304 詰替え容器 =脱兎の心中= 300話発行記念特別号 第五弾

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経営コラム SOLID AS FAITH 第300話発行記念特別号 第五弾
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目次 
1 ご挨拶
2 304話 『詰替え容器』   =脱兎の心中(5)=
3 特別インタビュー H様  =忘季の兎狩(5)=
4 あとがき
5 次号予告
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☆注意:お読みになる際には、枚数がかさみ恐縮ながら、プリントアウトの上
お読みになることを、心よりお勧め申し上げます。
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1 ご挨拶

 御愛読御礼申し上げます。第300話発行記念特別号シリーズ『脱兎の心中』
最終話をお届けします。

 シリーズ5話を総て書き上げた時に、全部を見比べて発表順を決めあぐねま
した。色々と考えて今回の発表順が決定しました。最終話は「『脱兎見!東京
キネマ』」は、なぜ映画の話から脈絡無く脱線するのか」と言う問いへの答え
です。一見、今までの四つの問いに較べて、この問い自体がかなり脈絡ないよ
うですが、『脱兎見!東京キネマ』の弊社事業の一環としての存在意義やコン
セプトを最も意識した内容なので、最後に配しました。

 文中に登場するヴィレッジヴァンガードやスターバックスなど、明確なスト
ア・コンセプトを持つ店舗はそのコンセプトを言葉で説明せずとも、それを明
確に来店客に伝播させ、認知上の差別化に成功しています。「ブログらしから
ぬ」と言って戴ける『脱兎見!東京キネマ』もブログに似た何か別のものであ
るようにしたいと思っています。

 5話に渡りインタビュー記事を用意してくれた山口佳織の文章も、その順序
を練って、9周年記念特別号以来、再度登場して下さったH社長が最後となり
ました。H社長を始め、インタビューにご協力下さった5名の方々に心より御
礼申し上げます。

 H社長は弊社にパチンコ業との接点を作って下さった方で、第294話『もど
かしい存在』にも登場する経営者です。文中にある通り震災翌日に放射能の恐
怖が街に蔓延している中でお時間を作って戴きました。日々のご高配に深く感
謝しております。

 あとがきでは、弊社のこれまでの事業経緯から情報発信・情報開示のあり方
を省みてみました。全編通して300話記念特別シリーズの最終話をお楽しみ戴
けましたら幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂
戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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2 その304:詰替え容器 =脱兎の心中(5)=
 
「え。市川さんはそんなこともするんですか。うちではもっと恐い感じですよ」。
 二人の会話を私はニヤニヤしながら聞いていた。二人は私のクライアント企
業二社各々の幹部。一社では中途採用にあたって人材紹介会社折衝の支援を、
もう一社では営業担当者の勉強会の場でトークとツールの見直しを行なってい
る。二人は互いの会社の話を私から聞き、その取り組みや成果に関心が湧いた
というので、このたび初顔合わせとなった。コンサルティング企業では珍しく
ないクライアント同士の交流。少数のお客様企業と深く長くお付き合い戴く私
の事業モデルでは稀である。

 クライアント企業の組織形態や社風、ニーズや私への要望などに応じて、私
のサービスの形態は大きく異なる。柔軟なニーズ対応と言えば聞こえは良いが、
その場その場の行き当たりばったりな対応の集積と考えても問題はない。時間
枠が同じなら、請求額もほぼ同額だが、サービスの内容は、殆ど一担当者とし
て作業を行なうケースもあれば、勉強会の進行役もある。営業担当者同行もあ
れば、講演もある。

 放っておいたら、本来の情報交換を早々に終わらせて、二人の幹部は勝手に
共通の話題の市川談議に花を咲かせ、気がつくと『脱兎見!東京キネマ』にも
言及していた。
「独自の世界観と言うか何と言うか。割り切りのセックス・フレンドが恋に落
ちる映画を見て、恋に落ちないでアダム徳永のテクニックを学んで、純粋に深
いセックスを探求しろとか、何を持ち出してくるのか、脈絡がなくて想像がつ
かない」。
「それはありますよね。ロボットアニメの感想に唐突に平均故障間隔が出て来
たり。あと、留学時代の話もよく出てくるし。まあ、結局、市川さんが商売の
ためにやっているブログだとすると、自己紹介や自分の考えを映画の感想に織
り交ぜて書くのがそもそもの目的と言うことなんでしょうけどね」。
 聞き役に飽きてノートに来週の仕事をメモしていた私の方を、二人は見遣る。

「まあ、一般的なブログとはだいぶ違うのは本当ですよね。話を聞いていて思
い出したんですが、この前映画業界の動向を扱った本で、『「踊る大捜査線」
は日本映画の何を変えたのか』という本を読んだんですよ。その中に、映画館
は今、映画だけをやっている訳ではないって話が出てくるんです。確かにバル
ト9などの映画館もそうですが、今はシネコンで、映画以外にも芝居を撮影し
た作品やサッカーの試合映像とかもやってるんですよ。
 勉強会でもよく話すネタなんですが、ヴィレッジヴァンガードは電話帳分類
では本屋でも、全然本屋に見えません。映画館も映画だけをやる所ではなくな
ってしまいました。これが流行りの要因なら、それはつまり、各々の目的に忠
実であろうとしているってことだと思うんですよ。うちの『脱兎見!』もブロ
グではなく、本来の目的に忠実な何かと言うことにしておきたいんですけどね」。
 私はメモの手を止めて思いつくままに話した。

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3 特別インタビュー H様 =忘季の兎狩(5)=

 皆様、こんにちは。山口佳織です。
 
 前職を退職してから、早くも丸4カ月が経ち、環境や接する方々も大きく変
化しました。ご相談を受ける立場となって、システムを活用すればすべてが解
決すると思っていらっしゃる方が多いと実感いたしますが、実際に使いこなす
のは人であり、ITはあくまで人の知識や業務を補助する立場と位置付ける。そ
れがITと人の関係性の、あるべき姿だと思っています。
 
 ついに300話発行記念特別号も最終回となりましたが、インタビューを繰り
返し行わせていただく中で、クライアントと市川の関係性を目の当たりにし、
目指すべきある種の理想像が出来上がりました。

 最終回、どうぞ最後までお付き合いいただければ幸いです。

***   ***   ***   ***   ***   ***

アウトソーシング業 代表取締役社長 H様

 H様は9周年記念特別号のインタビュー企画で既にソリアズに登場したこと
があるのですが、今回二度目の登場をお願いしました。市川との出会いは「以
前ソリアズで紹介されていた営業手法の資料を請求したところ、本人が資料を
持って目の前に現れた」そうで、以来市川に案件を紹介するという関係になっ
たそうです。

 今回の取材先について市川にヒアリングをする中で、H様が市川にご紹介く
ださる案件は多種多様にわたると聞き、何を基準としているか、質問させてい
ただきました。
「市川さんの根本はマーケティング。人材育成でも何でも、マーケティングに
通ずるものであれば対応できると思っています。あとは、紹介する人との相性
を一番重視しています」

 人には得た情報を当てはめていくフォーマットともいえる思考のフレームが
あることに、H様はあることがきっかけで気づかれたそうです。経営にも仕事
上の人員配置をする際にも、人によって異なるフレームが存在し、生い立ちや
経験を知ることでその人がどういったことを考えるのか、ある程度想像ができ
ると仰います。

 それでは、H様にとって『脱兎見!東京キネマ』に掲載されている情報は、
どういった基準で精査され、取捨選択されているのでしょうか。
「基本的には映画を知るためでも、経営に活かすために読んでいるわけでもな
く、市川さんのことを知るため」という前提のもと、敢えて言うならDVDが
買いかどうかで判断され、その後市川氏の個人的嗜好(女優やオタク性)から
選ばれた映画は除外し、最終的には経営にとって役立ちそうな内容であれば映
画を観てみると仰います。

「『ソーシャル・ネットワーク』の感想は特に共感できます。企業経営は利益
追求が最優先なので、協力していた会社でもいつかは袂を分かつことがありま
す。でもそれが裏切りだとは思いませんね」。

「他のコンサルタントは“思想”という空気を売るのが商売なので、自分と違
う考え方の人に対しては極端に攻撃的で排他的になる。その点市川さんは一般
的なコンサルタントではないですよね」。
 環境の変化が早い今、企業が求める人材も変わってきていると実感している
と仰るH様にとって、『脱兎見!東京キネマ』を含め多方面から最新の市川の
情報を知ることで、市川と相性のいい会社を探す基準にされているのだと感じ
ました。

< インタビューを終えて>

『脱兎見!東京キネマ』の読み方があまりにも他の方と違うため、思わずH様
にとって市川とはどういった位置づけであるのかを聞いてみました。
「市川さんは刺激ですね。自分が得意としているものと対極のものを持ってい
るから、補完し合えます」。

 関係する人にとって、何か得るものがあるからこそ、選んでもらえる。それ
が付加価値であり差別化であると市川から学びましたが、明確な言葉で表され
るほど実現できていることを実感いたしました。

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4 あとがき

 弊社が自社運営ブログ『脱兎見!東京キネマ』について、事業の一環として
のこのブログの位置付けを5話のソリアズ原稿の形でお届けして参りました。
シリーズ『お友達未満』の『計画生産』で書き述べた通り、少ない経営資源を
都合してまで情報発信を商売の一部として行なうのなら、一定レベルの質を維
持した上での継続が絶対条件だと思っています。

 ソリアズ同様に『脱兎見!東京キネマ』も発行当初に較べると文章のスタイ
ルと量がやや変化しましたが、その後、一貫したスタイルを一応維持できてい
ると思っています。今回元弟子の山口佳織に五人の愛読者の方々を取材して貰
い、受け手の方それぞれの見方や楽しみ方があるのを再認識しました。

 古くはソリアズ第4話『情報開示』でも「『開示』と表現されることの多い
『露出』は、私にはなにやら胡散臭い」と述べ、第82話では当時流行しかけた
経営状況の社員への開示を意味するオープン・ブック・ポリシーを「露出狂」
とまで言い切っています。私は、自分の日常や商売の内情を「情報発信」や
「情報開示」の名目で、クライアントや不特定多数の人々に知らしめることの
メリットを全く感じていません。発音に忠実に普段はトゥイッタと呼ぶツイッ
ターも、即時性と一覧性を活かして、ダイレクトメッセージのみ使っています。

 始めて数ヶ月経ったリンクトインでは、私のネットワークと言われる「お友
達」はたった26人ですが、その方々の半数近くが数千人単位のネットワークを
維持しているために、私の考えは全世界の一万人以上の人々に届いている様子
です。英語でリンクトインを使っている少数派の日本人として、毎月一度は聞
いたこともない様な問い合わせを見ず知らずの方から戴きます。
 
 基本的にお付き合い下さる方々の紹介などから案件を頂戴して禄を食んでい
るつもりでしたが、先日ソリアズや自社サイトのルートで戴けた案件の独立以
来の売上をざっと合計してみると、全体の6割を超えていました。駄々漏れの
日常や商売のあり方についての情報発信・情報開示を意識的に避けていても、
間違いなく売上の多くは、弊社スタイルの情報発信から獲得できているのが、
非常に興味深く感じられました。今後も商売を続ける限り、受け手の方々に十
分に意味のある弊社なりの情報発信を心掛けて参りたいと存じます。何卒よろ
しくお付き合い下さい。

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 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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5 次号予告:
 第305話 『あしたあらんこと』 (10月10日発行) 
 5回に及んだ300話記念のシリーズを終えて、通常号に戻っての初回号は、
大好きな勢古浩爾の書籍『日本人の遺書』にある胸を抉るような話の感想をま
とめたものです。ご期待下さい。

(完)