『ロボットガールズZ』

 偶然、ブラウザの端っこに出ていたバナーをクリックして、その存在に気づいた作品です。なんじゃ、こりゃと言う、全くの訳分からなさのまま、「東京都練馬区大泉学園光子力町」で起こる、ロボットガールズ、チームZのハチャメチャな物語のアニメを観ることにして、全国でも20館もない上映館の一つバルト9に足を運びました。封切からたった5日ほどしか経っていないのに、既に一日4回しか上映がありません。平日の夜12時20分から始まる回に行ってみたら、シアター内には、最初から最後まで、私ともう一人、60過ぎに見える禿げ上がったおっさんの二人しかいませんでした。平日、終電後の時間枠、おまけに雨天と悪条件が揃ったにせよ、封切5日目でこの状態は、なかなかの不人気です。この不人気状態を下回る記録を出すとしたら、あとは貸しきり状態しかありません。

 私がよほど、一般の人々には支持されない趣味や嗜好を持っているということなのか、たった二人しか観にきていないこの映画は、最高に楽しめました。たった63分の映画ですが、これほど画面に吸い込まれるように見入った映画は、間違いなく今年初めてだと思います。本当に面白いです。

 観て度肝を抜かれたのは、ロボットガールズ達三人が、せめてモビルスーツタイプのような感じのロボの操縦者になるかして、敵と戦うといった萌え系アニメなのかなと言う私のテキトーな想像を完全に裏切っていたことです。正確には微妙ですし、そんなことを考えることさえ意味がないのかもしれませんが、どうも彼女達は、今流行の「艦これ」のような感じで、彼女達自身が、マジンガーZやグレートマジンガー、グレンダイザーと言ったロボットであるように感じられます。少なくとも、これらのロボットに変身すると言うのは間違いなさそうです。

 自分のアニメの主題歌を模した、例えばZなら、「無敵の力はアタシのためにぃ!正義の心は二の次、三の次ぃ」などと気合を入れて、どこから出したか分からない小さなパイルダーを手に持って頭にセットすると、『BLEACH』の死覇装のような格好に変身します。全然ロボっぽくはありません。それなのに、ロケット・パンチや光子力ビームを放てます。艦これのキャラのように、被弾するなどして破砕すると、衣装が破れて生身が出てきます。Zちゃんは元気娘、グレートマジンガーのグレちゃんは才色兼備なのに超オタクで超ネクラ。グレンダイザーのグレンダさんは実はドSのお嬢様系…。なんでこんなキャラが割り振られたのか全く分かりませんが、やたら笑わせられます。Zちゃんの髪型が弓さやかだと気づいてから、よくよく見てみると、全員髪型は自分のアニメのヒロインのものでした。

 このアニメは、元々東映のDVDの販促のためにキャラが設定されたのに対して、人気に火が点き、約5年の各種活動を経て、漸く映画化に辿り着いたのだそうです。映画に辿り着いたと言っても、元々9話しかなかったニコニコか何かで放送しただけの内容をつないだだけのような映画です。ただ、映画の主題歌の微妙にマジンガーシリーズを連想させる作りから始まり、引きずり込まれてしまいます。

 ロボットガールズの方も、ジーグさんやゲッちゃん(ゲッターロボ)は勿論、ダンガードAのダンダン、ガイキングのガイちゃん、バラタックのバラたん、そして、私が名前さえ殆ど覚えていなかったガ・キーンのガッキーなどが登場しますが、悪役の方が、数枚上手のキャラ設定です。アシュラ男爵もマントとスカートを捲ると女性側はちゃんとパンティ、男性側はトランクスを履いていたりして、オタオタするだけの変な中間管理職になっています。(こうまで描かれると、胸や股間はどうなっているのか、本当に気になり始めてしまいます。)

 さらに、ガラダK7やダブラスM2など、Zの主題歌の背景にさえ出てくる有名キャラから始まり、各種の機械獣が登場しますが、どれも魅力的な今時のキャラ設定がされていますし、そのうちのそこそこ多くがエロい演出に耐えられるような嗜好や言動や格好をしています。特にもっとも良識的なキャラと言えるガラダK7は下半身がハイレグのレースクイーンのレオタード状になっていて、コスプレイヤーがいてちょっと動き回ったら捕まりそうな格好です。

 中年のおっさんがワイワイ言いながら、本当に楽しみながら作った感じがあちこちに溢れています。エロ演出も各所にあり、水中に引きずり込まれたロボットガールズが、グロッサムX2の渦巻きに囲まれ頭部の刃物で切り刻まれていくと、全員、かなり全裸に近い状態で絶体絶命に陥ります。また、アシュラ男爵に模した、ジェットファイヤーP1は、やたらに強くて、ロボットガールズを追い詰めます。お嬢様タイプのグレンダさんの足首をむんずとつかんで、逆さまにし、トウモロコシの皮をむくようにブラとパンティだけにします。そして、地面に強く刺し込んで、『犬神家の一族』の最初の死体のように足を広げ、地上に露出したパンティだけの下半身に対して、股間にチョップを何度も食らわせたりします。

 他にも蠱惑作戦に打って出てきたミネルバXは、Zちゃんをソファに押し倒し、「Zちゃんに、パイルダーオンしたいっ!」と圧し掛かってきて、Zちゃんの胸をはだけてしまいます。もうやりたい放題と言う感じですが、原作の永井豪も、ハチャメチャなエロも、『けっこう仮面』のようなエロもお得意だった訳で、或る面で正当な演出かもしれません。パンフの表2に「マジンガーがこんな可愛い女の子になってしまうとは…(中略)感無量です!」との言葉を寄せています。同感です。

 どれも魅力的なキャラなのですが、私が特に気に入ったのは、ローレライです。マジンガーの中で最も悲劇的ドラマになっているローレライのエピソードとは全く無関係に、“秋田県出身で、伝説のアイドルグループ「ラインX」の“元”後期メンバーであるため、あまり知られていず、今は温泉街をドサ廻りしている”ローレライようことして登場してきます。

『そらのおとしもの』のニンフは破壊的な「ほげ?」と言う歌ともなんともつかない声で周囲に被害を与えますが、ローレライようこは本当に持ち歌を歌っています。「んだども、オラさ…」などと頑張りながら彼女が歌う歌は、本当にド下手で聞くに堪えないのです。過去にこんなアニメキャラを見たことがありません。清水ミチコの浅田美代子のまねで歌う『赤い風船』の数倍のインパクトでした。或る所ではオリジナルに妙に忠実に、或る所では徹底的に笑いに走ってオリジナルを離れ、縦横無尽のストーリー展開に目が離せず、瞬きできなくて目が充血する一時間あまりでした。

 DVDは三本セットで6月から販売されるようですが、DVDもCDも全部買いです。速攻予約しようと思います。

 ただ、この面白さがオリジナルをかなり知っていなくては分からないということは、よく分かります。封切から一週間経った今日、バルト9の上映スケジュールを観ると一日たった二回に減っていました。分かる人は分かる楽しさなのかもしれませんし、分かる人はDVDどころかネット上で見てしまうので、映画館などには足を運ばない人々なのかもしれません。どんな人々が5年もの間この作品を支えてきたのかには非常に関心が湧きます。