していませんが、
その受動意識仮説からは、
人についての企画を立てる弊社の事業にとって
計り知れない影響を受けました。

そこで、14周年記念号の続編として、
15年目以降のソリアズに頻出するであろう、
受動意識仮説に基づいた、意識や思考、言動などについての考え方を、
関連書籍の内容を参照しつつ、
分かりやすくまとめてみたいと思っています。

また、詳細が決まり次第、随時お知らせ致します。
ご期待下さい。

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14周年記念特別号 http://tales.msi-group.org/?p=635
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『安部公房とわたし』 山口果林 著
■『中国なんて二度と行くかボケ!…』 さくら剛 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第349話 『仲良きこと』 シリーズ『1984年の人々』(1)
 (8月10日発行) 
 発表された当時、非常に話題になった論文『日本の自殺』を読んだ感想をシ
リーズ『1984年の人々』を二回に渡ってお届けします。第一回は構成員が仲の
良い組織の様子を考えてみます。

(完)