443 閑居の本質

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経営コラム SOLID AS FAITH 第443号
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 ご愛読ありがとうございます。第443話をお届けします。

 今年も半分が終わり7月に入りました。中小零細企業における人手不足が
あちこちで聞こえてくるようになってきました。外国人労働者の導入も進ん
でいますが、大きな潮流は(ICT技術全般も含む)機械による効率化や無人
化の方に流れているように感じられます。

 一方で、中小零細企業の経営は凡事を徹底するだけで完成します。従前の
無駄なやり方や自社の強みにつながらない事業の見直しなども、社内のマン
パワー需要を引き下げることに大きく貢献します。以前にも増して、多様な
場面での多様な課題解決のあり方のご相談に乗ることが多くなっています。
PR欄には弊社でお薦めすることが時々ある「文系四大卒女子の新卒採用」に
ついて少々説明してみました。ご一読を賜れれば幸いです。
 
 今回の号は『閑居の本質』と題して、労働時間短縮の結果を考えてみます。
長時間労働が、鬱や自殺の直接的原因と見做す風潮が強くなり、労働時間を
短くする取り組みは中小零細企業の現場でも耳にします。しかし、長時間労
働と心を患うことの間に強い相関はないものと弊社では考えています。
 
 行政が長時間労働に着目するのは、それが定量的に測れるパラメータであ
ることによるところも大きいでしょう。9時5時で働いていても自殺者が出
るケースもあれば、労働法適用外で残業時間換算月間3桁の状態で働き続け
ていても誰もどうにもならない職場もあります。苦役なら喩え30分でも心が
拒絶することがあり得ますが、自分にとって望ましいことなら何時間続いて
も苦にならないのは当然です。個々人の労働や就労に対する認識を主要因と
して、鬱や自殺は発生すると見た方が多分妥当であろうと思います。労働時
間はその認識に一定の影響を与える環境要因の一つでしかありません。
 
 そのような大前提が検証されることなく、従業員満足のための時短を相談
された際に考えたことをまとめたのが今号です。ご意見・ご感想お待ちして
おります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その443:閑居の本質

「う~ん。どうなんでしょうね。取り敢えず、3つ説明したいことがあるん
ですが」。
 社員に鬱が連続しているという飲食チェーンの社長が、労基的には全く問
題ない労働時間を維持しているのに、さらに休みを増やすと言う話にコメン
トすることになった。
 
 一つ目に話したのは、社会学の創始者の一人と言われるデュルケームの自
殺についての研究。世界中からデータを集めて自殺率に影響する要因を研究
した彼は、人には人生に意味と構造を与えるために、義務と束縛が必要であ
ると結論づけたらしい。私が読んだ『幸せ仮説』には、「強い社会関係を持
つことは、免疫システムを強め、(禁煙する以上に)寿命を延ばし、手術か
らの回復を早め、うつ病や不安障害に対するリスクを軽減してくれる」とま
で書いている。単純に読むと、休みを増やせば鬱が増えそうに感じられる。
 
 次はセロトニン・トランスポーター。やる気や快適さを作り出す脳内物質
セロトニンを運ぶトランスポーターの能力を決定する遺伝子の構成は、世界
の地域によって異なり、日本人はセロトニンの脳内濃度が世界で最も少なく、
不安になりやすく幸福感を得にくい可能性が、非常に高いと書籍に書かれて
いる。日本で鬱や自殺が多いのは、これが原因と言う仮説もある一方で、日
本人は幸福が感じられないから、何とか幸せになろうと努力を続ける傾向が
強いと言う解釈もあると言う。

「三つ目は…」と私が話すと、社長が「はあ。それじゃあ、元々鬱になりや
すいのが日本人で、休みを増やしたら、もっと鬱になるということを言って
んのか」と容喙した。

「で、三つめは人生の満足感なんですけど。心理学者のロバート・ディーナ
ーと言う人が、世界中を旅して、人生の満足度を尋ねて回ったらしいんです
よ。貧困の極致にあって病気まであるカルカッタのスラム街の娼婦まで調査
したらしいんですが。彼女たちにも長く一緒にいられる友達もいれば、多く
は家族との頻繁に会っているらしくて、満足度がそれなりって話です」と私
は無理に話を進めて終わらせた。

「三点目は何を言いたいってことなんだ」と焦れてきた社長に、私は言った。
「結局、見た目のみすぼらしさでも仕事の忙しさでもあんまり幸福感とか満
足感は変わらないってことのようなんですよ。問題はこの娼婦です。結局、
ここでも人間関係だった訳ですから、カギになっているのは。私はまじめな
研究者の書いたたった二冊の本を読んでこういう話をしているんですけど。
結構、世の中で言われていることって、ぽんと従うと落とし穴があるようで
す。まずは、社員が何を嬉しがるのか、実際にきっちり観察してみた方が良
さそうですよ。休みを増やすと後から減らすことも難しいでしょうし」。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

弊社ではクライアントの中小零細企業の採用に当たって
文系四大卒女子の新卒採用をお薦めすることがよくあります。

『女の機嫌の直し方』(黒川伊保子著)を読むと、
男性脳とは仕組みが異なる女性脳の特長が分かりますが、
それは多くの面で極端な差別化を掲げる中小零細企業において
お客様満足面での切り口を実現する上で有益な能力を実現します。

『できそこないの男たち』(福岡伸一著)を読むと、
聖書の世界と異なり、生物の基本がメスであることが分かります。
オスはデキにばらつきが多く、「低品質製品」が多く混在しています。
それに対して、メスの品質は安定的で、
生物として本来の機能をすべて持っています。

実際に、中小零細企業の採用の現場で、説明会に来る学生を見ると、
客観的に見て女子の方が優れた社員になりそうな要素を
揃えていることが非常によく見受けられます。

しかし、これだけの話では、経営者の…
「なぜ文系四大卒を雇うのか…」
「なぜ女子を採用すべきなのか…」
の疑問の答えは明確にはならないでしょうし、
反論の余地も大きく広がっているものと思います。

弊社代表市川が書いた
『大卒者・女子 その活用の考え方のレポート』は
弊社サイトの『資料置き場』に入っているレポートの一つですが、
上の疑問に対する答えが詳解されています。

多くの中小零細企業経営者の方々に、
「一応、納得できる内容だ」とご評価いただいています。
イマドキの採用を考える一つの材料として
ご一読戴けたら幸いです。

合わせて、正社員の採用のみならず、
派遣社員・請負社員の活用まで視野に入れて、
中小零細企業での「人材調達」全体を論じてみた
『人材採用のレポート』もご一読ください。

★『大卒者・女子 その活用の考え方のレポート』
 http://msi-group.org/msi-report-on-college-grads-and-females/
★『人材採用のレポート』
 http://msi-group.org/msi-report-on-hiring/
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『女の機嫌の直し方』
 https://7net.omni7.jp/detail/1106749562
『できそこないの男たち』
 https://7net.omni7.jp/detail/1102609338
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『仕事の問題地図』 沢渡あまね 著
■『高校図書館デイズ』 成田康子 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
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毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け19年。

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 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
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次号予告:
 第444話 『知的満足』 (7月25日発行) 
 書店に行くとどこでも平積みで陳列されている『AI vs. 教科書が読めない
子供たち』が詳解する読解力について考えてみました。

(完)