196 水底の想い =サウンド・スペース=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第196号
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ご愛読ありがとうございます。第196話をお届けします。

とうとう、花粉飛散が酷くなりました。最近は鼻の症状よりも、目の症状が
酷く出ます。痒みと充血がとんでもない状況で、行く先々で目薬を点しては、
仕事にかかり、クライアントさんにご迷惑を掛けています。

昨年パチンコ店を展開するクライアント企業の現場管理者研修の企画をして
いた際に、行き掛かりで現場管理者に求められることについて、私が話してい
る内容をDVD化することとなってしまいました。二枚組のDVDは、その企
業のみならず、他の企業の方々がご覧になっても好評で、既に、他社でも同様
の制作を検討して下さっているところがあります。PR欄に概要をまとめまし
たので、是非ご覧下さい。

今回のコラムは、前回から始まったシリーズ『サウンド・スペース』の二話
目です。前回は、iPODを携えた初出張の往路で新幹線のひかりに乗った話
ですが、今度は復路ののぞみです。前回に増して、叙景的、且つ自省的な内容
です。お楽しみ下さい。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。
頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その196:水底の想い =サウンド・スペース(2)=

携帯電話が震えるたびに、彼は席を立ちデッキに向かう。ノート型PCをテ
ーブルの上に開き、取引先に納期のメールを打ち続けている。岡崎からの帰り
道は名古屋から乗ったのぞみ。指定席の隣には、ヤング島耕作のドラマ化に抜
擢されそうな風情の30代前半のサラリーマン。隣に座って気付いた範囲でも、
既に十数本のメールを打っている。重機械関係の製品であるようだ。型式名や
納品先など細かな調整をメールで行なっている。

頭は一番カロリーを消費する。頭を使っていて暑くなったのか、彼は上着を
脱ぐ。もくもくと作業を続けて、ワイシャツの首にかけた社内IDのタグに気
づかない。社名・部署・氏名まで曝しつつ、メール打ちと添付の資料作りに集
中している。どこから乗ったのだろう。大阪からだとして、東京までずっとこ
の調子でやり続けるんだろうなと、彼の横顔を見ながら考える。

十年近くを経て乗るのぞみの窓は、行きに乗ったひかりにくらべて大きく感
じる。夕時、曇り空を見上げると、歪んだセルロイドのように見える窓ガラス。
まるで水槽の中から見上げる外界のようだ。

買った当日に徹夜して持っているCD全部の3000曲近くを入れたiPOD。
DJをバイトでする知り合いに頼んで、LPやEPもCD化して取り込もうと
計画している。テープやMDを使った機器とは全く異なる楽しみ方ができる。
目に映り込む景色に合わせて、持っている曲全部の中からBGMを決める。曇
天のくぐもったような空にはプログレが似合うのではないか。昨晩の飲み会の
気だるさで、まどろむにもちょうど良さそうだ。茜色に染まった雲を見上げな
がら、iPODに指を這わせる。

ストレスが減ったせいか。それとも、こんな風に好きな時に、仕事の調節が
ついて休養できるせいか。独立してから、病院のお世話になることが激減した。
零細事業者への支援プログラムで、人間ドックにも安くかかっているが、然し
たる異常も現状見当たらない。だからこそ、隣の彼のような働き方には、もう
戻れないだろうと思う。多分、余程追い詰められることがなければ戻ることは
ないだろう。

忙しそうですねと私にお声掛けして下さるお客様が沢山居る。人々の頭の中
にある繁忙の状況は、多分このIDタグの彼のような姿だろう。そんな多忙も
なく、お仕事が頂戴できて、売上も逓増基調。なぜそれが実現するのか。なぜ
お客様は自分を選んで下さるのか。

曇天を貫き、水底のような車窓にまでオレンジ色の細い光芒は届き、掌を照
らす。自分の提供し得る付加価値を、改めて厳しく評価せねばと意を決する。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

パチンコ店を展開するクライアント企業の
現場管理者教育の教材として二枚組DVDを企画致しました。
弊社代表が普段話している内容を、
先方の幹部・管理者が精査して盛り込んで下さったものです。

普段、コンサルタント的な業務は行なっていませんが、
成り行き上、弊社代表が出演して、語りまくることとなりました。
大学での1年生向けの講義でも好評な、
平易な語り口で中小企業での働き方などについて説明します。

先方企業の研修参加の現場管理者は基本的に20代前半。
社会人経験も浅い中で、幹部候補として採用された人々です。
DVDの内容を理解・暗記することが研修の初期段階で求められます。

題して『中小企業での働き方DVD』。

他社様にもサンプルとしてご覧に入れると好評でした。
御社の社員の「あるべき働き方」をDVDにまとめる企画。
お引き受け致します。

今回作成した二枚組DVDの内容の要旨を二回に分けて紹介いたします。

【中小企業での働き方DVD チャプター1?4】

●チャプター1 オーナー経営者が率いる中小企業の社員の役割
社員の役割は、指示に従うことでもなければ、恙無く毎日の仕事をこなすこ
とでもない。オーナー経営者から預けられた財産に利息をつけて返すことだ。
オーナー社長は会社経営に使っている財産を現金化して銀行に預ければ、事実
上、元本保証で寝ていても利息を受け取れる。銀行がもたらす利益を上回るよ
うでなければ、社員としての存在意義はない。

●チャプター2 スキルマップによる研修の位置づけ
スキルマップは人事考課表ではない。その組織で必要とされる最低限のスキ
ルを一覧にしてもれなく身に付けるためのツールである。詰め込み学習と言う
批判もあるが、そのような仕組みがなければ、ハイペースで必要なスキルを身
に付けることは容易ではない。社員に必要なスキルの多くは社会人として当然
のものでもある。そのようなスキルを一覧にしてもれなく教える企業の方が、
そうではない企業よりも評価されるべきだし、本来感謝すべきものである。
※スキルマップ解説のページ:
http://www.msi-group.org/MSI-Freshmen-Skillmap.htm

●チャプター3 30歳までのキャリア形成
30歳までの間に、人生において仕事をどのように位置づけるかの価値観が
個々人の中で決まる。それまでに自分の限界を超える経験を沢山積むと、能力
はどんどん伸び、伸びるから仕事も面白くなる。面白くやる仕事だから、評価
もされやすい。やりがいも感じる。大量の仕事・困難な仕事を避けたり、職場
の人間関係から逃避したりしていては、常に逃げるばかりの人生が待っている。
※キャリア観に関する大学での就労観教育の講義内容のページ:
http://www.msi-group.org/MSI-LectureVol1.htm

●チャプター4 アルバイト社員を管理する正社員の立場
新卒で入社して現場に来ると、長期間そこで働いているアルバイト社員の方
が、仕事ができるケースが良くある。現場管理者の役割をそのような状態で求
められると悩みこむ者が多い。しかし、ダンサーと振付師の役割のようにアル
バイト社員と正社員の役割も異なっている。ダンサーがどのような働きをする
のかを知らなくては振付師になることはできない。振付師はダンスが上手いに
越したことはないが、そのために入社したのではない。

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【創刊以来最長の6話連続シリーズ 200話発行記念特別号】

前代未聞。未曾有の超ロングシリーズ
『斜陽の樹影』全6話をお届けすることとしました。
5月スタート。

名著『下流志向』をモチーフに、
延々展開される200話発行記念企画。
『下流志向』のサブタイトル
「下流志向 学ばない子どもたち働かない若者たち」
の具体例を弊社事業の観点から見つめます。

今回は第三弾と第四弾の内容をちょっぴり紹介します。

第三弾 202話 『危険手当』
ヒト・モノ・カネ・ギジュツ・ジョウホウの5大経営資源の中で、最も不安
定で、扱う上でリスクが高いのはヒトだと私は思っています。リスクが高いと
言うことは、やりようによっては高いリターンを期待できる経営資源とも言え
ます。ヒトのリスクをヘッジすることによる利益創出について考えてみます。

第四弾 203話 『動物の覚悟』
以前にも当コラムに登場した『下流喰い』をヒントに、社会の構成員を「下
流」と「非下流」に二分する、危うい社会モデルを考えてみました。この二者
の関わりを考え、さらに、自社の業務内容の位置づけを考えてみました。

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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
bizcom@msi-group.org
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
発行しています。
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次号予告:
第197話 『彼我の順番』 (4月10日発行)
課題山積の部署の新任課長と、何から手を付けるべきか話している中で、
「為すべきことが何であるのかを常に意識できる人間になれ」という、昔受け
た研修での教えを思い出しました。為すべきことの優先順位について考えてみ
ます。(完)