403 埋もれた「学び」

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経営コラム SOLID AS FAITH 第403号
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 ご愛読ありがとうございます。第403話をお届けします。

 1年前以上から企画を進めていた400話発行記念特別号三話と17周年記念特
別号の発行が無事終わりました。通常号に比べ、大ボリュームの号が4号続く、
創刊以来の大プロジェクトでしたが、実現して安堵しております。

 特に400話発行記念特別号の第三話は、無事発行を終わらせた途端に未曾有
のトラブルが発生し、対応の追われることになりました。この号は特別原稿の
『双六の上がり』の中のクライアント企業の社長のインタビュー記事を、ブロ
グの中に置いておき、配信したメルマガからリンクで飛ばすという、初の試み
を行ないました。
 
 10月25日(火)に発行し、目論見通りのしくみが動きましたが、翌日未明
にブログのサーバを管理しているアイ・ドゥコミュニケーションズ株式会社に
て、過去に殆ど例がなかったサーバ・クラッシュが発生し、ブログの記事が失
われました。その後、午後になって、向こうのバックアップにより、多くの記
事が回復されましたが、なんと直近7カ月分もの記事がバックアップされてい
ないことが判明し、その分の記事は失われてしまいました。
 
 記事は保存されているので、すべてアップし直せば良かったのですが、問題
は記事の投稿順に割り当てられるURLです。当コラムと『脱兎見! 東京キネ
マ』の記事を本来の投稿順に再現して貼り付けなくては、配信された『双六の
上がり』の中に埋め込まれたリンク先に、本来のインタビュー記事が来なくな
ってしまいます。慎重に順番を再現しながら記事を概ね回復する時間を捻出す
るのに約3日間を要しました。

 また、『脱兎見! 東京キネマ』は投稿後に気付いた文章改善を随時細かく
行なっていましたので、サーバ・クラッシュの直前の原稿の形には完全に戻っ
ていません。配信のメルマガとブログ記事が二つ合わさって完結する初めての
試みをして、たった1日にして、それが完全に崩れるとは思ってもいませんで
した。クライアント企業の社長からも、「サーバがクラッシュして、読めなく
なっていますよ」とご連絡を戴くなど、色々とお騒がせ致しました。ご迷惑を
おかけした読者の皆様にお詫び申し上げます。
 
 今回の号は、『埋もれた「学び」』と題して、組織に存在している暗黙知の
拡散と浸透のプロセスについて考えてみたものです。単純なスキル項目の習得
では、伝えられない暗黙知。中小企業の組織規模だから可能な、直接的であり
ながら体系的な暗黙知教育の現場を描写してみました。久々の通常号をお楽し
みください。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご
感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その403:埋もれた「学び」

「そうですね。御指摘の通り、何か盛り上がりがなくて、どこをどう読めばい
いかよく分からない本ですよね。これは、百科事典のようなもんだと思っても
らうと、良いかなと思いますけど。正直、私もこの本が退屈だと思っています。
読んで楽しくないですし、学びもないです。なぜかと言えば、分かり切ったこ
とに名前をつけて分類して見せているだけですから。けど、分類整理できるほ
どに、当たり前に日常やっていることがたくさんの育成活動を含んでいるって
ことだけはとても大事だと思うんです」と私はモタモタ説明した。

 ある会社で幹部が中堅社員の育成計画を練ると言うので、私は一冊の本を薦
めておいた。『「学び」で組織は成長する』。熱心な幹部達は皆、買って事前
学習したらしい。集まった幹部達は口々に、この本の特殊さを言い募って来た。
この本には物語が全くない。タイトルは内容から乖離していて、組織成長のス
テップも原理も殆ど書かれていない。ただ「ジャーナル」、「相互コーチン
グ」、「シャドウイング」などの育成手法が羅列されている。

「研修って言うのは、机に座ってこっちを向いている相手に、ホワイトボード
使ってレクチャーすることだけじゃないってことですよ。もちろん、それに現
場でやらせて指導するOJTを加えても、まだまだ研修手法をカバーしたことに
ならない。逆に言えば、習う側は何を学んでいるかを考えて、その「学び」を
計画に組み入れるのが組織の育成計画です」。
 この本の内容は、どうも研修には見えないと困惑して言って来る幹部もいる。
研修の定義、育成計画の定義から、見直すように促しても、彼の表情は晴れな
いままだった。

 ジャーナルは、やったことを書きまとめさせてみること。相互コーチングは、
学ぶ側数人が互いの学んだ内容を開示しあって、互いにアドバイスすること。
こんなことは日常でも、相手によっては暇な時にやっている。だから、「こん
なのは研修ではない。小難しいカタカナの名前付けを、ただやってみるだけな
のはバカらしい」と言う主張にも一理はある。

「なるほど。分かりました。皆さんはスキル・マップで若手を育てることはき
ちんとやっていらっしゃって、当たり前だと思っている。けれども、スキル・
マップでコツや勘どころまで記述すると膨大な量になる。これがお手元の資料
の『形式知』と『暗黙知』と言う考え方です。コツや勘どころの『暗黙知』は、
“自分もテキトーに身に付けたんだから、若い奴らも、センスの良い奴はドン
ドン身に付けるモノ”と思っていませんか。そんな『暗黙知』もこれからは、
計画的に漏れなく、業務として教えてくれって話なんですよ。量がとんでもな
くなるので、スキル・マップにしろと言いません。その代わり、この本にある
育成の形で、普段気まぐれにやっていた育成を計画に書きまとめて下さいって
ことです」。
 私が説明すると、皆が頭を抱えて悩みこむ。真面目で聡明な素晴らしい幹部
達である。

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顔の見える関係を人が構成しつつ機能する組織。
それが中小零細企業の組織の在り方です。

人口減少が愈々加速していく中、
人が不足する中小零細企業の現場はどのように変貌するのか。

単なる外国人研修生の受入れや採用予算のアップに留まらない
構造的な変化は、否応ないダイバーシティの進展です。
中小零細企業の現場には、従来の常識の採用人材モデルを打ち壊して、
老若男女はもとより、外国人も障害のある人も、そして、人工知能までもが、
躊躇の余裕さえなく動員されていくことでしょう。

考えてみたら、WEBが普及してきたとき、
「24時間文句も言わず、働き続ける有能な営業担当者!」
と言ったキャッチフレーズが使われていたことがあります。
有能な営業担当者の大活躍で、多くの店舗は、
何の価値を来店客に提供すればよいのか見出せないままに、
経営の苦境に立たされ、少なくない一部は淘汰されてしまいました。

人工知能が普及すれば、コールセンターの仕事も、
タクシーの運転の仕事も、配送トラックの運転の仕事も、
様々な仕事が、付加価値がつきにくい部分から、
激減していくと言われています。

24時間働き続けるのが、人間ではない有能な営業担当者だけだった時代。
それが終わりに近づいています。

広汎な職種で人間以外の働き手が活躍する時代が到来します。
その渦中で自社はどうやって、生き残り、勝ち残るか。
そんなことを今一度お考えになってみませんか。

珍しく、大胆な近未来予想に挑んだ大作
経営コラム SOLID AS FAITH 17周年記念特別号はこちらでお読みください。
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■『10年後世界が壊れても、君が生き残るために… 』 山口揚平 著
■『成功するには ポジティブ思考を捨てなさい …』 G・エッティンゲン 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第404話 『自信の発露』 (11月25日発行) 
 ハーズバーグの二要因説に出てくる動機付け要因の中で最も汎用的な「承
認」。社員に「承認」を提供する際の注意点を考えてみました。

(完)