305 あしたあらんこと

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経営コラム SOLID AS FAITH 第305号
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 ご愛読ありがとうございます。第305話をお届けします。

 5回に渡る300話達成記念特別号のシリーズ『脱兎の心中』が終了しました。
その前の3回シリーズ『お友達未満』も合わせると、8回連続で弊社のネット
を通じた情報発信、所謂「ソーシャル系」の活動についての考えをまとめてみ
ました。お楽しみ戴けましたでしょうか。

 多種多様なツールが出揃い、情報発信だけは誰にもできる世の中になりまし
た。自分だけのコストゼロの出版媒体が欲しくて、仕方なく13年前に始めたメ
ルマガ。それを始めるために仕方なく作らなくてはいけなかったウェブサイト。
たった干支一回り程度の期間なのに隔世の感があります。
 
 しかし、私に英語を「道(どう)」として学ぶことを教えて下さった松本道
弘先生によれば、アウトプットをするにはそれを大きく上回る量のインプット
が必須です。氾濫する情報の器に何を盛るのかが大きな問題になることと、ク
ライアントのウェブ政策を耳にするたびに思い至ります。そんな中で考えたこ
とを300話達成に当たってまとめることができて良かったと思っています。
 
 さて、シリーズ2連ちゃんとは打って変わり、305話は、大好きな勢古浩爾
の書籍、『日本人の遺書』を読んで感じたことをまとめてみたものです。平均
寿命を全うするのだとしても、残された時間が限られている経営者のご相談を
戴くことがあります。有限の時間と言うことでは、誰しも条件は変わりません。
その中の経営に向かう考え方のサワリについて、ご一緒に一考戴けましたら幸
いです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想
などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その305:あしたあらんこと

「今六時半だ 飛行機は まわりながら急速に降下中だ
 本当に今迄は 幸せな人生だった と感謝している」。

 帰札の途上、空港で本を見繕う。偶然見つけた大好きな勢古浩爾氏の新書。
『ぶざまな人生』は最高だった。遺書を集めた今作の切り口に感嘆しつつ、そ
の本『日本人の遺書』を手に取った。時計をはっと見ると時間が迫っている。
慌ててレジに行った。機中ではどんどんページが進む。遺書の選択もカテゴリ
ー分けも素晴らしいが、各々に著者が添えた文章が適切この上ない。一時間
少々のフライトの終わり近く。折からの悪天候で上下左右に機体は弄ばれる。
残り20ページを切る辺りに配された文章が目に飛び込んで来る。

 1985年の御巣鷹山墜落事故の被害者河口博次氏の遺書。
「頭の中が「死」で覆われつくされる。総毛立つような恐怖のなかで、わたし
はこのような遺書を書くことができるだろうか」と著者さえ言葉を失っている。
標題として二行が掲げられているが、全文も掲載されている。胸を抉る文章。
落涙せずに読むことができない。当時大学四年生だった長男が「やっぱり、パ
パはすごい」と家族と話したと書かれている。「絶体絶命の状態の中で、それ
でも正気を失わずにこのような遺書を残せたことが、であろう」と著者が書き
添えている。

 窓の外、遥か下方の地表が目に入る。大きな揺れで額が窓枠にぶつかる。
「わたしはこのような遺書を書くことができるだろうか」と今一度小さく音読
してみた。
 
 空港に降り立って、メールをチェックする。一昨日会った社長が、私が述べ
たアドバイスに気付きがあり、一期一会の心掛けで自社の改善に活かしたいと
書いている。丁寧なお礼の言葉と共に、今後もよろしくお願いしますと締め括
られていた。「ご縁に感謝か」とぼそり呟いてPHSを閉じた。案件化すると
思っていた顔合わせでもなく、嫌味を言いたい訳でもない。河口氏の先述の二
行の直前には「ママ こんな事になるとは残念だ さようなら 子供達の事を
よろしくたのむ」とあって、二行は感謝で締めくくられている。感謝の念は常
に美しく素晴らしい。それでも何かメールの文面が引っ掛かる。
 
 帰宅すると進級して小学五年生になった娘が、学年毎に出版されている名作
選を読んでいた。徒然草が二話載っている。そのうちの一話は『ある人、弓射
ることを習うに』。この話は好きなんだと娘に音読させた。
「いわんや一刹那のうちにおいて、懈怠の心あることをしらんや」。
 終わり近くの一文を聞いて謎が解けた気がした。いつ聞いても深く頷かされ
るのだから、この教えに遠く及んでいない証左であろう。
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次号予告:
 第306話 『慇懃な処遇』 (10月25日発行) 
 現実社会でもネット上でもマナーが良く相手を傷つけたりしないような言動
が持て囃されています。しかし、丁寧な言動や慮ることの多くは相手との距離
を置くことであり、言動への本質的な影響力は非常に限られていることでしょ
う。その距離感の功罪を考えてみました。

(完)