281 潤沢な模範

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経営コラム SOLID AS FAITH 第281号
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ご愛読ありがとうございます。第281話をお届けします。

 とうとう10月に入りました。10月と言えば、当コラムの創刊●周年特別記念
号の月です。今年は12周年です。毎年同じことを言っているように思います
が、本当に12年続くとは思えないままに、淡々とここまで辿り着いてしまった
感じがします。

 今年も第三者の目と手を借りて、ソリアズ的経営手法のあり方を追及してみ
ます。テーマは新卒社員の育成です。私のクライアント企業の数社が人員の調
達に限界を感じて、その会社においては前例のない大卒新卒の社員採用に挑む
ことになっています。そのような採用後の育成のあり方を現場視点で描いた内
容です。PR欄にも予告がありますので、是非、ご一読下さい。
 
 今回の号は、『潤沢な模範』と言う、悪徳商法からの学びについて考えたこ
とをまとめた話です。先日読んだ『営業と詐欺のあいだ』もこのテーマで示唆
に溢れる内容でしたが、敢えて、体系的なその教えるところには触れず、最近
見た映画も含めて、身近な話でまとめてみました。日々の販売のあり方の見直
しのひと時のきっかけになれば幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお待
ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その281:潤沢な模範

 店も疎らな地方都市の二軒の熱帯魚店。一つは住宅地の中にある古い店舗住
宅。店主が先妻の娘と後妻の三人暮らし。不和な家族。口数少ない店主は海中
のように薄暗い店舗に水槽を並べて、細かく商品の面倒を見ている。何か野望
がある訳でもない。来店客もなかなか現れない。もう一方はロードサイドの大
型店。広い駐車場に明るい店舗。店員は全寮制で住み込む若い女性たち。チア
ガールと見紛うような出で立ちで、朝礼からハイテンション。

 大型店の店主は、脂ぎった欲の塊のような中年男。真っ赤なフェラーリを乗
り回し、抱きたい女は躊躇いなくものにし、邪魔者は「ボディを透明にしてや
る」と、殺害さえ厭わない。埼玉愛犬家殺人事件をベースに作られたと言う映
画『冷たい熱帯魚』の、主役以上に際立った悪役である。劇中、インターネッ
トも登場しない。だから通販などの競合も存在しない。珍しい高級熱帯魚を入
荷したと言っては界隈の金持ちに法外な値段で売り付ける。狭い世界で、多分
金持ちは皆知り合いだろう。市場を手中に収め、欲のエネルギーで暴走する経
営者の姿が描かれている。

 人に勧めたので、神田昌典氏を一躍有名にした通称「ピンク本」(『あなた
の会社が90日で儲かる!』)を読み返してみた。本文が始まってすぐ、品質が
悪くそもそも売れない商品を抱えている悪徳業者の話が登場する。だから、悪
徳業者は「『どうすれば、売れるのか』について真剣に考え」、「徹底的に売
り方を工夫しているのである」と言う。そして、正直者は、「いい商品をもっ
ている。そこで販売方法を真剣に研究すれば、文句なしのダントツになれるは
ず」と結論付ける。初めて読んだ時に、最も印象に残った知見である。

 留学時代に国内大学より長い夏休みと冬休みの多くに、帰国して小さなマー
ケティング・リサーチの会社でアルバイトをしていた。マーケティングは大学
で習っただけ。バブル崩壊直前の頃の日本。「道路に落ちている石ころでも、
売れと言われれば、何かの付加価値を見出して、高く売れるようにして利益を
得るための知恵」。強気の販売戦略が幅を利かせる中、学生起業仲間の取締役
達は、彼ら流のマーケティングを何度も語った。
 
 クライアントの勉強会で、マーケティングの強化策などを議論した。参加者
の一人が休憩時間に、マーケティングの好例を尋ねてくる。私は大学時代のバ
イト先で習った、石ころさえ売る覚悟の話をし、そして付け加えた。
「新興宗教などで、原価500円とかの壷や、その辺の石のようなものまで、高く
信徒に販売すると言います。信徒が有難くそれを買っているなら、立派な付加
価値創造型のマーケティング施策だと私は思っていますよ。見習うべきものが、
そこには潜んでいます」。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

12周年特別記念号 鋭意準備中。
ドラフトは完成し、編集・推敲の作業を重ねています。
テーマは「性悪説的新卒社員育成」です。

中小零細企業が、新卒採用に挑むと、
コストを抑えることに一工夫は必要ですが、
それほど大きな障害もなく、採用ができます。

問題は、その新卒社員を如何に組織の戦力としていくかが問われる
育成のプロセスです。

多くの中小零細企業が遭遇する症状別対処法付の
マニュアルと見紛うほどの超実践型の企画が盛りだくさんです。

10月31日発行予定。ご期待下さい。

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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第282話 『知の集合』 (10月25日発行) 
 最近、殆ど聞かなくなったナレッジ・マネジメントと言う言葉。中小企業に
おけるナレッジ・マネジメントのあり方について、ほんの少々考えてみました。

(完)