522 認識の陥穽 =南国の史実=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第522号
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 ご愛読ありがとうございます。第522話をお届けします。

 10月も下旬に入りました。そして10月と言えば、年に一回。毎年恒例の周
年記念特別号の発行です。今年は22周年記念特別号です。1999年10月31日に
創刊して以来、22年もの時間が経過して、それでも尚、内容のコンセプトど
ころかタイトルも文字数も発行頻度も何もかも基本的に変わらず現在に至る
ことができたのは、長期にわたってお付き合いくださっている読者のあなた
の御蔭であると感じています。心より御礼申し上げます。

 今回の22周年記念特別号は、常に当コラムがモチーフとして意識している
中小零細企業のオーナー社長の姿について、現実感たっぷりに描きます。あ
とがき以外の原稿はすべて合資会社MSIグループの事業の後継者となる奥田
美幸が作成しました。昨年の21周年記念特別号の前後篇のあとがきだけ奥田
が担当し本文は弊社代表の市川が書いていましたが、ちょうどその逆の構図
になっています。
 
 奥田が創業してから1年余。その間に彼女が接したオーナー経営者の方々
を、精読して学びの多かった書籍に書かれた「残念な社長」の物差しに照ら
して、振り返るという大胆な内容になっています。ご期待ください。発行は
毎年恒例の今月末日です。あと6日お待ちください。
 
 今年の12月25日に発行する年内最終号まで続く超長編シリーズ『南国の史
実』も今回は第6回です。今回は『認識の陥穽』と題して、「人間は知って
いるものしか見ることができない」という、単純な、そして重大な事実につ
いて考えてみます。それがどのような場合にも起きる「原理」であるのなら、
社内の社員もスタッフも育成しなければ、社内の何も見えないことになりま
す。ハロウィン直前の10月最終週。ひと時をそのような恐ろしい事実に基づ
き中小零細企業の現場をどのように変えるべきか考えることにお付き合いく
ださい。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお
返事の目標納期は5営業日!!

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その522:認識の陥穽 シリーズ『南国の史実』(6)

「私が膵臓の細胞を見ることができるのは、それがどのように見えるかをす
でに知っているからなのだ。どの輪郭が細胞一つ分の区画であるのか、その
外周線を頭の中に持っているからだ。その細胞の向きがどちらを向いている
のかを、あるいは細胞の内部に見える丸い粒子がDNAを保持している核であ
ることを知っているからである。
 かつて私もまた、初めて顕微鏡を覗いたときは、美しい光景ではあるもの
の、そこに広がっている何ものかを、形として見ることも、名づけることも
できなかった。私は、途切れ途切れの弱い線をしか描くことができなかった
はずなのだ。つまり、私たちは知っているものしか見ることができない」。

 科学的世界観を美しく分かりやすい物語として描く福岡伸一博士の『でき
そこないの男たち』に書かれた文章。理工学部の実験実習で彼が学生達にネ
ズミの臓器をスライスした切片を顕微鏡で観察させてスケッチさせると、
「とりとめのないもの」や「風にたゆたう糸くずのようにおぼつかない、不
定形の線」しか描けないことに対して述べている。

 英語学習においてヒアリングの上達方法を尋ねられることがたまにある。
知らない単語は聞き取れないので、多分王道は語彙力を増やすことだろう。
既に知っている状態になっていないことは、見ることも聞くこともできない
のが人間なのであろう。

「従業員には、過去のことも未来のことも考えないで、今のことを考えてく
ださいとよく話しています。先を見通すことは難しいけれども、日々の仕事
の中でお客様の動きをじっと見ていれば、時代の変化がよくわかるはずです」。

 鹿児島県の過疎エリアに幾つか店舗展開する巨大スーパーの社長が書いた
『利益第二主義』の一節。彼は苦労して大型店運営の許可を取り、周囲のほ
とんどが危ぶむような24時間営業の巨大スーパーを過疎地でオープンした。
業界経験者はすぐにこの店が潰れるだろうと踏んで、入社してくれなかった。
業界素人ばかりが集まったと本で回想されている。

 多分、オープンしたての巨大店舗で彼の直下に集い必死にオペレーション
を維持した“素人”の人々は、彼の価値観に従って毎日お客様に接したこと
だろう。そんな従業員達に過去や未来のことを考えている余裕はない。その
傍らで独り社長はお客様を見つめてきた。その成功体験が従業員にも「お客
様を見れば、時代がよく分かる」という根拠だろう。

 残念ながら分からないものを人間は見ることができない。埃塗れの商品を
訝し気に手に取って見ている私の後ろを何人も従業員が通過したが、声をか
けてくる者は一人もいない。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。
本年10月31日で、創刊22周年を迎える当コラム。
大変僭越ながら、
毎年恒例の周年記念特別号の本文を書く機会をいただきました。

「できる社長」のテーマが取り上げられることはありますが、
今回のコラムでは、あえて「残念な社長」をテーマに、
読者の方々に他山の石としていただけそうな社長像を
関連書籍を参考にしつつ振り返ってみました。
姉弟子である合同会社アイソリューションの山口佳織にも
インタビューという形で協力してもらいました。

「経営観」と「ビジネス遂行能力」によって
小さな会社のオーナー経営者のレベルを分類できる、
『オーナー経営者の分類表』も合わせてご笑覧いただけます。
章立てをご紹介いたします。ぜひご期待ください。

●第1章:残念な社長の条件(性格編)
●第2章:残念な社長はこうしてできる
●第3章:残念な社長の言い訳
●第4章:残念な社長の条件(会社の方針編)
●第5章:実録!姉弟子が見た残念な社長
●第6章:残念な社長がわかる本の紹介
●特別付録:『小さな会社のオーナー経営者分類』

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『萬屋のもっと深く愛してい』第19回「HRテック・労務管理システム編」

価値観の多様化により、社員の柔軟な働き方を推進する企業が増えています。
新型コロナウイルスの影響によるリモートワークも多様化した働き方の一つ
ですが、フレックスタイム制や短時間勤務、時間単位・半日単位の有給休暇
など、従業員に長く安心して働いてもらうための制度を導入している企業も
あります。コストをかけ採用・育成した従業員の定着率向上のためではある
ものの、制度運用の面では管理作業が増えてしまうデメリットは無視できま
せん。

「HRテック」シリーズの第3回目は「労務管理システム編」として、労務・
勤怠管理業務の効率化のためのシステムを考えていきます。

HRテックの中でも代表的な労務管理業務。直接的に売上向上などを実現する
システムに比べ華々しくありませんが、従業員の雇用管理の多岐に渡る作業
でシステム的な改善ができる分野は多々あります。

以下のような代表的な管理業務分野が挙げられます。
・社会保険・雇用保険手続き
・勤怠管理・シフト管理
・休暇・申請管理
・給与計算

HRテックが適用される分野の中で、正確性がより重視され、導入によって最
も作業効率化が期待される部分と考えられます。

さらに、従業員1人あたり月額数百円など、非常に安価で導入できるものも
増えています。管理業務を安く実現するコスパの大きさに目が行きますが、
それ以上に、貴重な従業員の「労働」をより付加価値の高い業務に回せるこ
との方にこそ、大きな意義があります。

さまざまなシステムが出てきていますが、導入に当たっては自社に必要な機
能が揃っているか、無駄な機能はないかをきちんと確認しましょう。必要な
機能だけを組み合わせて利用できるシステムも増えてきています。実際の使
い方を具体的にイメージすることが必須です。

このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『日本社会のしくみ』 小熊英二 著
■『「生き残る」会社の法則 過疎地で年商100億円!』 牧尾英二 著
■『すらすら読める風姿花伝』 林望 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
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マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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次号予告:
 第523話 『続・名乗る者』
 シリーズ『南国の史実』(7) (11月10日発行) 
「新人は現場に出て失敗から学ぶ」と言う考え方があります。何につけても
学ぶのは良いことでしょうが、それ以前に失敗は起きない方が良いでしょう。
そんな育成ポリシーについて考えてみます。長編シリーズ第七回目です。

(完)