342 仮説検定法

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経営コラム SOLID AS FAITH 第342号
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 ご愛読ありがとうございます。第342話をお届けします。

 人と初めて会う機会がいつもよりやや増えています。個人事業主は自分の話
題と会社の話題の別がほとんどないので、畢竟、自分自身について色々と尋ね
られることが増えます。隠したいことがある訳でもなく、かなり明け透けに何
でも答えるのですが、実感を正直に答えると説明が長くなるのが難点です。

 最も困るのが、「趣味は何ですか」や「休みの日は何をしているのですか」
です。考えてみると、この長くなる答えは第330話『足りない盛り付け』のネ
タになっていました。プリントアウトを常時数枚用意して出掛けるようにした
ほうが良いのかなどと、つい考え込んでしまいます。

 前回までのシリーズ『ワン・エイトゥス・ワンダー』三回で扱った「会議8
分の一」の考え方はその後も書籍やブログなどで多数目にします。組織や人材
の質を見極めもせず、あのようなインスタントな解に飛びつく人々の少ないこ
とを祈るばかりです。

 シリーズも終わり、今回は『仮説検定法』と題して、会社の内情に見る経営
の観察ポイントについて考えてみました。冒頭で述べた問いほどではありませ
んが、私が訪問先の会社のどこを見ているかも、まあまあよく聞かれる質問で
す。それほど固定したものはありませんが、やはり、よく目が行ってしまう所
はあります。PR欄にも資料を紹介しましたので、ご関心のある方は、ご高覧
下さい。それでは、いつもの通り、本文に対するご意見・ご感想をお待ちして
おります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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第330話『足りない盛り付け』  http://tales.msi-group.org/?p=634
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その342:仮説検定法

 指先についた黒いシミに視線を落としながら、路上で知人の話に耳を傾ける。
黒いシミはホワイトボードに据えつけてあったマーカーペンのもの。私の行動
を視野に入れることなく知人は話を続ける。
「今回紹介したあの会社、専務さんはああ言っていましたけど、業績はそれほ
ど悪くないんですよ。社員も辞めるケースもそれなりにはありますけど、採用
も続けているし、幹部も結構真面目に新人を育成しようとしているらしいです
よ。市川さんの話に関心を持っていたみたいだし、案件としては楽勝ですかね」。

 案件の受注確率は勿論気になる。しかし、案件の難易度の方がもっと気にな
るので、先方の社内で見たことを、指先を見つめながら、私は色々反芻してみ
ていた。漸く私の視線の先に気付いて知人が、「ああ、会議室で待っている間
に、マーカー弄っていたんですよね。拭きますか。ティッシュありますよ」と
気を利かせる。色々気になることの一つが数本あったマーカーのインクが全部
掠れていること。本当にこの案件は楽勝なのだろうか。

「マーカーのインクが掠れていたのが気になったし、これからお客さんのとこ
ろに送るダンボールの置き方も何か雑だったし。電話の応対もなんか鈍いし。
本人達が良い線行っているというのなら、余計のこと、難易度高いかもねぇ」
と私は自分のポケットから出したティッシュで適当に拭いながら言う。
 
 部屋に戻って、ふうと嘆息し読みかけの本を手にしてみた。
「一人の病人の死に瀕するとき、あらゆる臓器に一斉に死の前徴が現れてくる
が、一つの文明が没落するときも同様にその衰弱の徴候はあらゆる面に出てく
る」。
 手にした本は、グループ一九八四年による『日本の自殺』。1970年代に数本
の論文として『文藝春秋』誌上に発表された中の一テーマを書籍にしたもの。
発表当時、経団連の土光敏夫会長が驚嘆・激賞して、周囲にコピーを多数配っ
たと呼ばれる文章。

 文明の発生、成長、没落と言う歴史の長期波動のなかで特に没落の過程に焦
点を絞っていると前書きで宣言しているこの書籍は、勤勉だったはずのローマ
人が当時世界最大の版図を確保した後、消費に狂奔し、反映の代償として歴史
から消え去った経緯を仔細に述べる。そして、発表当時、高度成長が確実に終
わりつつある日本経済に対して、恐ろしいほどの説得力で警鐘を鳴らした文章。
その中の一節に目が釘付けになる。

「一人の人間も一つの文明も、死ぬときは同じようになる。じゃあ、規模で間
にいる会社組織だって、多分例外じゃないよなぁ」と誰もいない部屋でブツブ
ツと呟いた。
 
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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今号で描かれている会社の観察ポイントを、
幾つかの書籍に紹介されている内容と、
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制作は少々古いですが、今尚、活用に足る内容満載です。
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本文に、会社名、部署名、お役職名、ご氏名、
そして、会社の所在地、電話番号を明記の上、御一報下さい。
 bizcom@msi-group.org

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『ニッポン人だけが知らない 世界を動かす国際教養』 小林朋子 著
■『女性だけの便利屋繁盛記』 安倍真紀 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第343話 『安全欲求』 (5月10日発行) 
 営業話法の本によれば、自分の商品が実現するお客さんの潜在的なニーズに
気づいてもらうと、そこに付加価値が発生すると言います。私がそこに仄かに
感じる違和感について考えてみました。

(完)