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経営コラム SOLID AS FAITH 第513号
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ご愛読ありがとうございます。第513話をお届けします。
今回お届けする第513話と第514話は久々のシリーズものです。シリーズ・
タイトルは『診察室の奥』。今から丁度3年前の2018年の6月から7月に、弊
社代表の市川が歯科や口腔外科を数件訪ねて治療の可能性を尋ね歩いた経験
をもとに書かれています。元々かかっている医師とは別の医師の意見を聞く
ことを「セカンド・オピニオンを求めても良い」と言った感じに最近では推
奨しているようですが、この時には、フィフス・オピニオンぐらいまで求め
て、漸く望んでいた最善の結果を手にしました。
ことの発端は今から20年以上ぐらい前の1990年代に遡ります。右下奥歯が
虫歯になり当時かかっていた世田谷の歯科で治療を受け、銀冠を被せました。
それから数年後、歯茎に小さな傷がついて化膿し、化膿そのものは治りまし
たが、歯茎外側に膿疱が生じました。膿疱は常にぷくっと膨らんでいて直径
2ミリ程度です。疲れが貯まった時などは、中に血が貯まってパンパンにな
り、指で押すと僅かな血がぴゅっと出ます。普段は痛みも出血も全くなく日
常生活に支障はありませんでした。
それから15年以上の間に二度膿疱の切除を歯科で試みましたが、大量に出
血するだけで、1ヶ月後には元の膿疱の状態に戻りました。切除を試みた歯
科医二人は、日常生活に全く不都合がなく「これ以上は口腔外科での処置が
必要」なので、そのまま放置することを決めました。2018年の初頭、X線写
真で歯茎奥深くの細菌の感染の広がりを確認して、それを「どうしても治す
べき」と引越先近所の若手の歯科医が言うので、極力抜歯を回避することを
条件に処置を任せてみましたが、今まで全くなかった激痛を発生させた上に、
「抜くしかありません」と言い出したのでした。
それからフィフス・オピニオンに至るまで、抜かずに外科手術をする選択
肢を探し、「誰も外科手術はできないと言わず、しかし誰も外科手術をやる
とは言わない」おかしな状態が続きました。漸く巡り合った渡辺医師が顎の
骨の一部に至るまで深く感染部分を削り取る外科手術を快諾してくれて、
あっさり問題は解決しました。フィフス・オピニオンに垣間見る歯科医療の
不可解も新鮮でしたが、手術前に執拗な炎症を抑えこむことに2ヶ月を投じ
たことや、予め採取した自分の血液でパテを作って削って作った大穴を埋め
る方法など、新たな体験が目白押しでした。
医療をビジネスとして見てその現場を捉える時、今回の体験にはマーケテ
ィング的悪手が散見されます。そんな患者視点不在の多数の悪手の中でも特
に異常さが際立つ二点を、シリーズ二話にまとめてみました。ご意見・ご感
想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営
業日!!
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その513:街の野戦病院 シリーズ『診察室の奥』(1)
「抜糸から半年で完全に治りましたね。こんな選択肢があると私も勉強にな
りました。」
にこやかに言う渡辺先生に私は、「今まで抜かなきゃダメだと言っていた
三軒の歯科とか口腔外科とかにこのレントゲン写真を送りつけてやりたいで
すよ」と笑って応じた。
左下奥歯の歯茎が細菌に感染して、血豆のような膨らみができたのはもう
15年以上前。疲れが溜まると膨らみは僅かに大きくなり、押すと血が噴き出
る。しかし痛む訳でも大きくなる訳でもない。15年間に二度歯茎の切開を試
みたが、そのたびに内出血が顎全体に広がって外から見て分かるぐらいにな
ったのに、一週間とせず元の状態に戻ってしまった。
その状況を初めて見た近隣の歯科医が「何とかしますよ」と上の銀冠を取
ったら、まるで休火山の突然の噴火のように激しく痛み始め、その歯科医は
「もう抜くしかない」と言い出した。抜けば入歯かインプラントしかなくな
る。それから二軒の口腔外科を回ったが、皆一様にインプラントを薦めて、
口腔外科手術など以ての外と繰り返した。
「市川さん。それほど高価じゃなく。もう皆やっていますよ。インプラント。
それに市川さんは銀冠が多い。保険でやったでしょ。皆がお世話になる保険
の医療は、医療じゃありません。野戦病院ですよ。取り敢えず生きているの
だから好としなさいという。そんな発想の治療を重ねて来て良いことはあり
ません。これを機会に全部、“医療”にしましょう。」
清潔感のある壁には「8020運動」のポスターが貼ってあるのに、白い歯を
見せてニヤニヤしながら初老の口腔外科医はインプラントを強硬に薦めてき
た。ダメもとで新宿の別の口腔外科を訪ね、「外科手術をしてみてダメなら
抜いてもらって結構。ただ最初から抜歯ありき、インプラントありきなのは
納得できない」と主張したら、そこにいた渡辺先生は「ダメなら抜きますか
らね」と外科手術を快諾した。すると15年の宿痾は簡単に消えた。
白い歯が自慢の初老の歯科医は、問題の歯の直下深くの細菌に侵され骨ま
で腐りかけている箇所を指して、抜かないと治らないと丁寧に何度も説明し
ていた。私が外科手術の可能性に言及すると、「そんなことを考える人はい
ない」と理由も述べず反対した。丁寧な説明を彼は「インフォームド・コン
セントの充実」と呼んでいた。インフォームド・コンセントの先には、高価
なインプラントと白い歯が待っていて、他には全く選択肢はなかった。
多くの先進国に比べて、ないも同然なほどの格差が日本でも大きく広がっ
たと喧伝する人が多いので、予習のつもりで富裕層マーケティングの本を数
冊読んでみている。多様な選択肢の中から納得の選択ができ、満足度が高ま
るような事例が多い。身なりの良い人ばかりがラウンジに侍る或る新宿の口
腔外科は、そのセオリーを学んでいないようだった。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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『萬屋のもっと深く愛してい』第10回「テレワーク」
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、急速に導入が進んでいる「テレワ
ーク」ですが、東京商工リサーチの調査によると、中小企業での導入は3割
程度に留まっています。小さな会社では、現場での作業が必要だったり、紙
媒体で管理しているものが多かったりするなど、テレワークに適した業務が
少なく、ハードルが高くなってしまっているのも原因の一つでしょう。テレ
ワークは部分的に導入するだけでも、作業の効率化や人手不足解消にが実現
し、会社と社員の双方に大きなメリットが生まれます。
「テレワーク」は英語で「telework」と表記し、「tele = 離れた所」と
「work = 働く」を組み合わせた造語で、「離れたところで働く」ことを意
味します。自宅で働くことのみならず、外部のレンタルスペースやシェア
オフィスを利用したり、会社側が借りたマンションの一室にごく少人数の社
員が集まったりする場合もあります。
従業員15人ほどのある建設業の会社では、5年ほど前から有能なベテラン社
員が介護のため遠方の実家に戻ることをきっかけに、テレワーク可能な仕組
みの導入を実施しました。出社しての対応が必要な業務もあるため、1ヶ月
のうち10日間程度は出社していますが、それ以外はパソコンや携帯電話、ソ
フトなどの必要な機器やツールを会社が貸与し、社外からでも業務対応が可
能となっています。
導入にあたっては、テレワークで対応できる業務を抽出したり、テレワーク
用のツールを揃えたり、労務管理を適切に行なえる制度整備をしたりする必
要があります。企業側の準備のみならず、社員側がテレワークを行なう物理
的スペースの確保することや家族の理解・協力を得ることも非常に重要です。
また、導入するツールの使用や活用について、社員に研修を行なう必要が出
る場合もあります。
検討以前に自社の業務はテレワークで対応できないと思い込んでいるケース
も耳にしますが、むしろこれを機に、業務のあり方を整理・見直しするべき
でしょう。
シンプルに全社を対象として導入するのではなく、対象者や対象業務を限定
するなどして、部分的な導入を図れば無理がありません。テレワークの導入
により、社員にとって働きやすい環境が生まれることで、社員の定着率向上
にも効果があると考えられています。
このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】
■『日本電産 永守重信が社員に言い続けた仕事の勝ち方』 田村賢司 著
■『英語はまず日本語で考えろ!』 本城武則 著
■『バカはブラック企業に入りなさい』 大橋高広 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ )
毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け22年。
マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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次号予告:
第514話 『ゼロ・リスクの道』
シリーズ『診察室の奥』 (6月25日発行)
昨年奥歯の直下深くが細菌に侵され骨まで腐りかけていたのを抜歯せずに
手術で治療することができました。抜歯を避けるのに数件の歯科や口腔外科
を当たりました。その過程で聞かされたリスク回避の合理的な選択について
考えてみます。
(完)