567 無関心の輸入薬 =閉じた群像=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第567号
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 ご愛読ありがとうございます。第567話をお届けします。

 GWあたりに底を打った通称武漢ウイルスの感染状況が、再度上昇に転じて、
どんどん上がり調子です。ワクチンの接種も途切れ途切れになっているはず
なのに、最早死病と騒ぐ人は減りました。知人でも感染の話はよく聞きます
が、他界したような話は全く耳にしません。都市伝説や陰謀論にはあまり与
しないようにしていますが、ワクチンの副反応の苛烈さは本当であったのだ
ろうと思えます。

 その通称武漢ウイルスについて、国内では某大手タレント事務所や中古車
販売会社の騒動に隠れてあまり報道されていませんが、海外では「新型コロ
ナ“武漢研究所“流出説」が信憑性を増しているとされています。再選を目
指すトランプ元大統領は、中国に補償金を課すことを公約に掲げていて、そ
の額は中国のGDPを大きく上回る60兆ドルであるようです。
 
 その中国は日本の原発からでる処理水を汚染水と言い募り、海の色が変わ
ったと騒ぎ、日本への海外旅行客も急減していると報道されています。グロ
ーバリズムの崩壊は止め処なく、ブロック経済化はどんどん進みます。イン
バウンド需要を当てにしていた企業群には残念なことでしょうが、ブロック
経済化の潮流は国内観光産業のインバウンド系事業にもそれなりに影を落と
すことになるでしょう。
 
 そして、地球規模の少子高齢化も話題になることが多くなってきました。
いまや人口爆発が予想されるのはアフリカ大陸の一部だけで、100年を待た
ず全世界規模の人口激減が始まると言われています。日本の外国人技能実習
制度どころか、海外の移民制度も全世界規模で成立が困難になって行きます。
 
 国単位・民族単位の地産地消が今後は当たり前の概念になりそうに見えま
す。消費には文化が反映されています。その文化を無視して全世界規模で売
れる商品を大量に生産して大量に売り尽くす、杜撰でアバウトな経営スタイ
ルがとうとう終焉に近づいてきたという風に考えることもできます。ならば
消費の高付加価値化も相対的に実現しやすく、散々安い安いと言われ続けて
いる賃金も、それと共に上昇に転じなくてはなりません。そういう潮流は中
小零細企業の業績回復のカギになる可能性が高いものと思われます。とても
楽しい時代になりつつあります。
 
 今回から二回のシリーズ『閉じた群像』が始まります。テーマはダイバー
シティです。まだまだ大手企業でさえ人種のダイバーシティなどがあまり見
当たらない日本では、ダイバーシティと言えば、女性の登用や障碍者の雇用
を指して使われることの多い言葉です。端的に考えてみて、業績を上げるた
めにはマーケティングを適切に実現すれば良いだけのことですから、社員の
性別・人種・障碍の有無などに業績は関係ないはずです。障碍者を雇おうと
女性を役員にしようと、愚鈍な者ばかりなら何も改善しないのは自明です。

 それでもダイバーシティが大事だと未だに騒ぐのは、海外起源の妄想に踊
らされている人々か、企業の外部から役員を送り込みたいファンド関係者ぐ
らいではないかと、ネット上で噂されているのを見ました。一理あるように
思えます。そんなダイバーシティの胡散臭さを中小零細企業目線で考えてみ
るシリーズ『閉じた群像』をお楽しみください。ご意見・ご感想をお待ちし
ております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その567:無関心の輸入薬 シリーズ=閉じた群像=

「アナル・セックスのイメージが絞り切れていないです。ユーザーはどんな
理由でアナルでするのかを詰めてください。男性の同性愛者なのか。男性が
女性との普通の性交に飽きて、自分の彼女にはなかなか言いだしにくいアナ
ル・セックスをしたくなったということなのか。それとも、デリヘルでよく
AFのオプションを付けている人々向けの商品ということなのか。若しくは、
たとえば、膣の初めては取っておきたいというツンデレ系のカワイイ女子が、
『アナルならいいよ』と恥じらうような物語があるとか…。あと、大体にし
て構造的には、従来品や競合商品とどんな風に差別化をするのか。アナルの
場合は入口がキツく固くて、奥は急激に広がる構造を実現しないと、実感に
近くならないから」。

 オナホールと呼ばれる男性向けアダルト・グッズの新商品開発プロジェク
トで私は若いメンバーに向かって言った。彼は募集もしていない商品開発担
当者になりたいと連絡をしてきた熱意を買われ半年前に入社した。新商品の
アイディアは他社の新作に類似したものが多い。市場は飽和している。他社
と同じ商品カテゴリーでダメではないが、コンセプトが掘り下げられなくて
は、商品の強みもパッケージデザインも、流通ルートも販促方法も決まらな
い。私の発言を向かいで聴いていた常務が小さく頷いてニヤリと笑った。

「かつての日本企業の強みの一つは、同質性の高い組織が高いエンゲージメ
ントを保つことで生まれる団結力やエネルギーだった。経済全体が上り調子
で、やるべきことが明確だった時代は、この組織の特性は大きな強みとなっ
た。
 ところが時代は変わった。ユーザーのニーズは多様化し、技術の進歩のス
ピードは速まり、戦う相手もさまざまな国の企業になった。(中略)同じよ
うな思考、行動パターンを繰り返していては、勝てるはずもない」。
 父親がシャープの元副社長で自らはTDK関連会社元副社長という桂幹が著
した『日本の電機産業はなぜ凋落したのか』の最終章の中の文章。日本企業
の組織は新卒から育て上げられた同質な男性社会で、それが上り調子の経済
では有効だったのだと著者は言う。

 経済が上り調子だったのは本当だろう。拡大の一途の市場には常に漠然と
した需要が存在する。市場ニーズの分析は必須ではない。他社との差別化も
真剣に考えなくて良い。しかし、完全に飽和し多様化した市場になったら、
細分化された市場ニーズの把握は必須だ。そんなマーケティングの超基本を
電機産業の人々は理解していなかったと書籍は暴露する。

 著者は最終章で組織のダイバーシティを上げろと提言する。その多様な
人々はマーケティングの基本を実践できるのか。大きな期待を背負って勢い
余るだけの発案者が不本意に退職した後、件のアナル・ホールは他の担当者
の手で実現し、それなりに売れた。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『ハイパーインフレーション 1』 住吉九 著
■『日本語の大疑問 眠れなくなるほど面白いことばの世界』
  国立国語研究所 編
■『バカと無知』 橘玲 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 MSIグループ 市川正人
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次号予告:
 第568話 『功利主義』 シリーズ『閉じた群像』(9月25日発行)
 ダイバーシティが組織には重要とまだまだ言われ続けています。国内での
その達成イメージは大抵女性の役員・管理職登用の割合増加だったりします。
シリーズの第二弾はダイバーシティとイノベーションについて考えてみます。

(完)