461 ハンガー・ゲーム =比較優位の夢=

=================================
経営コラム SOLID AS FAITH 第461号
=================================

ご愛読ありがとうございます。第461話をお届けします。

昨年、今年と二年連続で新入社員研修の企画・運営のお手伝いをさせて戴
く機会がありました。ネット情報依存型の過剰な“分かっている感”を抱え
た新人が増えているように感じます。自分が知らないことや自分ができない
ことに目を向けないようにしている様子を見ると、その後の離職対策が単純
な動機づけだけでは儘ならないように感じられてなりません。

働くことの意義や知的姿勢の在り方。動機づけの前に、そのようなことを
浸透させねばならないようです。しかし、一方で、そのような手間がかかる
人員をわざわざ雇用する必要があるのか否かも、その前の段階で検討する必
要がありそうです。人員を雇用契約の中で抱えることは、以前にも増して高
リスク・高コストになりつつあります。極力、人を雇わない経営の形を真剣
に模索するべき段階に、多くの中小零細企業が到達してしまっているように
思えてなりません。

PR欄では前回に続き、「既存人員の非雇用化」の企画作りについて紹介い
たしました。中途半端な動機づけによる離職対策や、世の風潮を追うだけの
採用活動などは、経営課題への対症療法にさえならなくなりつつあります。
自社の組織を誰がどのように回すのかを、根本から考え直すお手伝いを弊社
では行なっております。

前回まで二回連続でお届けしたシリーズ『平成ライダーズ』が終わり、今
回からは再び二回連続シリーズの『比較優位の夢』が始まります。日本でも
格差が広がっていると非常によく耳にしますが、多くの他国に比べて、日本
の格差の小ささは巷間の話題になることがあまりありません。小さな格差だ
からこそ、その格差にどのように向き合うべきかは、中小零細企業の組織運
営の根底にあるべき「社会観」であるように思えます。今回からの二回のシ
リーズで、そんなことなどを一緒にお考え戴ければ幸いです。ご意見・ご感
想お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業
日!!

=================================

その461:ハンガー・ゲーム =比較優位の夢(1)=

「薔薇の栽培に関心があって、ペットでは犬、特にチワワなどの小型犬が好
きで、音楽はクラッシックが好きで、管楽器を自分でも演奏できる20代の学
士以上の学位を持つ男性」。

事典のように分厚い奨学金一覧のページをめくっている中で、友人のドナ
ルドが「これなんか、どうだ」とその一項目に指を止め条件を読み上げた。
この条件を満たして面接で気に入られると、どこかの金持ちが日本円にして
年額最大500万円までの奨学金をポンとくれるという。ここは学生課の事務
室の閲覧棚。今から30年以上前の米国留学時代、「カネがないからどうしよ
うか」と私が困っているのを見かねた彼が「成績は良いんだから、奨学金を
貰えばよい」と、指し示したのがこの一覧だった。

「いやいや。薔薇どころか園芸全般に関心はないし、クラッシックは全然ダ
メだし。ペットを飼うなら啼かないウサギが良いと思っている。干支も卯だ
し」と私が首を振ると、「そうか、オレは薔薇とチワワはイケてるんだがな」
と彼はページを次へと捲った。

どんな適性試験を受けても不向きと出る独立起業をするにあたって、零細
事業者で参考にできる仕事観を、結局、架空の人物三人に求めることにした。
未知の探求は刑事コロンボから。ドメインを広く持つことは代打屋トーゴー
から。そして、カネを出す人からの依頼内容を妥協なく完遂する姿勢はブラ
ック・ジャックから。仕事をしているとクライアントからも提携事業者から
も、最後の“姿勢”について尋ねられることが多く、ブラック・ジャックと
答えていたが、最近は世代の移ろい故かブラック・ジャックを知らない人に
時々遭遇する。仕方ないから、今でも連載が続くゴルゴ13と答えることもあ
る。

「日本でも格差が広がって、富は元々資産を持っている人々にどんどん偏在
してさらに蓄積されて行きますよね。経済学では富を下層に分配するのは、
累進課税を行なう国の役割です。けど今富裕層に課税をすれば、タックス・
ヘイブンに皆逃げて行ってしまいます。結局日本でも格差は広がって、ワー
キング・プアみたいな人が増加すると…」。
或る異業種交流会であった若手中小企業診断士が私に話しかけてきた。確
かにマクロ的に見て妥当な意見と私も思う。

一つ疑問が湧く。国が以前ほどアテにならない中で、なぜ下層の人々は富
裕層から自ら富を獲得しようとしないのか。今時、革命や打ちこわしや一揆
でもない。それに政治活動は遅すぎる。多分努力あるのみだろう。その努力
には、薔薇とチワワに次いで好きでもない管楽器を練習して富裕層に気に入
られるか、富裕層が自ら懇願するほどのブラック・ジャックやゴルゴ13のよ
うな強力な優位点を持つかの二方向があるのだと私は思う。

=================================
☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
=================================

【MSIグループからのPR】

働き方改革が“動き”始めます!

社員やスタッフを雇用するコストとリスクは上がる一方です。
高いモノには高い価値がついているはずです。

そうなると、たくさんの人間を雇用できなくなりますし、
雇用される人間には高い値段に見合う活躍が求められます。

既存の雇用人員が高い値段に見合うほど貢献しないのなら…、

自社の存続のために
「いっそ、既存の雇用人員をいなくする!」
という選択肢はいかがでしょう?

法的な判断は、以下の9つの面で総合的に「雇用関係」を判断します。

1)業務遂行上の指揮命令を受けているか。
2)報酬が(仕事の結果に対してではなく)労務に従事したことに対してか。
3)業務(/仕事)の依頼に対して諾否自由がないか。
4)業務に時間的・場所的な拘束があるか。
5)労務提供の代替可能性は小さいか。
6)業務用機材などの負担を企業がしているか。
7)特定企業と専属的に労働しているか。
8)就業規則などの服務規則が適用されているか。
9)企業によって公的負担はなされているか。

これらに「はい」の答えが多いほど、
たとえ、「業務委託契約」や「業務請負契約」に
本人が深く納得していても、
「雇用関係」とみなされるのです。

ですから、既存の雇用人員を非雇用化するには、
きっちりとしたスキームが必要です。

弊社では協同組合設立などのスキームも研究中で、
雇用関係の専門家とも意見交換しつつ、
既存の雇用人員の非雇用化の企画立案を承っています。
http://msi-group.org/msi-organizational-networking/

ご関心を賜りましたら、まずはメールにてご一報を!
bizcom@msi-group.org

=================================
【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『教養としてのテクノロジー …』 伊藤穰一 他著
■『コンビニ外国人』 芹澤 健介 著
=================================
発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ )

毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け20年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
★全バックナンバーはまぐまぐのサイトで掲示されております。
http://archive.mag2.com/0000019921/index.html
★弊社代表のコラムが色々満載。
ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
http://tales.msi-group.org/?cat=2
★講読の登録・解除はこちらのURLでお願いします。
http://msi-group.org/msi-profile/saf-index/
=================================
※ ご注意!!
サーバのエラーなどで読者登録が解除されてしまった方がいらっしゃる様
子です。当メルマガは毎月10日・25日に休まず発行しております。発行状況
のご確認は上述の弊社ブログにて行なってください。
また、まぐまぐからの連絡によると、一部フリーメール運営企業でサーバ
の受信量規制を行なっているケースがあり、その場合は大幅にメールマガジ
ンの到着が遅れるとのことです。
「届かない」、「再送希望」などの連絡は、まぐまぐの窓口である
「magpost@mag2.com」に、メルマガID(#0000019921)、タイトル(『経営コ
ラム SOLID AS FAITH』)、購読アドレス、再送希望の旨を記載の上、メール
にてご連絡下さい。
=================================
次号予告:
第462話 『傾斜測量』 シリーズ『比較優位の夢』(4月25日発行)
社会における格差が広がっていると言われて久しいですが、他の多くの先
進国に比べると、国内の格差など殆どとるに足らないように感じられます。
シリーズ『比較優位の夢』の第二弾をお届けします。

(完)