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経営コラム SOLID AS FAITH 500話発行記念特別号 第四弾
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目次
1 ご挨拶
2 503話 『空気製造職』 =回路明察(4)=
3 特別原稿 『日日是考日~師匠が教えてくれた4つのこと~』
第四話 『ヨロズヤの考える「人材活用」』
4 『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR
5 MSIグループの仕入完了報告
6 あとがき
7 次号予告
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☆注意:お読みになる際には、枚数がかさみ恐縮ながら、プリントアウトの上
お読みになることを、心よりお勧め申し上げます。
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1 ご挨拶
御愛読御礼申し上げます。503話です。
新年が始まって既に10日目になりました。通称「武漢ウイルス」の騒ぎも
定常化して、そのうち新型の国産ワクチンでさえ普及するようになりつつ、
自然免疫も広く作り上げられる状態に落ち着いて行くものと思えます。感染
騒ぎは各種の経営的環境変化をもたらし、企業によっては危機的な状況がも
たらされていますが、新たな定常状態の中で、いくらでも存在している消費
ニーズに対応する事業を追求して行くことになるでしょう。
面白い時代になりました。正しい方向にちょっとアクセルを踏むだけで、
お客様やお客様未満の人からの大きな支持を自社の事業に集めることができ
るようになっています。それは別にクラウド・ファンディングの話でもなく、
SNSでの怪しいセールス・コピーの話でもありません。単に本来のマーケテ
ィングの原理原則に忠実な、ターゲットとするお客様が求めることを純粋に
実現しようとする取り組みが、そのままかなり直接的に結果に結びつくとい
うことです。
シリーズ『回路明察』は最終回でようやく核となっている趣旨について述
べる号に辿り着きました。モノやサービスの販売でさえ、それが単にモノや
サービスを対価と交換したいというだけのニーズに対応するものであるなら、
人間の手を経て行なうことがコスト的にも非合理的になりつつあります。
個々のお客様に合わせた付加価値の高いモノやサービスでさえ、ビッグ・デ
ータの活用などで人間よりも機械の方がムリ・ムラなく提供できるようにな
りつつあります。『営業はいらない』という書籍もありますが、モノやサー
ビスを売る現場でも、人間ではない方がよい作業場面は急激に増えつつあり
ます。
シリーズ『回路明察』は人間の無意識の新呼称であるインサイトについて
考えてきましたが、そのインサイトを効果的に外から操作する技術こそが、
実は人間であるお客様が持つ、機械では充足できないニーズを充足する方法
論です。人間でなくてはできないお客様の無意識のコントロール技術。営業
・販売の現場におけるその他の人間の仕事は徐々に存在意義をなくしていく
ことでしょう。最終回の『空気製造職』では、そのような人間の売り手の持
つ可能性について考えてみます。
偶然ですが、4回シリーズの特別原稿は『日日是考日~師匠が教えてくれ
た4つのこと~』も最終回の今回は人の活用の切り口から、『空気製造職』
と全く同じ論点に向かって議論を進めています。小さな会社でも、何がお客
様から求められていて、それを提供する仕組みのうち、どの部分をコスト高
の人間を擁して行なうべきなのかを、真剣に考えなくてはならない時代にな
ります。是非、新年の早いうちに一緒にご一考ください。
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その503:空気製造職 シリーズ『回路明察』(4)
「箸を縦に咥えたグループと、横に咥えたグループに、同じマンガを読ませ
て、その面白さを評価させると、箸を横に咥えたグループの点数が高くなる」
と言う変わった実験がドイツのミュンテによって行われた。横に咥えた人々
は、その時の感情とは関係なく、表情が笑い顔に近くなる。するとマンガが
楽しく感じられる。この結果から、人間は楽しいから笑顔になるのではなく、
笑顔を作ると楽しくなるのだと分かる。
さらに、米国南カリフォルニア大学のニールの研究では、「人間は相手の
感情を、自分も相手と同じ表情になることによって理解している」と判明し
た。つまり、「周囲の人が笑っているのを見ると、まず無意識がその笑顔を
自分に移す。すると笑顔が楽しい気持ちを発生させ楽しく朗らかな感情が自
分のものになる。そして相手の楽しさを理解できる」というメカニズムだ。
これは他の感情でも同じで、人間は共感を通じて相手を理解していることが
分かる。現実に、「ボトックスの整形で皺をできにくくすると、表情が乏し
くなって、その結果、他人の感情に鈍感になる」と言う研究結果まで存在す
る。
ICTがどんどん世の中に浸透し、大抵の買い物はネット通販で済ませられ
るようになった。近隣の飲食店からでさえ、Uber Eatsをタップ数回で頼む
時代。飲食店も“中食”で代替されて行く。理美容やリフレクソロジーなど
のサービスが辛うじて店舗に利用者が来るという常識を維持できているのは、
利用者のニーズが「非日常感体験」にあるからだとされている。確かに話題
になった中国の無人コンビニは不評で業績がガタ落ちだと聞く。無人店舗に
万引き同然の買物に行くぐらいならネット通販の方がマシだったのだろう。
まるで宇宙空間のような商業施設などのPRを兼ねた番組を時々目にする。
その情報を記憶している範囲で、近隣に行く用事のついでで見学に赴くこと
がある。オープンから半年も経たず客足が遠のいていることは珍しくない。
これらの店舗や施設が狙った非日常感の提供に欠けていたもの。それは多分、
人間による非日常感の伝播だったのではないか。人間は周囲の人間の表情を
写し取ることで感情を自分のモノにし、その感情を後付けで理解する。非日
常感も人間が作る空気を介さねば利用者の無意識に刺さらない可能性がある。
ワクワクさせる店なら、スタッフ達は毎日お祭り騒ぎの様相にならねばな
らない。贅沢なくつろぎを提供するなら、腐女子が集う「執事カフェ」のよ
うな接客をスタッフが実現しなくてはならないかもしれない。「人を動かす
無意識の情報処理パターン」であるインサイト。それを販売に活用する上で
人に必要とされる能力が見えてくる。
納戸の奥から昔読み耽った山本七平の一連の「空気」についての本を出そ
うと思い立つ。
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3 特別原稿 『日日是考日~師匠が教えてくれた4つのこと~』
第四話 『ヨロズヤの考える「人材活用」』
ソリアズ読者のみなさま。こんにちは。会社の萬屋 企画改善請負本舗の奥
田美幸です。11月25日発行分から全4回に亘り原稿を書く機会をいただいた
500話発行記念特別号が、とうとう最終回となりました。拙い文章となりま
すが、最後までお付き合いいただけますと幸いです。
全4回シリーズのタイトルは、『日日是考日~師匠が教えてくれた4つのこと
~』。今夏に個人事業主として独立してから半年弱、師匠・市川の下で教わ
ったことは数え切れないほどあります。その中でも、ヨロズヤとして事業を
行なう際の「核」となる教えを厳選しご紹介してまいります。最終話となる
今号は、小さな会社における「人材活用」についてまとめてみました。ぜひ
ご笑覧ください。
小さな会社では、大手企業と比べ経営資源が限られているため、経営資源を
フル活用することが重要です。中でも経営資源の一つである「人材」の活用
が欠かせません。ICTの発展によりAI(人工知能)の活用範囲が広がり、機
械に代替できる作業も増加していますが、機械化したところでその機械を動
かすためには人が必要です。そして、人でなければ対応できない仕事の価値
が今後ますます高まってきます。利益を生み出すために、自社のビジネス・
コンセプトに沿ってお客様の感情を動かすことも人でなければ実現が難しい
業務の一つです。
人材を育成し活用していくことが重要ですが、小さな会社において、自社の
従業員をきちんと戦略を立てて育成しようと考える経営者はあまり多くない、
と市川は言います。
実際に小さな会社の経営者の方とお話すると、従業員を育成するためにお金
をかける必要性を感じないと仰ることが非常に多いです。特に研修も行なわ
ず、日常の業務指示に場当たり的な指導を加えるような状態では、必要なス
キルが身につくまでにかなりの時間がかかります。
効率的に業務をこなせるようになるまで時間がかかるのも問題ですが、それ
以上にお客様からの評価を落としてしまうリスクの方が大問題です。育成が
進んでいない社員が現場にいると、今まで定着させてきた大切なお客様の満
足度を下げてしまい、結果として売上低下・利益低下につながる可能性があ
るからです。今まで築いてきた大切なお客様との関係性を維持するために、
効率的に育成することが重要です。
従業員の育成にお金をかける必要性を感じないのは、そのまま、お客様満足
度向上への投資を投げ出しているのと同じなのです。お客様満足度を全く考
慮せずに経営している企業が、長く続くことは稀でしょう。小さな会社が生
き残るためには、人材の育成・活用がいかに重要かご理解いただけるかと思
います。
ヨロズヤが行なった「人材活用」の事例として、ケーキ店の社員の接客力強
化プロジェクトがあります。自社のターゲット(=お客様像)の満足度をよ
り向上させる接客を行なうために、類似したお客様に対して質の高い接客を
行なう異業種実店舗の視察ツアーを行ない、その結果を基に自店の理想的な
接客の流れを考案していただきました。ヨロズヤでは店舗視察の準備から接
客の流れの作成までをお手伝いをしました。
接客を理想的な流れでできるよう何度も練習していくことで、社員全体の接
客の標準化が図られます。お店にとって1年で最も繁忙を極める昨年末のク
リスマスも、その取り組みを事前にしていたことでスムーズに接客できたと
言います。
他にも、会社の中に幹部(=経営者の代行者・代弁者)を増やすために、幹
部として必要な考え方をお伝えし、幹部の方たちが部下の人材を育成してい
くための仕組みづくりのお手伝いなどもしています。
人材を育成することは動機付けを高め、結果的に定着も実現すると師匠から
教わりました。人材活用を行なうことで、短期の内にお客様の満足度向上を
実現するだけでなく、中長期的に採用コストを削減する面でも利益を上げる
ことができ、効率的に事業を行なえるようになるのです。ヨロズヤは、まさ
に人材を戦略的に育成し、活用していくお手伝いをいたします。これらの考
えを『人材活用レポート』にまとめていますので、ぜひ合わせてご笑覧くだ
さい。
『人材活用レポート』
https://kaisha-yorozuya.support/stockpile/
ヨロズヤ初の連載コラムに最後までお付き合いいただき、誠にありがとうご
ざいます。お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、この連載のタイト
ルは、2018年に映画化した、『日日是好日 お茶が教えてくれた15のしあわ
せ』から着想を得ました。著者が「お茶」(=茶道)を習いながら気づいた
新たな幸せについて書かれていますが、“小さな会社の経営”修行もまさに
茶道と同じように、「暗黙知」のものが多く、師匠が持つスキルを習得する
までには何年あっても足りません。修行期間が終了するまでに一つでも多く
師匠から学びを得、できることを増やしていき、小さな会社の経営者の方に
お役に立てれば、この上ない喜びです。
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4 『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR
「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。
小さな会社が生き残るためには「機動性」と「差別化」が重要ですが、
それを実現している小さな会社はあまり多くないように感じます。
小さな会社の経営者の方が知っておくべき基本的な「差別化」の考え方を
「動画セミナー」第2弾として、わかりやすくまとめています!
全6回にわたりお話していますので、ぜひご覧ください!
https://kaisha-yorozuya.support/works/webinar-exp/
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5 MSIグループの仕入完了報告
前号に続き、500話発行記念特別号の4号では、感想付きで比較的最近読ん
だ書籍3冊を紹介します。
■『ネットは社会を分断しない』 田中辰雄・浜屋敏 著
インターネットの黎明期に「インターネットの普及で人々の相互理解が進
み融和が進む」といった牧歌的主張を聞くことがありました。現実には、寧
ろ固有の思想の強化を図る人ばかりで、そのようなことにはなっていないよ
うに感じられます。後者の意見を前半で全面的に描き切り、後半でいきなり
それに対する反証を述べるという、変わった構成の書籍です。根拠となって
いるアンケートの手法にやや杜撰さがあるようにも感じられますが、ネット
社会の現実を考える材料がふんだんに盛られた作品です。
■『心が「スーッ」と晴れる ほとけさまが…』 岡本一志 著
仏教は本来現世での苦しみとの対峙法をまとめたものであったはずですが、
長い歴史を経て日本では「葬式仏教」のような形で認識されるようになりま
した。この本のタイトルは『心が「スーッ」と晴れる ほとけさまが伝えた
かったこと』という長いものですが、タイトルのままの心を鎮め安寧を実現
する仏陀の教えを平易に説明した内容です。クリシェな内容ですが、スピリ
チュアル系の自称「啓発本」も多数書店に並ぶ中、とても好感が持てます。
■『奴隷日記1~先生に調教されて風俗嬢になった私~』 Ω子 著
タイトルそのまんまの著者の実体験をそのまま漫画化した作品です。カバ
ーイラストにあるような鎖につながれた奴隷ではなく、「先生」の言動とス
マホのメッセージによって、著者が奴隷化していくプロセスがよく分かりま
す。続編にして完結編の『奴隷日記 完結編 服従の洗脳がとける時』で、
著者は奴隷状態から解放されましたが、「先生」の奴隷であり続けることを
選んでいる女性も多数いることが非常に興味深く感じられます。
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6 あとがき
4回連続の500話発行記念特別号をお届けしてきて、漸く最終号に到達しま
した。本編のシリーズ『回路明察』では人間の無意識について、ビジネスの
観点から色々考察する内容に致しました。変な表現ですが、人間の無意識が
よく“意識”される時代になりました。無意識は遺伝的に決まっている事柄
や後天的な経験則に基づく、複雑な処理回路として日夜(睡眠中でも)高速
で情報処理に勤しんでいます。
そうではない「合理的」・「理性的」な「思考」や「判断」と呼ばれた機
能は機械に代替されることになったからこそ、非合理的で非理性的に傾きが
ちな“無意識”が世の中でこれほど着目されるようになったのでしょう。
『回路明察』は無意識のことを考えつつ、その実、今後の社会で重視される
人間の側面や役割について考えていたことになります。
本音と建て前を使い分けるのが日本人の得意技のように論う日本人論が流
行した時代がありますが、別に海外でもそのような使い分けは幾らでもあり
ます。この本音の部分は大きく“無意識”に依存しています。ですから、ど
れだけ綺麗事を言おうとも、どれだけ正論を翳そうとも、インサイト重視・
無意識重視の世の中では、(仮に紆余曲折を経たとしても)結局本音で求め
られていることにすべては収束していくはずです。
経営も同じでしょう。小さな会社であれば余計のこと、お客様のニーズに
鋭敏でいつつ、その求める所を迅速且つ的確に満たしていく企業が生き残り、
そうではない企業が、たとえどれほどブランディングしようとも、たとえど
れほどアクセス数を集めようとも、お客様の本音の激流に押し流されていく
ことでしょう。
奥田が今回の特別原稿で紹介した『人材活用レポート』は、その観点から
見て非常に稀有なレポートです。冒頭のご挨拶でも書いた通り、何がお客様
から求められていて、それを提供する仕組みのうち、どの部分を機械よりも
コスト高の人間を擁して行なうべきなのかを、小さな会社が真剣に考えてい
く際に、役立つ情報が満載されています。
当コラムの500回という大きな節目に当たって、このように時代の変化を
俯瞰した内容を拙いまでもまとめられたことをとても嬉しく思っています。
これからも長くお付き合いください。
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
発行しています。
(http://www.mag2.com/ )
毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まずまる21年。
そしてとうとう500話到達!
マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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『脱兎見!東京キネマ』もこちらで御覧下さい。
http://tales.msi-group.org/
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7 次号予告
次号504号からは通常号に戻り第504話『ビオトープの日々』をお届けしま
す。所謂「若者」的な仕事観について考えてみます。
(完)