357 続・執着の表現

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経営コラム SOLID AS FAITH 第357号
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 ご愛読ありがとうございます。第357話をお届けします。

 大分寒い日が続くようになりました。やはり何時もの如く体調を崩しました
が、何とか持ち直して参りました。先送りしてきた仕事を慌てて片付けなくて
はと思っています。

 数ヶ月前から、店舗の清掃作業を標準化するためのマニュアル作成のプロジ
ェクト関係のお仕事を頂戴しておりました。考えてみると、ものぐさな私は、
自分では清掃のノウハウと言うものをきちんと学んだ覚えもなければ、ちゃん
と実践をしたこともないように思います。遥か昔に読んだ『たかが掃除と言う
なかれ』を捲り直すことなどから始まり、ビルメン系の業界団体にて各種の書
籍を買い込んで読み込んだりするなど、色々と学習しております。
 
 今号は約15年前に発行された第31話『執着の表現』の続編として、個人情
報のマーケティング活用のあり方について最近考えたことをまとめたものです。
ビッグ・データのサイズには程遠くても、5年、10年と営業を重ねた事業であ
れば、数千件に及ぶお客様データが比較的容易に蓄積され得ます。それを資産
と認識して広義のCRM活動に活かすことは、中小零細企業でもかなり当り前
になってきました。お客様側がそれをどのように受け止めているのかについて
書いてみました。お楽しみに戴ければ幸いです。本文に対するご意見・ご感想
をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業
日!!
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その357:続・執着の表現

 もう10年ほど前に、パチンコ店チェーンの経営者とCRMシステムの有効性に
ついて話したことを思い出す。パチンコ店で用いられるCRMシステムは貯玉シ
ステムと総称され、お客様が景品に交換しなかった勝ち玉を、ポイントとして
貯めておくカードを持つお客様を“会員”として情報管理の対象とする。遊技
には年齢制限がある。会員になる際には、年齢確認のため、運転免許証などの
身分証明の提示が必要になる。少なくとも入会時点においての個人情報がかな
り確実に入手でき、どんどん蓄積されることになる。

 入会後の会員の動向はかなり的確に判明する。どの日に来店し、どの台でど
れだけ遊び、どれだけ当たったのか。当たった時刻ももちろん特定できる。そ
の周囲の台の当たり度合いも分かるので、その会員がどれだけ優越感を抱けた
かまで想定できる。特定の会員を意識すれば、遊技の表情も姿勢も監視カメラ
で見ることができる。克明に遊技の状況が自動的に記録され、膨大なDBが日々
構築されていく。住所も分かっているのだから、ググれば住まいの状況まで事
務所にいながら組み合わせられる。

 こんな膨大な情報がありながら、販促や接客に積極的に使っていないパチン
コ業界はどうかしていると、他業界での事例を引きつつ私が社長に言った。

「つまり、スタッフが、「●●さん。最近、アタリが良いですね」などと個別
に話しかけてくるというホテルのようなサービスと言うことですか。若しくは、
好きな台の情報をDMで自宅に送りつけてくるとか、そういうことですね。パチ
ンコを打つこと自体が後ろめたいお客様が多いのに、そういうサービスが望ま
れているかどうか、怪しいですね」。
 社長は怪訝な顔をして、理路整然と説明した。

 或る日、行きつけの“行けば7000円近くは必ずかかる床屋”に行ったら、ス
タッフが大きな革装のファイルを大仰に広げ、「市川さん、前回のようなコー
スでよいですか」と尋ねてきた。常連のお客の情報を記録して共有しているこ
とは知っていたが、あからさまにそのツールが認知できたのはこれが初めてだ。
何かこの店の方針が変わったのかもしれないが、特に不快を感じることはなか
った。

 顧客情報を収集していることを隠すこともなく、「色々知っている仲なんだ
からさ」とばかりに、個別対応を仕掛けるサービス業が増えているような気が
する。拙いスタッフが増えて、顧客情報収集の事実を隠し果せなくなったのか。
自分自身の情報がどんどん収集されても、それが承認欲求を満たすような個別
サービスの材料なら許せると割切れる客が増えたのか。私には分からない。

 サービス業を営む中小零細組織では、大掛かりなCRMの導入活用よりも、
ローテクなお客様カルテの活用を始めましょうと言っていたら、最近はパチン
コ店からも引き合いが来るようになった。理由を想像すると愉快だ。

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 第31話『執着の表現』  http://tales.msi-group.org/?p=72
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第358話 『門出の宣誓』 (12月25日発行) 
 今年最後の発行号は、今時の小学校の卒業式に出席してみて考えた、子供達
のキャリア観についてまとめてみました。ご期待下さい。

(完)