267 表彰辞退

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経営コラム SOLID AS FAITH 第267号
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ご愛読ありがとうございます。第267話をお届けします。

 関東では花粉が飛び始め、長く陰鬱な時期が始まりました。風邪も多少治ま
ってきたのに、今度は花粉で閉口しております。皆様は如何お過ごしでしょう
か。

 前回のPR欄に紹介した弊社ブログにアップされた映画4本について、多く
のご感想を戴きました。特に戸塚ヨットスクール校長のドキュメンタリー映画
『平成ジレンマ』については、社員育成に携わる方々から感想をお聞きする機
会が多々ありました。或る面で後味の悪い映画ですが、社会における教育のあ
り方について非常に考えさせられます。PR欄は『平成ジレンマ』の紹介を前
回より少々踏み込んで用意しました。ご高覧下さい。

 今回の267話は、少々変わった論点かもしれませんが、社員に教える仕事の
優先順位の意義について考えてみたものです。仕事を手早く片付けるテクニッ
クとして、仕事に優先順位付けをするとよく聞きます。中小零細企業の現場の
視点で、その優先順位について考えたことをまとめました。本文に対するご意
見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期
は5営業日!!
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その267:表彰辞退

「若手社員を見ていると、仕事が遅いのが目立つんです。最初に遅いのは当り
前なのですが、全然速くなっていかないんですよ。段取りが悪いと言うか、手
早くないと言うか。一つ、また一つと仕事が重なると、優先順位の判断も付か
ないようで、もたもたしているのが目立つんですよ。こういうのは研修とかで
何とかできますかね」。

 見込み客の企業の人事課長が私に説明する。この会社では毎年数十人の新卒
社員を雇う。全社員数の約一割。新卒社員向けの入社直後の育成方法の相談に
呼ばれた筈であったが、話はいつの間にか、その後伸び悩む二年目から三年目
の社員に移っていた。現在はどうしているのかと尋ねると、現場の先輩社員に
任せていると言う。現場の在籍5年から10年の社員数人にヒアリングをして
みると、「優先順位を自分で考えさせて、できるようになるようにするしかな
い」と数人が、これ以外に何かあるのかと訝りながら応えて下さった。
 
 ビジネス誌の編集員だった頃、企業で実際に使われている、新卒一年目の社
員向けの研修テキストを覗き見る機会があった。ホウレンソウの重要性や段取
りの有用性が説明されている。仕事が重なって処理しきれないようになったら、
周囲の先輩や上司に迷惑が掛からないように、作業の優先順位を先輩や上司に
相談して教えて貰うように書かれていた。
 
 ハーズバーグの二要因説の動機付け要因の一つに、奇妙にも「仕事」がある。
「仕事」を行なうための動機付けが「仕事」。誰しも失敗確率の高い者や、納
期や品質の劣る者に、仕事を任せることはしない。できる人物に仕事が集中す
るのは、その人物ならできると周囲が踏んでいるからであろう。与えられた新
たな仕事は、それまでの仕事の出来栄えに対する表彰状に見えてくる。
 
 社員数人の零細企業の社長と雑談をして、集中する仕事の優先順位付けに悩
む社員に話が及んだ。社長が不思議そうな顔をしながら聞いていて、不意に口
を開いた。
「社員が優先順位付けをして仕事をしたら、はみ出た仕事は誰がやるんだ。や
らなきゃいけない仕事だから社員に命じている訳で、できないならできるよう
になってもらうしかないんじゃないのか。俺は何か可笑しなことを言っている
のかな」。

 周囲が称え、手渡された表彰状や感謝状を、たくさん持っているからと、
どれかを捨てて良いかと尋ね返す人間。「同じ捨てるのでも、上司や先輩に
せめてどれを捨てるか決めてもらえ」と薦めるテキスト。作業の優先順位付け
より前に、若手社員に考えさせるべきことは多々あると再確認できた。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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見終わってから、何度も思い返しては考えさせられる
戸塚ヨットスクール校長のドキュメンタリー映画。
感想を弊社ブログにアップしました。

●『平成ジレンマ』
 刑期を終えて学校を再開した戸塚ヨットスクール校長の姿を描いたドキュメ
ンタリーです。ラストは40歳にもなるニートとされる男性の入校。砂浜でそれ
を見つめる校長の表情で映画は終わります。体罰にまつわる議論を超えて、人
間教育のあり方や極身近な日本社会の病理に気付かされます。

<弊社ブログより引用>
劇中、子供の扱いに行き詰まり、戸塚ヨットスクールの門を叩く親は多く、以
前の多数派だった不良は減り、今は不登校児やニートが多数派です。自傷傾向
のある子は預からないと言うポリシーを、困り果てた母親への同情によって曲
げてリストカット常習犯の17歳の肥満少女を預かると、入校三日目に屋上から
飛び降り自殺をしてしまいます。その親は世間体の問題なのか、たった三日し
かいなかった学校で葬儀を上げてくれと依頼して…、

http://tales.msi-group.org/?p=427

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次号予告:
 第268話 『薄いエネルギー』 (3月25日発行) 
 太陽光発電設備販売の仕事をお手伝いすることが続き、エネルギー資源につ
いて少々学びました。原油依存の経済が効率の良いエネルギー源を求めた結果
と知りました。同様に効率を重視して儲かりやすいお客様を対象とするビジネ
スの少々先を考えてみました。

(完)