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経営コラム SOLID AS FAITH 第320号
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ご愛読ありがとうございます。第320話をお届けします。
ずっとシリーズと番外編で「死すべき技術としての経営」について考えるこ
とをしていたら、まるで映画『ファイナル・デスティネーション』のように
「死」が引き寄せられて忍び寄ってきたのか、酷い食中毒で危うく命を落とし
かけました。胃腸の中で繁殖した菌を排出すべく激しい嘔吐と下痢が始まり、
その後、菌が出した毒素によって、40度に及ぶ高熱とアレルギー・ショックが
続き、気管が痙攣して呼吸困難になりました。千歳に向かう夜の機内で高熱が
出て、夜間の緊急病院に着陸後ストレートに向かったので、病院の待合室で症
状が急変してもすぐ手当できたのが幸いしました。
その三日ほど前にクライアントさんと行ったプレ・オープン中のイタ飯屋さ
んの食べ物が原因とまではほぼ分かっています。その時点で既に風邪気味だっ
たのが災いしたようで、同席の方々は軽症で済んでいます。排菌・排毒が進む
と急激に良くなり、翌朝には熱も引き、その午後にはＰＣ仕事さえ何とかでき
る程度に回復しました。「ああ、こうやって、急に死ぬこともあるんだな」と、
四肢も痙攣して動けなくなった時に考えて、当コラム第305話『あしたあらん
こと』を思い出しました。日々の瞬間々々の重みを実感できた経験でした。
ＰＲ欄は、当コラムほどの長さではないものの、ふと振り返るとかなり積み
重ねになった、弊社代表が講師を務める、合資会社アイソリューション様の中
小企業向けセミナー事業のご紹介です。月一度の日曜日午後に開催を重ね、先
般、専用ページを立ち上げたとの連絡を受け見てみると、10本近くのテーマが
ずらりと並ぶ様相になっていました。是非、ご一読の上、サイトもご覧になっ
てみてください。
今回の号は『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』と言う多分人生で最も影響力
のあったドキュメンタリー映画を見て、後日、トークショーでその人物、代々
木忠氏にあってみて考えたことをまとめてみたものです。数十年に渡り、ヒッ
トする企画を生み出し続けるプロセスを想像させる内容です。本文に対するご
意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納
期は５営業日!!
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☆経営コラム SOLID AS FAITH 第305話『あしたあらんこと』
http://tales.msi-group.org/?p=511
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その320：企画の虚実
「女の股ぐらで食わせて貰っている商売。出演したことで、女の子をセックス
で幸せになって貰えるようにしなきゃ申し訳ない」と、皺くちゃの紙を広げな
がら、二月の氷雨降る中で忘れないように書き留めた台詞を読み返してみる。
渋谷の外れまで観に行って来た映画『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』の中で
代々木忠が言った台詞。
代々木忠監督を私は殆ど知らなかった。指を詰めてヤクザ稼業から足を洗い、
映画の業界で働けば関わった映画の裁判闘争で逃げず、ピンク映画からポルノ
ビデオ、ＡＶに至るまで時代の流れの中で、トップを走り続けた人物。70歳を
過ぎて尚、月に一本のペースで撮り続け、ファンを唸らせ続ける人物。観に行
ったのは、その半生への純粋な関心から。劇中で「『企画力が凄い』と言われ
るけど、そんなことはない。全ては巡り合いの産物だ」と彼は語る。優れた作
品群は、常に女性の性の持つ可能性を、その都度、学び、発見し続け、それを
画像に丹念に記録する妥協なき作業の産物と簡単に見て取れる。
「市川さん。これが例の暗黙知って奴ですね。シャドウイングかぁ。最初は半
信半疑でしたけど、効果が出てる感じがしますよ。ああ。けど、ただのシャド
ウイングじゃないですね。シャドウイングで観察したことを三人の観察者がマ
ニュアルにまとめるわけだから。よくこんな方法考えましたね。企画勝ちって
感じかな。来年もこれだなぁ」。
前回の打ち合わせの際に大まかな進め方を承認して下さっていた常務が、進
行状況のモニターに訪れた私に話しかけた。
「ええ。まあ、思ったよりいい感じですね。以前、ミンツバーグで読んだ『知
識のスパイラル』の中の『表出化』って言うのをやってみたいと思っていたん
ですが、シャドウイングに組み合わせようと思ったのは、その場の思いつきだ
ったんですよ。すみません。けど、結果は狙い通りで良かった」と私は研修の
状況に視線を投げた。
翌日の夕方遅く、新宿の大手ＤＶＤ店。９ヶ月を経てあの映画のＤＶＤが発
売になる。買うと記念トークショーの参加券がついていた。数日後、喜び勇ん
で参加したトークショーの場に現れた代々木忠は、ちょっと目つきの鋭い好々
爺。抽選でホカホカと書かれた色紙を貰う。深いエクスタシーに達した後の女
性の感覚を代々木忠が表現した言葉。トークでは他の参加者の存在と発言に
代々木忠は埋没している。
会の最後は握手をして一言ずつの会話をして会場を出ることになっていた。
書店で仕事に使う本を漁るだけの日で、ボロのジーパン姿の私。握手した手に
一瞬視線を落とした後、代々木忠は射抜くような目線で私をまっすぐに見つめ、
「仕事帰りでしょ。忙しいのに来てくれてありがとう。体大丈夫？気をつけて
やって下さい」と言ってにこりと笑った。
「市川さんは、企画書とか書いたりする仕事あんまりないんですよね。それな
のに、企画屋なんだ」と訝る人がいる。企画書を書くことがなくても自分は企
画屋だと思っている。だからこそ、一瞬の握手にさえ適切な解を見出す代々木
忠に、未熟を思い知らされた。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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☆弊社代表の『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』の感想はこちらにて。
http://tales.msi-group.org/?p=426
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発行：「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社ＭＳＩグループ（代表 市川正人）
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次号予告：
第321話 『空調のリモコン』 （6月10日発行）
歴史の長い企業を訪れると、その企業の社員が普段の業務を行なう上で一番
意識を向けている事柄が、企業によって様々に異なることに思い至ることがあ
ります。“社風”のようなもののでき方を考えてみました。
（完）