131 効率的電話

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経営コラム SOLID AS FAITH 第131号
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ご愛読ありがとうございます。第131話をお届けします。

前回の号では、PR欄にて、最近手掛けた案件を一部紹介いたしましたが、
「奇妙過ぎる取合せ」と感じた方は多かったようで、「滅茶苦茶な業務範囲だ
よね」などと、何人かの方から言われました。弊社ホームページのトップペー
ジにも書いてあります通り、取り急ぎ、「中小零細企業におけるヒトに関わる
悩み解決の案出し」を何でも安く引き受けるのが弊社だとお考え戴ければ幸い
です。

さて、今回の号は、作業のマニュアル化や効率化などに関して、私の電話会
社勤務時代の経験をベースにまとめてみました。また、別の号のネタにしてみ
ようかと思ってもおりますが、昨今の電車事故や航空会社の連続する不祥事な
ども考え合わせつつ、お読み戴けましたら、尚一層、お考え戴けることが膨ら
むかと存じます。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへ
のお返事の目標納期は5営業日!!
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その131:効率的電話

高校を卒業して入社した電話会社で、私は電話局内の機械設備の保守をする
のが主な仕事だった。高校の普通科卒業の私がその職種に配属されたのは、入
社試験の物理と数学の成績が良かったからだと後に上司が言っていた。それで
も、それなりの仕事ができるようになるまで、数ヶ月に渡る完全集合研修を二
度も入社1年以内に行なう。

研修から職場に戻ると、先輩達が「どれ、どんなデキか」とテストする。昔
の刑事ドラマに出てくる電話の逆探知の練習だ。20年近く前の逆探知はほぼ手
作業で、電話の発信もとを手繰り、探り当てる熟練の作業。慣れた主任で15分、
私ならうまく行って40分も掛かる。機械の修理も故障箇所を探り出してからそ
の修理まで、知識と経験がモノを言う。故障箇所を再現して皆で学んだ。

6年後にその会社を辞める時、警報がなると故障箇所を機械が自ら診断して、
「この基盤を丸ごと取替よ」と人に命じるようになっていた。ガチャガチャと
音を立てて、耳で電話の混雑状況が分かる、何フロアも埋め尽くした、そんな
機械群は一掃され、無数の基盤が挿し込まれたラックが林立するだけの静かな
小さな部屋が取って代った。逆探知もコマンド一つ打ちこめば事足りる。故障
基盤を弄くるとサボリと見なされるようになっていた。1万個の電話番号に対
して必要な保守者数の基準は6年前に比べて半分以下になった。

この組織で出世する人は、現場を離れて、企画部門だの管理部門に異動する。
そこでは、進歩する技術を如何に組織に取り込み、コストを抑えるかが日々研
究されている。その人々が徹夜して作り上げたマニュアルが普及すると、それ
に考えなく隷属する人々が万単位で発生する。故障が起きない最新鋭の装置を
導入すると、技術を磨くことなく、ただ警報装置を監視する人々が再び万人単
位で生まれる。

或る製造現場の勉強会で、新入社員にムダ取りの意識を植え付けたいと言う。
「軍手を無駄にせず何度も使え」と徹底すれば、皆ボロボロの軍手をして仕事
をするだけになる。作業標準の手順を決めれば、効率は上がるが従うだけの人
の遣り甲斐は減じ易い。人時生産性を考えよと言って、公式を思い浮かべても
現実は何も変わらない。コスト意識を共有できない限り、決めれば決めるほど、
考える力が削がれる。現場力向上の道は険しく長い。

「魚を与えるよりも、魚の獲り方を教えよ」とよく聞く。しかし、その獲り方
も、ただ習ったままに反復したら、とんでもなく退屈で、条件によっては全く
無効になりかねない。魚の観察方法と習性を教えれば、自ずと獲り方は導かれ
るのか。社員研修の立案などを行うと、そこまで教える価値を疑う人に多く遭
遇する。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。
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特設コーナー
= 最近面白かった本のご紹介 =

東京では、周囲に観察に値するものが多く、電車内では勿体無くてメールも
打たなければ、本も雑誌も読まない私ですが、最近、引き込まれる程に面白く、
東京においてさえ、つい開いて読み、電車を乗り過ごしかけたこと数回と言う
書籍によく巡りあいます。「いつもどんな本を読んでいるんですか」とのお問
合せもありますので、少々紹介してみたいと思います。

●『定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか? 』
三戸 祐子 著  新潮文庫
電車事故の話とは無縁に読んで尚、学びの多い本です。過去と現在の連続性
を意識させられます。

●『超・学歴社会 「人物本位」「能力重視」の幻想』
溝上 憲文 著  光文社
ヒステリックな内容と感じますし、「一流大学・一流企業に入れなければ、
人としての生き方が満足にできるわけがない」ような論調には辟易しますが、
頻出する人事担当者の肉声や関連書籍からの引用、さらに採用実績のデータ
は圧巻です。

●『14歳からの仕事道』
玄田有史 著  理論社
挿絵とルビ以外は14歳には難しすぎるように思いますが、私が『就労観教
育』としてまとめる事柄や見方に真っ向から迫った名著だと思います。各論で
は必ずしも賛成できない部分もありますが、強いバイアスは感じられません。

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次号予告: 第132号 気休めと言い訳 =林檎の教え(1)=(7月25日発行)
第103話・第104話で登場した、シリーズ『足元の発見』以来、久々の2話連
続のシリーズをお届けします。題して『林檎の教え』。歌の歌詞をモチーフに
経営方針や経営目標の意義を考えてみました。ご期待下さい。(完)