391 仕事の嗜み

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経営コラム SOLID AS FAITH 第391号
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 ご愛読ありがとうございます。第391話をお届けします。

 首都圏のみならず、各地で外国人労働者が目立つようなって久しく感じます。
ビザ種別などによって決まる就労自体の合法性についてはさておき、アルバイ
ト仕事に勤しむこれらの人々が、一般的に日本人よりも長く安く働く傾向があ
るのは多分確実でしょう。さらに、自動運転車両などに見る、AI技術の産業へ
の適用は、比較的単純な労働の場を人間から奪っていくことが想定されます。
日本人の就労の機会は、或る傾向の仕事の分野に徐々に偏っていくことでしょ
う。

 そんな中、或る社内勉強会の参加者から、「ウチの会社のサビ残(サービス
残業)についてどう思うか」と尋ねられました。遵法はもちろん大事です。し
かしながら、弁護士を雇い、法を振りかざしたところで、その人物に(他社か
らでも)“雇われる力”が無い限り、良い結果が待っていないことは見えてい
ます。不法な労働を強いてばかりの組織を支援したいとは思っていませんが、
働き手の方にも賃金以外の得るモノの有無を考える知恵は持って欲しいものだ
と、私は思っています。

「若くして流さなかった汗は、老いて涙となって流れる」だの、「若い頃の苦
労は買ってでもしろ」だのを、誰彼無く押し付ける気はありませんが、少なく
とも一考の価値が十分にあります。仮にサビ残やブラック職場においてでも、
本人が、「外国人労働者に取って代わられない付加価値の出し方」や「AI技術
では置換できない労働のあり方」など、他で得がたい何かがを学べる機会があ
ると確信できるのなら、甘んじるのも悪くないものと私は思います。

 今号の『仕事の嗜み』は、そんな議論をコラムの形にまとめてみたものです。
雇用されることが無くなって20年近く経つ身としては、「サビ残」だの「ブラ
ック」だの「労基」だのと言う話題にあまり与したいとは思っていません。だ
からこそ、自分も人を雇うことなく、仕事の価値観を共有できる提携事業者の
方々と仕事をしています。ただ、その手の話題が増えてくる傾向があるので、
代表的な会話をまとめてみました。御一考賜れれば幸です。
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その391:仕事の嗜み

「市川さんはサビ残をどう思いますか。長時間労働とか。これ、労基とかに行
ったらアウトのレベルになってますよね。海外でもこんな働き方している奴い
ないでしょ」。
 事務部門でサービス残業が蔓延しているクライアント企業で、勉強会後の休
憩時間に社員が尋ねてきた。社長は「見なし残業の範囲」と言っているが、確
かにその枠を毎日最低でも一時間程度は超過している。勉強会のテーマとは無
関係の悩み相談を社員が私に投げかける、社長の動機付けの下手糞さを呪いな
がら、私はその社員に応じることにした。
 
 狭い日本の外のどこを基準にすると、この程度のサビ残が長時間労働になる
のか私には分からない。日本のホワイトカラーの作業効率性が悪いとの議論は
やたらによく聞く。SNSで無責任な認識が流布した結果かもしれない。私が直
接見たことがある米国と香港の職場では、皆やたらに働いていた。終電間際ま
でほとんど毎日残業者がいる日本の大手企業の事務所などとあまり変わらなか
った。一方で日本の派遣社員でもこうはいかないと思えるような、定時になる
とタイムカードを走りよって打刻する連中も山のようにいた。これらの人々は
「人工(にんく)」としか見なされていなかった。
 
 ハード・ワーカー達の仕事もお粗末なことが山ほどある。自分や自部署の利
益ばかり主張して他部署との連携が下手糞な人は、圧倒的に日本より多く感じ
る。失敗しても責任逃れに終始するし、問題が起きると訴訟に打って出るのも
よく聞く話。意見や判断も短期的視野のものが多く、明らかなトラブルの先延
ばしも多かったように感じた。高効率の事務作業の成立要素は、大量の「人工」
の定時労働以外になかなか見当たらない。
 
 何度か目の観光旅行に日本を訪れた知人を、商店街の普通の床屋に連れて行
くと面白い。あまりの丁寧なサービスのありように、「これは、特別な人のた
めの店舗なのか」と皆一様に驚愕する。何度も取替えるタオルにも、清潔な店
内にも、見えない下支えの作業が大量に存在している。事務作業にだって、当
然、質を上げる工夫や取り組みは多数ある。

「5Sとか報連相とかの徹底とか。段取り作業とか。製造現場だけじゃなくて、
普通の職場でも求められたりするでしょ。それが理想の仕事のあり方なら、そ
の結果もよくなるはずだよね。日本は大手・中小関係なく激烈な競争が狭い市
場を巡って起きる、世界でも稀有な場所なんだよね。勝負は付加価値ってこと
になっててさ。普通の労働者に求められる質も高いんだけどさ。その高さはど
うやって実現するのかって話。相応な時間投資は必要ってことだと思うんだよ
ね。それをサビ残だと思うかどうかは認識次第でしょ。海外の「人工」と同じ
働き方も魅力的かもしれないけどさ」。
 期待していた答えとは違ったようで社員は余所見をしながら私の答えを聞い
ていた。
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GWが終わりました。

4月から入った新人社員は、
GWでゆるみ、仕事は慣れでたるみ、
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新人育成体制の綻びが出る最初の時期が始まると、
人事担当の管理者の方々からよく伺います。

中小零細企業でも、研修制度を強化するお話を伺います。
そのこと自体には好感を持てます。

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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第392話 『人事の内訳』 (5月25日発行) 
『営業はリサーチが9割!』と言う本を読みました。実践的な内容はとても良
かったのですが、タイトルの方が衝撃的でした。「段取り八分」どころか、リ
サーチだけで9割です。仕事の「仕込み」について考えてみました。

(完)