特に予定していた訳ではなく、ひょんな理由から、その日当日、埼玉にあるショッピングモールで見ることとなりました。
前作の『相棒 劇場版…』よりも更に、テレビ版や原作に通じていないと楽しめない映画になっているような気がしました。私は前作を見た際同様に、テレビ版も原作も全く知らないので、その意味では、楽しめる余地が少なかったと言えます。
たまにケーブルテレビで見ることがあるCSIのようなドラマもあるので、そのようなプロットかと思いきや、科学捜査の要素は最低限含まれているものの、平日の夜にやっている推理サスペンスものの延長のようでしかなかったように感じます。「私には物証が総てです」と主人公が言うだけあって、推理の組み立ては、取り急ぎ、理解できるものでしたが、ただそれだけであったように感じられてなりません。前作の何の意味があるのか分からない執拗なトラップの連続に比較すると、非常に好感が持てますが、普通の推理ドラマと言うことに見えました。
主人公の米沢守が、なぜ事件の解決に当たるのかがよく分りません。もともと彼が彼に愛想をつかして去った元妻に似た人物を前作の主舞台であるマラソン参加者の中に見つけるところから、話が始まりますが、その女性はすぐに殺害されてしまいます。殺害時点で主人公が鑑識として色々な調査を行ない、自分の元妻ではないことを知ります。ここまでで本来話は終わりで、彼が事件に関与したがる理由がそれ以上、「行きがかり」以外に特に何も見当たりません。
さらに不思議なのは、殺害された女性は、彼の元妻に瓜二つと言うことな上に、下の名前が漢字まで含めて同一です。主人公が劇中で言っている通り、天文学的に小さな確率の一致度合いです。おまけにこの殺害された女性は、大きな決断をするごとに、髪をばっさり切ったり、マラソンに参加したりと、奇行に走るという伏線まであり、その奇行の中に、実は彼の元妻と何らかの関係が一瞬匂わされたようにさえ思ったのも、どうも関係なかったようです。
主人公の携帯の着信音のギャグやら、主人公が元妻がいた日々を回想すると登場する元妻の幻影などは、テレビ版を知っていれば楽しめるのかもしれませんが、単に推理もののドラマとしてみると、不必要に本線から逸脱したふざけた演出のようにさえ感じられます。『相棒』の二人も登場は再三するものの、すれ違ったりするだけの全く意味を成さない登場を繰り返すだけで、『相棒シリーズ』と言っても、実際の共通点は舞台設定のみです。
また、どうせなら、『相棒シリーズ』のレギュラーではない、私が結構好きな俳優である伊武雅刀にももっと暴れて欲しかったとも思います。暴れる強敵を前にした方が、主人公は引き立つものだと思います。
どうも、テレビ版や原作を知らない観客である私は置き去りにされた感覚を持ちました。なので、DVDを後日見たくなることもないものと思われます。