438 続・錬金の原理

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経営コラム SOLID AS FAITH 第438号
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 ご愛読ありがとうございます。第438話をお届けします。

 前号のご挨拶文でもお伝えした廉価なAI技術を核とする先端技術は、中小零
細企業でも十分活用の余地があるものと、その後、徐々に学んで分かってきま
した。以前の発想では、大手企業がそのような技術をどんどん導入してくる中、
中小零細企業はローテクで…と言った対立構図でしたが、とうとう、中小零細
企業間の競合でもそのような経営環境の変化を完全に意識しなくてはならない
状態になったと感じています。

 経営資源の限られている中小零細企業では、自社のビジネス・モデルのどこ
に先端技術を用い、どこを人間が処理するのかの見極めが非常に大事になるこ
とと思えてなりません。先端技術にかかるコストは幾らでどんな分野のことを
効果的に行なえるのか。その基礎的な理解がなくては、どこにヒトの資源を集
中投下するのかも決められません。漫然と日々のオペレーションを回すことに
汲々としている中小零細企業と、自社の経営環境と事業方針をきちんと検討し
なおす中小零細企業の間には、どんどん生存確率の差が開いているように感じ
られます。

 数号前の当コラムで紹介した『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』が話題
になってきました。内容は「子供たち」だけの話ではなく、大人の読解力も俎
上に上がっています。読解力が障害となっているのか、組織内のスキルの標準
化を考える勉強会の実施などのお引き合いが少々増えてきました。弊社代表の
市川の名刺の裏面には「強い組織は“伝言ゲーム”がうまい組織」と書かれて
いますが、経営方針や経営情報の共有化、そして、知見とスキルの標準化など、
小さな組織だからこそできる「徹底」が、先述のように中小零細企業の生き残
りの確率を引き上げるのだと思います。
 
 今回お届けする号は2006年に発行した第143話『錬金の原理』に続いて、中
小零細組織の「人を育てる覚悟」について考えてみたものです。ブログ内の第
143話の記事へのリンクも設けましたので、併せてお読み戴けましたら幸いで
す。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目
標納期は5営業日!!

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その438:続・錬金の原理

「社会は、『どうぞ人を立派に育ててください』と会社に要請している。会社
には人を育てる時間とお金のゆとりがある。会社は社員の能力を伸ばし、人格
形成に寄与することによって社会に貢献する。社会は、そのお礼にその会社の
商品を買う。会社は、その商品やサービスを社会が支持しているから存続でき
るのだ。それは『人を育てる』と言う貢献に対する、社会の感謝の証である」。

 紙の束を手に老眼鏡のアングルを調整しながら、零細卸売会社の年老いた社
長は、「これ、やっぱり良いよなぁ。ホントに実感だわ。金言ってこういうの
を言うんだろうな」と言う。社長が持っているのは私が書いた『人材育成のレ
ポート』のプリントアウト。読み上げたのは、私が引用した、著名なコンサル
タント染谷和巳氏の書籍に出てくる一節。

 この会社の勉強会の内容は、学校のカリキュラムのようだ。新卒を採るごと
に、最初はワードやエクセルの使い方の基本を教えた。ワードの使い方が分か
っても、文章がまともに書けない。ビジネス書を読ませて感想文を書かせるこ
とにした。エクセルでも状況は変わらない。セルに入力する式をきちんと書く
ためには、最低限の算数か数学の知識が要る。DBとして使わせようとすると、
統計の超基本が必要になることもある。

「5Sも小集団のカイゼン活動でやろう」と社長が言い出すので、QCの基礎を教
えることになった。すると、論理的思考まで必要になったと社長が言う。「ロ
ジカル・シンキング」と言うのがあると私が伝えると、今度はそれも教えて
やってくれと言う。営業の作戦立てをさせたら、ランチェスター戦略の超基礎
を教えることにもなった。

「この前な。社長の会合に言ったら、コンサルタントが来ていて、『日本のホ
ワイトカラーの生産性が悪い』とか言ってたんだよな。ホントかよって思った
んで、スマホで調べて、市川の書いた『仕事の嗜み』の話をしたら、黙りこ
くってたぞ。会社で人件費払って普通の社員にまで作文教えたり、算数教えた
りしてんだぞ。そりゃ、生産性が悪くなるに決まってんだろ。そういうことの
結果って、すぐに数字で測れるようになる訳がないからな」。

 社会の一部でもある自社の組織の人間を教育して、社会に役立つ人間に変え
ていくこと。それは、社会への最大の貢献であると同時に、社会の優れた一部
を自社の中に包含することでもある。それを納得していても、この社長のよう
に方針を貫徹するのは困難だ。

「ただな。その生産性が悪いせいで、まあ、ウチの会社にはここに書いてある
“時間とお金のゆとり”は、たくさんあるようには思えないけどな」と社長は
苦笑した。

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第143話 『錬金の原理』 http://tales.msi-group.org/?p=196
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第391話 『仕事の嗜み』 http://tales.msi-group.org/?p=817
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

ケースバイケースではあるものの、
中小零細企業の基本的な経営上の強みは…

■高い機動性と、
■自社のドメインにおける高付加価値の提供によるお客様満足の実現…

に集約されると思います。

中小零細企業の経営の根幹は差別化にあるという意見もありますが、
お客様に選び続けてもらう「差別化」は、
結局「お客様満足」の継続的な実現結果の現象でしかありません。

この両方を一気に高精度で満たすには、
社長が常に目配りして采配を振るうのでは間に合いません。
小さな組織の各々の構成員が、
全員自律的に判断・処理ができることが大事です。

今号の挨拶文でも述べた
経営方針や経営情報の共有化、そして、知見とスキルの標準化を、
組織内で周到に推し進める必要があります。

弊社ではこの施策を、スキル・マップの用意や
プロジェクト型の課題解決によって支援しています。
それらを実現する弊社の勉強会企画運営支援サービス。
是非、一度、ウェブページをご覧ください。

http://msi-group.org/msi-4sessions/

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『いま世界の哲学者が考えていること』 岡本裕一朗 著
■『セックスと超高齢化社会』 坂爪真吾 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第439話 『情報マーケティング』 (5月10日発行) 
 クライアントの事業の関係で少々学んでみた図書館運営。図書館運営の五原
則というものがあることを知りました。

(完)