401 写真の人々 400話発行記念特別号 =相違と多様= ft/特別原稿 『3M女のソリアズ的婚活』 =アラウンド・ソリアズ おんなの生きる道=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第400話発行記念特別号 第二弾
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目次 
1 ご挨拶
2 401話 『写真の人々』 =相違と多様 (2)=
3 特別原稿 『3M女のソリアズ的婚活』
  =アラウンド・ソリアズ おんなの生きる道 (2)=
4 MSIグループの仕入完了報告
5 あとがき
6 次号予告
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☆注意:お読みになる際には、枚数がかさみ恐縮ながら、プリントアウトの上
お読みになることを、心よりお勧め申し上げます。
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1 ご挨拶

 御愛読御礼申し上げます。第401話をお届けします。

 実際には、前号の第400話から始まるシリーズ『相違と多様』の第二弾の第
401話に加えて、特別原稿のシリーズ『アラウンド・ソリアズ おんなの生き
る道』の第二弾を組み合わせてのお届けです。前号の二つのシリーズには、何
人ものクライアント企業での読者の方々から感想を戴きました。『相違と多
様』は「また、危ないことを書いて…」と言う反応が多かったのですが、『ア
ラウンド・ソリアズ おんなの生きる道』の方は、「こんなソリアズ記事は珍
しいですね」と言う驚きの反応が多かったように思います。

 以前のシリーズ『これからの生活』について、このような二方向からの掘り
下げ方を一気に行なうことができて良かったです。そして、今号はさらにその
上を行きたいと思います。

『相違と多様』の第二弾は、『写真の人々』と題して、地方の中小零細企業で
待った無しに進むダイバーシティに想像をめぐらせる内容です。大手では政府
の後押しや“指導”によって、形からダイバーシティがジリジリと進んでいる
ように感じますが、中小零細企業においては、切実な「働き手不足」が、今ま
で慣例的に雇わなかった“種類”の人々の採用を、あっさりと必然に塗り替え
て行っています。その状態が身近に感じられる場面を二つほど繋げた内容です。

 一方の『アラウンド・ソリアズ おんなの生きる道』の第二弾は、ソリアズ
の考え方をなんと婚活に活かしてみるという試みをドキュメンタリーで紹介す
る、奇想天外の企画です。経営戦略論は最近ビジネス書でもそれなりに流行し
ていて、ソリアズでも中小零細企業が採用すべき内容については時々取り上げ
ています。しかし、まさか机上の思考実験ではなく、現実の、つまりナマ身の
婚活に活かしてみると言うのは、通常のソリアズでは考えもつかなかった企画
です。今時の婚活の実態に戦略性がどのように活かされるのか、是非、検証し
てみてください。

 全3回の2シリーズは、第二弾に至って、飛ばしまくりの状況です。いつにな
い長編となっていますが、是非、最後までお付き合いください。

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2 その401:写真の人々 =相違と多様 (2)=

 設備メーカーのクライアントさんのどっしりと厚く重いカタログを頂戴した。
ページをめくると、設備脇の使用イメージのカットに登場する女性モデルは数
人が使い回されていた。画像記憶ができない私でも、何か見覚えがあるような
気がする。社員の方に尋ねてみると、私の勉強会にも出ていたやり手の女性営
業担当者を含む社員がモデルになっていると言う。勉強会では眼鏡をかけてい
ることもあって印象が違った。
 
 本人が「自分も載ってるカタログを使うと話が弾む」と言っていた微かな記
憶もある。この会社で大学新卒採用を始めたのは7年前。眼鏡の彼女も採用1
年目の入社世代。

「大卒新卒を雇いましょう。中途採用に比べて、圧倒的に採用しやすく、粒の
ばらつきが少なく、今後変えていく営業方針に対応するような教育が浸透しや
すい。大卒女子は特に中小企業でも優秀な子が採用できるはずです」と私が進
言したら、幹部の反応はほぼ否定的だった。「女子はすぐ辞める」、「女子は
重いものを持たせられない」、「女子は重くてごつい組立工具を使いこなせな
い」。理由は幾つもある筈だった。

「市川さん。私は正直、市川さんのことがいけすかないです。嫌なことをずけ
ずけ言われて、嬉しい人間はいないでしょ。けど、あの時に、新卒採用をごり
押ししてもらわなかったら、今のウチの会社はないと思ってますわ」。
 先週お招きいただいた懇親会で、新卒採用に反対した幹部の一人が言った。
実際雇って組織を挙げて育成に取り組んだら、組織風土は大きく変わった。そ
して変わりつつある。

 その幹部達が集まる定例勉強会。地方の急激な人口減少によって発生しつつ
ある市場の縮小が常に議題に上がる。人口減少地域でも好業績で知られる会社
の事例研究を皆でしようと言うことになった。スクリーンに映し出される好業
績企業のウェブページ。調査を行なった幹部が結果を全体に説明していく。

 プレゼンが終わって、好業績と言うこれらの中堅地方企業の集合写真が気に
なった。大抵の会社概要のページなどに配された社員の集合写真。老若男女ど
ころか、障害の有無・人種まで乗り越えている組織構成。首都圏では見られな
いぐらいのダイバーシティの実現が明らかに見てとれる。活用できる人を採る
のではなく、採れる人を活用する発想の特異さに気付いた幹部はいなかった。

 違和感が湧かない理由は、彼らの軽率ではなく、彼らの今の採用常識だろう
と思えた。

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3 特別原稿 『3M女のソリアズ的婚活』
 =アラウンド・ソリアズ おんなの生きる道 (2)=

3高と言えば私が高校生の頃、世間が謳った理想の結婚相手の条件だったが、
今や3平(平均的収入、平均的ルックス、平穏な性格)がベスト、もはやそん
な男性すら婚活市場には残っておらず、最近では4低(低姿勢、低依存、低リ
スク、低燃費)の男性も婚活女性が狩り散らかしている状態だという。

これが男なら、私は3Mだなと思う。3M、いわゆる未婚、三十路、もてない。最
早、これ芸人でもキッツいんじゃないか、というトリプルコンボを背負ってい
る上に、世間の風当たりも強くて、2ちゃんねるでも見ようものなら、3M女に
親でも殺されたかのような仇っぷりである。

こんなご時世なので、男は“コスパが悪いから結婚しなくてもいい”という人
が増え、女は“こんな私をありのままに愛して(養って)くれる男”を求める。
いや、私だって働きたくないし、他人の金で一生遊んで暮らしたい。一億総活
躍社会でキャリアウーマンなんてなりたくてもなれないし、そもそもなりたく
ないし、仕事に生きる気なんてさらさらなかった。すべては、売り時を間違え
たセール品に待ち受ける厳しい現実というところか。つまり、かくいう私も婚
活女のはしくれなのだ。

ただ、社交的な性格ではないので、婚活パーティーに行ったことも一度だけ。
世間からそれで婚活女を名乗るなとお叱りを受けそうではある。結果はお察し。
あれは20代前半で周りに男性がいない人のみ行くべき場所だと痛感した。

とはいっても、何もしないまま手をこまねいている内に37になり、このまま何
もせず、まともに結婚なんてありえないのは、周囲以前に自分が一番分かって
いる。ただ、もう正直何が好きかとかそもそも恋愛って何? 状態になるまで
悶々としていたので、何か動機付けが必要だった。そこで、偶然市川さんから
メルマガ記事のお仕事を頂いて、「ソリアズを婚活にいかす」というネタで1本
書くことにしたのだった。前置き長くてすみません。しがないアラフォーが、
市川さんの経営ノウハウを婚活に活かす、という息抜きネタ記事なので、余生
を持て余している方がありあまる時間を潰したい時にだけ、読み進めて頂けた
ら幸いです。

一先ず、そんな私に市川さんが勧めて下さったのが、第274話『パーティーの
人気者』と第17話『縁故的予定調和』だ。記事を参照された方が話は早いのだ
が、これを読んで「自分の強みと、その売場を間違えるな」・「身の程を知っ
ておけ」といった教訓が書かれていると感じる。改めて諭されるとじわじわと
痛いのだが、確かにその通りのことが、私にはできていなかった。

まず市場。自分を商品とするならそれを購買する意欲のあるターゲットがいる
場所に行かねばならない。今まで、私は同い年の男性が苦手で、上下は問わな
いができれば1つでも年齢が離れている方が良かった。実際、同い年とは付き
合ったことがない。年齢が上なら気兼ねなく甘えられるし、年齢が下なら主導
権を持てるから、甘えて貰うのも可愛い。その点、同い年の男には甘えること
も、奢ってもらうことも抵抗があるし、勿論甘えてこられるのも気味が悪かっ
た。こと、男性に対して、対等である人間関係が苦手なのだと思う。明確でわ
かりやすい立ち位置が、私の交際には必要だった。そして、この勝気な性分か
らか、年上よりも年下の方が好みなのは否めなかった。ようは、思い通りに言
うことを聞くより、聞かせたい。

だがしかし、ウケがいいのは悲しいかな圧倒的に年上なのである。これはある
程度年齢がいけば当然なのだけれど、私の場合は大学生の時からずっとそうな
ので、認めざるを得ない。今まで年上の男がいる場所に好んで出かけていたか? 
否である。

そして他の世代より年上のウケの方がいいのは、おそらくこけしのような、お
となしく平たい顔のせいなのだろうと思う。人は見た目が9割というが、私自
身は、何を言っても気弱そうに見えるこの顔が、仕事をする上でも損であるこ
とが多かった。また例えお店でじゃけんに扱われても文句一つ言えない気弱さ
が嫌だった。文句を言ったところで「なんでこいつが怒るんだ」と逆ギレされ
るような、いわば食物連鎖の底辺にいる顔立ちなのだ。本来はいじめられるよ
りいじめたいし、人に負けるのはプライドが許さない、そんな腹黒い本当の性
格との齟齬を、一番感じる部分でもあった。

だがおそらく、ウリが少ない私という商品にとって、ソリアズでいう“市場”
は「年上」であり、“強み”は「おとなしそう(な顔)」なのだろう。どちら
も苦手でウィークポイントであることに、私は正直目を背けたてきたし、今で
も正直背けたい。

ただ同じ事をしていて今まで売れ残っているので、一先ず飲み会でも年上相手
に興味を持って接してみる、という課題を自分に課して出会いの場に赴くこと
にしたのだった。もはや悟りを開く人類愛の気分である。これなら女相手でも
いけるんじゃないか、と考える程度には、追い込まれていた。

そして昨年からスタートした私の「ソリアズを婚活に活かす」この企画は、幾
度もの実にならない飲み会やら、異業種交流会やら友達の紹介やらを経て、42
歳未婚営業勤務の人と知り合った。

とても親切な人で、立食のフランクな飲み会だったスペースで、食べ物やお酒
をとってきてくれたり、席まで確保してくれたりと、なんだか申し訳なくなる
程甲斐甲斐しい男性だった。世話を焼くより焼かれる方が得意なので、こうい
う人なら面倒くさがりな私でも付き合っていけるかもしれないと思った。普段
間が空くのが嫌で、矢継ぎ早に話してしまう癖も封印し、基本的に大人しい状
態で臨んだのも、ソリアズ(から勝手に読み取った)のアドバイスに則ったつ
もりだった。

すると。

「今度また飲みにいこうよ」
と言う言葉でLINEを交換するに至る。帰り際に駅まで送ってくれたので、流石
にこういったことに鈍い私でも、これは好意を持って貰えているのではないか、
と薄々感じていた。
え、これ凄いんじゃない? 今までこちらから選んだ人とは、中々うまくいか
なかったのに、あえて動かなくてもことが進んでいる気がする、と思った。

のだが。その後がすごかった。「家着いた? 俺は今ついたところ(ただいま
のスタンプ)」「結構原宿から遠かったんだね(おつかれのスタンプ)」「も
うお風呂入った?(温泉のスタンプ)」……なんか面倒くさい。まだ知り合っ
て間もないのに、深夜1時に相手が寝るまでLINE攻撃が続く。通常だったら、
この時点ですでに逃げに入るのだが、あくまで企画の一端だと思えば、我慢で
きなくもない。

でも、翌日以降もこれが続いた。朝からスタートし、通勤電車、会社に着いて
から、昼休み、夕方、帰宅後、とまさに、おはようからおやすみまで暮らしを
見守られているというか……いつ仕事しているんだろう、と若干胡散臭さすら
覚えていた。

正直食傷気味だったのだが、友人に話すと「しつこいという時点でアンタの一
番嫌いなタイプかもしれないけれど、結婚を考えるなら、立場や仕事的に優良
物件。頑張れ」と言われ、思い直してぽつぽつと返事を返すことにする。問い
かけでも何でもないつぶやきのようなメッセージの羅列に、なんだか女友達を
相手にしているような気分だった。

結局、次に会った時にもじもじとしているこの人に、自分のことをどう思うの
か聞いてみたら(ここでも、過去の男にしてきたような詰問形ではなく、あく
まで小声でおとなしさを全面に出してみつつ。はたから自分をみたら卒倒しそ
うなカマトトぶりだった、と思う)

「好きだよ、伝わらなかった? 俺は毎日伝えていたつもりだったんだけど」
と食い気味に言われた。正直なところ「今日の晩御飯は牡蠣フライ!(画像つ
き)」なLINEから、隠れた彼の真意などは全く汲み取れなかったのだけれど、
おとなしく、非常に曖昧に頷き、どうもありがとうと伝え、晴れて付き合うこ
とになった。2年ぶりにできた彼氏は、今まで同様、元彼と何の共通点もない
人となった。

その後、たかだか5つのジェネレーションギャップに悩み、身体的相性に悩み、
最初から上手くはいかないよ、という主婦の友達のアドバイスに耳を傾けつつ、
約3ヶ月程度付き合った計算になる。この短い期間に、「結婚を前提に……」と
いう言葉もお互い納得していたはずなのだが、言い合いになって、うっかりば
けの皮が剥がれてしまった。そして最終的に結論を言えば、この相手とは、距
離を置かれてしまった。恋愛話はうまく行かない方が、ネタとしてはアリなは
ずだけれど、何かが決定的に違う、と思いつつ、それが何かを突き詰められな
いまま関係を続けていくのが、苦痛になってしまったのだ。何となく始まり、
ふんわりと終わり、ふることもふられることもない、煙が消えるような終り方。
恋愛だったのかすら、今でもわからない。

あぁ、世の中の女はおにぎりをこさえるように、簡単に男をつくっているのに、
私はどうしてうまくやれないのだろうか。人より陰気だから? お金がないか
ら? 親が病気だからだろうか。

売場は多分、間違いなかった。大人しい顔をさらにおとなしくなるように、髪
も黒く、メイクも普段の3分の1程度にし、まるでのっぺらぼうのようだった
けれど、ひたすら男ウケを狙っていたはずだ。私は本来、まるっきり元の顔を
変える方が好きなのに、それをしなかった。

この取り組みで、売場とウリを間違えなければ、自分の希望とは全く違うけれ
ど、形式的に相手を見つけることは不可能ではない、という事実を知った。だ
けど、私は幸せじゃないし、徹底的に何かが違う。私のスペックから鑑みても、
恵まれすぎるほどの相手だったはずだが、結局私も相手も、お互いが欲しかっ
た訳ではなく、結婚という制度に組み込まれたいというだけの欲望だけで向き
合い、自分の本音を置き去りのまま、婚活を進めていただけだったのだと思う。

今思うと、結婚しないと老後介護が心配、とか、経済力を二輪車にしたい、と
か、親に孫の顔を見せてあげたい、とか、私が結婚したい理由に「その人でな
いとだめ」な点はどこにも介在しなかった。売場と商品のパッケージを整えて
も、売れ残らざる得ない理由もあるのだと、自戒をこめて。

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第 17話『縁故的予定調和』    http://tales.msi-group.org/?p=54
第274話『パーティーの人気者』  http://tales.msi-group.org/?p=443
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4 MSIグループの仕入完了報告

 前号に続き、400話発行記念特別号の3号では、感想付きで比較的最近読ん
だ書籍2冊を紹介します。

■『国防音痴が、国を滅ぼす』 豊田有恒 著
 高校時代に筒井康隆・眉村卓と並んで、短編SF小説をポツポツ読んでいた豊
田有恒の書いたもので、小説以外の初めての書籍です。小説に書いた銃器の描
写について読者から指摘を受けたのきっかけに、銃器・兵器・軍備の勉強を始
めた経緯から、著者の国防についての考え方がまとめられています。
 タイトルそのままの当り前に頷ける内容です。私は右翼ではないつもりです
が、自虐史観の欺瞞もバカらしく思っていますし、平和憲法によって日本は太
平洋戦争以降戦争を避けられてきたと言う理屈も妄想だと思っています。その
様な立場の論旨が、著者の立場から分かりやすくまとめられた一冊でした。

■『流れとかたち…』 A・ベジャン、J・P・ゼイン 共著
 河川流域や、肺の気道、稲妻など、類似した樹状構造が自然界に多々存在す
ることから、それが発生する原理を突き止めた、著者らの研究がまとめられた
書籍です。
 彼らが「コンストラクタルの法則」と呼ぶ自然界の原理は、「すべては、中
を通過するものが、より良く流れるかたちに進化する」と言うもので、社会階
層、黄金比、空港施設設計、道路網の発達など、人間の生み出したものにもど
こにでも見られることが、多様な事例を挙げて説明されています。
 生物・無生物を問わず、中を流れるものが全体のデザインを決めると言う革
命的な発想の内容は、400ページを超えても読む者を全く飽きさせません。

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5 あとがき

 ここまでお付き合いいただきありがとうございます。今回の400話発行記念
特別号の第二弾は、通常6、7章を擁する周年記念特別号ほどではないものの、
かなり長編となりました。その理由は、『3M女のソリアズ的婚活』と題した石
原さとこさんの婚活ドキュメンタリーです。彼女の優れて軽妙な文体で長さが
あまり気にならないでお読み戴けたのでしたら幸です。
 
 創刊から17年近くも経つと、『経営コラム…』と銘打っていても、かなりは
っちゃけた企画を打てるようになったものです。自分でも、読み返してみて、
「これ、アリかな」と自問したのも一度ではありません。
 
 ただ、「敢えて、経営を普段考えたことのない人にソリアズを“衝き付けて”
みて、そこからどんなアウトプットが出てきても、読み物になっている限りは
採用してみよう」と心に決めて石原さんに依頼したので、その方針を曲げない
こととしました。『3M女のソリアズ的婚活』。ソリアズ創刊以来の文字通りの
「体当たり企画」です。
 
 打ち合わせの際にも彼女に伝えたのですが、彼女は美人の域に十分入ってい
ます。こけし顔と言うおかしな表現も彼女独自のものですが、仮に彼女の写真
を見せて、「何をイメージする?」と尋ねて回っても、「こけし」と答える者
はいないことでしょう。
 
 本人が言う通りの「勝気な性格」も、出版の仕事を正社員やフリーランスの
立場から重ねてきて、その時々の仕事に没頭してきたことも、ご両親が完治の
難しい病気であることなども、美人で明晰な彼女を結婚から遠ざけて来た理由
かもしれません。私からすると、「かくいう私も婚活女のはしくれなのだ」の
自覚の発露を、他の懸案事項より少々高い優先度にすることを、もう少々早く
していれば、この文章にあるような状況になることはなかったように思えてな
りません。
 
 ソリアズの戦略論を採用したと彼女は言っていますが、紹介した二号の行間
から読み取った戦略論はイマイチです。マーケティングの基本ですが、もっと
素に近いままの彼女と言う商品に、魅力を強く感じるターゲット・カスタマー
を絞り込む作業を事前にもっと行なえば、ドキュメンタリーはハッピー・エン
ドに終わっていたように思います。
 
 第281話『潤沢な模範』にも書いた通り、マーケティングは、「道路に落ち
ている石ころでも、売れと言われれば、何かの付加価値を見出して、高く売れ
るようにして利益を得るための知恵」に収斂します。コップ一杯の水道水も、
砂漠のど真ん中の人々には数万円でも買いたいものかもしれません。こちらに
都合の良いターゲット・カスタマーの基本設定は説明されていませんから、行
間からさえ浮かび上がってこなかったのでしょう。
 
 マーケティングを通してみる婚活は、大量に同じ商品を売り捌かなくてはな
らないような場面ではありません。石原さんの場合、既に相応に高い価値のあ
る彼女自身と言う商品を、たった1回その価値を高く評価できる人間に提示す
ればよいだけです。構造的には非常に簡単なマーケティング課題です。
 
「売場と商品のパッケージを整えても、売れ残らざる得ない理由もあるのだと、
自戒をこめて」が、マーケティング的結論では決してありません。しかしなが
ら、そのような読解と実践がソリアズによって導かれたのは事実ですので、切
り口からの議論を浮かび上がらせるだけのソリアズ各話の位置づけの限界であ
ろうかと思い至ります。
 
 最後の打ち合わせの際に、石原さんは指輪をしていました。彼女の好み通り
の年下の旧知の同業界人と交際を始めたというお話でした。マーケティングの
原理を一から説明して差し上げる必要はなくなっていたようです。

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第281話『潤沢な模範』  http://tales.msi-group.org/?p=457
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
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そしてとうとう400話到達!

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6 次号予告
 シリーズ『相違と多様』の第三弾は、『腐り行く蜜柑』と題して、中小零細
企業における女性社員のキャリア形成に対する取り組みの一つの形を描写して
みました。ご期待下さい。

(完)