『ガッチャマン』

 バルト9の平日の夜の回で観て来ました。スタートは9時ちょっと過ぎ、終わりは11時半頃なので、結構遠いところまで終電で帰ることができる時間ではあると思います。しかし、封切後二週間経っていないのに、観客は私も入れてたった7人しか居ませんでした。ネット上では、やたらに不評が論われている作品です。大コケ議論は喧しく、『キャシャーン』以来の有名アニメ原作でのハズレ作品だなどと叫ばれています。

 私はその『キャシャーン』が結構好きです。アニメの世界観の方が寧ろ少々ちゃっちく感じていた私だからかもしれません。何度も観たくなるほどということではありませんが、及第点に十分に達していると思っています。突如、椎名林檎がかかったり、色々と演出上でもおかしな所がありますし、新造人間の設定など、様々に原作と異なるところがあって、気になると言えば気になります。しかし、その宇多田ヒカルのPVの幾つかを思い出させる見事な映像も嫌いではありません。そして、『キャシャーン』の原作とは全く異なる一つの世界観を十分に作り上げている感じが素敵です。新造人間が常に自分の発祥を求めながら精神的に彷徨し続け、死の間際になって、総ての謎が解け、各々解脱めいた表情をして死んでいくポイントだけで、私はこの『キャシャーン』と名乗っている作品の世界観の素晴らしさを感じます。

(本当は映画のタイトルは英語表記で、その意味でも、原作の『キャシャーン』とは別物なのでしょうが、ここでは統一してカタカナ表記にしておきます。)

 と言うことで、世の中で不評であって、それが『キャシャーン』と並び称されると聞けば聞くほど、これは観ておかねばと思い至りました。私よりも年下なのに私の母のいとこである女性が、若い頃から親戚づきあいの極端に少ない中では、かなり親しい人物です。その彼女が北関東の町で地元の映画撮影誘致のNPO代表になっており、『ガッチャマン』の撮影にもちょっと関わったと言っていたので、もともと関心は僅かにありました。

 私は原作『ガッチャマン』のファースト・シリーズは、リアルタイムであまり観ていません。再放送を時々見ていて、何となく世界観を知っていると言う感じでした。続く『ガッチャマン2』に対してもほぼ同じで、どうもニューゴッドフェニックスを始めとするメカがかっこ良くなったけど、まあ、そんなもんか程度でした。(ニューゴッドフェニックスは、実写のゴレンジャーのバリドリーンに似ている気がするとか思っていました。)

 私が『ガッチャマン』シリーズが非常に好きになったのは、『ガッチャマンF(ファイター)』です。前二作に比べて、ストーリーはモロに戦争に偏り、南部博士は暗殺されてしまいますし、戦いでどんどん主人公たちは疲弊し、健に至っては必殺技を繰り出すたびに細胞破壊と言う放射線障害のような症状を強めていきます。後のエヴァにも通じるような疲弊感・絶望感が常に付きまとっているような展開の中で、ガッチャスパルタンなど兵器戦のかっこよさが強調された作品だと思っています。

 世の中では『ガッチャマンF』はかなり不評だったようで、どうも、『ガッチャマン』の話を誰かとして、私が『ガッチャマンF』の魅力を語ると話に乗ってくる人が見つかりません。その意味で、私は『ガッチャマン』ファンとしては異端かもしれませんし、その分、(『キャシャーン』の時の様に)映画『ガッチャマン』が全くの新設定でも、受け容れられる素地がかなりあったものと思います。

 観てみた感想は、結構アリです。まるで『キャシャーン』の時と同じような感じですが、何度も見返したり、人に薦めるほどのインパクトはありませんが、十分及第点越えで楽しめた映画です。戦闘シーンの中にタツノコ作品満載の玩具店が出てきたりするのは、少々、やりすぎ感が否めませんが、映画評で不評の過去の三角関係の話も、“適合者”の宿命についての話の流れと重なって、私はよくできているように感じました。

 さらに、ネット上の映画評で“原作クラッシャー”とまで呼ばれ、不評の中心に居るような剛力彩芽も、テレビは殆ど見ることがないので、私は役を演じているのを観るのは初めてでしたが、特に可もなく不可もなくと言う感じで気になりません。安心して観ていられるといった名演技もありませんが、大体にして、ヒロインの主役級は寧ろ、健・ジョーと三角関係にあって、後にベルク・カッツェ三代目となるナオミ役の初音映莉子の方です。

 たしかホラー系の作品が多くて、作品を見ることがなかったかと思ってフィルモグラフィを観ると、劇場で見ようと思って見逃しつつある『終戦のエンペラー』でかなり重要な役をこなしています。そして何よりも大発見は、かなり私が好きな奇天烈映画の『うずまき』が彼女の映画初出演・初主演作だったことです。16の時にデビューしてから、既に芸能歴15年。ちょっと気になり始めました。

 また、ギャラクターの設定もそのような組織名ではなく、人間から変異した生物の名前になっていて斬新ですし、ギャラクターの異能の一つであるシールドも、各種の攻撃を無効化するというものですが、それがエヴァのATフィールドや古くは『デューン/砂の惑星』のシールド(と言う名称かどうか記憶が曖昧ですが)をきっちりとイメージの湧くCGにしてくれていて、「おおっ」と言う感じです。白兵的なバトルシーンも、ハリウッド映画の中途半端な超能力者などの物語などのレベルを大きく越えていると思います。『ガッチャマン』の要素を少々採り入れたちょっとスタイリッシュなSF新作と思って全体を見れば、かなりの良いできの作品ではないかと思います。

 DVDは一応、買いです。