583 BI前夜

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経営コラム SOLID AS FAITH 第583号
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 ご愛読ありがとうございます。第583話をお届けします。

 5月に入り春を一気に駆け抜けて夏に至ったような天候が続いています。
GWを終えて如何お過ごしでしょうか。季節感は夏に至っても、昨年末から今
春を経てずっと廃業や倒産が連続しています。生き残って市場に留まってい
る企業には、消えた事業者のパイが転がり込んできて追い風となっているか
もしれません。
 
 ブロック経済が世界的に進んだ結果、延々続く円安と相俟って、色々なモ
ノの内製化が進んでいるようです。不況や経営不安の声も多々聴く傍らで、
活況を呈している地域や業界は間違いなく存在します。円安でオーバーツー
リズム感が散見されるほどにインバウンド観光客も増えました。
 
 3月中旬の『SPA!』の特集のタイトルは『賃上げバブル職業案内』で、半
導体村の建設作業員やカニ漁師、人力車スタッフやタクシー運転手とさまざ
まな職業に就いている人々の収入急増が報じられています。人件費だけをや
たらに上げている訳はありませんので、これらの人々の雇用者もまた大きく
儲けているのでしょう。
 
 グローバル企業が空前の利益を上げれば、経済全体も潤うというトリクル
ダウン効果は、多くの国々において単なる勘違いに終わりましたが、こうし
た活況に踊る業界からのトリクルダウンは確実に、しかし、まだら状態に日
本の地域経済に浸透して行くことと思います。以前から書いている通り、総
じて中小零細企業には追い風の時代が到来しているように感じられてなりま
せん。
 
 今回の号は米国で「グレート・レジグネーション」と呼ばれた大離職現象
に触れつつ、日本の無業者の実態などについて考えてみた内容です。失業者
は仕事がなく求職中の人々のことですが、無業者は仕事がないのは同じでも
就職の意向がない人々のことを指します。なぜ人々は離職をしやすくなった
のか。そしてなぜ人々の働く意思は希薄になったのか。そんなことを一緒に
ご一考ください。
 
 昨年10月末日に発行した『24周年記念特別号』は『零細企業組織版 離職
抑制策概括』でした。併せてお読み戴くとより深く今回のテーマを考えるこ
とができるかと思います。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴した
ご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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■ 経営コラム SOLID AS FAITH 24周年記念特別号
http://tales.msi-group.org/?p=3184
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その583:BI前夜

「景気回復で完全失業率(年平均)は8年連続で低下し、18年には2.4%と
26年ぶりの低水準となったが、それでもまだ実数で166万人の完全失業者が
いる。(中略)求職活動をしていない未就業者、例えば専業主婦やニートは
166万人には含まれない。
 専業主婦は約600万人、家事や進学をしていない15~34歳の無業者は約53
万人いる(総務省調べ)さらに、介護など家庭の事情で通常の勤務形態では
働けず就業を諦める人(介護離職者)が年間10万人とされる」。
 
 資料整理をしていて見つけた2019年3月の『日経ビジネス』の人材確保を
扱った特集記事。この時点で人手不足は既に顕著だ。その後数年経って、こ
の数字がどうなったかを知らないが、体感値では全人口に対して所謂無業者
の比率は上がっているように感じる。
 
 米国では「グレート・レジグネーション」が話題となった。通称武漢ウイ
ルス禍で経営が揺らいだ企業が続出し、雇止め当たり前の社会で多くの人々
が職を失い、補助金や助成金で食える生活が一時的に訪れた。元々自己主張
が強い人々の国。その人々の間で性差・経済格差・宗教・人種で多層的に分
断が進む国。人間関係にストレスを抱える人が増え、職場に行きたくない人
が増えたともいう。日本円で時給2000円を出してもスーパーのレジ担当者
が集まらない状態になっているなどと報道されている。
 
 無業者は何をしているのか。高インフレで生活は苦しくても、時給2000円
の仕事があっても働かない。霞ではなく薬物を食べる者も多いようだ。2020
年にオピオイド系中毒の死亡者は公式記録だけでも9万を超え。これ以外に
自殺者は年間4万人程度。薬物でストレスも空腹も忘れ、死に至る人々もい
るだろう。日本の無業者の姿とは程遠いように思える。

 今日も新宿の路地を歩くと道路脇に寝ている人々が多数いる。聞けば収容
施設を薦められても現状を選ぶケースが多いらしい。ブラック企業はすぐ叩
かれ、労働時間は削減され、最低賃金は引上げられ続けるこの国でも、多分
無業者は増え続けているのではないか。『日経ビジネス』が指摘するような
介護などのやむを得ない理由の無業者も多々いるだろう。一方で夢を追うと
公言して不安定で少ない収入に自ら甘んじる人々や、ボランティア的な仕事
で収入が殆どゼロのような生活を選ぶ人もいる。

 全世界ではとうとう総人口が減少に転じるらしい。世界規模の労働力の奪
い合いは激化する。技術研修生も留学生もどんどん減って行くことだろう。
ブロック経済化はここでも進み、中小零細企業は人材も現地調達を迫られる。
「人間が労働から解放される日」は耳触りが良い。しかしそれは好みや主観
で企業の仕事が蔑にされる日でもあるだろう。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『お客様が教えてくれた「されたい」営業』 今井晶也 著
■『「婚活」時代』 山田昌弘・白河桃子 共著
■『少年ジャンプが1000円になる日 …』 大坪ケムタ 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 MSIグループ 市川正人
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次号予告:
 第584話 『続・空ろな鳩穴』 (5月25日発行)
 人々の消費に纏わる価値観において年齢による違いが小さくなってきてい
ることを指して「消齢化社会」と呼ぶようです。企業のマーケティングに大
きな影響を及ぼすと言われているこの現象について一考してみます。

(完)