『電人ザボーガー』

新宿のバルト9の平日の夜の回で見てきました。封切後二週間と少々にして、バルト9での上映回数は減って来ています。仕事帰りの人間が見られる回は私が見た一回だけでした。そこそこ人はいて、小さいシアターの2割ぐらいは埋まっていたと思います。

ただ、そのような人気の程度かと言うと、どうも、熱狂的なファンはいた様子で、バルト9で私が経験した中では、ヱヴァンゲリヲン以来のパンフ完売済み状態でした。上映前に尋ねると女性店員が「入荷は未定」と答えていましたが、上映後に尋ねると男性店員が「現在、増刷中」と答えていました。二人分を合わせると、「バルト9での今後の購入はあてにならないから、確実に欲しいのなら増刷分を他の劇場で求めるようにしたらどうか」と言う意味に解釈できます。

この映画を見に行くことにした最大の動機は、タヌキ顔の山崎真実です。どうも、映画の出演作が少なく、出ても、あまり良い役が見当たりません。(好きなタヌキ顔系でアイドル系女優(?)では、他にサトエリや三津谷葉子、川村ゆきえなどがいますが、ほぼ同評価です。)『ペルソナ』、『非女子図鑑』と見て、食傷気味です。私の知る限り、テレビシリーズ『ボウケンジャー』の「風のシズカ」役が最高です。通常、戦隊モノには女性隊員の七変化風の展開が見られるエピソードが入っているものですが、山崎真実は悪役幹部であるにもかかわらず、そのようなエピソードがあり、チャイナドレスやらセーラー服、看護師服までころころ衣装を替えます。その次と考えても、OVの『超忍者隊イナズマ!! SPARK』などで、やはり特撮モノが似合います。カルト的人気があると聞く『参議院議員候補マミ 』を見てみるべきか検討中ではあります。

そして、本作の監督と脚本は井口昇です。井口昇と言えば、『片腕マシンガール』と『古代少女ドグちゃん』シリーズの監督です。他には流石にバカらしさに勝てなくて見ていませんが『ロボゲイシャ 』や『戦闘少女 血の鉄仮面伝説』もあります。ウィキなどによれば、スカトロ系のAV作品も膨大な数撮っていますし、『山形スクリーム』や『恋の門』、『キューティーハニー』にまで出演している、“その筋”の人です。

そして、本作もこの監督特有の悪乗り感大炸裂です。スプラッタ的なテイストはほぼないので、むしろドグちゃんのテイストに近い乾いたギャグの応酬と言う感じでしょうか。そこに(ドグちゃんのメイキングで見る限り、やけに親しそうな)盟友竹中直人が赤ん坊に母乳を飲ませるなどのハチャメチャなギャグをかまし、柄本明が嫉妬から山崎真実に鞭打ち、板尾創路が糖尿病に侵された主人公に扮してインシュリンを打ちながら闘います。これでおかしな話にならない方が不思議です。

さらに、電人ザボーガーは妙に人間くさく、若い操縦者とド突きあったりするほどで、涙腺らしき穴から涙を噴出したりしますし、砂浜で激怒して拾ったマックシェイクを握りつぶして見せたりします。若き操縦者は、空手バカと言う想定で、ブルース・リーのまるまんまの戦いをしたりしますし、必要も感じられないのに、「とお!」などと言って、何回も体をひねりながら空を舞います。操縦者は戦闘員との戦いの最中にも、メカ怪人と闘うザボーガーに、ヘルメットに付けられたマイクをいちいち口に持ってきては、闘い方を指示したりします。そんな挙動から熱血漢の熱いせりふの数々など、やたら面倒で、ウザさ満点です。ドグちゃんと違って、井口昇の創作した世界ではないので、ギャグが馴染んでいないよなぁと感じていました。

ところが、この映画の最大のどんでん返しは、エンドロールに登場します。映画でやり過ぎ感満点だった主人公の熱血ウザさも、悪役三下キャラやどう見ても安っぽい敵ロボットなどの兵器の存在も、殆どオリジナルテレビシリーズそのままであったことが分かるのです。エンドロールの脇にオリジナルの映像が流れるのですが、現代のテクをふんだんに使って実現したであろうCG部分などを除いて、殆どが当時のテレビの画像のイメージ再現なのです。私はテレビもリアルタイムで見ていた筈ですが、あまり記憶に残っていず、寧ろ、雑誌『冒険王』での漫画のザボーガーを読んでいた記憶が強くあります。テレビではこんなチープなものでも、当時はワクワクドキドキしながら見ていたのかと、愕然とさせられます。これは強烈な驚きです。

後に驚愕に変わるこのウザさが劇中ではかなり鼻について、山崎真実の魅力が全然光りません。それどころか、井口昇監督が大好きなのであろうビキニアーマーを装着した女性は多々出てきますが、その色気が殆ど全く発揮されないままに終わります。『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』、『nude』、『蛇のひと』で、私が注目している若手女優、佐津川愛美が本作に登場し、なんと山崎真実と板尾創路との間にできた娘役です。『蛇のひと』では高価な分譲マンションを無理して買った主婦役なのに、その一年後に女子高生(型サイボーグ)役です。おまけに監督好みのビキニアーマー型で巨大化し、街を破壊し尽くす全くおかしな役柄です。巨大化した彼女はおもむろに携帯電話を取り出し、意味不明な会話を始めます。すると、女子高生の中身のない会話が波状のエネルギーとなって拡散し、彼女の遥か下方周囲の人々の頭部を爆発させていくのです。

山崎真実と、見てから気付いた佐津川愛美の魅力はあまり活きているとは言えず、おまけに本編を見る限り、色々な意味でウザさ満点です。珍妙な面白さをどう評価するべきか考えてしまう段階で、少々バツかもと思っていましたが、最後の大逆転で、コロッと評価が覆りました。げんなり来るウザさが、当時のスタンダードであったことにばっちり気付かせてくれる、素晴らしい再現記録映像だったので、当然、DVDは買いです。

追記:
ドグちゃんを見ても思うことなのですが、AV監督でもある井口昇監督は、この電人ザボーガーやドグちゃんのAV版を作りはしないのかということです。それぐらい、『片腕マシンガール』、『ドグちゃん』、『電人ザボーガー』などでは、主演のアイドル達をエロ目線で撮影しているのが非常によく分かります。特に、『電人ザボーガー』での佐津川愛美巨大ロボは、空中基地から射出される際には舐めるようにボディが映され、ヒップのアップ画像が国会議事堂を破壊します。一歩を大きく踏み出すシーンは地上から股間を見上げる目線です。パロディ特撮AVと言うジャンルも日本では確立されているようですし、今時のアイドルユニットを軽く凌駕するほどの可愛いAV女優も数多いる時代ですので、是非、そちらの分野にも進出して戴きたいようには思います。