365 三賢者の職掌

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経営コラム SOLID AS FAITH 第365号
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 ご愛読ありがとうございます。第365話をお届けします。

 以前、『応急措置』と言うシリーズ・テーマで取り上げた「死すべき技術と
しての経営」と言う考え方があります。組織人として当たり前のことを行なえ
る人材だけで組織を構成すると、事実上、経営と言う技術は必要なくなってし
まう。そんな考え方です。

 弊社代表の市川はよく「自動操縦型の社員」と言う表現を用います。経営者
から指示をされず、自分の組織にとって必要であることを自ら判断して実行し
ていく人材のことです。彼らの存在で満たされた組織。社会の情報化で、その
ような企業組織の存在は、以前にも増して注目されるようになったと感じられ
ます。

 欧米型の組織経営のモデルの想定には、このような発想が組み込まれていま
せんので、経営コンサルタントが主張する多くの言説はこの状態に組織を導き
ません。人本主義的な経営発想による組織改善・組織改革の重要性を再認識さ
せられるような、新規案件の打ち合わせが最近増えています。

 今回の号は、往年の大ヒットアニメ『マジンガーZ』に登場する三博士をネ
タに、日本の製造業を支えてきた技術者について考えてみたものです。職掌が
細分化されていない小さな組織での技術職のあり方を少々考えてみた内容です。
お楽しみ戴けましたら幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしてお
ります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その365:三賢者の職掌

 新宿の映画館で『ロボットガールズZ』を平日の深夜12時過ぎから始まる回
で観た。シアターに入ると観客は私も入れてたった二人。最前列の毛髪がかな
り寂しい60過ぎの男性も、ウンウンと頷いている面白さだった。気を良くして、
子供の頃にリアルタイムで何となく見た覚えのある『マジンガーZ』のDVDを
レンタルして見てみた。その後の優れたアニメ作品群を見てしまって見直す
『マジンガーZ』には、以前とは異なる愉しみがある。
 
 のっそり・もりもり・せわしと言う、改めて考えてみるとかなり奇妙な命名
が為された三博士が、光子力研究所の技術面のありとあらゆる面を支えている
のが興味深い。各々に何か得意分野があるようで、発言を譲り合ったりする場
面もあるが、詳細はよく分からない。三人とも、基礎研究もすれば、設計図も
描いている。敵の機械獣の行動を分析し作戦立案のみならず、実戦の最中に作
戦修正を発議することさえある。おまけに、マジンガーZなどの定期検査も改
造も行なうどころか、自ら遮光溶接面を被って溶接を行なうことすらある。ヘ
ッドハンターからはかなりの高値をオファーされるのではないかと思う。
 
 ルネサンス・マンと言う表現があるが、現実には海外のドラマや物語でこの
ような登場人物を見ることはあまりないように感じる。自分の仕事上出逢う
人々の中には、零細企業を立ち上げ、軌道に乗せたオーナー経営者や、顧客の
現場と製造の現場を渡り歩いた老練な幹部など、多くの水平的業務について、
高いスキルを保持している人物が多数見つかる。

 川口盛之助の『世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」』は、「製造」
・「設計」・「開発」・「研究」・「理論」・「企画」と、ものづくりの川下
から川上に至る六つの分野を列挙し、各々の強みを主要国間で比較図示してい
る。六つの分野の総てで高いレベルを誇る国は日本以外にほとんどないと著者
は言う。

 グローバル企業においてはオープンな国際分業による生産こそが原価低減の
切り札という話を聞くことがある。製造業専業コンサルタントではない私は、
そのように言われれば、ああそうなのかと一応頷く。しかし、この本を読む限
り、他国は六つの分野が高レベルで揃えることができていないから、結果的に
国際分業と言う方法論を取らざるを得なかっただけであったように見える。

 全92話に及ぶ大ヒットアニメ『マジンガーZ』。残り10話少々の所で、三人
の一人、もりもり博士は、磔にされた主人公を救いに自らジープを駆り、罠の
地雷原に乗り込んで爆死した。関わる者が為すべきことの全体像を知りつつ、
横断的な能力を求められる場面ごとに発揮する。それが光子力研究所側の組織
的な強みであり、敵はセクト主義全開で、内輪揉めや連携不足の中で自滅する
ことが多い。昭和後期のものづくりの技術論のありようが透かし見えて楽しい。

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映画『ロボットガールズZ』の感想はこちらで↓
 http://tales.msi-group.org/?p=679
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次号予告:
 第366話 『有触れた仕事』 (4月25日発行) 
 小さな組織の構成員は、原則的に“多能化”すべきと言われています。つま
り、組織の中の仕事は総て、特別な才能を必要としない前提であることになり
ます。その現実を考えてみました。

(完)