『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』

「そらおと」の二度目を観てきた後、この日のうちに、是非観ようと、時間の合う上映館を探した所、一度も行ったことのないコレド室町と言う商業施設の映画館ということになりました。夜9時過ぎから始まり、終わりが12時を過ぎる回です。

 コレド日本橋は何度か訪れたことがあるのですが、コレド室町は全く初めてで、ここに映画館があること自体、初めて知りました。行ってみると、コレド室町は三つの建物から構成された、この界隈ではかなり大型の商業施設で、シネコンも非常に雰囲気の良い感じでした。特にロビーの高級感やゆったり感が優れており、大画面から音響もばっちりに連続して流される予告編にはつい見入ってしまいます。

 GW最終日の祝日で12時過ぎの終わりですから、直結の地下鉄も既に終わっています。徒歩圏の神田駅まで歩いていくことを確認してから、シアターに入りました。

 マーベルの作品が好きかと言われたら、「そうでもない」としか答えられません。それでも、まあまあ観てしまうのは、何か年末の紅白歌合戦などのテレビ番組とか、メンバーが大きく変更になってしまった後の昔好きだったバンドのCD新譜とか、なにかそのような気分によるものです。「観る」と言う行為のコレクションを一応完結させておきたいと言うようなことでしょうか。

 前作の『キャプテン・アメリカ』は、何か「アメリカ太郎」的なダサさや間抜けさを感じて、観るか観ないか躊躇しているうちに上映が終わってしまいました。それで、後日、DVDで観ました。正直言って、あのダサいコスチュームはないだろ…とは思いましたが、ストーリー的には、第二次大戦の話をうまくまとめこんであり、最後には彼の身を呈した活躍で世界が救われる一方、彼は北極海で氷漬けになって70年を過ごすことになると言う展開も、馬鹿らしいほどに明るく前向きなヒーロー像とは異なっていて、嫌いではないと思えました。

 主人公を演じているクリス・エヴァンスと言う役者は、私にとっては、やはりアメコミものの『ファンタスティック・フォー』のヒューマン・トーチの印象が強いので、ダサいヒーローに格落ちした感じがやはり否めませんでした。ファンタスティック・フォーもキャプテン・アメリカも、マーベルの作品で、設定上は両者には交流がある筈ですので、今後、アべンジャーズのように、作品が相乗り状態になったらどうするのかと、(老婆心ながら)心配になってしまいます。

 DVDで観た第一作がまあまあ好ましく思えたと言うことと、先述のように、コレクション的に、観ておきたいと言う動機と、さらに一つ、観るべきと思った理由があります。既に、アイアンマン2から注目していた、ブラック・ウィドウ役のスカーレット・ヨハンソンです。ポスターでもかなり大写しで登場し、期待していました。余程ファンが多いのか、『アイアンマン2』、『アベンジャーズ』、そして本作とどんどん役柄に重みが増していきます。

 今回観てみると、事実上の主役格に思えます。実際には90歳を超えている外見上20台前半のキャプテン・アメリカに対して、仕事上のパートナーと言う感じから、まさに女房役になって行きます。当然、キャラクター描写も緻密になって来て、単なるアクション中心の役柄から、みようによっては峰不二子的な妖艶さまで醸し出すようになっています。特にセックス・シーンがある訳でもありませんが、多分、童貞と思われる浦島太郎感満点のキャプテン・アメリカに対してお姉さん役からツンデレ・パートナー役にも時たま移行するのが、この映画の最大の見どころにように感じられました。

 キャプテン・アメリカは、強靭な肉体を手に入れはしましたが、一応、人間の域です。銃弾どころかナイフでも傷つきますし、空を飛べる訳でもなければ、光線が出せる訳でもありません。その意味で、『アベンジャーズ』でも(一応、リーダーとは言え)最も役立たず目立たない役どころです。そんなキャプテン・アメリカの第二弾なので、必然的に人間レベルの話になります。今回はキャプテン・アメリカの敵組織ヒドラが、実は宿敵であるSHIELDの中に蔓延っていて、それが顕在化した時に、一旦組織から追われた、サミュエル・L・ジャクソン演じる、ニック・フューリーやらブラック・ウィドウやら、キャプテン・アメリカがどう反転攻勢をするかと言う、スパイ組織モノの映画となっています。そこにブラック・ウィドウとの人間関係がたっぷり盛り込まれていますので、それなりに楽しめる作品になっていると思いました。

 基本的には映画の約4分の一か3分の一ぐらいはキャプテン・アメリカとブラック・ウィドウの組織からの逃走劇です。組織から逃げ回る系のスパイ物は『ボーン…』シリーズのみならず、山ほどありますが、男女の逃避行であることと、過去作品で既にキャラができ上がっている二人の掛け合いになっていることなどで、この要素だけで観ても、組織から逃げるスパイ物男女逃走劇と言うジャンル(?)で観ると、結構秀逸という見方もできます。

 さらに、注目できる女優が二人も見つかります。両方とも、カナダ出身で、一人は、ニック・フューリーの補佐官を務めるマリア・ヒルを演じるコビー・スマルダーズで、ちょっと若い頃のジェニファー・コネリーを思い出させる感じです。『アベンジャーズ』で登場して以降、かなり目立つようになってきました。ウィキによると元々モデルで9等身の完璧なプロポーションと評される女性だったようで、彼女が出てくると画面が引き締まる感じがします。

 もう一人は、私が好きなタヌキ顔全開のエミリー・ヴァンキャンプです。役柄は、やはり、SHIELDのエージェントでエージェント13と呼ばれる、キャプテン・アメリカの監視役で、彼のアパートメントの隣室の住人です。こちらは、今回が初登場ですが、活躍の場面が相当あります。タヌキ顔&あまりよくないスタイル&それほど高くない身長で、ネットで画像検索すると、写真によっては、ブリトニー・スピアーズのように見えるものもあります。かなり好きなタイプなのに、日本での公開作にメジャーなものは一つもありません。これからもSHIELDの面子として出て欲しいものと思います。

 彼女を観て思いますが、ここ最近では『マン・オブ・スティール』のエイミー・アダムスや『ロボコップ』のアビー・コーニッシュ、そして今回のエミリー・ヴァンキャンプと観てくると、どうもこの手の顔や体型がじわじわと受けるようになってきていると思えてなりません。基本的に米国で美人と思われる類の人々ではない筈ですので、「ブス可愛い」だの「ちょいブス」がトレンドになっている日本市場を意識した配役だったりするかもなどと想像してしまいます。(ハリウッド映画の映画収益(DVDや関連グッズの販売なども含めた収益)は、日本が全世界の3分の一以上を占めていると言う話も聞いたことがありますので、強ちあっても不思議ではない話です。)

 何にせよ、DVDは買いです。

追記:
 ヒドラが本作の中で秘密裏に推し進めていたインサイト計画は、明らかになるのが映画の中盤を過ぎて以降なので、観ているとポンと登場して直ぐ潰された感があります。しかし、内容はなかなかのものです。優生学的アプローチの超最先端型乱用と言う感じです。ネット上に展開する個人の言動などを分析し、今後、社会的に害悪を為すと判断できる人間を問答無用で空中に浮かぶエアキャリアー三基からレーザーなのかミサイルなのか分かりませんが攻撃して殺害すると言う考え方です。究極の犯罪抑止と言うことでしょうか。劇中では、当面のターゲットは2000万人と言う話でした。歴史上最大の理念国家とでもいうべき米国の中で人口の約一割弱をヤバい人と位置付けてやっちまうなら、どうぞお好きにと言う感じがしないでもありませんが…。