427 続・雪かき仕事

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経営コラム SOLID AS FAITH 第427号
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 ご愛読ありがとうございます。第427話をお届けします。

 毎年恒例で10月末日発行の周年記念特別号も、今年は18周年になり、無事発
行が終わりました。全体が非常に長く、配信を行なっているまぐまぐ様のシス
テムでは収まり切らないことが、発行作業時点で判明し、慌ててvol.1 とvol.
2 の二部に分けて発行することとしました。

 このように周年記念特別号が二回の発行に分かれてしまうのは、2009年の10
周年記念特別号以来のことですが、その際のテーマの「ソリアズ的オーナー経
営者論概説」は、市場真理子氏が担当する前編と弊社代表の市川が担当する後
編に、元々企画段階から分かれていたものです。ですので、これだけ多い量の
コンテンツの周年記念特別号の発行は初めてのことだったのは間違いありませ
ん。

「3分の1ぐらい読んで、残りはまた今度と思っていたら、第二弾が来てウンザ
リ来た」、「こりゃダメだと思って、読むのを止めた」など、何時になく沢山
いただいた感想は、長さに対する辟易が多く、やり過ぎを少々反省はしており
ます。

 勿論、「何時か独立することとかを考えてみたいとは思っていたので、じっ
くり読んでみたい」とか「独立して上手く行っていない友人に読ませたい」な
どの好感触も得られています。政府までが会社員に副業を持つことを勧めるよ
うな施策を打ち出すようになり、以前からのインターネットの普及による自宅
起業のブームがさらに延命されたように思います。それに便乗して、食ってい
くことに直結しないイメージ先行の独立起業セミナーも乱立して、路頭に迷う
人を増やしている側面も目に付くことがあります。
 
 好評をいただけた背景には、そのような害悪さえ齎すことのある独立起業ブ
ームがあるように私には思えます。弟子の立場にある吉良氏の独立後の状況を
見ていて、思いついた企画でもありますが、タイムリーなものとして喜ばれる
部分があったのであれば幸いです。
 
 今回お届けする第427話『続・雪かき仕事』は、米国でかなりよく聞く「才
能ある者には、それを人々のために使う義務がある」と言う理屈について考え
てみました。エジソンの有名な言葉を待つまでもなく、多くの偉人や才能があ
ると目される人々は、その努力を続けられることそのものによって、その評価
が齎されていることが多いものと思います。才能あると言われる人間の身を粉
にする努力や苦労を、才能の一言で片づけるのは、非常に失礼で傲慢な態度で
あろうと思うこともあります。
 
 第337話『雪かき仕事』は、まさに大雪の東京で人知れず雪かきに励む人々
をモチーフとした内容です。才能と言われるようなものがなくても、人のため
に当たり前に行なうべき事柄に考え至り、今回の号を『雪かき仕事』の続編と
位置付けてみました。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂
戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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■第337話『雪かき仕事』 http://tales.msi-group.org/?p=648
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その427:続・雪かき仕事

「あ。市川さん。もう帰ってもらって良いんですよ。あとは、私たちの仕事な
んで」。
 部下数人と慌しく机や椅子を原状回復しつつ、私がお仕事を戴く某業界のシ
ンクタンクのセミナー部門のマネージャーが言う。私がこの日戴いたお仕事は、
アルバイト・スタッフの採用と定着の方法論のセミナー講師。アンケートで見
る限り、参加者の満足度はそれなり高かったようだった。セミナーが終わると、
シンクタンクの社員が数人、貸会議室の机や椅子の位置を戻し、撤収の準備を
始めていた。
 
「あ。どうせ、暇だし、この後仕事がある訳でもないので」と、ホワイトボー
ドを押して部屋の外に出ると、会場の後ろで話を聞いていた業界紙の記者の方
が「先生、ちょっと、幾つか聞いてもいいですか」と近づいてきた。質問に、
事例を引きつつ細かく答えると、喜んだ様子の記者は親し気に、「偉い先生な
のに、ホワイトボードも片付けるんですね」とニコニコしながら言う。「偉い
先生になると、面倒臭いでしょ」と私は首を振った。
 
 最近、海外ドラマ『ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間』のDVDをレンタルして見て
いる。実在の精神行動分析学者をモデルにした、主人公カル・ライトマンが、
「微表情」と呼ばれる一瞬の表情や仕草から嘘を見破ることで、犯罪捜査や事
件解決に当る物語。

 彼の部下のリア・トーレスは、元空港の手荷物検査係。学問として学んでも
いないのに「微表情」を読む才能があり、スカウトされた。シーズン1の最終
話『真実の代償(原題:Sacrifice)』で、彼女は重態の恋人を捨て置いて仕
事をすることが求められ、反発する。その時の上司カル・ライトマンのセリフ
が印象に残った。
 
“You have a talent. But it comes with sacrifice. Believe me. And
it’s time for you to realize. The talent. It doesn’t belong to
just you anymore.”

 才能を持った者は犠牲を払うべきだ。才能は自分自身のものではないのだか
ら。なかなかアメリカチックで考えさせられる。しかし、才能無き者は覚悟も
犠牲も要らないのだろうかと、つい考えてしまう。才能の有無に関わらず、求
められる役割を犠牲を払ってもやり遂げること。それは、この国において誰し
もにとって当たり前のことではなかったか。
 
 神様から与えられた「ギフト」たる才能。それには犠牲と責任が伴うと聞け
ば、だったら、そんなものは要らないと私なら思う。押し付けがましい一神教
の神様は信じていず、ギフトも端っから計算に入れず、ただただ眼前のやるべ
きことをやるのが社会という前提なら、それもそうかと受け容れられる。
 
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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次号予告:
 第428話 『シャドウボクサー』 (11月25日発行) 
 若い社員やアルバイト・スタッフの定着が図れず困っている企業を散見する
ようになりました。解決策は動機づけの強化しか原理的にはありませんが、そ
の動機づけをどうすべきかがよく分かっていないケースについて、考えてみま
した。

(完)